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2024.4.22
いま、スキル管理が注目を集めています。しかし、現場ではスキルデータ(スキルや資格、経験、教育などの情報)をExcelなどで管理している場合も多く、データの一元管理や活用にまで手が回っていないことが多いかもしれません。
この記事では、スキル管理業務の効率化を図りたい方やスキル管理によって蓄積したデータを有効活用したい方に向けて、「スキル管理システム」を徹底解説していきます。タレントマネジメントシステムとの違いや、効果とメリット、選定ポイントも踏まえて解説しますので、ぜひご一読ください。
スキル管理システムとは、事業部・部門や従業員が保有する「スキルデータ」を管理するシステムのことです。
事業部・部門や従業員が保有するスキルデータを一元化して可視化することで、スキルマネジメントの観点から組織としての強みや弱みを把握することができます。
その結果、スキルデータを計画的な人材育成・教育訓練や、戦略的な人材配置に役立てられます。また、スキルデータを経営戦略や事業計画の立案に活用することも可能となります。
スキル管理システムを導入する目的としては、主に以下の3つが挙げられます。
スキル管理システムは、主に以下の6つの機能によって構成されています。
スキル管理システムと混同されやすいものにタレントマネジメントシステムがあります。ここではスキル管理システムとタレントマネジメントシステムの違いを説明します。
タレントマネジメントシステムは、主に「従業員一人ひとりの個人情報や異動、評価など、個人や組織のさまざまな情報をデータ化し、一元管理」を目指すものとして活用されています。
経営層や人事部門が利用することが多く、人材情報の見える化によって、優秀なタレントを見つけ、戦略的な人材育成や人材配置に活用できることが特徴です。
一方、スキル管理システムは、事業部門や作業現場といった、より業務に近い領域で利用される傾向にあります。また、経営層や人事だけでなく、事業部の責任者や課長・マネジャー層が積極的に活用していることも特徴の一つです。
関連記事:タレントマネジメントシステムとは? 導入のメリットや失敗しない選び方について解説
スキル管理とは、事業部・部門や従業員が保有するスキルや資格、経験、教育などの情報を管理・活用することです。
特に製造業では、従来よりISO9001などの認証取得を目的とした「力量管理」が一般的に行われてきました。
スキル管理によって、実現できることはの3点です。
そもそもなぜスキル管理が必要とされているのでしょうか。ここではその背景について、主に外部環境の変化がもたらす要因を5点紹介します。
少子高齢化の影響もあり従業員の高齢化が進む一方、若手従業員の採用や定着に課題を抱える企業が増加しています。
慢性的な人手不足から今後も人材の獲得競争が激化することが予想されています。そのため企業には、若手社員への適切な「スキル管理」を通してキャリアパスを明確させ、モチベーションと定着率を向上させることが求められています。
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
経済産業省は、2022年5月に「人材版伊藤レポート2.0」を発表し、人材戦略に関する変革の方向性を提示しました。
そこでは「人的資本経営」に重きを置き、経営戦略と人材戦略を連動させる取り組みが必要不可欠という考えが示されました。
なお、「人的資本経営」は、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を指します。
情報開示が求められる19項目には、人材育成や研修への投資など、スキル管理に関連する内容も存在しています。
また、人的資本情報開示の国際的なガイドラインであるISO30414には、人材マネジメントの11領域において、データを活用してレポーティングするための測定基準(メトリック)が示されています。
58ある判定基準のうちの「スキルと能力」「後継者計画」が、スキル管理に関連する項目です。「人的資本経営」の観点からもスキル管理への対応は必須だと言えます。
関連記事:人的資本経営とは? 注目を集める理由、実践の方法、メリット
技術革新が進んだことで、既存技術やスキルの陳腐化とアップデートが加速しています。
例えば、カーボンニュートラルに向けた技術開発やChat GPTをはじめとしたAIなどのテクノロジーの発達によって今後求められる技術は大きく変わっていくでしょう。
技術の陳腐化とアップデートに備える意味でも、スキル管理のよる「技術の可視化」を進めておく必要があります。
産業のあらゆるシーンでDX化やデジタル技術の活用が進んでいます。
例えば製造業では、スマートファクトリー化によって製造現場のさまざまな機器や材料、手順、人をデジタルで捉え、生産性向上や労働災害防止などに役立てています。
スマートファクトリーを進めるためには、現場で働く「人」が持つスキルや資格などのスキルデータを上手に活用することが求められます。
スキル管理による人の持つスキルデータを共有・可視化することは、スマートファクトリー推進に欠かせない要素と言えるでしょう。
製品やサービスの品質を管理し、顧客満足度を高めるための規格である品質マネジメントシステムや労働安全衛生マネジメントシステムなど、さまざまな法令や規格が存在しています。
例えば、ISO9001は、国際標準化機構が定めた品質マネジメントシステムの国際規格です。日本国内でも4万件を超える取得件数があり、製造業や建設業を中心に多くの企業が認証を受けています。
ISO9001では、認証を得るための要求事項として、「製品品質に影響がある仕事に従事する人の力量を把握し、必要な教育・訓練を実施すること」を求めています。
ISO9001が要求する力量把握のために、スキルマップ(力量表)などを用いたスキル管理(力量管理)が必要とされています。
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
スキル管理システムを導入すれば、さまざまなメリットや効果を得ることが期待できます。以下ではスキル管理システムの導入によって想定しうるメリットと効果を解説します。
事業部や部門ごとに紙やExcelなどでバラバラに更新・管理されているスキルデータをデータベース化。そうすることでスキルマップや育成計画、教育記録などを効率的に作成・メンテナンスできます。
一連の作業を一つのスキル管理システムの中で完結できるため、転記・確認作業にかかっていた手間が大幅に削減できます。
スキルデータをデータベース化することによって、事業部・部門や従業員一人ひとりのスキルを可視化でき、組織や従業員が保有するスキルの総量の把握ができるようになります。
資格の保有者の検索やリスト化ができます。さらに、資格の有効期限の事前通知も可能なため、無資格者による業務の実施を未然に防ぐことができます。
従業員一人ひとりのスキルや資格の保有状況や業務経験の有無を簡単に確認できるので、従業員の志向や個性に合わせて、キャリアプランや育成計画の立案が可能となります。
従業員のスキルや資格、経験といったデータを活用することで、客観的なデータに基づいた戦略的な人材配置が行えます。
異動やジョブローテーションの検討、新規プロジェクトの立ち上げにおいても、スキルや経験を加味した組織改編が可能です。
また、製造業においては、急な生産負荷変動や欠員が発生した際に、必要なスキルを持つ人材を検索し、タイムリーに作業応援者を配置できます。
要員計画(人員計画)とは、企業が事業計画を立てる上で、必要な人材の確保や不要な人材の整理などを計画することです。
スキルの可視化により、組織内の従業員一人ひとりが保有するスキルの総量の把握が可能となるだけでなく、将来必要となるスキル、技術者の退職等で不足が予想されるスキルを予測できるようになります。
その結果、必要なスキルの獲得に向けた要員計画(人員計画)を策定できるようになります。
今後自分が身につけるべきスキルや資格が可視化されることで、足りないスキルや資格の取得を従業員に促すことができます。スキルや資格の取得という目的を持つことで、従業員に高い成長意識を持って業務に取り組んでもらうことができます。
スキル・資格情報の可視化は、従業員のモチベーションアップに寄与し、従業員のキャリア開発を支援します。
製造業の多くの企業は、自社の製品・サービス品質を継続的に維持・向上するため、品質マネジメントシステムに関する国際規格(「ISO9001」「IATF16949」等)を取得しています。その要求事項の一つに「力量管理」があります。
しかし、紙やExcelでの管理では、力量管理の形骸化を招きやすく、品質マネジメントシステムの運用においても内部外部を問わず監査からの指摘が発生しやすくなってしまいます。
スキル管理システムを導入すれば、スキルマップや教育記録などを一元管理できるため、監査の際にシステム画面を見せるだけで対応を済ませることができます。審査対応の簡略化や指摘の減少につながります。
自社に適したスキル管理システムを選定するためには、以下のポイントを押さえて、事前に要件を整理しておきましょう。
スキル管理システムは、種類も機能もさまざまです。そのため、まずは関係者間でスキル管理システムを導入する目的を共有しておきましょう。「解決したい課題は何か」「何を改善したいか」「どんな効果を得たいか」といった観点から議論すると良いでしょう。
スキル管理システムは、「クラウド型」と「オンプレミス型」の大きく2つの種類があります。
昨今では、スムーズに導入できる点やシステムの改善速度、利用開始後の保守・サポート、他社との連携のしやすさなどが評価されてクラウド型が選ばれる傾向にありますが、それぞれの特徴を理解した上で選定しましょう。
そもそもの導入目的や解決したい課題に対して、必要な機能が備わっているかどうかも重要な選定ポイントです。
サービスサイトに掲載されている情報やシステム会社の営業担当から提供される情報だけから判断するのではなく、目的に対してしかるべき機能が備わっているかどうかを事前に確認しておきましょう。
システム導入後、システムが社内に定着してその効果を最大限発揮するためには、何より「使いやすさ」が重要となります。
そのため、実務担当者や実際の利用者(ユーザー)がストレスなく使える設計やUI(ユーザーインタフェース)になっているかを、確認しておきましょう。
自社に類似する規模、業種における導入実績があるかどうかを確認しましょう。
自社と同業種の企業の導入実績が多ければ、関連する業務への理解も高いものと予想されます。そのため、導入前後のサポートにも期待が持てます。
念の為、自社のセキュリティ基準と照らし合わせて確認を行いましょう。
データの暗号化や第三者による脆弱性診断など、独自のセキュリティ項目を設定しているシステムがほとんどですが、万が一に備えてチェックは怠らないように注意しましょう。
利用を開始する前と利用を開始した後、双方のサポート体制が充実しているかを確認しましょう。
スムーズな運用開始と確実な運用定着を実現するためにも、システム会社から適切なサポートを受けられるかは大切なポイントです。また、サポート担当者がシステムへの理解だけでなく、スキル管理領域へも十分な知見を持っているかどうかも重要な選定ポイントのひとつです。
スキル管理システムは、使用する目的や管理する情報、利用者・管理する対象者によって、大きく2つに分類することができます。以下では、それぞれの特徴を紹介します。
タレントマネジメントシステムや人事システムの多くには、標準機能としてスキル管理機能が搭載されています。
これらのシステムでスキルデータは、人材配置や人事評価を行う際の検討材料として使用されることが多く、主な利用者としては経営層や人事部門が想定されています。
製造業や建設業といった業界やITエンジニアなどの職種に対してスキル管理を行う場合には、専門性の高い「特化型」のシステムが向いています。これらの領域ではスキルや資格情報が複雑なため、搭載型のシステムでは対応しきれないケースが多いと言えます。
特化型のシステムは、業界の出身者や経験者が開発している場合が多く、業界や職種に対する理解や知識も豊富です。また、現場の業務内容を深く理解した上で設計されており、システムも使いやすい傾向にあります。そのためシステムの導入後、システムの利用者への早期定着も期待できます。
この記事ではスキル管理システムについて解説しました。
スキルや資格情報をExcelで管理している組織や現場もまだまだ多いと思います。しかし、スキル管理システムを導入することでスキルデータの運用管理業務の効率化だけでなく、蓄積されたデータを有効に活用することが期待できます。
一方で、スキル管理システムやツールは昨今数多く登場しており、自社に合ったシステムを探すことに悩まれるかもしれません。
そういった場合には、システム提供会社に直接相談することをおススメします。それぞれのシステムについて理解が進み、比較検討が容易になります。気になったシステムがあればまずは気軽に問合せしてみましょう。
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