パート従業員のスキルと教育を一元管理。技術伝承を進め、食品製造における品質管理体制の基盤を固める

パート従業員のスキルと教育を一元管理。
技術伝承を進め、食品製造における品質管理体制の基盤を固める

味の素グループの冷凍食品事業会社として1972年に創業。冷凍食品業界のリーディングカンパニーとして、国内に6工場、海外に4工場を有し、餃子、焼売、炒飯、唐揚げ、ハンバーグ、さらにスイーツまで、幅広い調理冷凍食品を手がけています。

食品製造ではGMP基準やHACCP、FSSC22000などに則った、厳しい品質管理が求められます。そのため、同社の製造ラインを担うパート従業員のスキル教育は徹底され、製品ごとの製造工程を細かく分類してスキル規定し、パート従業員はスキル認定された作業を行っていると言います。

そうしたなかで、いま同社が抱えている課題は、同社の製造ラインを担うパート従業員の高齢化です。大多数が50代以上 のベテランであり、将来的な事業継続のためには、ベテラン従業員から新しい従業員への技術伝承を進める必要があるそう。その変革をコントロールするためのスキル管理システムとして、同社が「Skillnote」を選んだ理由を伺いました。
導入前の課題
  • パート従業員の過去の経験や保有スキルを「見える化」
  • Excelでは管理の難しかった、膨大なスキル種別の総覧
  • スキル管理と作業マニュアルの紐付け

導入後の効果
  • スキルデータ・人財情報・作業マニュアルを紐づけて管理し、品質管理・教育体制の盤石化
  • パート従業員の高齢化によって将来的に失われるスキルを把握し、技術継承を行うための基盤を整備

スキル管理の刷新が、生産安定性と事業継続性を高める

「Skillnote」の導入にあたっては、パート従業員のスキル管理に目的があったと聞いています。どのような課題を抱えていたのでしょうか?

冨田さん(以下、敬称略):当社の国内6カ所の工場では、パート従業員が大半を占める約2,300名の方が働いており、全員にGMP基準やHACCP、ISOの考え方を理解し、実行してもらうための丁寧な教育を徹底しています。しかし、その教育したスキルの記録と管理に課題がありました。

以前はExcelでスキル管理を行っていたのですが、一人のパート従業員が保有するスキルについては大項目しか記録されず、細かなスキルについては、各製造ラインのリーダーが作成した教育記録に頼るほかなかったのです。
生産本部 生産戦略部 生産基盤グループ 冨田賢さん
岡さん(以下、敬称略):私たちの言うパート従業員のスキルとは、正しい作業手順の理解と習熟を意味します。たとえば、「餃子の成形機のオペレーション」という大項目の場合、小項目として「具の重量を調整できる」「調整した重量を計測できる」「厚みを調整できる」などの細かなスキルが多数あります。その小項目まで表示すればスキルは膨大な量となり、Excelで一覧化して管理することが現実的ではなかったのです。

堀さん(以下、敬称略):そのため、パート従業員の過去の配属先で身につけた作業スキルを小項目まで確認しようと思ったら、過去の配属先の教育記録を確認しなければなりません。それでも、現在の製造ラインで必要とされるスキルさえ管理できていれば、大きな問題はなかったのです。

:しかし、課題を強く感じさせられたのは2020年以降のコロナ禍でした。自宅療養や、感染者との濃厚接触による自宅待機などで、多くのパート従業員が出勤できなくなってしまいました。

私たち食品製造はライフラインでもあり、基本的に製造ラインを止めることはできません。日々作り続けないと販売店などの在庫はすぐに尽きてしまいます。どうにか稼働させるためには、出勤できるパート従業員に欠員のある製造ラインの作業スキルを教育するしかありません。

多くのパート従業員はベテランですから、せめて過去に携わったことのある作業を割り振れば、教育時間を短縮できます。しかし、その「過去の経験スキル」を調べるのが容易ではなく、スキル管理体制の課題を痛感したわけです。逆に、この課題を解決すれば、製造ラインをまたいだ製造応援や、効率的な人財の再配置に有用であることは間違いありません。
生産本部 生産戦略部 生産基盤グループ長 岡修平さん

生産安定性に関わる「過去の経験スキルの一覧化」という課題があったのですね。
そのほかにも課題はありましたか?

冨田:いま、当社ではパート従業員の技術伝承を進める段階に差し掛かっています。国内工場のパート従業員の大多数が50歳以上であり、将来的に失われる可能性のあるベテラン社員の保有スキルを新しいパート従業員に伝承していく教育計画が必要とされているのです。

:つまり、「あと何年後に、どれくらいの人が年齢的に退職する可能性があるか?」がわかり、その結果「将来的に現場から失われるスキルは何か?」を正確に把握して、新しいパート従業員への教育計画を考えていかなければなりません。

しかし、Excel表にパート従業員の年齢を記載することは、個人情報保護の観点からためらわれます。センシティブな情報に閲覧権限の設定を行い、パート従業員のパーソナリティと膨大なスキルを掛け合わせて分析するには、専門的なスキル管理システムが必要だったのです。

製造現場の細かなスキルまで管理できるのは「Skillnote」だけだった

「Skillnote」の導入に至った経緯と、決め手について教えてください。

:スキル管理システムの検討を2023年3月頃から始め、まずはシステムに求める要件を定めました。主目的は「マトリクスで、全てのスキルと人の情報を管理できること」です。総覧でき、かつ条件設定で絞り込みをかけられることを意味します。それに加え、リーダーと経営層で情報の閲覧権限を切り替えられることが挙げられます。

さまざまなベンダーに相談しましたが、マトリクスでスキルと人を管理できるシステム自体はあっても、それが製造業に特有の「膨大な量のスキル種別」となると、対応できるシステムが世の中にほとんどなかったのです。
DX戦略推進部 業務プロセス変革グループ 堀陸さん
一般的な人材管理システムでは、粗いメッシュのマトリクスしか作れず、製造業の現場では必然となる膨大なスキル種別に対応できなかったということです。先にも挙げた「餃子の成形機のオペレーション」の大項目・小項目のように、細かいレベルのスキルを落とし込める製品は「Skillnote」しかありませんでした。

冨田:そうはいっても消去法というわけではなく、「Skillnote」は代表が製造業出身というだけあり、製造現場の課題に対する理解が感じられました。工場にいるメンバーはパソコンを頻繁に使う機会がないので、直感的に扱えるインターフェースである点は大きなポイントです。また、大量のスキルのマトリクス表示だけでなく、一つひとつのスキルについて詳細を見たり、スキル情報に作業マニュアルのリンクを紐付けて保管したりできるなど、製造現場のニーズや品質の維持・向上に応えられる仕様であると思います。

導入決定から本格導入までのプロセスについて教えてください。

冨田:まずは「Skillnote」が現場に合致するかを確認するため、2023年8月から10月にかけて、国内6工場のうち千葉と四国の2工場でテスト導入を実施しました。現場のリーダーに実際に触ってもらい、Excelから置き換えられるかを慎重にヒアリングしながら確認していきました。

:現場の感触も上々であったことから、国内6工場への本格導入に進みますが、これには半年以上の時間を置きました。「Skillnote」では、全てのスキルに対して「標準作業手順書」というマニュアルへのリンクを貼ることができます。しかし、マニュアルごとに粒度が異なっていたため、ある程度時間をかけ、作業と既存マニュアルを整理し、社内ポータルに格納しました。

冨田:また、その間に各工場でも「Skillnote」の操作を習熟してもらい、各現場のリーダーに自分で人財データやスキル情報の入力などを行ってもらいました。早く稼働させようと思えば、本部で一括入力し、実践で使ってもらいながら伴走型で習熟をサポートすることもできます。しかし、これからも新しいパート従業員は採用され、そのつど人財情報の設定は必要となりますから、各工場で自律的に運用してもらう以上、時間がかかってもスタート時点から試行錯誤してもらうことが最善と考えたのです。

「Skillnote」をスキルと人財を紐づける
マスターデータとして期待

現在の「Skillnote」の利用状況と、今後の見通しについてはいかがでしょうか?

冨田:国内6工場への「Skillnote」導入と教育、データ整備が今夏で完了し、現在(※2024年11月時点)は現場リーダーの更新作業が定着するよう、更新状況をモニタリングしている段階です。

Excel管理の頃は、スキルの更新頻度は多くて四半期に一度でした。しかし、実際には大きな工場で毎月7、8人程度のパート従業員の新規採用と配属があります。本来はスキル情報を随時更新し、そのつど新人の教育計画を立てて、適切な配属を考えなければなりませんが、Excelの使いにくさから対応が不十分だったのです。

「Skillnote」の導入によって、本来あるべきスキル管理の体制を、スムーズかつ効率的なかたちで行えるよう、トレーニングの継続と効率的な運用方法の検討を進めています。「Skillnote」を現場にとって日常的に使用するものとした上で、「Skillnote」の教育管理機能なども活用し、先述のベテラン人財から新しい人財への技術伝承にも取り組んでいきたいですね。

ありがとうございます。先の「パート従業員の年齢表記」への配慮など現場の人財を大切にする思いが感じられました。

:当社は社会に向けたビジョンとして「味の素グループグローバル冷凍食品事業の核として、感動と笑顔にあふれたファンレターが届く、『おいしさNo.1』『楽しさ』『健康・栄養』に加え、『環境への配慮』で突き抜けた、唯一無二の存在になる」と掲げています。

そのビジョンの大前提は「人を大切にする」ことであり、当社の根本的な文化として根付いていることは確かです。

「Skillnote」の活用は、貴社のビジョンの実現や「人を大切にする」という指針にも適うものでしょうか?

:当社にとって「Skillnote」は、生産現場におけるスキルと人財を紐づけたマスターデータとなります。先ほど、現場の負担軽減の話がありましたが、たとえばスキルデータに工数のデータを絡めて、製造ラインの人財の配置自動作成など、自動化による負担軽減も検討しているところです。

:待遇改善の面でも、勤務歴だけでなく保有スキルの数や難易度に応じた評価によって、パート従業員の努力に比例した制度を作ることも可能になるでしょう。また、今後「Skillnote」がタブレットにも対応してもらえると、現場でマニュアルや手本となる動画を見ながらOJTを行うことが可能になると私は期待しています。

冨田教育の効率化は私も期待しているところです。ビジョンに掲げる「環境への配慮」も、実はスキル教育と不可分であると考えています。というのも、誤った作業手順が見過ごされてしまうと、それが行われた期間の製品はすべて廃棄され、大規模なフードロスにつながってしまう可能性もあるからです。

私たちの冷凍食品は、一見、同じものを作り続けているように見えて、細かな製造工程の改善の繰り返しです。マニュアルの更新があった際は、再教育が必要な人を漏れなくリストアップし、なるべく負担なく再教育を実施できる仕組みを整備するために、「Skillnote」を活用していきたいと考えています。

社名
味の素冷凍食品株式会社

業種
冷凍食品の研究開発、製造、販売

従業員数
約2,800名(2024年3月末現在)

企業URL
https://www.ffa.ajinomoto.com/

利用用途
スキルと教育の一元化
品質向上
データの一元化

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