ナレッジ
2024.4.23
ISO45001は、労働者の安全を第一に考えて定められた世界標準の労働安全衛生マネジメントシステムです。この記事ではISO45001における「力量」の要求事項について、基本的な内容についてご説明します。
ISO45001とは、近年の社会の変化に伴い、安全かつ健康的な職場を実現するための要求事項を取り入れて設計された、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS:Occupational Health and Safety Management System)の国際規格です。従来の労働安全衛生マネジメントシステムである「OHSAS18001」を前身とし、2018年3月にISO(国際標準化機構)によって発行されました。
労働安全衛生マネジメントシステムとは、労働災害発生の可能性と、それらに伴う経営リスクを低減することに主眼を置いた規格です。従業員及び組織の利害関係者に対する業務上の労働安全と衛生に関するリスクを、適切に分析・管理すると共に、継続的な改善に取り組むことを求めています。
「ISO45001」は、「OHSAS18001」をベースとして発行されました。ただ他のISO規格と同一の書式が採用されているため、以前の規格から章立ては大きく変わっています。用語の定義や文書の構造などもすべてISO規格と統一されており、他のISO規格と併用しやすくなっています。
内容に関しても、ISO45001の要求事項の方がさらに細かくなっています。OHSAS18001は、主に安全衛生のリスクを管理・運営するマネジメントシステムでした。ISO45001ではそれに加えて、トップマネジメントがリーダーシップを発揮すること、また「働く人の協議及び参加」の箇条を設けて、従業員が労働安全衛生活動に参加することを求め、安全な労働環境を実現する企業文化を作る点に重点が置かれています。
ISO45001を取得・導入することによって、組織内における労働安全衛生の管理体制の構築を徹底することが可能となります。具体的なメリットは、以下の通りです。
企業が独自で労働安全衛生活動に取り組んでいる場合、活動内容が形骸化、マンネリ化してしまっているケースもよくあります。
ISO45001で定められた最新の要求事項と、自社の活動内容とを照らし合わせて改善を行うことによって、労働安全衛生活動の水準をさらに高めることができるでしょう。それは安全で健康的に働ける環境の構築につながり、従業員にとっても安心して働ける職場が実現できます。
ISO45001を取得・導入することによって、組織内における労働安全衛生の管理体制の構築を徹底することが可能となります。具体的なメリットは、以下の通りです。
ISOマネジメントシステムに関する規格は、いずれも継続的な改善を行う仕組が重要視されています。また、ISO45001においては、労働安全衛生目標を達成するためのプロセスや一連の要素を確立することを求めており、要求事項に記載されている項目は、十数か所に及びます。
認証取得により、こうしたプロセスを明確にし、規格に沿って運用することが、安全かつ健康的な職場を実現するためのガイドラインに繋がるでしょう。
明確な基準が定められている国際規格に基づいて、安全かつ健康的に働ける職場環境づくりを推進することにより、顧客やステークホルダーなどからの信頼を獲得することにもつながります。
ISO45001では、作業標準に従った作業ができるようになるための教育訓練を求める一般的な力量の要求事項に加えて、「危険源を特定する能力を含めた力量を備えていることを確実にする」ことまで求めているのが特徴といえます。
ここで触れられている「危険源」は、「負傷及び疾病を引き起こす可能性のある原因」と定義されています。具体的には化学物質や設備など、働く人に対して直接的に害を及ぼす可能性がある物理的な条件のほか、人間関係の影響や各種のハラスメント、労働・作業時間など、社会的に問題視されている要因や、組織の文化に影響される条件も範囲に含まれています。
ISO45001の力量における要求事項では、危険源を先取りして特定するためのプロセスを確立し、それを実施・継続することを求めています。組織内で特定の従業員がこうしたリスクアセスメントをする役割を明示された場合、その従業員は、危険源に関する最新の知識や情報を得るための教育訓練を受け、リスクの特定に必要な力量を身につける必要があります。
一方で、従業員がリスクアセスメントの役割を持たない場合、危険源に関する力量は、どのようなものが求められるのでしょうか。 ISO45001の力量に関する参考資料には、その従業員が備えることが望ましい力量について、「働く人は,差し迫った深刻な危険がある状況から脱することができるだけの必要な力量をもつことが望ましい」と記載されています。
つまり、その組織で働く人自身が、自分の行う作業に付随する危険源をきちんと認識し、その作業を安全に従事するうえで適切な教育訓練を提供するよう組織に求めています。
A.7.2 力量
働く人の力量には,働く人の作業及び職場に付随する危険源の特定並びに労働安全衛生リスクの対処を適切に行うために必要な知識及び技能を含めることが望ましい。 組織は,各々の役割に必要な力量を確定する際に,次のような事項を考慮に入れることが望ましい。
- a) その役割を引き受けるために必要な教育,訓練,資格及び経験,並びに力量を維持するために必要な再訓練
- b) 働く人の作業環境
- c) リスク評価プロセスの結果としてとられる予防方策及び管理策
- d) 労働安全衛生マネジメントシステムに適用される要求事項
- e) 法的要求事項及びその他の要求事項
- f) 労働安全衛生方針
- g) 働く人の安全衛生への影響を含めた,順守及び不順守の考えられる結果
- h) その知識及びスキルに基づく労働安全衛生マネジメントシステムへの働く人の参加の価値
- i) 役割に付随する義務及び責任
- j) 経験,語学力,識字能力及び多様性を含む個人の能力
- k) 状況又は業務の変化によって必要となった力量の適切な更新 働く人は,組織が役割に必要な力量を決定するに当たり支援することができる。 働く人は,差し迫った深刻な危険がある状況から脱することができるだけの必要な力量をもつことが望ましい。このため,働く人の作業に付随する危険源及びリスクに関して,十分な訓練を働く人に提供することが重要である。 必要に応じて,働く人は,労働安全衛生に関する働く人の代表の機能を効果的に果たすことができるように,必要な訓練を受けることが望ましい。 多くの国では,働く人に訓練を無償で提供することは,法的な要求事項である。
一般的な組織では、一人ひとりの従業員が危険源を認識し、安全を確保したうえで作業に従事する力量を身に付けてもらうために、具体的にはどんな教育訓練を行っているのでしょうか.ここでは具体例の一つとして、厚生委労働省が公開している、化学物質の取扱のための安全衛生教育資料をご紹介します。
資料内では、「危険源」である化学物質を取り扱う場合、労働者自身も化学物質のリスクを十分に理解することが重要であると記されています。
参考)厚生労働省:化学物質の使用実態に応じた職場の安全衛生教育のための資料https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19390.html
また組織において教育訓練を実施する場合、その内容が適切であるかどうかはもちろんのこと、いつどんな内容で誰に対して実施したのか、その結果どんな効果があったのか、客観的に評価し、証明するための記録をきちんと残すことが必要です。
今回ご紹介したようにISO45001では、組織で働く従業員一人ひとりが安全に仕事をするためのスキルが重視されています。従業員は、危険源への知識や対処の仕方について、きちんとした力量(知識やスキル)を持つことが求められます。
そのために組織側は、危険業務に対する最新の知識を得る機械を提供することに加え、危険源を安全に対処するためのスキルを適切に身に着けられるよう教育訓練を適切に行い実施する必要があるのです。
「Skillnote」でISO力量管理業務を圧倒的に効率化!
●バラバラだったスキルや教育訓練記録をシステムで一元管理
●ペーパーレス化の実現によって共有もラクラク
●スキルと教育が紐づいて運用の手間がなくなる