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2024.4.24
現在、ジョブ型雇用に注目が集まっています。ジョブ型雇用は海外では一般的な雇用システムですが、新卒一括採用が一般的な国内企業にはまだなじみが少ないかもしれません。
今後は国内でもジョブ型雇用を採用する企業が増える可能性があります。この記事では、ジョブ型雇用の特徴やメンバーシップ型雇用との違い、ジョブ型雇用の導入事例などを解説します。
近年、国内でも大手企業の中で採用する企業が増えてきているジョブ型雇用の概要を紹介します。
ジョブ型雇用とは、企業が企業にとって必要なスキルや経験に注目し、それらを保有する人材を雇用する制度です。採用の際にあらかじめ担当する職務が明確に決まっている点が特徴です。
日本経済団体連合会(経団連)では、ジョブ型雇用を以下のように定義しています。
特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと
日本経済団体連合会「Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方」
ジョブ型雇用の考え方で制定される人事制度を、ジョブ型人事制度とよびます。ジョブ型人事制度は、以下のような特徴を持ちます。
関連記事:ジョブ型人事制度とは? メンバーシップ型との違い、広がっている背景、メリットデメリット、導入方法、導入事例などを解説
国内でも採用する企業が増えているジョブ型人事制度は、以下の理由で注目を集めています。
経団連は、2020年の経営労働政策特別委員会報告の中で、「日本型雇用システムを見直すべき」と提言しました。さらに、2022年の同報告の中でさらに踏み込んで、「ジョブ型人事制度の導入や活用の検討が必要」と提言しています。
企業の集合体である経団連が報告の中で明確に示したことで、国内でも多くの企業がジョブ型雇用やジョブ型人事制度の情報収集や導入に向けた検討を進めています。
これまでは、一つの企業でのキャリア構築を考えることが一般的でした。しかし、近年は転職が珍しいものではなくなり、社内だけでなく社外も含めた広い選択肢の中で、どのように自分のキャリアを選択するかを考えることが一般的になっています。
特定の職務領域に特化したキャリアを構築したいと考えている人材にとって、担当職務があらかじめ明確になっているジョブ型人事制度は、自分の今後のキャリアをイメージしやすいため魅力的であると言えます。
働き方改革の一環として取り入れられていたテレワークや在宅勤務が、コロナ禍により急激に普及しています。
メンバーシップ型雇用では対面でのコミュニケーションを前提としているため、テレワークには不向きであり、テレワークに適した雇用形態が必要不可欠となります。
ジョブ型人事制度は、職務に専門性の高い人材を割り当て、時間ではなく成果で評価を行うため、対面でのコミュニケーションは必須ではありません。
ジョブ型人事制度はテレワークや在宅勤務との、相性がいい雇用形態といえます。
注目を集めているジョブ型雇用ですが、従来から多くの国内企業で採用されてきたメンバーシップ雇用とは、どのような違いがあるのでしょうか。
多くの国内企業で採用されているメンバーシップ型雇用とは、労働時間や勤務地、職務内容を限定せずに採用を行い、人に応じて職務をつける雇用形態です。
職務に応じて人をつけるジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用との主な違いは以下の表の通りです。
ジョブ型雇用は、成果主義と同義として捉えられることがあります。しかし、必ずしも同義ではありません。
成果主義は、仕事の成績や成果によって評価が変わる人事制度の一つであり、ジョブ型雇用でもメンバーシップ型雇用でも、成果主義を取り入れることが可能です。
ジョブ型雇用と成果主義が混同される理由は、ジョブ型雇用の場合成果が見えやすく、成果主義を採用しやすいことが挙げられます。
ジョブ型雇用を採用することで、企業および従業員はそれぞれ以下のようなメリットを得られます。
ジョブ型雇用を採用することで、企業には以下のようなメリットがあります。
ジョブ型雇用では、専門性の高い人材の確保が可能です。
専門性の高い職務を指定し、そこに配置することを前提に採用を行います。あらかじめ成果が想定できるため好待遇での採用が可能であり、その待遇を狙って高い専門性を持つ人材が応募してくる可能性が高くなります。
ジョブ型雇用では、人員補充が必要な職務に合わせてピンポイントの人材採用が可能です。
メンバーシップ型雇用では、人員補充が必要な職務を任せられるようになるまでに、一定期間の教育や実践が必要です。すぐに補充したくても、ある程度時間がかかってしまいます。
一方でジョブ型雇用では、時間をかけて教育を行わなくても仕事を任せられる人材を採用できる可能性が高いです。せっかく採用したのに、補充したい仕事への適性がなかったということも少ないため、効率的な採用につながるでしょう。
メンバーシップ型雇用の場合には、能力や成果を評価に正確に反映することは困難です。若い従業員は、能力があっても雑務を割り当てられる可能性があります。保有している能力を十分に生かせず、適切に評価されないことがあります。
ジョブ型雇用では、成果を確認する評価対象の職務が特定されているので、スキルや経験に基づく成果を評価に直結させることが可能です。年功序列を崩すことも可能なため、企業風土を大きく変えることにもつながります。
ジョブ型雇用は、求職者・従業員にとって以下のようなメリットがあります。
ジョブ型雇用では、個人のキャリアとして目指す方向に沿った専門性を高められる職場を選ぶことが可能です。
メンバーシップ型雇用の場合には、職務が指定されていないことで幅広い職務を経験できますが、明確な強みが身につかず器用貧乏になってしまう懸念があります。
目指す方向性がすでに定まっている場合には、ジョブ型雇用での職務経験を積むほうが、効率よくキャリアを構築できます。
メンバーシップ型雇用の場合には、職務が決まっていないことで自身が苦手とする職務を行わなければならない可能性があり、十分に力を発揮できません。
ジョブ型雇用では職務内容が限定されているため、得意な職務に専念することでスキルや経験を活かすことが可能です。高い成果は高い評価に繋がり、報酬の増加にも繋がります。
ジョブ型雇用を採用することで、企業および従業員は、以下のようなデメリットを受ける可能性があります。
ジョブ型雇用の採用は、企業に以下のようなデメリットをもたらす可能性があります。
もっとも大きな影響は、雇用制度の抜本的な見直しが必要となる点です。
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用では、採用や評価の仕方が大きく異なります。ジョブ型雇用に切り替えようと思っても、簡単には切り替えられません。
少しずつ切り替えを進めようとしても、制度が混在する状態では職務分担や評価に不満を持つ従業員が増え、組織内の雰囲気が悪化する可能性があります。例えば、一部の管理職を対象にするなど、切り分け方を工夫し、時間をかけて導入することが重要です。
ジョブ型雇用では人材の流動性が高い傾向があるため、せっかく採用した専門性の高い人材が、よりよい条件を出す他社に流出してしまう可能性があります。
きちんとコミュニケーションを取り、場合によっては引き留めのために必要な好条件の提示などが必要になるため、注意が必要です。
日常的に職務を行っていく中では、職務内容の柔軟な変更を行いにくいことがデメリットになります。
多くの企業では、従業員に対してさまざまな職務を与えることが一般的です。一方でジョブ型雇用の場合には、職務内容を限定して採用しているため、メンバーシップ型雇用のように柔軟に職務変更ができません。
周囲の従業員が突発的な休養や緊急対応で手が回らなかったとしても、ジョブ型雇用の従業員には他の職務を分担しにくいため、職場の柔軟性が失われます。
ジョブ型雇用を採用することで、従業員には以下のようなデメリットがあります。
ジョブ型雇用の場合には、特定の職務を行うことを前提に採用されているため、その職務がなくなった場合に職を失う可能性があります。
例えば新規事業開発を行う人材は、企業の方針として既存事業強化に舵を切り新規事業開発をやめるという判断をした場合には不要になります。
メンバーシップ型雇用であれば他の職務に配置転換される状況でも、ジョブ型雇用の場合には失職につながる可能性があります。
メンバーシップ型雇用の場合には、半ば強制的にさまざまな職務に取り組むことになるため、個人のスキルセットを幅広く持つことが可能です。
一方でジョブ型の場合には、契約で決められた範囲の職務しか経験しないため、狭く深いスキルセットになります。
そのスキルセットに逆風が吹くようなシーンでは、どの企業でも採用されず、望ましくないキャリア選択となってしまうリスクがあります。
ジョブ型雇用を採用している著名な企業には、以下のような企業が挙げられます。
株式会社日立製作所は、2024年度中に全社員を対象とするジョブ型雇用への移行を目指しています。
きっかけは2008年度に過去最大の赤字を経験したことでした。その後、ものづくり企業からインフラサービス企業へ、国内市場からグローバル市場へシフトを進めています。
すでに海外人材が半数近くを占めているため、海外で一般的なジョブ型雇用への転換は自然な流れと考えられます。
富士通株式会社は、2020年4月に国内グループ企業の管理職を対象にジョブ型の人事制度を導入しました。一般社員向けには、数年後の導入を目指しています。
IT企業からDX企業への変革を目指す中で、最適な人材を最適なポジションに配置することで活躍できる会社にしたいという狙いから、ジョブ型人事制度が導入されました。
グローバルに配置の最適化を行う中で、すでにジョブ型人事制度が導入されていた海外との統一を図ることは必要不可欠でした。
ソニー株式会社は、2015年に等級(ジョブグレード)制度を導入し、それに基づく評価制度を2016年にスタートしました。
報酬はベース給と年2回の業績給に分かれており、ベース級は等級に応じた範囲から評価によって決められます。ソニーでは、よりよい自社を次の世代に残すことを目的に、ジョブ型雇用制度の導入以外にも、継続して人事制度改革を実行しています。
化粧品の製造や販売を行う株式会社資生堂は、欧米の地域本社と国内本社にある専門スキル格差解消や生産性向上を目的として、国内の一部の管理職を対象としたジョブ型雇用(ジョブグレード)制度を導入しました。さらに2021年には一部の一般社員にも適用しています。
「目指すべき専門性の明確化」「必要な専門性とスキルを明示」「グレード判定基準となるジョブディスクリプションの明示」などといった取り組みで、評価基準を能力からジョブに移行しています。
通信キャリア大手であるKDDI株式会社では、外部環境の急激な変化や事業の多様化、組織風土改革などの課題を解決するために、KDDIジョブ型人事制度を開始しました。
KDDIらしさとして、多様な成長機会を会社側が提供することや評価の観点に成果だけでなく人間力を取り入れていることを挙げています。
これらの取り組みから、HR Transformation of The Year 2022の最優秀賞を受賞しました。
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