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品質保証とは? 概要、重要視される理由、品質管理との違い、業務内容を解説

品質保証とは?

品質保証(Quality Assurance:QA)は、製品やサービスが一定の品質基準を満たしていることを保証するための体系的な活動です。品質保証によって顧客の期待に応えることは、企業の成功と持続的な成長の鍵となります。

本記事では、品質保証の概要や、品質管理との違い、業務内容などを解説します。

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品質保証とは?

そもそも品質とは?

品質とは、製品やサービスが顧客の要求や期待を満たす度合いのことです。これは、単に製品の性能や耐久性だけではなく、安全性や使いやすさ、アフターサービスなど、多岐にわたる要素を含みます。

高品質な製品やサービスは、顧客満足度の向上、ブランド価値の強化、競争力の向上につながります。一方で、低品質は、顧客離れや信頼損失、さらには法的問題を引き起こすリスクも生じさせます。

そのため、品質の維持・向上は企業活動における重要な要素であり、継続的な改善活動が求められます。

品質保証(QA)とは?

品質保証(Quality Assurance: QA)は、製品やサービスが一定の品質基準を満たしていることを保証するための体系的な活動です。これは、製品の設計段階から製造、出荷、アフターサービスに至るまでの全プロセスを対象とします。

品質保証の目的は、顧客の期待に応える製品やサービスを一貫して提供することです。そのために、品質基準の設定、品質管理プロセスの確立、従業員教育、継続的な改善活動などを行います。

品質保証は、予防的アプローチを重視し、問題が発生する前に潜在的なリスクを特定して対策を講じます。これにより、不良品の発生を最小限に抑え、顧客満足度を高められます。

なお、品質保証は単なる検査活動ではなく、組織全体で取り組む品質文化の醸成を目指すものです。

近年、品質保証が重視されている理由とは?

近年、品質保証の役割が注目されています。その背景には、グローバル化の進展があります。国際的な取引が増加し、世界中の顧客や業界団体などの要求に応える必要性が高まっているのです。

グローバル化にともない、法規制の強化も進んでいます。多くの国で品質や安全性に関する規制が厳格化されており、企業の存続に関わる重要課題となっています。

技術の高度化も品質保証が重視される要因のひとつです。製品やサービスの複雑性が増し、品質管理の難易度が上がっているのです。

同時に、消費者の品質や安全性に対する意識も変化しています。大企業での品質不具合や隠ぺいが相次いで報道されています。企業の社会的責任に注目が集まる今日の社会において、高品質な製品の提供は企業の評価に直結すると言えます。

さらに、SNSの普及により、製品の不具合や企業の不祥事が瞬時に拡散されるリスクも高まっています。一度品質問題が発生すると、ブランドイメージは深刻なダメージを受けます。

これらの要因が複合的に作用することで、品質保証は、企業の存続と成長に直結する重要な要素として認識されているのです。

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品質保証(QA)と品質管理(QC)の違いとは

品質保証(QA)と品質管理(QC)では、品質保証(QA)の方が、より広範な意味で品質を監視する業務を担っています。一般的な業務の違いは、以下です。

品質保証(QA)の業務

品質保証(QA)の業務は、製品やサービスの品質を全社的・体系的に保証することです。

具体的には、品質方針の策定、品質マネジメントシステム(QMS)の構築・運用、品質基準の設定、品質監査の実施、改善活動の推進、顧客からの問い合わせに対する対応などが含まれます。

QAは予防的アプローチを重視し、問題の未然防止に注力します。

品質管理(QC)の業務

品質管理(QC)の業務は、主に製造工程における品質の維持・向上に焦点を当てます。

具体的には、製造ラインでの品質チェック、統計的品質管理、不良品の分析と対策、作業標準の作成と改訂などが含まれます。

QCは日々の生産活動における品質の安定化を目指し、問題が発生した際の迅速な対応と再発防止に取り組みます。また、現場レベルでの改善活動も重要な業務です。

関連記事:品質管理とは? 重要性、5つの基本的な考え方、業務内容、基本的な5つの手法、TQC・TQM・SQCについて解説

関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説

品質保証の業務内容

仕様・規格の最終的な決定

品質保証では、製品やサービスの仕様・規格を適切に決定し、顧客と合意を取ります。その際、顧客ニーズ、法規制、技術的制約、コスト、競合他社の動向など、多様な要素を慎重に考慮します。

まず、市場調査やユーザーフィードバックをとおして顧客の要求事項を明確化し、それに基づいて製品の基本的な仕様を検討します。同時に、関連する法律や業界基準を調査して、遵守すべき要件を特定します。

技術面では、現在の技術レベルで実現可能な仕様の検討を行います。その後、製造部門と緊密に連携して実現可能性を確認します。

コスト面では、製造コストと販売価格のバランスを考慮して、経営戦略に沿った価格設定が可能な仕様を目指します。また、競合他社の製品分析を行い、差別化ポイントを明確にします。

これらの要素を総合的に勘案して、開発部門、製造部門、マーケティング部門、品質保証部門など、社内のさまざまな部門と協議しながら最適な仕様・規格を決定します。決定された仕様は文書化され、関係者全員に周知します。適切な仕様・規格の設定は、品質保証活動の重要な基盤です。

原材料・製造過程の品質維持

製品の品質は、使用する原材料の品質と製造過程の管理に大きく左右されます。品質保証部門は、原材料から製造過程までの品質維持を図るために、多岐にわたる活動を展開します。

まず、信頼できる原材料供給元の選定と管理を行います。定期的な評価と監査を実施して、供給元の品質管理体制を確認します。入荷した原材料に対しては受入検査を行い、不適合品の混入を防ぎます。

製造過程では、各段階で品質チェックを実施して、問題の早期発見と対応を行います。統計的工程管理(SPC)を導入して、データ分析に基づく品質管理を実施、製造プロセスの安定性を確保します。

製造設備、検査設備の定期点検と校正や、温度、湿度、清浄度などの製造環境の管理、従業員に対する品質意識の向上と技能訓練などの資源面の管理も重要です。

また、原材料から製造、最終製品を顧客が受け取るまでの履歴追跡を可能とするトレーサビリティの確保も、品質維持には欠かせません。

これらの活動を通じて、製造プロセス全体を一気通貫した品質維持が実現でき、高品質な製品の安定供給が可能になります。

関連記事:製造業におけるトレーサビリティとは?目的や概要、事例を解説

製品の品質検査

品質検査は、製品が設定された品質基準を満たしているかを確認することです。

検査の種類としては主に、外観検査、寸法検査、機能検査、耐久性テスト、抜き取り検査があります。

外観検査では、製品の外観に傷や変形がないかを自動外観検査機、あるいは、目視で丁寧に確認します。

寸法検査では、製品の各部位の寸法が規格内に収まっているかを精密に測定します。

機能検査では、製品が意図した通りに動作するかを確認して、性能面での品質を保証します。

耐久性テストでは、製品が長期使用に耐えうる品質であるかを評価するために、加速試験などを行います。高温、低温、湿度など、さまざまな環境下で製品性能を確認して、顧客と取り決めた使用条件下での品質を保証します。

以上のように検査方法は、さまざまです。全数検査をする製品もあれば、生産ロットから一定数の製品を抽出して抜き取り検査を行う製品もあります。なお、抜き取り検査には、AQL(合格品質水準;Acceptance Quality Limit 不良数の割合を数学的確率計算で判定する方法)などが用いられます。

これらの多面的な検査をとおして、不良品の市場流出を防ぎ、顧客に安全で高品質な製品を提供します。

クレーム等に対する顧客対応

品質保証の重要な役割の一つが、顧客からのクレームに適切に対応して、問題の根本原因を究明することです。この過程は、顧客満足度の回復と製品品質の継続的な改善につながる重要な機会となります。

クレーム対応では、まず、顧客からの連絡に対して迅速に対応します。顧客の安全を最優先にして、必要に応じて製品の回収や使用中止の案内を行います。

顧客からの連絡に対して、顧客が持つ在庫から自社における生産中の製品まで、どの範囲に問題が発生しているかを確かめるリスクロットの見極めも重要になります。生産中の製品については同様の問題が起きないように、検査の強化など暫定の対策を講じます。

次に、クレームの詳細情報を収集し、製品の使用状況や不具合の症状を正確に把握します。

さらに、不具合品を可能な限り回収して、詳細な調査を行います。収集した情報と現品調査の結果を基に、不具合の根本原因を特定します。この過程では、設計、製造、品質管理など、関連する全ての部門と緊密に連携します。この際、発生した原因と顧客へ流出してしまった原因の双方を特定しましょう。

原因が特定されたら、再発防止策を立案します。これには製品設計の変更、製造プロセスの改善、検査方法の見直しなどが含まれる場合があります。再発防止のために、手順書の改訂などを行って文書で残すことを徹底しましょう。

また、同様の問題が他の製品で発生しないよう、関連部門に情報を展開します。類似作業や類似製品がある場合は、再発防止策の水平展開を実施します。

一方、顧客には調査結果と対策を報告して、適切な対応(修理、交換、返金など)を行います。

最後に、実施した対策の有効性を確認して、必要に応じて追加の改善を行います。これには品質保証部門のパトロールが有効です。

これら一連のプロセスをとおして、顧客との信頼関係を回復するとともに、製品品質の継続的な向上を図ります。

品質マネジメントシステムの構築、維持

品質マネジメントシステム(QMS)は、組織全体で一貫した品質保証を実現するための基盤です。

まず、経営層と連携して組織の品質方針を策定します。この方針に基づき、ISO 9001などの国際規格を参考にして、組織の特性に合わせたQMSを設計します。設計されたシステムは、品質マニュアルや手順書として文書化され、全従業員に周知します。

関連記事:QMS(品質マネジメントシステム)とは? 目的、規格、ISO 9001要求事項との違いやQMS構築時のポイントを解説

QMSの効果的な運用には、定期的な内部監査や従業員教育が欠かせません。また、発見された不適合に対しては迅速な是正措置を講じて、継続的な改善を図ります。

また、経営層によるマネジメントレビューをとおして、QMSが組織の戦略と整合していることを確認して、必要に応じて見直しを行います。ISO認証を取得している場合は、外部審査への対応も重要です。

これらの活動をとおして、組織全体で品質向上に取り組む文化を醸成し、持続的な品質保証を実現します。QMSの適切な構築と維持は、顧客満足度の向上と企業競争力の強化につながります。

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ISO力量管理

品質保証部門に向いている人

品質保証部門では、製品やサービスの品質を維持・向上させるというミッションがある性質上、広範な資質や能力を持つ人材が求められます。

まず、細部への鋭い注意力が不可欠です。小さな異常を見逃さない観察力が、品質管理の基本となるからです。

同時に、論理的思考力も重要です。問題が発生した際、その原因を系統的に分析して、効果的な解決策を導き出す能力が必要とされます。また、さまざまな部門や顧客とコミュニケーションを取る機会が多いため、コミュニケーション能力も求められます。

さらに、品質に対する強い倫理観と誠実さも欠かせません。ときとして品質と効率のバランスをどう取るかについて難しい判断を迫られることがありますが、常に品質を最優先に考える姿勢が大変重要になります。

さらに、技術や規制の変化に対応していくために継続的に学習する姿勢を持っているかどうかも重要になります。その他では、チームワークを重視して他部門と協力して問題に取り組める協調性や、現状に満足せずに常により良い方法を追求する改善志向も、品質保証部門で成功するためには大切な要素であると言えます。

これらの特性を備え、品質に対する強い情熱を持つ人は、品質保証の分野で大いに活躍できるでしょう。

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