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2024.11.11
多くの企業では、ISO対応や顧客監査の対策として力量管理を行っているケースが多いのではないでしょうか。この記事では、力量及び管理の基本と目的、メリットについて解説します。
そもそも「力量(りきりょう)」とは、個々の業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力のことを指しています。
この「力量」を力量管理表(スキルマップ)などで管理・活用することを力量管理(スキル管理)と呼びます。
品質マネジメントシステム規格であるISO9001の定義する「力量」とは、「意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力」のことです。ここで言う力量とは、単に「能力を持っている」ということだけを意味しません。それは実際の業務に置ける状況に合わせて柔軟に使いこなせる能力のことを意味しています。
具体的に、ISO9001では「力量」は次のように定義されています。
ISO9001の要求事項では、「力量」を、以下のように定義しています(「7.2「力量」」。
7.2 力量
組織は次の事項を行わなければならない。
- 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
- 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を揃えていることを確実にする。
- 該当する場合には、必ず、必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
- 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。
注記 適用される処置には、例えば、現在雇用している人々に対する、教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施などがあり、また、力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結などもあり得る。
ISO9001:2015「7.2 力量」
「力量管理」によって、企業はISOや監査への対応ではなく、中長期的な人材育成や従業員エンゲージメントの向上などのメリットが得られます。
ISOで求められる抜け漏れのない管理の実現
安全衛生・品質維持水準の照明
力量管理の基本要素については、アメリカの経済学者であるロバート・リー・カッツ(Robert Lee Katz)が提唱した「カッツ理論」に基づいて整理してみましょう。
カッツ理論では、仕事を行う際の人の能力を「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分類しています。このうち、一般的な働き手を指す「メンバー」に対して求められる割合が多いのが、テクニカルスキル、すなわち「業務を遂行する能力」です。
テクニカルスキルは他の2つのスキルと異なり、知識と技能で構成されていて、必要な経験を通じて習得することが可能です。ISOの要求事項として示される能力の多くは、このテクニカルスキルに分類されています。つまりこの部分が、力量管理における基本要素であるといえます。
業務を遂行するうえで必要な能力。職種により異なる
組織内で良好な人間関係の構築や維持に必要とされる能力。一般社員と管理職によって異なる
物事を概念化・抽象化して本質を見極める能力。主に経営層などのトップ管理職に必要とされる
関連記事:SECIモデルとは?ナレッジマネジメントへの活用と具体例
力量管理の基本要素を抑え運用を始めたとしても、管理を完璧に実行できている企業はそうそう多くありません。力量管理は、最新の情報を正確に把握することが重要になるため、以下の運用面や制度設計に課題を抱えているケースがよく見られます。
さらに、ISO対応が目的に加わると、記録や保存のための作業など様々な業務が求められていることが多く、それらを配慮し、要件を充足できるような運用を設計しなければなりません。まずは、現場が運用を回し切るための課題解決に目を向け、基本の運用がしっかり継続できる仕組みを構築しておく必要があります。
基本的な運用をしっかり行ったうえで力量管理を積極活用すると、どのような成果が期待できるのでしょうか。力量管理の活用は、企業活動および従業員一人ひとりに対するプラスの効果を多数もたらします。
社内で適切な力量管理を行うことで、一人ひとりの従業員が持つ能力やスキルを可視化することができます。それは経営・マネジメント側が自社内の現状把握をするだけではなく、働く個人にとっても自己理解を深める貴重な機会になります。
一人ひとりの「できること」を可視化する中で、同時に明らかになるのは「どの能力やスキルが足りていないのか」という客観的な評価です。適切な力量管理によって、不足している力を伸ばすための教育や訓練を行う機会を作ることができます。
どの産業でも働き手が不足している今、企業にとって重要度が高まっている課題の一つが、個々人がモチベーションを維持して働ける環境作りです。企業がしっかり力量管理を行うことによって、個人のスキルアップや自己実現につながりやすくなり、ひいてはそれが従業員エンゲージメント向上に寄与するでしょう。
企業として目指すところから、現状は何がどのくらい不足しているのか。その不足を埋めていくためにはどんな施策が必要なのか。組織内に所属する従業員の持つ能力やスキルについて、現状を正確に把握することによって、長期的かつ戦略的な人材育成、人材配置(アサインメント)などの最適解が見つけやすくなります。
いずれ力量管理を有効活用し、その可能性を最大化するために今、企業のみなさんにおさえておいていただきたいポイントが3つあります。これらのポイントを念頭において、今後の力量管理について見直してみてください。
「力量管理はISOのためのもの」と、限定的な理解のまま運用を行っているケースもあることでしょう。しかし前述の通り、力量管理は幅広い領域で活用できる可能性を秘めています。基本の運用と合わせ、積極活用によってどんな成果が見込めるのか、まずは理解するところからはじめましょう。
なぜ力量管理を行うのか、経営・マネジメント側と、実際に運用する現場担当者とで目的が共有できていなければ、積極活用どころか基本の運用すらままならなくなります。力量管理によってできる内容、可能性、現状の課題などの情報共有を行い、組織内関係者の認識を揃えていくことが重要です。
時間をかけて自社にマッチしたスキルマップを作成し、組織内の対話を重ね、力量管理の可能性を見据えて運用をスタートしたとしても、ほんの少し情報の入力が面倒だったり、管理方法が煩雑だったりするだ
力量について、各企業では力量管理表(スキルマップ)などを用いて管理するケースが多く見られます。特に国際的な品質マネジメント規格であるISO9001では、各企業に対し、組織内における力量の把握をしたうえで、従業員に対する教育・訓練を実施し、そのプロセスに対するPDCAサイクルをしっかり回すことを求めています。
力量管理表(スキルマップ)とは、「業務で必要なスキルを洗い出し、各従業員の持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われます。
関連記事:スキルマップとは? 目的、メリット、作り方、トヨタの活用例、職種別の項目例を解説【エクセルテンプレートあり】
スキルマップを作ると従業員のスキルを可視化でき、適切な人材配置を行うことができます。
従業員のスキルレベルを把握するとスキルの不足部分が明確になり、不足部分への集中的な教育が実現できます。さらにスキルマップと一緒に教育計画も作れば、従業員に求めているレベルへと計画的に教育を行えます。
従業員が保有するスキルの把握は、効率的な人事配置にも役立ちます。特に有資格者の配置が必須となる業界の業務では、従業員の資格保有状況が一覧できるスキルマップは効率的な人材配置に大いに貢献します。
スキルマップは客観的で公平な評価の助けにもなります。スキルの評価レベルは「1〜4」などと明確に決まっています。そのため、評価を行う人の主観ではなく客観的な評価が可能となります。
スキルマップを導入することで、従業員は、評価の基準となる項目や自分のスキルレベルを簡単に把握できるようになります。自分の現状と求められているレベルが明確になり、目指すべき方向性もはっきりします。モチベーションもアップするでしょう。
スキルマップは人材育成に関するあらゆる場面で活用できるため、様々な人事業務の効率化につながります。
スキルマップを作る目的を明確にしましょう。従業員数やスキル項目にもよりますがスキルマップの作成は簡単ではありませんので、どのような場面で活かしたいのか目的を明確にすることが重要です。
従業員へのヒアリングや作業マニュアルをもとに業務分析や職務分析を行い、スキルマップに必要なスキルを洗い出します。
スキルマップの評価者や更新頻度などの評価方法を明確に策定しておきます。
スキルマップの評価基準を策定しましょう。評価基準は〇×でも構いませんが、1〜4などのレベル別に評価を行うと習熟度が分かりますし、部署全体の平均値の算出などより踏み込んだスキル評価が可能になります。
スキルマップのスキル項目の分類方法やスキル名、評価基準について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:スキル評価とは? 目的とメリット、スキルマップとルーブリック評価の違い、作成手順など
実際にスキルマップを作っていきましょう。スキルマップにはExcelなどのツールを使用することが一般的です。
スキルマップが作れたら早速導入を開始しましょう。導入後、不備があった場合は修正やルールの変更を随時行います。また定期的に更新し、人材育成に役立てていきましょう。
関連記事:【テンプレートあり】スキルマップの作り方【スキル体系・評価基準・項目例】
力量管理を適切に運用していくためには、組織内で必要なスキルの棚卸しからはじまり、ISOや顧客監査への対策、経営戦略とのすり合わせ、現場担当者や従業員との合意形成など、いくつものハードルをクリアしていかなければなりません。
しかし時間と労力をかけて準備したとしても、基本的な運用を継続できなければ、力量管理の可能性を享受することは難しいでしょう。実際に管理や、記録業務を行う方が継続できる運用を設計し、仕組として根付かせることではじめて、力量管理の積極活用ができるようになります。
スキル管理の定番システムと言えば「Skillnote」!
●スキルマップのシステム化でスキルをまとめて管理できる
●スキルに紐づいた根拠に基づいた育成計画をつくれる
●資格に関する全てのデータをシステム上で徹底管理
力量管理表とは?
力量管理表(スキルマップ)とは、「業務で必要なスキルを洗い出し、各従業員の持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われます。
スキル管理とは?
スキル管理とは、「自社に所属する従業員が保有するスキルを可視化し、社内で共有できる情報として集約・活用できるようにすること」です。
ISO9001の「力量」とは?
ISO9001の「力量(りきりょう)」とは、個々の業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力のことを指しています。
例えば、機械設計という業務を行うためには、様々な知識や技能が必要です。製品に関する知識、機械の基礎理論、製図の知識、またCAD(コンピュータ支援設計)等のツールを使うスキルなどが必要とされます。
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