「Skillnote」導入で新人教育期間を50%改善。現場の負担軽減と学習意欲の高い組織の実現へ 

三菱ケミカル株式会社
スキル・力量の一元管理 品質・安全管理の強化 教育・研修体制の構築
規模: 単体:13,249人/連結:38,589人(2025年3月31日現在)
業種: 化学製品等の開発、製造
三菱ケミカルは、2017年4月に三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンが統合し発足した、日本を代表する大手総合化学メーカーです。全国に製造拠点を持ち、多様な化学製品を取り扱う同社事業の中でも、三重県・愛知県に拠点を持つ東海事業所では、自動車・半導体・ディスプレイ産業に供給する化学品や樹脂製品、機能商品を製造しています。 

その一端を担う炭素繊維課では、近年の旺盛な炭素繊維の需要に応えるために24時間365日のフル稼働状態が続く一方で、採用競争の激化などによる人材不足の影響もあり、ベテランが新人のフォローに入っていました。その結果、ベテラン社員の負担が増大し、新入社員教育の遅れが発生し、ベテラン社員の負担は軽減されることなく、人材育成も停滞するという負のスパイラルに陥っていました。この状況を打開するため、2024年11月より単一部署でスキルマネジメントシステム「Skillnote」を導入しました。「Skillnote」を軸に新人教育の管理体制を見直し、これまで1年かかっていた新人が一人前になるまでの期間を6か月に短縮することができました。今後は、適切な人材育成による現場の負担軽減と学習意欲の高い組織を目指しています。

導入前の課題

  • 力量管理の形骸化
  • 新人教育の遅滞
  • ベテラン人材の負担増大

導入後の期待

  • 新人教育にかける期間の短縮
  • ベテラン人材の負担軽減
  • 力量管理と教育への意識向上

新人教育の遅れが、ベテラン人材の負担増大につながる 

「Skillnote」の導入以前に感じていた課題についてお聞かせください。

牧野さん(以下、敬称略): 製造業全般の課題といえますが、そもそもの人口が減っていることに加えて、採用難に伴う人材不足です。とりわけ化学メーカーの製造現場は連続生産であるため、三交代勤務などのハードな働き方の印象も根付いてしまっています。特に、東海地方では自動車産業の人気が高いのに対し、われわれ化学メーカーのBtoB事業では「どのような会社なのか?」「どのように社会に貢献する事業なのか?」といった魅力が伝わりづらく、採用には苦慮していますね。
炭素複材製造部 炭素繊維課 課長 牧野 哲也 さん
畑山さん(以下、敬称略): そうした中で、約100名の人員からなる炭素繊維課で顕在化してきた課題は、新人への教育が不十分なためにベテラン社員の負荷が増加している点でした。人材不足でスキルのあるベテランの稼働が増え、新人育成に充てる時間が減少し、若手が育たないのでベテランが忙しいままになり続ける……という悪循環が生じていると感じていました。

そこで、現場の作業を担うオペレーターの新人教育における一人前の基準を定義していたのですが、本来は半年でクリアしてほしいステップにも1年近くかかってしまい、なかなか計画通りに一人前を育てられていない状況でした。これでは構造的にベテランの負担は重くなるばかりです。

牧野: 炭素繊維の需要はますます増加し、生産体制の強化が求められている状況です。工場の稼働率は24時間365日のフル稼働が続いており、ベテランの退職などによる欠員が稼働停止につながるリスクが高まっていました。なかなか人材採用も難しい以上、新人を早期に戦力化する教育管理体制の見直しが急務だったのです。

その課題感が「Skillnote」の導入につながったかと思いますが、具体的にどのような教育管理上の問題が生じていたのでしょうか?

畑山: 先の「一人前の定義」では、例えば、炭素繊維を製造するためには、加熱炉や熱交換器など多くの機械装置など動かす基礎的な作業項目や安全管理の知識をピックアップし、それらが作業標準書通りにできれば一人前としていました。

牧野: 機械のみならず、われわれは炭素繊維を取り扱っていますので、糸の取り扱いに関する知識やスキルも重要な要素です。現場では、流れている糸を掴む、切断する、結ぶといった一連の作業が求められます。

畑山: こういった作業や安全管理上の知識についての評価項目がおよそ300個あります。それを、従業員一人ひとりにExcelのシートを作って管理していたのです。
しかも100名近くのオペレーターがいるため、その人数に対して、作業評価項目が200〜300になると個々のExcelシートを確認するだけでも非常に手間がかかりました。

さらに、一人ひとり別々のExcelシートで管理されていたので、横串で見ることができていませんでした。そのため、教育を担当する職長などの管理者にとっても一覧性が低く、「いま誰がどのレベルにあり、次に誰の教育をフォローアップすべきか」を把握しづらかったのです。

力量評価の一覧性向上と教育管理のPDCAを回せるが決め手に

「Skillnote」を知ったきっかけと、導入の決め手についてお聞かせください。

畑山: 当社のやりたいことは明確で、力量評価の一覧性向上と教育管理の見直しです。教育管理の見直しでは計画立案から始まり、各対象者の進捗状況が確認しやすく、力量評価の承認までしたいと考えていました。具体的には、管理者が俯瞰的に不足しているところを特定し、次に活かすといった流れをつくりたいと。その結果、評価基準の見直しや教育内容の改善ができるシステムを求めていました。
当社にはタレントマネジメントシステムが既に導入されているので、スキル管理に特化したシステムをネットで探したのですが、意外と少ないですね。その中で、「Skillnote」だけが当社のやりたいことを叶えられるという印象を受け、実際にSkillnote社の方に説明を受ける中で確信に変わっていきました。 
炭素複材製造部 炭素繊維課 課長代理 畑山 明人さん

例えばどういった点ですか?

畑山: 新人教育における力量の評価項目数が300近くあること自体はExcelと変わらないとしても、例えば「Skillnote」の「育成計画」の機能を使うことで、次に指導を実施すべき評価項目に着色されたり、予定の遅れをアラートで教えてくれたりするなど、必要な情報へのアクセスが容易になります。また、従業員が持っている力量情報への遷移もワンクリックでスムーズなため、個別のファイルを開けるのとはアクセスに雲泥の差があることなどが挙げられます。
「Skillnote」上のスキルマップ機能のサンプル画面。育成計画の進行中や資格取得予定、計画の遅延など色の違いで把握することが可能(画面上に表示されている人名は、サンプルとして作成した架空のものです。)

問題意識を現場と共有したことが、スムーズな導入につながった

「Skillnote」の導入が2024年11月に決定し、翌年2025年には本格運用に移行しています。 畑山さんが主導された、この間の進め方や取り組みについてお聞かせください

畑山: 「Skillnote」導入前の8月〜11月の動きになるのですが、管理者や現場のオペレーターにとってわかりやすい評価項目の見直しを行いました。これまでExcelで管理していた力量表は正直、形骸化していた一部あり、内容にも納得できていたわけではありませんでした。 

加えて、現場のオペレーターは真面目な人が多く、意味のない力量表では関心を示しません。オペレーターの方々に「今の力量表の実態はどうですか?」と聞きながら、使いづらい箇所や評価項目のあり方についても一緒に考えていったのです。

以前の評価項目は、装置別の区分けで操作方法や安全管理の知識を問うものでしたが、実際の業務は自分に割り当てられた担当作業を全うすることであり、一つの装置を理解しただけでは役割を遂行できません。

そのため、作業パターンに分けて評価項目を設定し直しました。大項目を「Aの装置の運転ができる」から「Aパターンの業務ができる」という表現に変え、その業務に必要な小項目がすべて習熟できれば「Aパターンの作業を一人前にこなせる」とする実践的な形にしたのです。

現場における「Skillnote」の操作方法については、どのようにレクチャーしましたか? 

牧野: 「Skillnote」の良い点は、マニュアルを見なくても直感的に操作ができてしまうシンプルさにあります。そうはいっても炭素繊維課内のルールもあるため、一応マニュアル整備の必要はありましたが、長すぎて読まれないものになることなく、シンプルなマニュアルで済みました。

畑山: 導入に際しての職長向けの説明会こそ開催しましたが、操作方法などのレクチャーや勉強会をする必要があまりなかったですね。むしろ、現場から「こういう場合のマニュアルが無かったから作っておいたよ」といった好意的な対応をもらえるなど、導入に前向きな空気を醸成できたことが大きいかもしれませんね。

やはり現場も「力量管理や教育はしっかりやったほうがいい」という意識を持っていましたから、システム導入や評価項目の刷新を管理者だけで進めず、事前に現場のオペレーターと相談して合意形成していたことがスムーズな導入につながりました。

「Skillnote」の導入で新人が一人前になるまでの期間を約半分に短縮

2025年1月より試験運用を開始し、2025年4月から本格運用に移行されています。現在(2025年12月時点)まで8ヶ月運用されています。新人教育について、「Skillnote」でどのような管理を行っているのですか? また、実感している導入効果があればお聞かせください。

畑山: 力量表とは別に、「Skillnote」のキャリア管理機能を使って新人が一人前になるまでのスキルを一覧表示しています。先にも述べましたが、現場で新人に割り振る作業ごとに大項目を立て、作業を一つずつ一人前にしていき、すべての作業で一人前になったら晴れて新人を卒業できます。評価項目を刷新した点はあるものの、一つの作業で一人前になるまでExcel時代には1年以上かかっていたものが、「Skillnote」導入後は半年に短縮されました。 
「Skillnote」のキャリア管理機能のサンプル画面
(画面上に表示されている人名は、サンプルとして作成した架空のものです。)
その要因は、結局は新人本人の頑張りと教育担当者・職長のフォローアップの努力です。頑張りが生まれたのは、「Skillnote」が教育の遅れをアラートしてくれることで、誰がどの教育で遅れているのかをすぐに把握でき、フォローアップがしやすくなりました。個別のスキル単位や教育訓練に対してもリマインドが出てくるので助かります。また、評価項目や作業標準書へのアクセスと視認性が改善されたことで、新人も「自分はあと何をするべきか?」がわかりやすくなったことと思います。
「Skillnote」導入前後で短縮した教育期間
(グラフ上の数値は実際の数値ではなく、サンプルとして作成した架空のデータです。)
牧野: 今後、全項目で一人前と認められるまでの、新人教育全体の期間も短縮されることが期待できます。これまで新人教育は全体で3年を目安に、1年ごとに教育計画を定めたのですが、従来のアクセスと視認性の悪いExcel管理では、新人教育の進捗確認が半期に一度になりがちでした。 

進捗状況の遅れに気づいても、残り半年では取り戻すことが難しく、年間で計画未達になり、それが全体でも3年以上の時間を要する結果になりがちだったのです。それが「Skillnote」では進捗状況を随時リマインドされ、しかも進捗状況が部署全体でリアルタイムに共有されますから、教育計画の遂行に非常に有用だと感じています。

ベテラン人材の抜本的な負担軽減につながっているとはまだ言い難いのですが、確かな実績は出ており、新人や若手オペレーターの成長が加速することで状況は改善すると期待しています。

作業標準書の回覧を「Skillnote」で行うことで、現場からのフィードバック数が増加

そのほかに、「Skillnote」の導入によって変わったことや効果の実感はありましたか?

畑山: 「Skillnote」の力量表には、力量それぞれに作業標準書やテストなどのURL形式のリンクやファイルを貼り付けることができます。その作業標準書に対しても、「この表記ではわからないのではないか?」「こういうポイントも重要だ」という意見が現場から出るようになり、いま、作業標準書がどんどん改善されています。
「Skillnote」の力量の詳細のサンプル画面。力量の概要説明やマニュアル・動画などのURL、作業標準書などの添付ファイルを紐づけることが可能(画面上に表示されている人名は、サンプルとして作成した架空のものです。)
さらに、新人教育用の評価項目のみならず、中堅以上のオペレーター向けの評価項目や作業標準書にまで意識が及び、現場の声を盛り込んで改善が進んでいます。評価基準や作業標準書を教育ツールと捉えるなら、現場で自発的に教育内容をアップデートするPDCAが回っている状態といえるでしょう。 

なぜ、作業標準書にも、積極的な意見が飛び交う状況になったのでしょうか?

畑山: 日常的な業務の中で、装置の調整などで作業標準書を改訂するシーンが必ずあります。その際、必ず作業標準書の改訂内容を部署内で回覧していたのですが、それを「Skillnote」上で行うようにしました。従来の紙での回覧においても改善案のコメントがつくことはありましたが、電子化によりコメント数が大幅に伸びたのです。要因をヒアリングしたところ、紙だと受け取ったときにしか書き込む機会はありませんが、「Skillnote」上にあれば手の空いたときに確認してコメントをつけることができるから、ということでした。 

この変化の重要性は、言語化が難しかった「カン」や「コツ」といったノウハウが、作業標準書上で継承される可能性につながっていることです。ベテラン人材の力量を可視化することで次世代に継承するスキルを見定めていくことも、今後の効果として期待しています。

牧野: この作業標準書の改訂はよく発生するため、関係するオペレーターは目を通しておかなければなりませんから、定期的に「Skillnote」を操作する流れになっています。改訂をチェックしながら、ついでに自分の力量について自覚する機会になります。さらに、自分の力量だけではなく、自分のレベル以上に求められる力量を確認する従業員もいて、主体的に資格取得やスキルアップに取り組む人が増えています。
こういった習慣は、これまでなかったことなのでやはり意識が変わってきていると感じています。

教育が変わり、やりたいことが実現していくことを期待

最後に、今後の展開について伺います。「Skillnote」導入によって、今後期待していることや考えていることについて教えてください。

畑山: 「Skillnote」は単なる作業負荷の低減システムではなく、教育を改善するシステムです。炭素繊維課では新人教育が課題でしたが、「Skillnote」は製造業における安全や品質、環境など様々な分野の力量の向上に活用できるシステムだと考えています。 

牧野: 「Skillnote」を導入したことで、実はやりたいことがどんどん増えてきています。 従業員に身につけてほしい基本的なスキルや、会社として必要な教育プログラムを、「Skillnote」で実施できると期待しています。従業員の立場から見ても、必要な知識をシンプルに学べて、自分の力量もしっかり評価してもらえる。そういう環境が整うことで、学ぶ意欲も高まっていくと思います。