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2024.4.19
生産計画から出荷まで製造工程全体を管理する生産管理は、製造業においてなくてはならない業務のひとつです。生産管理にはさまざまな仕事があり、それらを効率よく行うことによって生産性が向上します。
生産管理の仕事内容を知りたい方や生産管理を効率的に行う方法を探している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
生産管理とは、原価管理や生産計画、出荷や在庫の管理といった工程全体の管理を指します。
作成した生産計画を元に材料の調達や製造の進捗、在庫、納品予定日などさまざまな業務を管理しなければなりません。
また、製造現場だけでなく、営業部や購買部といった関連部門と協力・連携する必要があります。
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生産管理の目的は、QCDを最適化することです。
QCDとは、「Quality(品質)・Cost(原価)・Delivery(納期)」を表す言葉。「品質の優れた製品を原価を抑えて短期間で製造する」ために業務や工程を最適化することで、自社の利益最大化を目指します。
また、QCDの最適化は、高品質の製品を安く欲しいとに手に入れられる状態の実現に貢献するため、顧客満足度の向上にもつながります。
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生産管理を扱う部門における仕事内容は多岐にわたります。企業の方針や人事配置などによって別の部署の業務となっている場合もありますが、ここでは大きく7つに分けて解説します。どれもQCDの最適化には欠かせない業務です。
生産計画の作成とは、顧客や市場の情報をもとに「どの製品をいつまでにどれだけ生産するのか」を計画する業務です。
受注型の産業であれば顧客からの受注情報をもとに生産計画の作成を行います。一方、見込み生産の場合は需要予測をもとに生産計画を作成します。受注情報や需要予測には高い精度が求められるため、情報を持ち帰ってくる営業部との連携が必須となります。
情報が得られたら生産計画の作成を行います。生産計画には生産に必要な資材や設備、人員、必要日数など、生産に関するさまざまな情報に考慮する必要があります。
そのためには製造部だけでなく、総務部、購買部、設備管理部などの各部門から綿密に情報を入手しなければなりません。
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調達計画の作成とは、生産計画をもとに生産に必要な部品や材料の調達時期についての計画を立てる業務です。
材料が不足すると生産がストップする恐れがあり、反対に材料を仕入れすぎると在庫過多に陥る可能性があります。そのため購買部などと連携しながら、生産計画をもとに材料を「適切な量で・コストを抑えて・必要なタイミングで」調達することが重要です。
また、在庫状況と生産計画とを定期的に照らし合わせ、次の生産工程に影響が出る場合には材料調達のスケジュールを柔軟に変更しなければなりません。
製造工程の計画とは、生産計画・調達計画をもとに各製造工程の日々の製造計画を立てることです。製造部と連携しながら必要な時間や人員、生産ラインのスピードなどを加味して計画を立てます。製造工程の計画を策定したら、製造工程への伝達を行います。
さらに製造が順調に進んでいるのか進捗管理を行うのも生産管理の重要な業務のひとつです。
製品によっては複数の工程を経て製造するものも多く、各工程は決して単独で動いているわけではありません。仮に特定の工程で遅れが生じた場合は他の工程にも影響して業務全体や顧客への納品が遅延する可能性が生じます。そのため、進捗を常に監視して遅延が生じた場合には即座に計画の変更を行う必要があります。
このような各工程の状況を加味した製造工程の計画と進捗管理は、生産管理において最も重要な業務といえるでしょう。
品質管理とは製品が設計通り製造されているか、顧客から提示された品質基準をクリアしているかを判断するための検査業務です。
検査業務自体は品質管理部などの業務であることが一般的ですが、もし不具合品を製造した場合には再生産の製造計画を立てなければなりません。そのため、品質管理部との連携が重要となります。
また、出荷後の製品のクレーム対応も品質管理業務のひとつです。生産管理としては再生産の計画や、改善試作の計画を製造工程の計画に盛り込む必要があります。
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出荷・在庫管理とは、製造した製品を顧客との納入予定日に出荷手配をしたり、製品の在庫量を適切に保ったりする業務です。出荷手配には、物流部門を介して配送業者や配送途中の倉庫業者との連携が必要となります。
また、輸出製品の場合には通関があります。企業によっては輸出入管理室といった専門部署を用意しています。顧客と取り交わした納入予定日に間に合うよう各部門と協力して業務を行います。
一方、在庫管理も重要な業務です。製品が大型の場合、在庫過多で倉庫代が収益をひっ迫する場合もあるため、生産計画のもととなっている顧客からの受注情報や需要予測には、高い精度が求められます。
収益管理とは、利益を上げるために予算や原価、売上を管理する業務のことです。経営層への売上報告は、今後の企業の方針を決定する材料になりますので非常に重要な業務となります。
収益管理は、予算管理・原価管理・売上管理の3つで成り立っています。
外注とは、自社で行っている業務の一部を外部に委託する業務を指します。生産計画がひっ迫した際など、時には作業を外部委託するのも重要です。
製造業における外注とは、材料調達から品質管理まで業務が多岐にわたります。そのため、外注業者に業務を丸投げするのではなく、業者と連携して進捗状況や業務内容の把握を行う外注管理が大切です。
生産管理と混同されやすい言葉に工程管理があります。両者の大きな違いは管理する範囲です。
工程管理とは、製造工程や外注加工における計画を立てたり、各製造工程の進捗を管理したりする業務を指します。管理範囲はおもに製造工程のみに限定され、各工程が円滑に進むように管理を行います。
一方、生産管理とは工程管理を含む全体の管理を行う業務です。原価管理をはじめ、生産計画の策定や材料の調達、工程管理や出荷・在庫管理など、さまざまな部門・業務を総合的に管理しています。
前述の仕事内容からも分かるように、生産管理の仕事は内部・外部からの大量の情報をさまざまな部署にさまざまな形で伝達していく調整役です。調整を行う際によくある課題を解説します。
生産計画作成のもととして重要な受注情報と需要予測ですが、正確な予測は非常に困難です。原因として顧客の状況や営業スキルによって情報精度がバラバラになるほか、市場の変化による影響が大きい点が挙げられます。
そのため、専門的なスキルを持っている人でも精度の高い予測は難しく、生産計画が立てにくくなります。
人手不足は日本の製造業界が抱える大きな課題のひとつです。少子高齢化に伴う労働人口の減少から、どの企業においても人材確保が難しくなっています。
また、昨今の製造業では多品種小ロット生産になっている場合が多いため必要となる材料の種類が増えて入手しにくく、さらにサプライチェーンが複雑化しているため原材料の確保が難しくなっています。
生産に必要な物資が不足していると、それらの情報が入りにくいという課題に繋がります。
生産管理では、複数の部署が連携するため情報が煩雑になり、部署同士のコミュニケーションが難しいのも課題のひとつです。
コミュニケーション不足になる原因としては、部署間での効率的なコミュニケーションツールがなかったり、情報が一元化されていない点などが挙げられます。
他部署との連携が上手くいかないと、工程や進捗状況の共有ができず、市場や環境の変化、トラブルに対する迅速な対応ができなくなる可能性があります。
昨今は市場環境の変化が激しいため、タイムリーな需要予測が難しいのも生産管理の課題です。
一方、製造工程の進捗管理も難しい面があります。例えば作業日報で製造工程の進捗状況を把握しようとしても、製造現場によっては進捗管理が手入力であったり、部門や拠点を複数管理していたりする場合は、システム情報の更新などでタイムラグが発生する場合もあります。このためリアルタイムでの情報収集が難しくなっています。
前述の通り、生産管理では、インプットしなければならない情報量が膨大にあります。そのため、情報整理が難しくばり、次の工程へ渡す情報が煩雑になりがちです。
アウトプット情報の精度が低いと後の工程や最終的な品質に影響がでるほか、適切な原価管理もしにくいため業務に支障をきたす場合があります。
生産管理は製造現場や購買、経営者など、どの部門に向けた情報なのかでアウトプットの形態が変わるケースが多いため、適切に情報を加工する手間がかかるのも課題です。
データが標準化されていないと、部署間や事業所同士での連携が難しく、業務は非効率的になってしまいます。また、データ加工が煩雑だと専門知識をもつ人でないと活用しにくいため、業務が属人化する原因になります。
製造工程の進捗や市場の動向などの情報は刻一刻と変化するため、タイムリーなアウトプットは困難です。
加えて、データが標準化されておらず、部署ごとに少しずつ異なるデータが作成されている場合、データを更新するタイミングによってそれぞれ認識している最新データが異なる可能性があります。
また、材料の管理方法がそれぞれの部署で点在していると、仕様変更などに対応しきれず、情報がタイムリーに伝わらないなどトラブルの原因にもなりえます。
生産管理にはここまで述べてきたような情報の煩雑さという課題があるため、それぞれの工程において業務が属人化しやすくなる傾向にあります。
長年にわたる業務経験や専門性を有している社員は、企業にとって非常に大切な人材です。しかし、属人化によって特定の社員にしか対応できない業務がある場合、その社員が不在のときには業務が成り立たなくなります。
このような状況は企業にとって非常に危険です。そのため、担当者が不在でも業務が滞りなく行えるように、生産管理システムの導入などによる脱属人化が求められます。
生産管理はさまざまな部署と連携するため、どこまでが業務範囲なのかが不明確になりがちです。生産管理を効率的に行うには、まず自社の生産管理の範囲を明確にしましょう。
業務範囲をしっかりと認識できれば、どの業務にどれくらいの人員をさけばいいか、またどのように他部署と連携すればいいのかが明確になります。
生産管理は扱う情報量や連携する部署が多いため、問題点が複雑になっている場合があります。生産管理の業務範囲が明確になったら、それぞれの業務における問題点を分解していきましょう。
どこにどの程度の問題があり、どの順序で解決していくのかを適切に見極めることが、効率的な生産管理につながりますし、後述する生産管理システムの導入にも役立ちます。
生産管理システムとは、受注情報や売上、材料、工程管理、在庫管理、原価管理など生産管理に関する情報を一元管理し、業務の効率化や生産性の向上を実現するシステムです。
連携する部署がそれぞれ情報を入力していき、生産管理は入力された情報をもとに生産計画の作成などの業務が行えます。
生産管理システムの導入によって属人化の防止や業務の効率化・生産性の向上、情報の見える化などがメリットとして挙げられます。
生産管理の業務はどうしても属人化されやすく、人的ミスが発生しやすかったり、担当者がいないと業務が回らなかったりする危険性があります。生産管理システムはこれらの課題を解決するツールとして活用されています。
また、生産管理システムで情報が一元化されれば、QCDの最適化が期待できます。
生産管理システムは多くの企業から販売されています。システムを導入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、管理システムを検討する際にはしっかりと情報収集をすることが重要です。
また、導入するシステムの情報だけでなく、自社の生産管理の状況や問題点、導入済みのシステムとの連携や導入後のメンテナンスなどを十分に考慮した上で導入を検討しましょう。
関連記事:MES(製造実行システム)とは? 目的と導入メリット、11の構成機能、ERPとの違い
生産管理に向いている人は「マネジメント能力」「情報分析能力」「臨機応変に対応できる能力」を備えた人です。
生産管理は、製造工程全体を一括管理する司令塔としての役割を担っています。そのため、高いマネジメント能力を持つ人が向いています。
また、需要予測や必要な原材料、人員、作業量などの複数かつ大量のデータを分析して計画に落とし込める高い情報分析能力も必要となります。
そのほか、予期せぬトラブルが生じた場合に生産計画を臨機応変に修正できる柔軟な対応力も生産管理に必要といえます。
生産管理には非常に高い能力が必要だと感じられるかもしれませんが、これらの能力は実際の現場業務の中で身につけるチャンスがあるものでもあります。
生産管理に関する資格には、主に「ビジネスキャリア検定」と「中小企業診断士」の2つがあります。
ビジネスキャリア検定とは、職務に関する知識や実務能力を評価する公的資格のことです。「生産管理BASIC級」「生産管理オペレーション」「生産管理プランニング」「生産管理」の4つが生産管理に関する試験となっています。
中小企業診断士とは、経営に関して企業に適切なアドバイスができるスキルをもつ国家資格のことです。経営コンサルタントとして生産管理業務の設計や計画を行う能力が証明できます。
この記事では生産管理について仕事内容や課題点、効率よく行う方法などを解説しました。
生産管理を効率的に行うことができれば、確実に自社利益の拡大につながるでしょう。この記事を読んで効率的な生産管理方法を検討する際の参考としてください。
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