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2024.6.18
工程管理は、製造業におけるQCD(品質・コスト・納期)の効率化・最適化のために行われています。
この記事では、煩雑な情報管理が必要となる工程管理の概要や重視される理由、進め方、工程管理システム導入のポイントなどを紹介します。
工程管理とは生産管理の一部であり、製品の製造工程を管理することです。製造工程を適切に管理することは、顧客と取り交わしている品質と納期を守るためにも重要です。
なお、工程管理の適用対象は、製造工程を立ち上げる段階から生産を完了して工程を廃止するまですべてが対象となります。
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工程管理が重要視される理由として、以下が挙げられます。
製造工程において生産の遅れや生不具合が生じれば、顧客の信頼を損なうリスクがあります。生産工程を適切に管理して、顧客の信頼低下につながるようなアクシデントを未然に防止する必要があります。
仮にアクシデントや遅れが生じた場合でも、状況を速やかに顧客に報告し代替案を提示できれば、影響を最小限に抑えられます。工程管理による品質の徹底的な管理は、顧客からの信頼獲得につながるでしょう。
ここ数年、有名企業による品質管理の不備や不正が発覚し、大きく報じられることが続いています。当然、製品やサービスの「品質」に向けられる社会の目も厳しくなっていると言えます。企業には、今まで以上に品質管理の徹底が求められています。
製品開発プロジェクトは、市場ニーズの多様化に伴って変化しています。大型化・複雑化するものもあれば、多品種を小規模で行うものもあります。現在では、大小さまざまなプロジェクトが平行して進められることが多くなっています。
また、働き方も大きく変化しており、リモートワークが普及し、男性の育児休暇取得も増えています。企業には、多様化した働き方に柔軟に対応していく必要があります。
製品を生産する工場において、工程管理によって生産工程における情報を可視化することで、現場に必要な人数や時間を適切に管理することが可能です。このことで大小さまざまなプロジェクトに対応することができるとともに、必要な人員以外は工場に出勤せずに在宅勤務で対応にあたることも可能となります。
工程管理は、主に以下のような目的で行われます。
製造工程における品質には、検査工程だけでなく各工程での作業品質や原材料の品質など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。工程管理でこれらさまざまな要素の品質を管理することで、変化が生じた場合にも速やかに状況把握・対処を行うことができます。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
工程管理を継続して行うことで、生産性の向上や無理のない納期の遵守が実現できます。
工程管理において業務に着手するタイミングの明確化や計画と現状のギャップを比較できれば、対処が必要な工程の可視化と無理のない納期の遵守へとつながります。
また、各工程のプロセスを整理することで、ボトルネックとなっている作業の特定・見直しが可能です。
特定の工程や作業者に作業負担が偏ることは、望ましくありません。工程管理において、各工程の状況を把握できれば、どの工程にどの程度の負荷が生じているかを明確にでき、負荷分散を行う際のエビデンスとすることができます。
工程管理は、従業員にかかっている負荷と設備の稼働状況を考慮しながら負荷分散や調整を行うために効果的と言えるでしょう。
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工程管理では、以下が基本業務となります。
工程管理では、すでに完成した工程の管理はもちろんのこと、製造工程の立ち上げも行います。立ち上げ時における工程管理の最初の業務は、製品の作り方を決めることです。
具体的には、作業手順や使用する機械、作業場所などを定め、各工程をどのような作業単位に分けて管理するかを明確にします。
管理対象を細かくしすぎたり、管理項目を増やしすぎたりすると、管理を行う際に効率低下を招くため注意が必要です。
製造工程の設定が終わったら、各工程の生産計画の立案や工程ごとの負荷調整を行います。品質を確保しながら納期を遵守するには、特定の設備・人員に負荷の偏りが生じないように各工程の作業内容を調整する必要があります。
工程計画の立案と調整には、各工程における設備能力や担当者の能力の違いも考慮する必要があるため、それぞれの能力を可視化する仕組が必要となる場合もあります。
各工程の調整が終わり、生産が始まったら、工程全体が計画通りに進んでいるかの進捗管理を行います。予定通り進捗していれば問題ありませんが、遅れが生じている場合には遅れが納期や品質に影響するかどうかを見極める必要があります。
進捗次第では、計画を実現するために配置換えや負荷分散を行います。それでも対応しきれない場合には、顧客と納期調整を行う必要があります。
工程管理は生産管理の一部に含まれますが、進捗管理などの用語も含めて混同されやすいため、それぞれの管理対象を確認しておきましょう。
工程管理を行う際には、以下のような流れ・手順で行うことが望ましいでしょう。ここでは、工程が構築された後について紹介します。
はじめにプロジェクトごとの生産計画を立案します。生産計画は、他のプロジェクトも含めた大まかな生産計画と、担当者間で共有する細かな生産計画を準備しておくと管理しやすいでしょう。
立案した生産計画に基づいて生産を進めつつ、進捗管理や各工程で生じた課題確認を行います。ここでは、スケジュールだけでなく品質の観点からも確認することが大切です。この段階で細かな状況変化や気づきを記録しておくと、振り返りを行う際に役に立つでしょう。
生産計画を実行する中で生じた課題や気づきを振り返り、関係者との共有・見直しを行います。対策となる変更にかけられるリソースは限られているため、見直しを行う際には優先順位を立てて行いましょう。
振り返りを終えれば、新たな生産計画を立てて生産に取り組みます。PDCAのように繰り返して改善していくことで、品質の向上や安定化、生産性の向上につながるでしょう。
工程管理を実際に行う際には、以下のツールを用いることがあります。
アナログですが、もっとも手軽に始められるのが紙やホワイトボードを用いた計画表作成です。準備や導入コストが低いため、気軽にできて変更も簡単です。ただし、厳密に管理を行うのは難しいでしょう。
工程管理すべてを紙やホワイトボードで行うことは現実的ではありません。アイデアを書き出したりまとめたりする際の使用に留めることが望ましいです。
特別なシステムを導入していない場合によく使用されるのが、Excelやスプレッドシートなどの表計算ツールです。電子データなので関係者へのファイル共有も容易であり、関数やマクロの活動で作業を自動化できる点がメリットです。
しかし、変更履歴の残し方など、運用の仕組みを構築する必要があります。さらに、ファイルが外部流出しないようにセキュリティ管理の方法も考えておかなければなりません。
工程管理システムが工程管理をもっともスムーズに行う方法です。情報集約、編集履歴の管理、編集権限の付与、他システムとの連携などが簡単に行えます。
一方で、外部システム・自社システムを問わず、工程管理システムを導入する場合には、初期導入費用や運用費用といったコストがかかってきます。くわえて、運用ルール作りや操作に関する従業員への教育が必要な点にも注意が必要です。
工程管理システムの導入には、以下のようなメリットがあります。
工程管理システムを使えば、製造の各工程における進捗状況が可視化できます。突発的な状況変化が生じた場合でも、現状把握と情報共有をスムーズに行えるため、速やかに対策を実行に移すことが可能です。
仮に急な人の入れ替わりがあった場合でも、製造工程の各フェーズの情報が一元管理されているためスムーズに引継ぎを進められるでしょう。
特定の担当者がひとりで工程管理を行う場合、ミスに気付きにくい状況を生んでしまいます。仮にミスに気づけた場合でも、リカバリーが効かない状況になっていることも容易に想像できます。
工程管理システムは複数人かつ瞬時の編集・確認が可能です。その結果、入力ミスや入力漏れなどの人的ミスに気づきやすいのが特徴です。
ミスは顧客からの信頼低下に加えて、ミスをした従業員のモチベーション低下にもつながります。そのため、人的ミスを回避することによる副次的効果も大きいと言えるでしょう。
工程管理システムを活用することで、作業効率や品質の向上も実現できます。例えば、システム構築時に行うタスクの洗い出しによって無駄な作業を抽出し適切な対策を取れれば、そのぶん生産性を向上できるでしょう。
また、システム上に情報を集約して関係者全体で共有できるため、負荷の多い作業には人員を増加するなどして作業効率化も推進できます。
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工程管理システムを選定する際には、以下の点に注意する必要があります。
工程管理システムで対応できる状況は、提供されているシステムによって異なります。解決したい課題を解決できるかどうかは、システムを選定するうえでもっとも重視すべきポイントです。
基本パッケージでは実現できない場合でも、カスタマイズで対応できる場合があるので、適宜ベンダーに相談することが望ましいと言えます。しかし、カスタマイズは追加費用が必要になるため、導入コストも含めて考える必要があります。
工程管理システムを導入するメリットのひとつに、設備と人の両方を同時に管理できる点が挙げられます。
生産工程においては、設備と人の能力・工数のいずれもがボトルネックになり得ます。そのため、このふたつを合わせて管理・調整することができなければ、効果的な活用ができません。
多品種少量生産の場合、人や設備が複数のプロジェクトに関わることも珍しくありません。そのため、工程管理システムは、複数のプロジェクトの状況を横断的に管理できるものであることが望ましいと言えます。
なお、プロジェクト間で変更があった場合には、その変更がもたらす影響を可視化できると、より効率的にプロジェクト間での調整が可能となります。
工程管理システムは、その上位にある生産管理システムや下位にある進捗管理システムとうまく連携できることが望ましいです。
あらかじめ連携が確認できていれば問題ありませんが、外部・自社を問わずシステム同士の連携がうまくできない場合には、何らかの工夫が必要です。
既存システムと連携ができない工程管理システムの導入は、システム間の情報共有に時間がかかるうえに作業負担も増えてしまいます。本来の目的とは真逆の結果を招いてしまうことは本末転倒であるため、十分に注意しましょう。
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