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GMPとは? 医薬品GMPの具体的な内容、目的、近年の改正内容、ISOとの違い、GMP省令の要件や適合性審査について解説

医薬品GMPとは?

私たちが日常的に服用している医薬品を安心して使用できるのは、医薬品GMPという基準によって製造過程が厳格に管理されているからです。GMPは医薬品の品質、有効性、安全性を確保するための製造管理および品質管理の基準です。

本記事では、このGMPの具体的な内容、目的や誕生の背景、近年の改正内容、ISOとの違い、GMP省令の要件や適合性審査について解説します。

ISO力量管理

医薬品GMPは、医薬品の製造管理・品質管理基準

GMPとは「Good Manufacturing Practice」の略称で、直訳すると「優良製造規範」となります。医薬品や医薬部外品などの製造管理・品質管理基準を指し、安全で高品質な製品を一貫して生産するために設けられた国際的な基準です。

医薬品GMPと薬機法

日本で医薬品の製造販売するためには「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「薬機法」を遵守しなければなりません。

薬機法(医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認)

第十四条 医薬品 、医薬部外品又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。

2次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。

(略)

四 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。

出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

この薬機法のなかに「厚生労働省令で定める基準」すなわち「GMP省令」で定める基準に適合していなければならない、という一文があります。日本での医薬品の製造販売は、GMP省令を遵守しなければならないと法律で定められているのです。

GMP省令が遵守できているかどうかは、各都道府県などによるGMP適合性調査で確認されます。このGMP適合性調査で「GMP省令を遵守している」と認められた業者にしか医薬品は製造販売できません。

GMP省令に適合していないにもかかわらず医薬品を製造販売した場合には、薬機法違反となり、販売許可の取り消しなどの処分が下る可能性があります。

医薬品GMPの適用範囲

日本の医薬品GMPは製造業者だけでなく、販売業者も適用範囲です。医薬品の販売業者は販売する製品の製造業者に対し、GMP省令による製造管理および品質管理を行わせなければなりません。

医薬品GMPの目的

医薬品GMPの目的は、製造プロセス全体をとおして一貫した品質と安全性の確保することです。医薬品は病気の治療や予防に使用され、人体に直接影響を与えます。もし、何らかの原因によって医薬品に問題が生じれば人命に関わる恐れがあります。それゆえ、医薬品には高い安全性が求められるのです。

医薬品の品質と安全性を完璧に確認するためには、製品を破壊して試験する必要があります。しかし、販売する全ての製品を試験することはできません。そこで、製造工程での品質管理が極めて重要になります。この製造工程での品質管理基準を示したのがGMPです。

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医薬品GMPの歴史と近年の改正内容

GMP誕生の背景

GMP誕生の背景にはサリドマイド事件が大きく影響しています。サリドマイドは1957年に米国で開発された睡眠薬のことで、副作用が少ないとされ世界中で使用されました。しかし、その後妊婦の服用による胎児への深刻な影響が判明し、多くの被害者を出す国際的な薬害問題となりました。

この薬害問題がきっかけとなり医薬品の安全性確認の重要性が再認識され、1962年に米国FDAは「薬品の製造規範に関する事項」を制定しました。これが現在の医薬品GMPの始まりです。その後、世界保健機関(WHO)も「WHO-GMP」を制定し、加盟国を中心にGMPの概念が世界的に普及しました。

医薬品GMPの改正の流れ 

その後もGMPは医薬品製造技術の進歩や、最新の安全基準や品質管理基準を反映させるために定期的に改正されてきました。

日本では1972年から厚生労働省でGMPについて検討が開始され、1980年に厚生省令として「医薬品GMP」が施行されました。さらに1994年の薬機法改正で「医薬品GMP」が医薬品製造許可の要件となり、2005年には医薬品製造の販売も許可が必要となりました。

2021年、GMP省令の大改正

その後もGMPはその範囲と内容を時代とともに進化させています。

2021年8月にはデータインテグリティに関する要件が盛り込まれるなど、GMP省令自体が16年ぶりに大幅に改正されました。

なお、データインテグリティ(DI)とは医薬品製造に関わる文書や記録の完全性を確保する仕組みのことです。誰がいつ書いたか、転記ではなく記録原本であるか、改ざんがないかなどが問われます。

医薬品分野以外のGMP

GMPは医薬品分野で基準が定められて以降、その他の分野でも整備が進められています。よく知られている化粧品GMPと健康食品GMPは現在、日本ではまだ法律に定められていませんが、今後法整備化が進んでいくことが予想されています。

  • 医薬品GMP 薬機法で定められた製造管理や品質管理に関する基準
  • 医薬部外品GMP 医薬品GMPと同様に薬機法に定められている
  • 原薬GMP 原薬(医薬品の有効成分)に関するGMP。医薬品GMPと同様に薬機法に定められている
  • 化粧品GMP ISO 22716に基づく自主基準
  • 健康食品GMP 厚生労働省が通知した「健康食品GMPガイドライン」に基づき、民間団体の第三者機関が審査

関連記事:ISO22716(化粧品GMP)とは? 概要、医薬品GMPとの違い、三原則、メリット、取得までの流れを解説

GMPとISO・PIC/Sとの違い

ISOとの違い

ISOは International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、製品やサービスの国際的な基準を整備する非政府機関です。ISOは第三者機関の審査を受けて、取得できます。法律で定められたものではありません。このため、認証が取り消される場合こそありますが、罰則はありません。

関連記事:ISO(国際標準化機構)とは? 概要やJISとの違い、マネジメント規格の種類、認証取得の流れを分かりやすく解説

ISO.IATF力量管理

PIC/Sとの違い

PIC/S(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme 医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム)は、GMPの査察当局間の非公式な協力の枠組みです。GMP基準及び査察当局の品質システムの開発・実施・保守を目的に活動する団体で、GMPの世界調和やGMP査察官の育成、査察当局間のネットワーク化の推進などを行っています。

GMP省令は薬機法に基づくのに対し、PIC/Sは非公式な組織で法的拘束力はありません。しかし、アメリカやEU、日本といった主要国の多くの査察当局が加盟しています。このため、PIC/Sが開発・推進するPIC/S GMPガイドラインは実質的な医薬品査察の世界基準であると受け止められています。

医薬品GMPの三原則

医薬品はその安全性を確保するために「誰がいつ作業しても、必ず同じ品質・高い品質の製品」を作ることが可能な仕組みを構築しなくてはなりません。このため、医薬品GMPは、下記の三原則を念頭に置いて定められています。

1. 人為的ミスの防止

医薬品の品質を維持するためには、人為的ミスを防ぐことが重要です。例として、以下のような取り組みが求められます。

  • 標準作業手順書(SOP)を作成し、その通りに作業させる
  • 作業員の研修や訓練を繰り返し行う
  • 人為的ミスが起きた、あるいは、起きそうになった場合に作業工程の改善を行う

これらの取り組みを行っても、人為的ミスを完全に防ぐのは難しいのが実情です。より安全性を高めるために、自動化システムの導入やバーコード管理などの導入の検討もおすすめします。

2. 医薬品の汚染や品質低下の防止

正しく製造された医薬品でも、製造環境によっては汚染や品質低下が生じるリスクがあります。これらを防ぐためには、製造環境の厳格な管理が極めて重要です。

  • 空調システムによる温度・湿度の管理
  • 製造エリアの高い清浄度の維持管理
  • 適切な保管条件の維持
  • 設備の定期的な洗浄・消毒
  • 製造ラインの適切な設計

以上のような汚染や品質低下を防止する施策が求められます。

3. 高い品質を保証するシステムの設計

品質保証システムの構築も重要です。

  • 製造工程などのバリデーション(妥当性検証)を行う
  • 製造部門と検査部門を分け、責任の明確化を行う
  • 製造記録の厳密な管理
  • 継続的な改善活動や定期的な自己点検、第三者監査の実施

医薬品製造の組織に対する高い品質を保証するシステム設計が求められます。         

GMP省令の要件

医薬品GMPの2つの側面

医薬品GMPではさまざまな基準が定められており、「GMPハード」と「GMPソフト」という2つの側面に大別されます。          

GMPソフト

GMPソフトは、マネジメントのルール整備や文書整備についての規定です。

  • 組織・責任体制の整備
  • 製造手順書の文書化
  • 責任体制の文書化
  • 作業員への周知

などが挙げられます。

GMPハード

GMPハードは、建屋や機器などハードウェア全般に関する規定です。

  • 医薬品を整備する建屋、建屋の空調設備、生産機器、試験機器、倉庫に対する規定
  • 照明及び換気が適切であり、かつ、清潔である
  • 天井、壁及び床の表面は、消毒液等による噴霧洗浄に耐えるものである

などがGMP省令の中で記載されています。            

GMP省令に適合するには

冒頭で説明した通り、日本ではGMP省令に適合していなければ医薬品の販売ができません。GMP省令に適合しているかどうか示すためには、都道府県などによる適合性調査を受けなければなりません。               

GMP適合性調査の実施     

GMP適合性調査では、都道府県などが医薬品製造所に対しGMP省令を適切に遵守しているかを調査します。

まず、医薬品製造所は、都道府県の担当部局窓口で事前相談の上で、適合性調査の申請を行います。次に調査方法や調査日が決定され、その後実地や書面による調査が行われます。

実地では、作業室、更衣室、手洗い設備、製造環境、製品の保管環境、試験検査設備、製造用水供給設備、空調設備などが確認されます。一方書面では、製品標準書、基準書、手順書、記録類などが調査対象です。

また、5年ごとに継続の適合性調査を受けなければなりません。さらに、承認を受けた後に製造に関して一部変更に関わる承認を受けようとするときにも、適合性調査が実施される場合があります。

一方、不適合と認定された場合には、薬機法 第75条(許可の取消し等)で、医薬品製造販売許可の取り消しが命じられる場合もあります。

参考:医薬品等適合性調査申請 – 東京都健康安全研究センター

参考:茨城県 GMP適合性調査申請手続き

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スキルノート編集部

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よくある質問

医薬品GMPとは?

GMPとは「Good Manufacturing Practice」の略称で、直訳すると「優良製造規範」となります。医薬品や医薬部外品などの製造管理・品質管理基準を指し、安全で高品質な製品を一貫して生産するために設けられた国際的な基準です。

GMPの三原則とは?

医薬品GMPの三原則は「人為的ミスの防止」「医薬品の汚染や品質低下の防止」「高い品質を保証するシステムの設計」です。

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