パートナーシップ対談

富士通とSkillnoteが描く、
デジタル技術による人材の未来
~持続可能なものづくりに不可欠な人材活用とそのポテンシャルの解放~

(左からSkillnote山川、富士通 山本様)

富士通株式会社

富士通株式会社は、ICTのリーディングカンパニーとして、テクノロジーの力とビジネスニーズに合わせたソリューションを提供し、社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会と豊かな未来の実現に貢献しています。

  1. 1.製造業を支えているのはスキルを持つ「人」
  2. 2.変化するスキルを見極め、計画的な人材育成を支援
  3. 3.多様な技術やソリューションと組み合わせて価値を生み出す

製造業の持続可能な成長のために無限の可能性を持つ人の力を解放

Skillnoteは、製造業の持続的な成長を事業の柱の1つに据えている富士通と資本業務提携を締結しました。製造業のサプライチェーンを網羅する富士通の技術やソリューションとスキルマネジメントシステム「Skillnote」を連携させることで、新たな価値を創出していきます。富士通で製造業支援を統括する山本 有輝さんと当社の山川 隆史が、これから共に提供していく価値について話しました。

富士通株式会社
クロスインダストリーソリューション事業本部
Sustainable Manufacturing
VP, Head
山本 有輝

株式会社Skillnote
代表取締役
山川 隆史

01.製造業を支えているのはスキルを持つ「人」

デジタル技術で製造業のサプライチェーンの強靱化を図る。富士通はSkillnoteをはじめとする複数のパートナーと連携しながら、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援しています。背景や考えをお聞かせください。

山本さん(以下、敬称略) 富士通は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを掲げています。2021年に、そのパーパスを落とし込むための新しい事業ブランド「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」を策定しました。

 Fujitsu Uvanceは「あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させる」という意味を込めて私たちが作った造語で、サステナブルな世界の実現に向け、「環境」「ウェルビーイング」「経済成長」分野の幅広い社会課題の解決に取り組みます。

 「Sustainable Manufacturing」、つまり製造業の持続的な成長も私たちが目指すことの1つです。専門的な技術やノウハウを持つパートナーと協業して課題を解決し、製造業のお客様を支援していきます。

どのような課題が製造業の持続的な成長を妨げているのでしょうか。

山本:自然災害、ウクライナで起こったような政治危機、また、そうした突然のできごとに端を発する原料不足や価格の高騰など、様々なことが製造業の事業継続に影響を与えます。新型コロナウイルスの感染拡大もそうです。今、振り返れば、いつでも起こる可能性があったと認識できますが、以前の私たちは起こるはずがないと思っていた──。未曾有の大規模パンデミックに対して十分な備えを行っていた製造業などほぼなく、一部の製造業は実際に工場の操業停止に追い込まれました。

山川:新型コロナウイルスの感染拡大が浮き彫りにしたのが「人」の課題です。行動制限で社員の出社が制限される中、限られた人手で対応したり、外注で補ったり、緊急措置を講じてなんとか工場の操業は継続させたものの、それでも品質問題は避けられなかったという話もよく聞きます。多くの製造業が工場の稼働は「スキル」を持った人材によって支えられている、つまり事業の根幹は人だということを改めて認識しました。

山本:ご指摘の通り人材は製造業の根幹であり欠かすことにできないものです。一方で、労働力人口の減少は、すでに始まっていますし、製造業の現場には特定の人材に頼っている業務がたくさんあります。そのような熟練者が持つスキルの標準化や継承、形式知化を行わなければ、製造業の持続的な成長は危うい。富士通がSkillnoteとパートナーシップを結び、共に製造業を支援したいと考えたのは、まさにこの課題を解決するためです。

02.変化するスキルを見極め、
計画的な人材育成を支援

Skillnoteは、製造業の人やスキルにまつわる課題を、どのように解決するのでしょうか。

山川:私たちが提供しているのは、人材が持つスキルを可視化して、計画的な育成と配置を実現するスキルマネジメント、つまり力量管理のためのクラウドサービスです。

このサービスが解決できる課題は大きく二つあります。
 1つ目が、従来型の力量管理の効率化です。製造業では、特に製造部門や工場を中心に、品質マネジメントシステムであるISO9001などの認証取得のため、力量管理が行われています。しかし膨大な情報をエクセルや紙で管理していることがほとんどで、大きな負担となっています。また部署単位で管理されているため組織全体で一元的な活用が難しい現状があります。

 2つ目が、技能伝承や多能工化、リスキリングなどの製造業を取り巻く環境変化によって顕在化してきた人材課題です。背景には、山本さんがご指摘するように労働人口の減少や人材の流動化などがあります。また、技術革新の進展に伴い求められるスキルも変化してきています。例えば、AIやVRなどの新しい技術を扱うのも人であって、そこには常にスキルが求められます。変化するスキルを見極め、育成していく必要があるのです。

 こうした課題に対し「Skillnote」は、力量情報をデジタル化することで、力量管理業務を効率化し、データに基づいた人材育成・配置やキャリア開発を可能にします。製造業が外部環境の変化の中で、持続的な成長を遂げるには、人材のスキルや知識、経験を把握し、組織として戦略的にスキルを獲得していく必要があります。そのデータ活用基盤となるのが私たちのサービスです。

03.多様な技術やソリューションと組み合わせて価値を生み出す

富士通とSkillnoteのパートナーシップは、どのような意義がありますか。

山川:多くのお客様をご支援する中で、Skillnoteが扱うスキルデータを製造業全体の仕組みの中で有効活用する方法を考え続けてきました。スキルは製造現場で管理する情報の1つにすぎません。他の設備やシステムの持つデータと連動させ、さらに大きな価値を提供したい。そう考えていた折、多様なソリューションで設計開発、生産、品質管理、流通など、製造業のサプライチェーン全体をカバーしている富士通とパートナーシップを結ぶ機会を得た。Skillnoteにとっては、新しい提供価値を創出する大きなきっかけになると考えています。

山本:Skillnoteの持つスキルデータには様々な使い方があります。富士通が持つソリューションや技術とスキルデータを組み合わせて、データを現実の価値に変えていきたいと考えています。

 例えば、品質管理では製造実行システム(MES)などに従業員が持つ資格情報を連携することで、資格チェックを徹底し、品質管理の厳格性を高めることができます。

 生産計画にも役立ちます。生産計画は、設備の生産能力といった複数の数値を使って計算するわけですが、ほとんどの場合、スキルは数値化されていないため、計算に組み込まれていません。しかし、スキルが生産の進捗に影響を与えるのは明らか。生産計画にSkillnoteのデータを取り込むことで、生産計画の精度を高められるはずです。また、人材がバランス良く経験を積めるよう、AI(人工知能)でローテーションの視点も含めた配置計画を自動立案することもできるでしょう。

 加えて、スキルデータを参考に熟練者とそうでない人材の動きをカメラで撮影して画像分析にかけ、動きの差を明らかにし、分かりやすい教育コンテンツを作成したり、スキルの継承に役立てたりすることもできます。

 さらにデジタル上で様々なシミュレーションを行い、現実にフィードバックして改善サイクルを回し続ける、いわゆるデジタルツインにおいてもスキルデータを使うことで、生産リードタイムの短縮、作業導線の見直し、トラブル対応の迅速化など、様々な改善施策につなげていけます。

すでに様々な構想があるのですね。両社のパートナーシップに対する期待はさらに高まりそうです。最後に今後の展望をお聞かせください。

山本:工場の設備は、基本的には導入時に完成しており、仕様以上の能力を発揮することはできません。しかし、人材は違います。作業習熟や資格獲得で現業のスキルレベルを向上するだけでなく、スキルデータから様々な業務への適正を見出し、新しい業務に挑戦することも期待できる。そうした人材の可能性をいかに引き出し、世界に信頼と感動を与えるか。Skillnoteと共に、そのテーマに挑戦していきたいですね。

山川:ありがとうございます。Skillnoteの理念は「つくる人が、いきる世界へ」というものです。自らも製造業であり、業界を牽引する富士通とのパートナーシップによって、製造業で働く人たちが、モチベーション高くイキイキと働くことができる環境をつくり、持続可能なものづくりを実現していくことに貢献していきたいと思います。