【解説】労働安全衛生法で必要な安全管理者などの選任

皆さんの会社では、安全衛生業務の従事者に有資格者を選任されていますか?
労働安全衛生法では、業種や事業所の労働者数によって、安全管理者や衛生管理者などの有資格者の選任が義務付けられています。
ここでは、安全管理者をはじめとする安全衛生の管理者について、その役割や資格要件、また会社として対応が必要な選任や届出といった内容をまとめています。
安全衛生の管理者を選任する
労働安全衛生法では、事業場の労働者数に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医といった安全衛生の中心となる管理者を選任することが義務づけられています。
ここでいう「労働者」は、事業場を一つの適用単位として、パートタイマーや期間従業員なども含んだ人数です。10人以上の労働者がいる事業場では、管理者を選任して、設置する必要があります。
事業場で選任すべき管理者

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者または衛生推進者を選任しなければなりません。
労働者が50人以上の事業場では、衛生管理者と産業医の選任が必要となります。また、製造業や建設業などの法令で定められた業種では、安全管理者の選任も必要です。
さらに事業所の規模が大きく、労働者が1000人以上になると、安全管理者と衛生管理者を指揮する「統括安全衛生管理者」の選任をすることになっています。統括安全衛生管理者は、業種によっては、労働者が100人以上から選任が必要となります。
選任した管理者の届出
総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任は、その選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。
一方で、安全衛生推進者および衛生推進者については、届出は不要です。選任が必要な状態になった日から14日以内に選任し、その氏名を作業場の見やすい箇所に提示するなどにより労働者に周知させましょう。
安全管理者とは
労働安全衛生法第11条では、一定の業種及び規模の事業場ごとに「安全管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させることと定めています。
安全管理者の選任が必要な業種・事業場
安全管理者を選任しなければならない業種及び事業場は、次のとおりです。

また、次に該当する事業場にあっては、安全管理者のうち、少なくとも1人を専任としなければなりません。

安全管理者の職務
安全管理者は、主に次の業務を行うことになっています。
- 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
- 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
- 作業の安全についての教育及び訓練
- 発生した災害原因の調査及び対策の検討
- 消防及び避難の訓練
- 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
- 安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録
- その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における安全に関し、必要な措置
安全管理者の資格要件

(1) 厚生労働大臣の定める研修を修了した者で、次のいずれかに該当する者
- 大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
- 高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
- その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)
(2) 労働安全コンサルタント
衛生管理者とは
労働安全衛生法第12条では、一定の規模及び業種の区分に応じ「衛生管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理させることとなっています。
衛生管理者の選任が必要な業種・事業場
常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任することとなっています。ただし、事業場の規模ごとに選任しなければならない衛生管理者の数は、次のとおりです。

また、次に該当する事業場にあっては、衛生管理者のうち1人を専任としなければなりません。
- 業種にかかわらず常時1,000人を超える労働者を使用する事業場
- 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの(なお、常時500人を超える労働者を使用する事業場で、エックス線等の有害放射線にさらされる業務や鉛等の有害物を発散する場所における業務などに常時30人以上の労働者を従事させる場合は、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任することとなっています。)
衛生管理者の職務

安全管理者は、主に次の業務を行うことになっています。
- 少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置の実施
- 健康に異常がある者の発見及び処置
- 作業環境の衛生上の調査
- 作業条件、施設等の衛生上の改善
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
- 衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
- 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
- その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置
衛生管理者の資格要件

総括安全衛生管者とは
労働安全衛生法第10条では、一定の規模以上の事業場について、事業を実質的に統括管理する者を「総括安全衛生管理者」として選任し、その者に安全管理者、衛生管理者を指揮させるとともに、労働者の危険または健康障害を防止するための措置等の業務を統括管理させることと定めています。
総括安全衛生管理者の選任が必要な事業場
総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場は、次のとおりです。

総括安全衛生管理者の職務

安全管理者、衛生管理者などに指揮するとともに、次の業務を統括管理することとされています。
- 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
- 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- その他労働災害を防止するため必要な業務
(ア)安全衛生に関する方針の表明に関すること。
(イ)危険性又は有害性等に調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
(ウ)安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
総括安全衛生管理者の資格要件
当該事業場において、その事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(工場長など)
産業医とは
労働安全衛生法第13条では、一定規模以上の事業場について、一定の医師のうちから「産業医」を選任し、専門家として労働者の健康管理等に当たらせることと定めています。
産業医の選任が必要な事業場
常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任しなければなりません。ただし、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任することとなっています。
なお、次に該当する事業場にあっては、専属の産業医を選任することとなっています。
- 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
- 一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場
産業医の職務
安全管理者、衛生管理者などに指揮するとともに、次の業務を統括管理することとされています。
(1) 産業医は、主に次の事項を行うこととされています。
- 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
- 作業環境の維持管理に関すること
- 作業の管理に関すること
- 労働者の健康管理に関すること
- 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
- 衛生教育に関すること
- 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
(2) 勧告等
労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。また、労働者の健康障害の防止に関して、総括安全衛生管理者に対する勧告または衛生管理者に対する指導、助言をすることができます。
(3) 定期巡視
少なくとも毎月1回作業場を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
産業医の資格要件

以下のいずれかの要件を満たした医師
- 厚生労働大臣の定める研修の修了者
- 労働衛生コンサルタント試験に合格した者(試験区分は保健衛生)
- 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授または常勤講師の経験のある者
まとめ
労働者数が10名以上の事業場では、その労働者数に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医といった安全衛生の中心となる管理者の選任、また労働基準監督署への届出が必要です。
各管理者の設置条件は、業種や労働者数によって異なりますので、法令をしっかりと把握したうえで、選任や届出を正しく行っていきましょう。
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