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2024.8.6
「顧客からISOの認証を取得するように言われたがISOって何?」「勤め先で急にISOの担当者になるように言われたが、ISOとは結局何なのか?」
そんな風に疑問を持っている方に向けて、ISOとは何なのかを解説します。
モノ規格とマネジメント規格の違い、ISOとJISの違い、ISOの種類や、認証の取得方法など、ISOの基本的な内容について触れますので、ぜひ参考にしてください。
ISOは、日本では一般的に「アイエスオー」または「アイソ」と呼ばれています。International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。1947年に設立された非政府組織で、本部はスイスのジュネーブにあります。
ISOの主な役割は、製品、サービス、システムの国際規格を開発・発行することです。これらの規格は、品質、安全性、効率性を確保し、国際貿易の促進を目的としています。
ISOは、165カ国の国家標準化団体で構成されており、幅広い分野で約28,000の国際規格を発行しています(2021年)。有名なものには、品質マネジメントシステムのISO 9001や環境マネジメントシステムのISO 14001などがあります。
以上の説明でISOについて理解される方もいらっしゃるかもしれませんが、標準化やマネジメントシステムといった用語に馴染みのない方のためにも、それぞれ1つずつ説明していきましょう。
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
関連記事:ISO 14001とは? 環境マネジメントシステム(EMS)やISO 9001との違い、認証件数、取得企業、取得のメリット、取得までの流れ、要求事項について解説
標準化とは、製品やサービス、プロセスなどを一定の基準に合わせて、効率性や互換性を高める取り組みです。これにより、品質の向上、コストの削減、安全性の確保などが可能となります。
たとえば、電化製品のプラグや電圧の規格を統一することで、どの国でも同じ製品が使えるようになります。また、食品安全の基準を設けることで、消費者の健康を守っています。
標準化は、企業間の公平な競争を促進し、国際貿易を円滑にする役割も果たします。さらに、新技術の普及や産業の発展にも貢献します。
標準化の歴史は古く、紀元前3000年頃のエジプトでは、建築用のレンガの規格が統一されていたとされています。たしかに大きさが統一されていないレンガではピラミッドなどは作れませんよね。
19世紀の産業革命以降、工業製品の大量生産が始まると、部品の互換性や品質の均一化が求められるようになりました。電気・電子分野を専門的に扱う「IIEC(国際電気標準会議)」が設立され、引き続き1926年に「万国規格協会」が設立されました。
これらの団体は第二次世界大戦で活動が停止していましたが、終戦後、再び国際的な標準化の必要性が高まり、1947年にISOが設立されました。以来、ISOは工業製品から環境管理、品質管理まで、幅広い分野で国際規格を策定してきました。
現在では、デジタル技術やAIなど、新たな分野での標準化も進んでおり、その重要性は年々高まっています。
標準化には、モノ規格とマネジメント規格があります。
モノ規格とは、製品や部品の寸法、形状、性能などを定めた規格のことです。これにより、異なるメーカーの製品でも互換性が確保され、生産効率の向上や市場の拡大につながります。
たとえば、ネジの規格を統一し、どのメーカーのネジでも同じ穴に適合するようになります。また、USBケーブルの規格により、さまざまな機器で共通のケーブルが使用できるようになりました。
モノ規格は、消費者の利便性を高めるだけではなく、製造コストの削減や修理・メンテナンスの容易化にも貢献します。さらに、安全性や品質の確保にも重要な役割を果たしています。
マネジメント規格とは、組織(企業)の運営や管理に関する国際的な基準を定めたものです。これらの規格は、組織が効果的かつ効率的に運営されるための指針を提供します。
組織運営のやり方は、その組織の目的や業種、規模によってさまざまです。しかし、マネジメント規格は、顧客満足度の向上や社会的責任の遂行など、普遍的に必要とされる組織運営のガイドラインが示されています。
代表的なものには、品質マネジメントシステムを定めたISO 9001や環境マネジメントシステムを定めたISO 14001があります。これらの規格は、品質面や環境面から組織の目標達成や継続的な改善を支援し、顧客満足度の向上や社会的責任の遂行に役立ちます。
マネジメント規格の特徴は、どのような業種や規模の組織にも適用できる汎用性の高さにあります。また、PDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)を基本とし、組織の継続的な改善を促進します。
マネジメントシステムとは、組織が目標を達成するための仕組みのことです。
多くの人が働く組織において、皆が同じ目標に向かって効率的に活動するには、さまざまな仕組みが必要です。例えば、不適切な目標の立て方では従業員の理解が得られなかったり、十分な経営資源(設備や従業員数など)がないままでは、組織としての目標達成は難しいでしょう。
これらを適切に運用していくための仕組みをマネジメントシステムといい、ISOのマネジメント規格ではこのマネジメントシステム構築へのガイドラインが示されています。
関連記事:QMS(品質マネジメントシステム)とは? 目的、規格、ISO 9001要求事項との違いやQMS構築時のポイントを解説
ISOとJISはどちらも標準化を目的とした規格で、国際規格がISO、日本独自の規格がJISです。前述のISO(国際標準化機構)には世界各国の国家標準化団体が参加しており、日本からはJISC(日本工業標準調査会)が加盟しています。
このJISCが策定して、主に日本国内の産業や製品に適用されているのがJIS(日本工業規格)です。
両者は密接に関連しており、たとえば、ISO 9001の日本語版がJIS Q 9001、ISO 14001の日本語版はJIS Q 14001となります。ただし、日本特有の要件や事情を反映したJIS独自の規格も存在します。
関連記事:JIS Q 9100とは? ISO 9001との関係と独自の要求事項について解説
ISOの認証取得には、組織にとってさまざまな目的とメリットがあります。
大手企業や官公庁、海外企業との取引では、ISO 9001やISO 14001などの認証が取引条件となることも珍しくありません。取得していない場合は、信頼性や品質保証の観点を不安視につながり、ISO認証取得が求められるケースがあります。
ISO認証の取得は、競合他社との差別化を図る有効な手段となります。同業他社がISO未取得の場合、認証取得企業は品質や環境への取り組みにおいて優位性をアピールできます。これは新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化につながり、市場での競争力向上に寄与します。
ISO認証は、企業の信頼性と社会的責任への取り組みを示す指標として機能します。顧客や取引先、投資家、地域社会など、さまざまなステークホルダーに対して、企業の品質管理や環境配慮への姿勢をアピールできます。これにより、企業イメージの向上や評判の改善が期待できます。
ISOの取得プロセスは、自社の業務プロセスを見直す機会にもなります。標準化された手順や管理方法の導入により、製品やサービスの品質が安定し、不良品の削減につながります。結果として、顧客満足度の向上や経営効率の改善が実現できます。
ISO認証取得の過程で、組織内の各部門や個人の役割と責任が明確になります。これにより、業務の重複や漏れが減少し、効率的な組織運営が可能になります。また、従業員の意識向上や自主的な改善活動の促進にもつながり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
ISO認証の取得だけでもさまざまなメリットがあります。それだけではなく、標準化は市場を変える力があるため、事業戦略に活用することで、企業は大きな競争優位性を獲得できます。
以下に、標準化を活用した効果的な事業戦略を紹介します。
食卓でお馴染みになった鮮度保持容器に入った醤油ですが、この容器の普及にはJISによる標準化が欠かせなかったそうです。
鮮度保持容器を開発した株式会社悠心は、技術の特許取得し、その技術の評価方法の標準化にも取り組みました。容器内の醤油の酸化度合いの測定方法、試験条件などを定め、鮮度保持性能の評価基準を作り、自社製品の信頼性のPRに成功しました。
ダイキン工業は、安全性が高く、温暖化影響も小さい冷媒「R32」を自社空調機へ採用していました。しかし、当時の国際標準(ISO)の冷媒安全分類規格では「R32」は「可燃」に分類されてしまい、普及の障壁となっていました。
そこでISOの冷媒安全分類規格に「微燃」を追加するよう働きかけ、ビジネス環境の改善を実現したそうです。
この結果、インドの国内規制に当該国際規格が引用されることなどを通じて、5年間で販売台数が36万台増加しました。
ISO認証取得には以下の点に注意が必要です。
ISO認証取得は即効性のある施策ではありません。システムの構築、従業員の教育、運用の定着には相当な時間を要します。短期的な成果を期待せず、長期的な視点での取り組みが重要です。継続的な改善を重ねることで、徐々に効果が表れてきます。
ISO導入にともない、既存の業務プロセスや組織構造の変更が必要となる場合があります。この過程で従業員の抵抗や混乱が生じやすく、モチベーション低下や生産性の一時的な低下を招く可能性があります。丁寧な説明と段階的な導入が求められます。
ISO認証取得には、コンサルタント費用、審査費用、システム構築費用など、相当な投資が必要です。また、取得後も維持審査や更新審査のコストが継続的に発生します。これらの費用対効果を十分に検討し、経営戦略に組み込む必要があります。
ISOには様々なマネジメント規格があり、2024年現在5万種類を超えています。下記に代表的なマネジメント規格を挙げます。
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ISOの認証を受けるには、定められた認証機関からの審査を受ける必要があります。
ISOの種類によって流れは違いますが、ここでは一般的なISO 9001の審査・認証取得までの流れを解説します。詳しくは下記の記事も参考にしてください。
関連記事:ISO審査とは? 審査の種類、準備、流れについて解説 – スキルマネジメントMagazine | Skillnote
ISO認証取得の審査前には、以下の準備が必要です。
ISO認証取得の審査は、通常以下の内容で行われます。
組織のマニュアルや手順書が規格要求事項を満たしているか、審査機関が確認します。
審査員が組織を訪問し、以下の点を確認します。
規格要求事項を満たしていない点があれば指摘されます
審査結果が報告され、認証の可否が判断されます
審査は組織の規模や業種によって1日から数日かかります。組織は誠実に対応し、必要な情報の迅速な提供が重要です。
ISO認証審査後の流れは以下のとおりです。
ISO認証の取り消しは、以下のような状況で発生する可能性があります。
取り消しを避けるためには、規格要求事項の遵守と継続的な改善活動が重要です。また、問題が発生した場合は速やかに対処することが求められます。
ISO認証取得にかかる費用は、組織の規模や業種、取得する規格によって異なりますが、一般的に以下の項目が含まれます。
小規模企業の場合、初回の認証取得に100万円〜300万円程度、その後の維持に年間50万円〜100万円程度かかることが多いですが、詳細は個別での見積もりをお勧めします。
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