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2024.8.6
製造業では、社是や社訓に品質至上を掲げる企業が多くあります。顧客から求められる品質を確保できない企業はステークホルダーからの信頼を失い、仕事を失ってしまいかねません。品質を重視して業務に取り組むことはとても重要なことです。
製造工程における品質確保や設計と製造の紐づけによる品質確保を行うツールの一つが、QC工程表です。QC工程表を作成することで、関係者で品質に関する情報共有を行い、狙った品質の確保が期待できます。
この記事では、QC工程表の概要やQC工程表が必要とされるシーン、QC工程表に記載すべき項目、作り方などについて紹介します。
QC工程表とは、製造業において品質を確保するために必要不可欠な活動であるQC(Quality Control)活動を行う際に必要となるさまざまな情報を集約した表のことです。
QC工程表には、ある製品の製造工程全てを順番に記載し、各工程の手順や管理すべき項目、異常時の対応などを文章と記号、図などを用いてまとめます。詳細な説明が必要な場合には別の資料を作成し、QC工程表を見れば参照すべき資料が分かるようにします。
QC工程表に整理した情報は関係者で共有し、手順や注意事項などを遵守することで、目標とする品質特性が得られます。高い品質を確保するために、製造現場ではQC工程表が欠かせません。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
QC工程表は、ある製品の製造工程全体を見通して品質管理を適切に行うために作成される資料です。QC工程表を作成する具体的な目的やQC工程表が必要となるシーンを、以下で具体的に紹介します。
高い品質の製品を安定的に製造するためには、製造工程の各工程において作業標準書(作業手順書)を作成し、それを遵守する必要があります。また、作業標準書をブラッシュアップすることで、さらに品質を作り込み、タクトタイムを短縮することも可能です。
作業標準書に記載する内容は、各工程で求められる品質を確保した上で、付加価値を加えるものでなければなりません。そのため、QC工程表の記載項目がベースとなります。
まず、QC工程表を作成し、QC工程表の各工程に対してタクトタイムと品質を両立できるような作業標準書を作成する流れが一般的と言えます。
ここで、QC工程表と作業標準書の違いを確認します。作業標準書とは、製造工程の各工程における作業内容や作業手順、各作業を行う際に注意すべきポイントなどをまとめたものです。主に、工程で実際に作業を行う作業者が必要とする資料です。
一方で、QC工程表には、製造工程全体の管理方法や品質管理を行う際に影響を与える情報をまとめます。作業者が用いることもありますが、主として工程の管理者や作業者の監督者が使用する資料です。
QC工程表の各工程に、該当する工程の作業標準書をそれぞれ紐づけておくことで、QC工程表と作業標準書を連動させながら、体系的に管理できます。
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どのような工程でも、最初から100%不良が出ない工程を構築することは不可能です。そのため、各工程で発生してしまった不良を流出させない仕組みを構築するとともに、不良の原因を明らかにし、少しでも不良の発生確率を減らせるように対策することが重要です。
不良の原因をやみくもに探しても時間がかかりますし、勘を頼りにした活動では抜け漏れが生じるリスクがあります。QC工程表に記載した品質特性や作業手順の管理方法を参考に、調査を行うことが望ましいでしょう。
発生した不良の原因が明らかになったら、工程の品質を向上させるために、QC管理表に紐づけた作業標準書や管理方法を修正します。
製造工程の品質管理状況を社内の役員や社外の顧客などに説明する際にも、QC工程表は活用できます。
QC工程表を用いれば、工程ごとにどのような管理項目を設定しているか、品質を守るためにどのような取り組みをしているのかを、説明することができます。
また、作業中に異常が発生した際に、どのように対処するかを明らかにすることで、外部にも安心してもらえます。
QC工程表で現状を明らかにし、外部の関係者に工程の状況を理解してもらった状態で得られるフィードバックは正確なものである可能性が高く、さらなる品質向上にもつながります。
製造工程では、製品の量産が始まった後でも、コスト低減や設計不具合などによって設計変更が生じ、その結果、製造工程自体の変更が必要となることも少なくはありません。
設計変更によって、工程のどの部分にどのような影響が生じるのか、新たに注意すべきポイントがないかを把握しましょう。
QC工程表を用いて設計変更にともなう変化点を明らかにすることで、適切な品質管理を行うことが可能です。
QC工程表は、各工程の作業担当者や、製造工程以外の工場に配属される新入社員の教育になども活用できます。
QC工程表には、ある製品を製造する際に必要となる工程全体に関する情報が記載されています。そのため、紐づけられた資料も含めて確認して、工程全体を俯瞰して把握できます。さらに、各工程の手順や注意すべきポイントなどもまとめられています。
QC工程表の中身があらかじめ頭に入っていれば、前後工程の状況に配慮しながらスムーズな成長が期待できます。
記載すべき内容が多いQC工程表の作成は、簡単ではありません。一例として、以下のような流れで作成するとよいでしょう。
QC工程表を作成する際にまず実施すべきなのは、QC工程表のフォーマットを決定することです。すでに社内で標準的に用いるものがあればそれを使えばよいですが、標準資料が決まっていない場合には、新たに作成する必要があります。
社内でQC工程表をどのように用いるのか、その目的によってQC工程表に記載すべき項目は異なります。多くの情報が記載されていればさまざまな用途に活用できますが、当然のことながらその分、記載すべき情報の収集や記載・確認に時間がかかります。
所属企業の工程状況やQC工程表の活用用途に応じて、記載すべき項目を調整することが重要です。
製造工程全体の流れや、各工程の具体的な作業手順といった情報を、QC工程表に紐づけておく必要があります。
これらの情報を正しく記載するためには、製品に関する情報や製造工程に関する情報をできるだけ多く収集し、わかりやすく伝わるように記載することが重要です。QC工程表に記載する際に情報の取捨選択ができるように、十分な情報を集めておく必要があります。
情報収集を行う際の具体的な情報源としては、製品設計担当や製造担当とのコミュニケーション、製品や製造工程の企画書、仕様書、部品表などが挙げられます。集めた情報は、QC工程表のフォーマットに合わせて整理しておくとよいでしょう。
関連記事:QCストーリーとは? 概要、メリット、3つの型「問題解決型」「施策実行型」「課題達成型」、(新)QC7つ道具について解説
製品や製造工程に関する一般的な情報を集めたら、次に、製品のなかでどのような特性が品質に影響を与えるのかを洗い出す必要があります。
品質特性の具体的な管理項目としては、製品において品質に影響がある部位の寸法や材料の強度、硬度、色、不純物の混入具合など、多岐にわたる項目が挙げられます。
それぞれの項目に対して、どの程度の変化がどのような影響を与えるのか、許容できる水準はどれくらいなのかを、客観的に判断できるように数値で表現することが重要です。
ここで管理すべき項目の抽出漏れが起きてしまうと、抽出漏れした項目の変化によって品質の変化が発生してしまうため、慎重に取り組む必要があります。
QC工程表に定めた管理項目や管理基準を満たせないような異常が発生した場合の対応方針や、異常状態であると判断する基準を明確にする必要があります。
製造工程に異常が発生している場合には、その工程で製造された製品の品質にも異常が生じている可能性が高く、異常が生じた製品を流出させてしまうと、企業の信頼や顧客を失うことにもつながりかねません。
製品に影響が出ない場合でも、工程に異常が生じている状態を放置することは大きなリスクを抱えることになります。速やかに異常処置と再発防止を行うことが重要です。
QC工程表に記載すべき情報の収集と整理が終わったら、QC工程表に記載していきます。
せっかく集めた情報でも、QC工程表に記載できず漏れてしまっては、品質の確保につながりません。また、集めた情報を全て記載するとQC工程表が複雑になってしまうため、記載すべき項目は関係者で協議しながら記載することが望ましいでしょう。
QC工程表は一度作成したら終わりではなく、適宜ブラッシュアップしていくことが重要です。
作成したQC工程表は、ISO、社内・部内基準などに従って、正式文書として登録しバージョン管理することが望ましいです。
QC工程表を作成する際には、以下の項目を記載することが望ましいです。ここで紹介する項目は一例であり、導入する企業の管理状態やQC工程表の用途に合わせて、記載する項目を調整する必要があります。
QC工程表は、製造工程ごとに作成する必要があります。QC工程表の作成日や更新日、管理番号などを記載することが大切です。
また、QC工程表に関わる関係者として、QC工程表の作成者、確認者、承認者などを記載しましょう。責任の所在を明らかにするとともに、確認事項があった際に相談をしやすくできます。
QC工程表には、複数の工程に関する情報を記載する必要があるため、工程を判別する情報として工程の番号や工程を表す記号、工程の名称、工程を管理する部門などを記載する必要があります。とくに、工程を表す企業は工程図記号とも呼ばれ、JIS Z 8296で以下のように定義されています。
QC工程表に記載する項目のなかでも、とくに重要なのが各工程における管理特性と品質特性です。これらをまとめて、QC工程表の管理点と呼ぶこともあります。
管理特性と品質特性はそれぞれ関係し合っています。管理特性は、品質特性に影響する要因であり、品質特性は管理特性によって影響を受けた結果です。
QC工程表には、これらの特性を簡単に記録し、具体的な基準などの情報は作業標準書に記載されることが多いです。
管理特性の代表例としては、工具の回転速度や移動速度などの調整できるものが挙げられます。また、品質特性は管理特性を調整した結果である形状や寸法、色などが代表的です。
QC特性には、各工程の管理特性や品質特性をどのように管理するのか、その方法についても記載しておく必要があります。
管理方法の具体的な項目としては、製品の出来栄えを測定する設備や測定器の名称、それらを使用した作業方法などが挙げられます。また、品質管理を適切に行うためには、測定をどのような頻度で行い、誰が担当者であるのかなどの記載が必要です。
QC工程表は、さまざまな項目をまとめた一覧表として扱います。詳細な情報を記載した結果、情報量が多くなりすぎ、確認しにくくなることは望ましくありません。
そこで、詳細な情報の記載が必要な項目はQC工程表に直接記載せずに、他の資料に記載して、QC工程表には該当の資料と紐づけるための情報を記載しましょう。
たとえば、各工程の具体的な作業手順や管理特性、品質特性に関する情報は作業標準書に記載し、QC工程表には該当の作業標準書にアクセスするための情報を記載します。また、生産記録は記録表に記載し、異常時の処置などは工程別に別資料にまとめておくとよいでしょう。
これら以外にも、工程ごとに紐づけしておくべき情報があれば、関連文書として紐づけておく必要があります。
QC工程表は、作成したら終わりではなく、改訂しながら使用するものです。多くの関係者で共通の資料を使用するため、どの状態のものを参照したのかを明らかにできるように、改訂履歴を残す必要があります。
改訂履歴が適切に残されていない場合、担当者によって異なる状態のQC工程表を参照してしまい、適切にコミュニケーションが取れなかったり、品質不具合につながったりするリスクが生じます。
QC工程表を作成し、運用する際には、以下の点に注意しましょう。
まずは、情報が整理され、簡潔に参照できる表であることが重要です。QC工程表に情報を細かく記載することも可能ですが、そうすると参照する際に時間がかかり、管理が煩雑になってしまいます。その結果、使用されなくなり、形骸化してしまうリスクがあります。
もうひとつは、最初から完成形を目指さないことです。まずは必要最低限の情報を記載し、適宜修正を行いながら使用するように心がけましょう。
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