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2024.6.18
従業員が働きやすい環境を構築して製品やサービスの品質を向上するためには、改善活動を継続していく必要があります。現在、多くの企業はQCサークル活動(小集団改善活動)を取り入れており、近年は海外からも注目を集めています。
この記事では、日本特有のQCサークル活動について、概要や進め方、メリット、進めるポイントを解説します。
QCサークル活動(小集団改善活動)は、品質(Quality Control)の管理や改善をテーマに、現場従業員をいくつかの小集団に分けて自主的に意見交換・実行する活動です。上司からの指示によって動くのではなく、自分たちで役割を決めて活動を進めていきます。
主にQC7つ道具や新QC7つ道具を活用するところに特徴があり、製造業を中心に多くの企業で導入されています。
日本を発祥とするQCサークル活動ですが、日本製品の品質の高さに海外企業が注目したことで、世界中で多くの企業が導入しています。
さらに近年はで、製造業に限らず、サービスの提供品質など業界ごとにテーマを設定し、さまざまな業界で取り組みが行われています。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
日科技連(日本科学技術連盟)では、QCサークル活動の普及と組織づくりのために、QCサークル本部を設けています。QCサークル本部では、QCサークル活動の基本理念を以下のように表現しています。
引用:日科技連HP 「QCサークル活動(小集団改善活動)」
- 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。
- 人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくる。
- 企業の体質改善・発展に寄与する。
企業で取り組むテーマには「業務改善」に関するものが多いため、上に挙げた理念のうちの「企業の体質改善・発展に寄与する」が注目されがちです。
しかし、実際には、QCサークル活動は、企業を構成する個人の能力発揮や明るい職場作りといった点も重視しています。この点には十分に理解して取り組みましょう。
QC活動にはQC7つ道具が用いられます。QC7つ道具は、以下の7つの道具から構成されます。それぞれの概要や用途について、簡単に紹介します。
事象を項目別にまとめ、出現頻度・発生確率の大きい順に並べた棒グラフと累積和を示した折れ線グラフを組み合わせた図。改善を行う際に、優先すべき項目を選定する際などに活用する。
事象の特性と要因の関係を結んで表現した図。魚の骨のように表現されることから、フィッシュボーン図ともよばれる。発生要因と結果の因果関係や管理すべき項目を明確にする際に活用する。
棒グラフや円グラフなど、データを図形などで可視化することで、データの特徴を理解しやすくする。項目ごとの大小関係や各項目の割合の大小を可視化する際に活用する。
度数分布表をグラフ化したもの。測定データのばらつきを明確にしたい場合やKPIの改善ポイントを明確にしたい場合に用いる。
2つの特性を縦軸と横軸に取り、特性間に関係性があるかどうかを確認するために可視化したもの。項目ごとに相関関係の有無を確認する場合や異常値の有無を確認する場合に用いる。
連続した測定値を時間順にプロットした折れ線グラフ。中心線と管理限界線を加え、測定値と比較を行う。生産品の状態管理や工程に異常がないかを確認したい場合に活用できる。
データ収集時や作業時に、実行すべきことの確認に使用する表。作業を抜けもれなく実施できているか確認する際に用いる。
QC活動には新QC7つ道具が用いられます。新QC7つ道具は、以下の7つの道具から構成されます。それぞれの概要や用途について、簡単に紹介します。
複雑な問題に関する言語データを、親和性からグループにし、問題を明確化しやすくするもの。自社事業の分析や工程不良の原因調査に活用する。
解決したい課題の因果関係・相互関係を図示したもの。複雑な事象の根本的な原因を明らかにしたい場合に活用する。
目的と、その目的を達成する手段を樹形図のような形式で展開するもの。課題を解決するための方策を検討する際や因果関係を明確に解説したい場合に活用する。
2つの要素を行と列に配置し、それぞれの関連性を表現したもの。マトリックス・ダイアグラムともよぶ。複数の案の評価付けやスキルマップを作成する際に活用する。
日程計画を表現するために用いる図で、矢線図などともよばれる。サプライチェーンのリードタイム把握や工程の短縮を検討する際に活用される。
過程決定計画図ともよばれ、目標を達成するまでの流れをリスクを考慮しつつ可視化した図。不測の事態の整理や目標に至るまでの流れを関係者で共有したい場合に用いる。
行列に配置した数値データを解析する手法。多変量解析に分類され、新QC7つ道具の中では唯一数値データを扱う。市場アンケートの結果分析や競合との商品比較を行う際に活用する。
QCサークル活動は、以下のような流れで進めていくことが望ましいです。
はじめに、小集団で活動する際のメンバーを決定します。活動を推進するリーダー候補を念頭に置き、想定されるテーマの規模に対して人数が過不足ないように調整します。
人数が多すぎると役割や発言のないメンバーが出てきてしまうため、多くても10人程度で調整しましょう。うまく調整できるようであれば「5人から7人」が望ましいです。
QCサークル活動で扱うテーマは、品質の観点から整理しましょう。そのうえで、サークルメンバーの業務に関係があり、かつ、現状の問題点を改善できるようなものを選ぶことが重要です。背景を理解しやすく、活動を成果につなげやすくなります。
メンバーで話し合いながらいくつか候補となるテーマ案を出し、それぞれのテーマ案に対して現状と目標の差を明確にします。現状と目標の差が大きいものをテーマに設定しましょう。
テーマを決めたら、改めてテーマに関連する現状把握を詳細に行い、QCサークル活動での目標を設定します。
現状把握をする際には、階層別にデータを収集して分析するといいでしょう。現状分析が不十分になってしまうと、原因調査や対策調査の方向がずれてしまいます。現状把握は、焦らず慎重に行う必要があります。
また、QCサークル活動で実現したい目標の設定は、「いつまでに」「何を」「どのような状態にするのか」といった観点から、目標値を具体的に設定しましょう。目標数値と結果とを相互比較することで、結果に対する評価やフィードバックの質を高められるでしょう。
次に、解決したい課題の原因究明を行います。ここ言う原因とは「真の原因」という意味から「真因」と表現されることもあります。真因を明確にすることが重要です。
「真因」は、ぱっと考えるだけでは明確にできません。そこで、QC7つ道具などのツールを有効活用するといいでしょう。
原因(真因)が突き止められなければ、対策を施してもが成果につながらない恐れがあります。原因(真因)についてきちんと説明ができるレベルまで調査・分析を行うことが重要です。
真因の特定ができたら、真因に対して課題を解消できるような対策案を検討します。
対策は、1つでなくても問題ありません。抽出した真因を解消できるように、必要に応じて複数の案を組み合わせながら、見込まれる効果の大きさや必要な費用、工数などを比較します。効果・実現性などを数値化することで、対策案の比較・評価を行うことが重要です。
検討が終わったら実行に移します。計画通りに進まないこともありますが、状況に合わせて調整しながら進める必要があります。
あらかじめ計画した対策を完了したら、効果が想定通り出ているかを定量的に測定します。もし効果が十分でなければ、目標を達成するために追加の対策を行うかどうかを検討します。
QCサークル活動は、課題を解決するまで続けることが望ましいでしょう。とはいえ、何らかの事情で課題を解決しきれずに活動を終えなくてはいけない場合もあります。その場合には、他の人やサークルに引継ぐために資料を用意しましょう。
QCサークル活動には、次のようなメリットがあります。
QCサークル活動では、職場メンバーがお互いに意見交換をしながら協力して進めていきます。同じ職場でも普段は意見交換をしない人もいるため、どのような考えで仕事に取り組んでいるかなどを知ることができます。
一緒に仕事をするメンバーとのコミュニケーションが活性化するため、業務に関する情報共有や相談もしやすくなり、日常業務も取り組みやすくなるでしょう。
テーマの選定に向けて、職場の課題を洗い出して目標値との比較を行います。このことにより、課題に対する現状を明らかにできます。
普段働いている職場でも自分が直接担当として関わっている業務以外には、どのような課題が生じているのか把握するのは簡単ではありません。
課題を職場全体で共有することで、日常業務の中で改善を意識しながら取り組めるようになります。
職場には大小さまざまな問題があり、それぞれの課題を普段の業務に取り組みながら解決していかなくてはなりません。しかし、課題解決は誰もが簡単にできるものではありません。
QCサークル活動は、ある程度の課題解決能力を持った人材と一緒に活動することで、課題解決のための必要なスキルを身に着けるいい機会となります。
QCサークル活動の直接的な効果は、課題の解消です。メンバーで協力しながら課題を解消することで、品質の向上に加えて、メンバー各自のモチベーション向上にもつながります。
QCサークル活動について「うまくいかない」「時代遅れだ」という声があります。上述のようなメリットがあるにもかかわらず、このような声が出るのはなぜでしょうか。
QCサークル活動では、関係者で共有するために発表用の資料を作成します。その際に、本来実施すべき課題解決の活動よりも、わかりやすい・見やすい資料の作成に集中してしまうことがあります。
本来の目的である課題の解決をないがしろにしないよう、作業が目的化しないように注意する必要があります。
QCサークル活動をしていても、業務に役立つ実感が得られない場合にはうまくいきません。例えばトップダウンでテーマが決められたり、メンバーの選定が適切ではない場合などでその傾向が顕著と言えるでしょう。
メンバー選定を的確に行い、そのメンバーが自主的に出したテーマを設定することが重要です。また、活動の中で問題解決の考え方などの「学び」が得られるようにすると、参加メンバーはQCサークル活動が業務に役立つ実感を得られるでしょう。
QCサークル活動は、それぞれのメンバーが担当している業務以外に割り当てられる活動です。担当業務の負荷が高い場合には、QCサークル活動の優先順位が上げられず、必要な活動時間を確保できません。
忙しいメンバーが多かったとしても、先行投資として時間を確保して活動を行いましょう。その際には管理者・リーダークラスが率先して時間を確保するようにしましょう。
QCサークル活動を成功させるためには、以下のポイントを意識するといいでしょう。
QCサークル活動で扱うテーマを設定する際には、メンバーの業務に直結した内容を自分たちで決めることが重要です。
取組みによる効果を実感できれば、QCサークル活動へのいいイメージが形成でき、今後の積極的な参加にもつながります。継続的な活動となり職場の雰囲気向上へも寄与することで、魅力的な職場が構築できるでしょう。
QCサークル活動は、職場のメンバーとコミュニケーションを取りながら進めていきます。積極的なコミュニケーションにより、仕事をしやすい環境の整備や職場改善、業務効率化へとつながるでしょう。
QCサークル活動のリーダーは積極的にメンバーに意見を求めることが望ましいと言えます。
担当業務以外の時間で取り組むQCサークル活動は、成果が目に見えないと継続が難しくなります。そこで、QCサークル活動で取り組んだ結果を、数値化・可視化することで成果を実感できるように工夫しましょう。
また、成果を可視化することは、周囲に対してQCサークル活動の取り組み結果をアピールすることになります。参加メンバーのさらなるモチベーション向上にもつながるでしょう。
QCサークル活動では、QC7つ道具や新QC7つ道具をうまく活用することで、効率よく現状を分析し対策すべき対象を特定できます。状況に応じて適切なツールを選択できれば、大きな成果を出せるでしょう。
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