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2024.7.5
ISO22716は化粧品GMPとも呼ばれ、高い品質が求められる化粧品を製造する際の基準を示したものです。
ISO22716を認証取得することで、品質向上や顧客からの信頼獲得などさまざまなメリットが期待できます。
この記事では、化粧品GMP(ISO22716)に関して、その概要や認証取得の際に求められる要求事項、取得までの流れ、取得メリットなどを解説します。
初めに、化粧品GMP(ISO22716)の概要について紹介します。
そもそもGMPとは「Good Manufacturing Practice」の略で、日本語では「適正製造規範」と表現されます。製造工程において作業者や作業タイミングが変わったとしても、同じ品質の製品を製造し、提供することを目指しています。
作業者が変わっても高い品質の製品を製造するためには、熟練の作業者だけが把握している勘やコツに当たる技術を言語化し、ルールとして設定することが重要です。
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また、作業実績の記録を徹底することや手順書の作成などにより、同一品質の作業を行える環境構築も必要不可欠です。
実際にミスが発生するかどうかは別にして、「人がすべて正しく行える」という前提を持つことは望ましくありません。人は間違いを起こすものであるということを前提に、手順の文書化や証拠の記録、システムによるポカヨケを行う必要があります。
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化粧品のGMPは、国際規格であるISO22716として定義されています。とくに、化粧品や医薬部外品の製造管理や品質管理を目的として定義されています。
化粧品や医薬部外品など、人の体内に入ったり肌に直接触れたりする製品の品質確保を実現するためには、さまざまな観点での品質管理が重要です。
化粧品GMPで、以下の幅広い観点での要求事項が定められており、認証を取得するためにはこれら全ての観点で要求を満たす必要があります。なお、これらは17の要求事項として設定されています。
一方で、従業員の労働安全や環境保全など、製品の品質に直接的に影響しない項目はGMPの管理対象外になっており、労働基準法やその他の法律に従う必要があります。
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化粧品GMPと医薬品GMPにどのような違いがあるのでしょうか? 化粧品GMPと医薬品GMPの主な違いは、主に規制の厳格さや規制を適用するプロセス、規制での管理対象です。たとえば、化粧品GMPには医薬部外品は含まれていますが、医薬品は含まれていません。
化粧品GMP(ISO22716)は、以下の17の要求事項によって構成されています。認証取得に関する対応を行う担当者はもちろんですが、化粧品製造に関係する業務を行う人は、各項目について把握しておくとよいでしょう。
ISO22716の認証を取得するには、紹介した17の要求事項を全て満たしていることを証明する必要があります。要求事項を満たすには、まず各要求事項の内容を正しく把握し、どのようにすれば要求事項を満たせるか確認します。
化粧品GMPで要求されている範囲は非常に広く、要求事項を把握したり、要求事項を満たすための準備をしたりすることは簡単ではありません。しかし、これらの要求事項をきちんと満たして認証取得することが、顧客からの信頼につながるのは言うまでもありません。
要求事項は、化粧品の製造に関わる従業員や設備、原材料だけでなく、生産時に生じた規格外品の処理や廃棄物など多岐にわたっています。また、苦情や回収、内部監査についての要求事項は、取引先や化粧品のユーザーが安心して化粧品を使うことを後押しします。
化粧品GMPは、以下の三原則を掲げています。三原則の項目はハードとソフトに分類されます。ハードは主に設備や環境について、ソフトは主に管理面や作業手順、人的ミスについて扱っています。
ここでは、三原則の各要素についてハード・ソフトの観点で解説します。
「間違い防止」は、化粧品の製造に関わる人によって生じる間違いを少なくすることです。間違いを防止することで品質の安定化や作業効率の向上が期待できます。
ハード面では、余裕を持って作業を行えるように十分な作業スペースを確保するなど、環境面での対策が挙げられます。
一方、ソフト面では、正しい知識を身に付けることはもちろん、「人は間違いをするものだ」という前提に立った上で進められる対策が挙げられます。
汚染防止は、異物混入などによって生じる製品の汚染や品質低下を防止することです。
もし、汚染された環境下において製造した製品に異物が混入してしまうと、事業者の信頼を大きく損ない、商品の使用者に大きな不利益を与えてしまいます。
また、汚染された環境の影響を受けて化粧品の構成成分が変質してしまうことで、品質が低下するリスクも生じてしまいます。
全ての環境を厳密に管理することは困難です。そのため、求められる清潔さのレベルに応じて場所を区分し、状況に応じた設備配置や清掃ルールを定めることが重要と言えます。
品質保証システムとは、「ISO22716(化粧品GMP)」で必要とされる、高い品質を保証するためのシステムを指します。
システムは、ハード面に分類される設備や試験室といった物理的なものだけではなく、責任分担や相互監視ができる部門分離などの組織的な構造も含まれます。
化粧品GMPを認証取得することで、以下のメリットが得られます。
化粧品GMPは化粧品業界や医療品業界では広く知られている国際規格です。そのため、化粧品GMPの認証取得は、自社商品の品質の高さを外部にアピールすることにつながります。
企業が取引先を選定する際の基準にはさまざまですが、一定以上の製品品質を担保する化粧品GMPの認証取得は顧客からの信頼獲得へとつながります。
さらに、ISO22716の認証取得には1年以上の期間と多大な労力が必要となります。逆に言えば、ISO22716の認証取得は、競合優位性の獲得にも貢献すると言えるでしょう。
ISO22716の「ISO」は国際標準化機構を意味し、日本国内だけでなく世界中で広く知られている国際規格です。
世界中の全ての国の化粧品製造がISO22716に準拠しているわけではありませんが、北米やEU諸国などはISO22716に準拠していますし、準拠する国は増えつつあります。そのため、ISO22716に準拠していれば、それぞれの国が設定した企画に準拠し直す必要はないと言えます。ISO22716の認証取得は、海外の取引先からの信用獲得につながるでしょう。
ISO22716の要求事項は、原材料や設備、生産、品質管理を行う際の試験室など、品質に関するさまざまな観点から定義されています。
要求事項の内容を正しく理解し、要求事項に準拠した生産体制や品質管理体制を構築することは、高い品質の製品を安定して生産することへとつながります。
また、ISO22716の認証取得には、多くの従業員の協力が必要です。認証取得に向けた活動のなかで、従業員の品質に対する意識向上も期待できるでしょう。
化粧品を利用するエンドユーザーが購入する商品を選ぶとき、その決め手となる要素はさまざまです。企業や製品への信頼感は、重要な要素の1つと言えるでしょう。
化粧品GMPの認証取得は、製品品質の高さをアピールすることにつながります。これにより、顧客からの信頼の獲得と使用検討を促すことへもつながるでしょう。また、実際に使用して品質の高さを直接体験することで、顧客満足度も向上するでしょう。
ISO22716の要求事項に準拠することで、原材料の調達や製造業務などを効率的に行うことができます。
また、ISO22716の認証を取得すると、記録を残しながら業務を行うことになるため、振り返りを行う際に情報を集め直す必要がありません。認証取得に向けた活動の過程で蓄積した情報を分析することで、プロセスの改善を効率的に行うことができます。
さらに、従業員は業務効率化の意識が高まり、その他の業務への展開も期待できるでしょう。
化粧品の製造工場では、保険期間による消防設備や電気設備の法定点検が必要です。
また、法定点検以外にも、社内での内部監査や上位層による工場の確認などが行われますが、確認のたびに監査への事前準備をするのは大変なことです。また、これらの業務は日常業務に追加して行う業務のため、担当者に大きな負担がかかってしまいます。
ISO22716に準拠した体制で日常的に管理を行っておくことで、点検や監査に必要な事前準備の負担を軽減できます。
ISO22716を取得する際には、以下のように進めていく必要があります。
これら全てのプロセスを進めていくには1年~1年半の期間が必要です。そこで、目標とする認証の取得タイミングから逆算して計画を立ておくとよいでしょう。
とくに、ISO22716の認証と自社の状態の差を確認するギャップ分析には、自社調査や認証規格との突き合わせにかなりの時間が取られます。また、文書作成においても、認証の求める形式に沿ったものを作成する必要があります。時間に余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
ISO22716の認証は、企業の状況と規格との適合性のみで判断されます。認証との整合性を確認する予備審査などを十分に行えば、認証の取得自体は難しいことではありません。
むしろ、認証取得に向けた活動において進めることになる品質向上や業務プロセスの明確化など、自社の抱える課題を解決することのほうが重要と言えます。
また、複数の認証機関のなかから依頼する機関を選択する際には、規格との整合性を効率的に審査してもらえるかどうかだけではなく、認証取得によって自社の目的を実現できるか、そのためにどんな情報を抽出すればよいか、取得に向けた諸活動の進捗管理を効率的に行えるか、といったことに親身に対応してくれる機関を選定するとよいでしょう。
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