自主保全士とは?メリット、1級・2級の違い、試験内容、勉強方法を解説

製造業を中心に取得が推奨されている資格が「自主保全士」。この記事では、自主保全士の概要や取得するメリットを解説します。
試験の内容や取得方法についても詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
自主保全士とは?
自主保全士は設備保全に関する資格
自主保全士は「公益社団法人日本プラントメンテナンス協会」が主催する設備保全に関わる民間資格で、毎年1万人以上が受験しています。
製造工場での設備の修理や、動作不良を早期に発見して設備トラブルを未然に防ぐ自主保全は、モノづくりにおいて非常に重要な資格と言えます。安定した生産ラインを維持するため、マシンオペレーターを中心に資格取得が推奨されています。
受験している企業の業種は製造業がほとんどで、特に自動車製造業や化学製造業が上位を占めています。

自主保全士と保全技能士との違い

保全技能士(機械保全技能士)も設備保全に関する資格ですが、こちらは自主保全士と違い国家資格です。自主保全士より公的な資格で難易度が高いため、企業によっては自主保全士から保全技能士へのステップアップを求めるケースもあります。
関連記事:機械保全技能士とは? 各級の試験内容、合格率、難易度、勉強方法を解説
資格を取得するメリット
保全技能士より難易度が低い自主保全士ですが、取得メリットは多いです。
受験者側のメリット
- 製造業全般や設備保全に関する知識やスキルの幅が広がる
- 生産設備の高度化に対応できる
- 第三者機関による客観的な評価が得られる
後ほど詳しく解説しますが、自主保全士の試験範囲は製造業や保全に関する知識・技能がほとんどです。
資格勉強を通して製造業や設備保全の基礎が身につき、設備の高度化にも柔軟に対応できるようになるというメリットがあります。
また、認定は第三者機関によるものなので、自身の知識やスキルを証明でき、モチベーションの向上にもつながります。
企業側のメリット
- 設備が故障しても迅速に復旧できる
- 設備故障や、故障による品質不良を未然に防ぎ、生産性が向上する
- 保全業務のクオリティが高まり、従業員の保全業務への意識が向上する
製造工場では、高い生産性と品質を保つためには日々のメンテナンスが欠かせません。
保全業務のクオリティ向上は、復旧スピードが上がるだけではなく、故障を未然に発見できるようになり生産性が向上します。
企業での活用事例
自主保全士の資格取得には多くのメリットがあります。実際、企業でも広く導入され、450企業・団体での活用実績があります。
なお、自主保全士の公式HPでは、よく知られた企業での活用事例の一例が多く掲載されています。
自主保全士に必要な4つの能力と5つの知識・技能
自主保全士には4つの能力が必要とされており、その能力を評価するために5つの知識・技能について問題が出題されます。
4つの能力
自主保全士には「異常発見能力」「処置回復能力」「条件設定能力」「維持管理能力」の4つの能力が必要とされています。

この4つの能力があるかどうかを判定するため、5つの知識・技能について問われます。
5つの知識・技能(試験範囲)
自主保全士に必要な知識・技能とは下記の5つで、これらがそのまま試験範囲となります。
- 生産の基本
- 生産効率化とロスの構造
- 設備の日常保全(自主保全活動)
- 改善・解析の知識
- 設備保全の基礎
それぞれの科目について詳しくみていきましょう。
1.生産の基本
製造現場で働く社会人の基礎知識として下記内容が問われます。
- 安全衛生
- 5S
- 品質
- 作業と工程
- 職場のモラル
- 教育訓練
- 就業規則と関連法令
- 環境への配慮
2.生産効率化とロスの構造
ロスとはなにか、ロスを削減するために一般的にどのような活動を行うのかを問われます。
- 保全方式
- TPMの基礎知識
- ロスの考え方
- 設備総合効率・ブランド総合効率
- 故障ゼロの活動
3.設備の日常保全(自主保全活動)
日常的な保全とは何をしなければならないのか、基礎知識や自主保全の手順が問われます。
- 自主保全の基礎知識
- 自主保全活動の支援ルール
- 第1ステップ(初期清掃)
- 第2ステップ(発生源・困難箇所対策)
- 第3ステップ(自主保全仮基準の作成)
- 第4ステップ(総点検)
- 第5ステップ(自主点検)
- 第6ステップ(標準化)
- 第7ステップ(自主管理の徹底)
4.改善・解析の知識
品質不良や設備トラブルの改善方法や問題点の解析についての知識が問われます。
- QCストーリーによる解析・改善
- なぜなぜ分析
- PM分析
- IE(Industrial Engineering)
- 段取り作業の改善
- 価値工学(VE)
- FMEA・FTA

5.設備保全の基礎
設備保全に関する基礎知識が問われます。
- 機械要素
- 潤滑
- 空気圧・油圧(駆動システム)
- 電気
- おもな機器・設備
- 材料
- 工具・測定器具
- 図面の見方

自主保全士1級と2級の違い、検定試験と認定教育の違いや試験方法
1級と2級の違い
自主保全士の資格には1級と2級があります。
自主保全士1級
【受験資格】実務経験4年以上
【役割】チームリーダー、職場・チーム(小集団)の中心的存在
【必要な能力】自主保全に関する計画の立案や実践指導ができる
自主保全士2級
【受験資格】特になし
【役割】現場の一員、製造(生産)部門の一員
【必要な能力】自身の業務をしながら自主保全を実践できる
以上のように、自主保全士2級は実務経験がなくても受験できます。また、4年以上の実務経験があれば2級を取得していなくても1級の受験が可能です。
検定試験と認定教育の違いについて
自主保全士の資格を取得する方法には「検定試験」と「認定教育」の2種類の方法があります。
- 検定試験:独学で勉強し検定試験に合格する
- 認定教育:日本プラントメンテナンス協会の通信講座を修了したあと、自宅や職場で認定試験を受験し合格する(不合格でも1回まで追試験が可能)

受験者数は検定試験のほうが多いですが、合格率は1級が30~50%、2級が50~70%と若干低いのが特徴です。一方認定教育での合格率は1級2級ともに80~100%と非常に高く、自主保全の知識がほとんどない方や、確実に合格したい方には認定教育が向いています。
試験の概要
自主保全士の検定試験、認定教育それぞれの試験概要を表にまとめました。
なお、検定試験の受験料はテキスト代を含めても認定教育の約1/3となっており、かなり取得費用を抑えられます。

自主保全士の勉強方法・過去問
検定試験の場合
公式テキスト
独学で試験勉強をするなら、日本プラントメンテナンス協会が発行している公式参考書や問題集を利用するのも選択肢のひとつです。
公式テキストは2,300円、学科問題集は1,300円、実技問題集は1,800円で購入でき、より試験本番に近い試験問題の演習ができます。
受験準備講座
「答えを暗記するだけでなく、現場で生きる力を身に付けたい」「疑問点を講師に直接質問したい」といった方に向いているのは、日本プラントメンテナンス協会の受験準備講座です。
受講スタイルは希望の学習方法に合わせて下記3つから自由に選択できます。
- 集合セミナー
- ライブ配信セミナー
- オンデマンドセミナー
認定教育の場合
認定教育では公式の通信講座を受講してレポートを5回提出し、その後認定試験に合格すると資格を取得できます。通信講座は月に1回、計5回分を受講するだけ。自主保全士に必要な知識を効率的に身に付けられます。
まとめ
この記事では、自主保全士の資格の概要と取得メリットに解説しました。
設備の複雑化が進む製造業界において、設備保全に関する知識を身に付けた自主保全士は非常に重要な資格と言えます。
保全業務のレベルを上げたい企業や、設備保全のレベルアップを目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
「資格」に関する情報を徹底管理!
面倒な資格管理を効率化するなら「Skillnote」!
●資格情報と免状コピーを⼀元管理
●届出や許認可申請の書類をかんたんに作成
●取得した資格をマイページから申請できる
よくある質問
- 自主保全士の難易度は?
-
検定試験によって取得を目指す場合には、試験時間の120分間で学科試験と実技試験に回答して合格基準に達していれば合格判定を受けます。合格率は1級が40%前後、2級が50%前後です。
- 自主保全士に求められる4つの能力は?
-
自主保全士には「異常発見能力」「処置回復能力」「条件設定能力」「維持管理能力」の4つの能力が必要とされています。
- 自主保全士の難易度は?
-
1級、2級ともに実技試験・学科試験のそれぞれで75点以上(それぞれ100点満点中)得点することが合格基準です。