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建設業法とは? 建設業の許可制や請負契約、主任技術者の設置など押さえるべきルールと違反事例、2023年の改正ポイントを分かりやすく解説

建設業法とは?

建設業者は「建設業法」という法律に従って業務を行わなければなりません。建設業法は建設業の健全な発展や、請負契約の適正化などを目的とした法律です。違反した場合には行政処分など厳しい処分が下されます。

本記事では、そもそも建設業法とは何か、建設業の許可制や請負契約、主任技術者の設置などの建設業法の押さえるべきルール、違反した場合の処分や違反事例、2023年の改正時のポイントを分かりやすく解説します。

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建設業法とは

そもそも建設業とは

建設業とは、住宅や事務所ビル、道路や橋梁、トンネルといった建設物や土木構造物などを新築・増築・修繕する工事を請け負う事業のことを指します。

建設業には、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工工事、石工事、電気工事、管工事など、さまざまな種類の工事があり、それぞれ専門の建設業者が存在します。また、発注者から直接工事を受注する元請業者と、元請から工事の一部を請け負う下請業者に分かれています。

第一章 総則 

第二条(定義)

この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。

 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。

引用:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

建設業法の目的

建設業法は、建設工事の適正な施工と建設業者の健全な発達を目的とした法律です。具体的には以下の3点を目指しています。

1.建設工事の発注と施工における公正な取引環境の確保

2.建設工事の適正な施工の確保

3.建設業者の構造改善と技術向上の促進

第一章 総則

第一条(目的) 

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

建設業法の背景

建設業法は第二次世界大戦終結から4年が経過した1949年(昭和29年)に制定されました。

当時は戦後の経済復興に向けて建設需要が高まり、建設業界が非常に混乱していました。

建設業者の乱立や技術者不足、資金難から工事の手抜きや事故が多発、さらに元請業者と下請業者の間のいびつな関係も問題視されていました。下請業者が過度の低価格での受注を強いられたり、代金の支払いが著しく遅れたりと、下請業者が搾取される慣行が横行していたのです。

こうした状況から、建設業の健全な発展と建設工事の適正施工を図るため、建設業法が制定されました。以降、建設業の許可制度や工事請負契約の規制など、さまざまな規制が設けられています。

建設業法の押さえるべきルール

建設業法は、建設工事の適正な施工と建設業者の健全な発展を目的に制定された法律です。この目的を達成するため、建設業者が遵守しなければならないさまざまなルールが設けられています。

建設業の許可制

建設業を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事の許可が義務付けられています。これは、一定の技術力と経営基盤を満たした建設業者のみに営業を認めるためのルールです。

建設業の許可に関する規則は「建設業法第2章 建設業の許可(第3条〜17条)」で規定されています。

第二章 建設業の許可

第一節 通則

第三条(建設業の許可)

建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

引用:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

請負契約に関する規制

「建設業法第3章 建設工事の請負契約(第18条~24条)」では、発注者と受注者が対等な立場で公正な請負契約を結べるよう、契約に関するさまざまなルールを設けています。

具体的には、発注者が一方的に請負契約を変更することや、発注者が受注者に過大な違約金や損害賠償金を課すことなどを禁じています。

こうした規制により、発注者と受注者の公正な取引関係を確立し、安心して建設工事に取り組める環境を整備しています。

第三章 建設工事の請負契約

第一節 通則

第十八条(建設工事の請負契約の原則)

建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。

引用:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

主任技術者・管理技術者の設置

「建設業法第4章 施工技術の確保(第26条〜27条)」では、技術的に適切な建設工事ができるよう主任技術者や監理技術者の設置、講習、検定試験などのルールが定められています。

第四章 施工技術の確保

第二十六条 (主任技術者及び監理技術者の設置等)

建設業者は、その請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあっては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

引用:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

主任技術者・監理技術者とは?

主任技術者や監理技術者は工事現場の技術的管理を司ります。どちらも施工計画の作成や、工事現場の工程、品質、安全の管理を行います。

主任技術者や管理技術者になるためにはどちらも資格要件を満たさなければならず、業種によって国家資格や一定以上の実務経験が必要です。監理技術者の方が主任技術者より上位の資格であり、そのポジションを得るために必要な要件や難易度も監理技術者の方が高くなります。

関連記事:【必要資格一覧付き】建設業法における主任技術者・管理技術者とは? それぞれの仕事内容、内容の違い、専任と非専任の違い、必要要件、資格を得るまでの流れを徹底解説

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主任技術者・管理技術者を設置する場合 

主任技術者や管理技術者を設置する場合の基準は、工事の種類と規模によって異なります。

基本的には、主任技術者はどの工事現場でも設置が必要です。一方監理技術者は、工事金額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の大型工事の場合設置が必要です。

違反した場合の罰則

建設業法に違反した場合には、懲役3年以下または300万円以下の罰金(建設業法第46条)、法人に対しては1億円以下の罰金(建設業法第53条)という重い刑事罰が科せられる場合があります。

これとは別に「指示処分」「営業停止処分」「許可の取消処分」といった段階的な行政処分がなされます。軽い違反でも従わなければ次第に重い処分となりますので、建設業者は日頃から法令を順守し、適正な業務運営に努める必要があります。

一方で、処分に不服がある場合は、審査請求や行政不服審査請求といった不服申し立ての途もあります。建設業法の罰則は厳格ですが、建設業者の権利は一定程度保護されています。

指示処分

指示処分は、建設業者が軽微な義務違反をした場合に国土交通大臣や都道府県知事から文書で業務運営の適正化を指示される処分です。指示に従わなければ、より重い処分が科されます。

指示処分の違反事例

  • 主任技術者の設置漏れ
  • 下請代金の支払い遅延
  • 営業停止処分が科せられている業者と下請契約を締結した

このような軽微な義務違反が指示処分の対象となります。建設業者は速やかに是正し、再発防止策を講じる必要があります。

営業停止処分

指示処分に従わなければ、監督行政庁から1年以内の営業停止処分を命じられる場合もあります。営業停止処分になった場合には業者名と所在地が官報によって公開され、国土交通省のホームページにも公表されます。

営業停止処の違反事例

  • 談合や贈賄があった
  • 不正な手段で建設業の許可を取得した
  • 建設業法を重大に違反している

工事の安全性を脅かしたり、公正な競争を阻害したりする重大な違反が対象となります。

許可の取消処分

許可の取消処分は、建設業者に著しく重大な違反があり、指導によっても改善が期待できない場合に、国土交通大臣や都道府県知事が許可を取り消す処分です。

許可の取消処分の違反事例

  • 長期にわたり建設業法を重大に違反している
  • 役員などの懲役刑が確定した
  • 暴力団との関わりがあった
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2023年建設業法改正のポイント

2023年1月に建設業法が一部改正され、特定建設業許可や施工管理台帳、技術者の専任配置が必要とされる金額が引き上げられました。少子高齢化による人手不足や物価高により建設業界全体が厳しい状況です。このためルールの緩和が行われる形となりました。

特定建設業許可が必要な下請け金額の変更

特定建設業とは、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に、都道府県知事の許可が必要とされている建設業種のことです。

従来は工事の請負代金が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)で特定建設業許可が必要でしたが、4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)に改められました。

施工体制台帳の作成が必要な下請け金額の変更

施工管理台帳とは下請業者の施工体制が適切に確保されているかを可視化するため、配置する主任技術者や現場代理人、下請業者情報などが記載されています。

従来は元請け業者が下請け業者に出す工事金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となる場合には施工体制台帳が必要となっていました。こちらが法改正によって、4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)という基準に改まりました。

主任技術者または監理技術者の専任配置が必要な金額の変更

工事現場の技術管理を行う主任技術者または監理技術者は、一定金額以上で工事現場を複数受け持たないように専任が必要とされています。この専任配置が必要となる金額が変更されました。

従来は請負金額が3,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円以上)の場合に必要となっていた専任配置が、今回の法改正により4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)に見直しが行われました。

他にもこの法改正によって「特定専門工事」(型枠工事または鉄筋工事)については、主任技術者の配置を必要としない場合の下請金額が、3,500万円未満から4,000万円未満へと変更されました。

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