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2024.9.5
品質管理の業務範囲は非常に多岐にわたります。また、品質管理には、関連する用語・手法・概念が多く、全てを理解するのは難しいかもしれません。しかし、品質管理の手法について知見を深めることは、品質管理業務に取り組む際に非常に役立ちます。
本記事では、品質管理の重要性や基本的な考え方、業務内容などを解説します。
品質管理(Quality Control: QC)は、製品やサービスの品質を一定の水準に保つための体系的な取り組みです。
QCの主な目的は、不良品の発生を防ぎ、安定した品質を維持することです。そのため、統計的手法や各種の品質管理ツールを用いて、製造プロセスの変動を抑える活動に取り組みます。
効果的な品質管理は、顧客満足度の向上、経営効率の改善、競争力の強化につながり、企業の持続的な成長を支える要素になります。
品質管理(QC)と品質保証(Quality Assurance: QA)は密接に関連していますが、その焦点と範囲に違いがあります。
品質管理は、主に製造プロセスや最終製品に焦点を当て、規定された品質基準を満たしているかを確認し、必要に応じて是正措置を取る活動です。
一方、品質保証は、製品やサービスが顧客の期待を確実に満たすことを目的とした組織全体の取り組みです。品質保証では、品質管理よりも広範囲に焦点を当てます。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
品質管理は、顧客満足度の観点から極めて重要です。一貫した高品質な製品やサービスを提供して、顧客の期待に応えることで顧客満足度は向上するからです。
製品の不具合や欠陥を最小限に抑えることで、顧客クレームは減少します。また、製品の性能や耐久性が向上すれば、顧客の使用体験が改善されて顧客満足度も高まります。
品質管理は、企業イメージの向上に大きく貢献します。高品質な製品やサービスを提供する企業は、市場での評価が高まり、信頼できるブランドとして認知されます。
品質管理の徹底により、製品の不具合や欠陥に起因する問題の未然防止ができるため、ネガティブな評価も避けられます。
品質管理は一見すると費用がかかる活動です。しかし、長期的には確実にコストダウンに貢献します。不良品の発生を防げれば、代納や手直し作業にかかるコストが削減できるからです。
また、製造プロセスの効率化や最適化により、生産性が向上し、製造コストも低減できます。さらに、品質向上により製品の耐久性が高まれば、保証期間中の修理や交換にかかるコストも削減できます。
品質管理には、5つの基本的な考え方があります。以下で、詳しく説明します。
品質管理における顧客志向とは、顧客のニーズと期待を最優先に考え、それに基づいて品質基準を設定し、製品やサービスの提供することです。
この考え方では、「品質」を単に製品の物理的特性だけではなく、顧客が感じる価値や満足度として捉えます。そのため、顧客の声に耳を傾けてフィードバックを積極的に収集し、製品開発や改善に反映することを重視します。
プロセス管理は、製品やサービスの品質を確保するために、プロセス(仕組み)を体系的に管理する考え方です。
品質の不具合は、製造中のプロセスに根本的な原因があるため、「品質を工程でつくり込む」ことによって解消可能です。
「品質を工程でつくり込む」ために、各プロセスを詳細に分析し、品質に影響を与える要因を特定します。そして、それぞれの工程で品質基準を設定し、継続的なモニタリングと改善を行います。品質管理にはプロセス管理が欠かせません。
重点志向は、最も影響力の大きい要因や問題に集中的に取り組む考え方です。限られた資源を効果的に活用するための戦略的アプローチと言えます。
優先順位を明確にして、組織全体の取り組みの方向性を統一することで、資源の最適配分が実現できます。
事実に基づく管理は、客観的なデータと科学的な分析を基に意思決定を行う品質管理の考え方です。
感覚や経験だけに頼るのではなく、統計的手法や計測技術を用いて、品質に関するさまざまなデータを収集・分析します。これにより、問題の本質を正確に把握できるため、効果的な改善策の立案が可能です。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act/管理のサイクル)は、品質管理プロセスを継続的に改善する体系的なアプローチです。
このサイクルは以下の4つのステップで構成されています。
PDCAサイクルを繰り返し運用することで、製品品質をより高いレベルで維持できるようになります。
品質管理部門の主な業務内容には、日常的な品質監視活動、品質事故の再発防止活動、品質事故の予防活動、そして、顧客満足度の向上に関する活動があります。これらの活動をとおして、製品やサービスの品質は維持・向上できます。これにより、企業は競争力を高められます。
以下、それぞれの業務内容について詳しく説明します。
品質監視活動は、製品の品質が顧客と取り決めたレベルに達しているかどうかを検証・監視する活動のことです。
出荷前の最終製品の外観チェックや物性試験などが挙げられます。他にも、物性試験を行う設備への校正や、製造中の工程能力監視、製造が正しい手順で行われるようにする作業手順の整備などが含まれます。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
品質事故の再発防止活動は、発生した品質問題の根本原因を特定し、同様の問題が再び起こらないように対策を講じる業務のことです。
問題が発生したら、詳細な分析を行い、なぜその問題が発生したのかを突き止めます。その際、「なぜなぜ分析」や「特性要因図」などの品質管理ツールを活用することが一般的です。
原因が特定できたら、原因に対する具体的な対策を立案・実行します。対策の効果も継続的にモニタリングして、必要に応じて追加の改善を行います。並行して、類似作業や類似製品への水平展開も進めていきます。
類似の品質問題が2度と発生しないよう、手順などへの落とし込みが重要です。
品質事故の予防活動は、問題が発生する前にリスクを特定し、未然に防ぐための取り組みです。この活動は、事後対応よりも効果的な品質管理手法として注目されています。
主な予防活動には、設計段階におけるFMEA(故障モード影響解析)の実施、製造プロセスの能力評価、定期的な品質監査などが挙げられます。これらの活動をとおして、潜在的な問題点を洗い出し、事前対策を立案することができます。
また、従業員への品質教育も、重要な予防活動です。こういった活動により、従業員が品質に対する高い意識と正しい知識を持ち、日常業務のなかで品質リスクを早期に発見・対処することができるようになります。
関連記事:【解説】FMEAとは?期待効果と注意点について解説します。
顧客満足度の向上のためには、前述の品質事故の再発防止や予防活動が欠かせません。さらに、これらの活動に加えて、顧客のニーズを正確に把握して、それに応える製品やサービスを提供することも顧客満足度向上に貢献します。
具体的な活動としては、顧客満足度調査の実施、顧客からのフィードバックの分析、それらの結果を反映させた製品開発・改善、顧客サポート体制の強化、迅速なクレーム対応などが挙げられます。
また、品質管理部門は他の部門と連携して、顧客視点に立った品質基準の設定や、顧客価値を高める品質改善活動を推進しましょう。これらの活動は、単に不良品を削減することだけに留まらず、顧客により高い満足感を与えることにも寄与します。
品質管理にはさまざまな手法があります。ここでは、代表的な5つの手法をご紹介します。ここで紹介する手法は、相互に補完し合う特徴があります。そのため、上手に組み合わせて活用することで、より包括的な品質管理システムの構築を可能にします。
PDCAサイクルは、継続的な改善のための体系的なアプローチです。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップを繰り返し、品質管理プロセスを継続的に向上させます。
Planでは、目標設定と実行計画の立案を行います。Doでは、計画に基づいて実際の活動を行います。Checkでは、結果を測定し、計画との差異を分析します。Actでは、分析結果に基づいて改善策を実施します。
PDCAサイクルは、1回のサイクルで完璧な結果を求めるのではなく、何度も繰り返すことによって徐々に効果を得られるものです。外部環境や要求の変化にも柔軟に対応しながら運用することで、継続的な品質向上が実現できます。
QC7つ道具は、品質管理における問題を可視化・分析するための手法です。
QC7つ道具は以下です。
これらのツールによって品質管理における複雑な問題を分かりやすく整理することで、効果的な解決策を見出せます。また、これらのツールは単純で使いやすいため、現場レベルにおける品質管理活動にも広く活用されています。
関連記事:QC7つ道具と新QC7つ道具とは?違いや手法の説明、具体例、覚え方を分かりやすく解説
関連記事:QCサークル活動(小集団改善活動)とは? メリットと進め方、時代遅れと呼ばれる理由を解説
品質管理の4Mとは、製品の製造過程において、品質に影響を与える4つの要素のことです。以下の頭文字から名付けられました。
問題発生時には、どの要素に原因があるかを分析するために使用します。
関連記事:製造業・品質管理の4Mとは? 5M+1Mや6Mとの違い、変更管理、効果の出し方について解説
品質管理の5Sは、職場環境を改善・維持する5つの行動指針です。以下の頭文字から名付けられました。
これらの活動をとおして、作業効率の向上、品質の改善、安全性の確保、従業員のモラル向上などが期待できます。5Sは単なる環境整備ではなく、組織文化の改革にもつながる取り組みです。
関連記事:5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)とは? 概要、導入目的、メリット、導入のポイント、7Sとの違いを解説
IE(インダストリアルエンジニアリング)は、生産システムや業務プロセスを科学的に分析・最適化する手法です。品質管理においては、製造プロセスの効率化と品質向上を同時に追求するために活用されます。
IEの主な手法には、作業測定、動作分析、レイアウト設計、ラインバランシングなどがあります。これらの手法を用いると、無駄な動作や待ち時間の削減、作業の標準化、品質のばらつきの抑制などが進みます。
また、IEは品質向上と生産性向上の両立を目指すため、うまく運用ができれば、コスト削減と品質向上を同時に達成できます。さらに、人間工学的な視点も取り入れることで、作業者の負担軽減や安全性の向上にも貢献します。
関連記事:インダストリアルエンジニアリング(IE)とは?メリットや具体的手法、導入企業例や勉強方法を解説
品質管理の概念として、TQC、TQM、SQCという3つの概念があります。これらは品質管理の発展過程で生まれ、それぞれ異なる特徴と目的を持っています。
TQC(Total Quality Control)は、全社的品質管理と訳され、組織全体で品質向上に取り組む際の総合的な品質管理手法です。
この手法の特徴は、品質管理を特定の部門だけの責任とせず、経営者から現場従業員に至るまで、全社員の参加を重視している点です。また、製品の品質だけではなく、業務プロセスの品質も含めた幅広い視点で品質を捉えていることも特徴の一つです。
関連記事:TQC(全社的品質管理)とは?意味や歴史、TQMとの違い、具体的な手法を解説
TQM(Total Quality Management)は、TQCをさらに発展させた経営手法です。総合的品質経営と訳されます。
TQMは、経営活動全体に品質の概念を適用しています。具体的には、品質向上に加えて、コスト削減、納期短縮、安全性向上、環境保護などです。経営のあらゆる側面における継続的改善を目指しています。
関連記事:TQM(全社的品質マネジメント)とは?意味やTQCとの違い、具体的な活動を解説
SQC(Statistical Quality Control)は、統計的品質管理と訳されます。統計的手法を用いて品質を管理する手法です。
SQCでは、統計的手法を用いているため、少ないサンプル数でも信頼性の高い品質判断ができるようになります。
SQCの代表的な手法には、管理図、抜取検査、実験計画法などがあります。これらの手法を活用して、プロセスの安定性評価、不良品の発生予測、品質改善の効果測定などを科学的に行えます。
関連記事:SQC(統計的品質管理)とは?意味やメリット、具体的な手法を解説
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