力量管理を効果的に行っている企業の共通点とは【事例紹介】

製造業をはじめとする多くの企業で導入が進む「力量管理」。ISO9001への対応だけではなく、中長期的な人材育成やキャリア形成の基盤を成す仕組みとして注目を集めています。本記事では、力量管理の目的やメリットを整理し、実際に成果を上げている企業の事例を紹介します。
力量管理とは?
力量とは、業務に必要な知識・技能・経験・資格などを総合した能力を指します。ISO9001では力量の把握・維持が求められていることもあり、その監査対応のために多くの製造業企業で力量管理は必須でした。しかし、近年では監査対応だけでなく力量をベースにした「人材育成・適正配置・スキル伝承」を実現する仕組みとして導入する企業が増えています。

ISO9001における力量管理
ISO9001:2015の「7.2 力量」では、組織は従業員が必要な力量を備えていることを証明し、必要に応じて教育・訓練を実施することが求められています。重要なのは「形式的な記録」ではなく、力量の把握・維持・継続的な改善を行う仕組みを持つことです。
力量管理を企業で取入れる場合、決められたフォーマットや一般的な管理方法があるわけではありません。各企業の事業内容や現場の状況、経営方針、今後の経営戦略などに合わせて独自に運用していく必要があります。また、管理において大切なのは、必要な情報が抜け漏れなくに記録され、継続的に保管できていることです。
力量管理の目的
力量管理を行う目的は、ISO9001への対応に留まりません。「効果的な人材育成・教育」を行うことなど、人材戦略にも大きく関わります。以下が力量管理の主な目的です・
- 力量情報をベースにした適材適所の人材配置
- 効果的な人材育成・教育の実施
- 喪失リスクのある技術を特定して対応策を打つ技術・技能伝承の推進
- 従業員のキャリア形成
力量管理のメリット
力量管理は企業・従業員の方法にメリットをもたらします。以下では企業・従業員の立場からそれぞれのメリットをまとめています。
企業側のメリット
- 品質向上、品質トラブルに低減
- 力量情報をベースにした戦略的な人材育成計画の立案・実施
- 属人化防止
- 技術・技能伝承の推進
従業員側のメリット
- スキルの把握
- キャリアパスが明確になり、キャリアアップを目指せる
- 力量情報から定量的に公平に評価される
力量管理を有効活用している企業の特徴とは
力量管理を組織内で有効活用し、ISOの要求事項などを適切に管理する以上の成果を得ている企業もあります。製造業における力量管理には、どんな可能性があるのでしょうか。ポイントは以下の3点に集約されます。
- 力量管理によって実現できることや力量管理の可能性を広く理解している
- トップダウンではなく、全社を巻き込み共通認識を作っている
- 運用が形骸化しないよう、自分たちに適した仕組みを構築している

①力量管理によって実現できることや力量管理の可能性を広く理解している
力量管理を「ISOの基準を満たすためのもの」と捉えて、運用を行っている企業もあるでしょう。しかし、力量管理の積極活用は、中長期的な人材育成の実現や従業員エンゲージメント向上など様々な成果を企業にもたらします。効果的な力量管理を実施している企業の多くは、そうした可能性を理解したうえで管理体制を構築しています。
②トップダウンではなく、全社を巻き込み共通認識を作っている
力量管理の円滑な運用を目指すには、全社の巻き込みが欠かせません。「なぜ力量管理を行うのか」「どのように運用していくのか」といったことを経営層(マネジメント層)と実際に運用する現場担当者とがすり合わせを行い、組織内関係者の認識を揃えることが重要です。力量管理の運用は、社内の協力体制を作るところからはじまっています。
③運用が形骸化しないよう、自分たちに適した仕組みを構築している
時間をかけて自社にマッチした力量管理表(スキルマップ)を作成して運用をはじめられても、情報の入力が面倒だと感じられたり、管理方法が煩雑だったりするだけで、すぐに形骸化してしまいます。力量管理表(スキルマップ)の継続的な運用ができている企業の多くは、現場の運用の手間が省けるように誰でも簡単に作業ができるスキル管理システムを導入して力量管理(スキル管理)を行っています。
力量管理を有効活用している製造業の事例
実際にどのような力量管理を行って成果につなげているのか、Skillnoteが支援した企業の事例を交えてご紹介します。力量管理は自社に合った方法で実施することが最も重要なので、一つの参考事例としてご覧ください。
事例①中長期的な人材育成計画と紐づけた力量管理に移行
自分たちが行っている力量管理に課題を感じていたA社では、戦略的な人材育成や従業員のモチベーション向上などを見据えた運用方法の見直しを実施。それまでは管理方法の問題から、限られた管理職しかデータを閲覧・入力することができなかったうえ、管理手法の問題もあり、組織内にいる人材のもつスキルがすべて可視化されているとはいえない状況だったといいます。
「SKILL NOTE」導入によって力量管理の運用方法を一新した結果、これまで明確に把握しきれていなかった全従業員の保有スキルや、研修状況が一覧できるようになりました。人材に関するデータが整理され、常に最新の状態にアップデートされるため、そのデータをもとにした中長期的な人材育成計画をスムーズに立案することが可能となりました。
事例②従業員の自律性を引き出し、個人のキャリアアップに寄与
Excelにより部署ごと独自の力量管理を行ってきたB社では、今後の人材戦略として、会社や上長が従業員を「管理」する状態から脱却し、個々人が自律した組織を構築することを目指していました。そのためには、マネジメント側だけではなく従業員本人もアクセスできるデータ環境を整えることが必要と考えていたそうです。
そこで「SKILL NOTE」にデータを移行し、力量に関する情報については、本人も閲覧できるように。一人ひとりが、自分の保有する資格や現状習得しているスキル、受けた研修の履歴などがいつでも振り返れるようになりました。その人の現在地を明確に把握することが可能となったため、上長も、スキルアップについての目標設定や具体的なアドバイスがしやすくなっています。このまま運用を続けることによって、従業員の自律性が育まれていくでしょう。
まとめ
製造業にとって力量管理は、単なるISO対応に留まらな、組織の成長と人材育成を支える重要な経営課題です。本記事で紹介した事例のように、自社に合った仕組みを整えれば、中長期的な人材育成や従業員のキャリア形成につながります。
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よくある質問
- 「力量(りきりょう)」とは?
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「力量(りきりょう)」とは、個々の業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力のことを意味します。「スキル」とも呼びます。
- 「力量管理表」とは?
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従業員の持つ「力量(スキル)」(技能・知識・経験など)を適切に管理する表のことです。「スキルマップ」とも呼びます。力量管理表(スキルマップ)を活用して従業員の「力量(スキル)」を適切に管理して人材育成・評価・配置などに役立てることを「力量管理(スキル管理)」と呼びます。