インフラを支える技術を次世代へ。350名のスキルデータを根拠とした配置と育成の基盤構築 

株式会社明電舎
重工業・重電 スキル・力量の一元管理 人材配置の最適化 教育・研修体制の構築
規模: 単体:4,195人/連結: 10,082人(2026年3月31日現在)
業種: 重電機器メーカー
明電舎は、大手重電機器メーカーとして、発電システムや変電機器などをはじめ、水処理施設や鉄道、公共施設などの社会インフラを支える様々な製品、システムを提供しています。その中でも、水処理設備や変電設備など配電盤製作の開発・設計・生産拠点である沼津事業所の装置工場システム装置ユニットでは、2023年1月から約350名を対象に「Skillnote スキルマネジメントシステム」(以下、「Skillnote」)を導入しました。 

従来のマクロを組んだスキル管理から脱却し、部署間の応援体制や人財配置、さらに、計画的な技術伝承、人財育成を目指して導入した「Skillnote」の取り組みをお聞きしました。導入によりスキルデータを根拠とした人財配置・育成の基盤が整い、配置判断の属人化解消と教育の構造化に向けた取り組みが着実に進んでいます。

導入前の課題

  • 記憶頼みの業務アサイン 
  • 情報の分散とExcelの操作性からスキル管理の形骸化 
  • 計画的かつ効果的な教育の実行 

導入後の期待

  • スキルデータを根拠とした人財配置の基盤構築 
  • 操作性やアクセス改善によるスキルや業務経験など更新負荷軽減 
  • 教育計画から理解度確認までの育成サイクルの構造化 

繁忙期の波と育成時間の喪失、インフラ事業特有の人財課題 

「Skillnote」の導入以前に感じていた課題についてお聞かせください。 

野中さん(以下、敬称略):当社の沼津事業所の装置工場システム装置ユニットでは電気設備用の配電盤や制御盤などの開発から設計、製作、試運転調整までを一貫して行っています。 

水処理設備や変電設備などの公共事業を多く手がけており、これらは3月の年度末が工期の締め切りとなる特性があります。案件の工程上、部によって仕事のピークが異なり、上半期は設計部門に負荷がかかり、製品が完成に近づく下半期は品質保証部門や現地での試運転調整に負荷が移るという状況でした。

星野さん(以下、敬称略):さらに案件ごとに仕様が異なる個別設計型であり、製品のバリエーションが非常に豊富です。最近では、人手不足も影響し、メンテナンスの省力化や自動化など要求が高度化・複雑化もしています。

野中:このような繁忙期の波に対応するため、上半期は試験部門から設計部門へ、逆に下半期は設計部門から試験部門や現地作業へと、業務応援を相互に行うことで負荷バランスを調整しています。
装置工場 装置技術部長 野中 明広 さん 

業務応援を行うなかで感じていた課題について教えてください

野中:業務への社員の配置は、管理職の記憶をもとに行うことが多く、いつも固定されがちでした。社員のスケジュールを見ながら、過去の記憶に基づいてその領域での案件を「やったことがある人」を配置しがちなため、特定の領域の経験値は上がる一方で、未経験領域でスキルや経験獲得がなかなか進まないといったことを感じていました。 

加えて、例えば、「CADを使ったことがある」という社員でも、実際にどの程度使えるのか、最新バージョンに対応できるかといった実態は、現場に来て初めてわかるということもありました。

その他にも人財育成や教育に悩みや問題もあったと伺いました

星野:先ほどお話しした製品に対する要求の高度化や複雑化に加え、働き方改革によって従来の働き方から変化が求められています。かつては時間をかけてじっくり教えることができていましたが、教える側も教わる側もこれまでと同じように時間を捻出することがなかなか難しい状況になっています。 
装置工場 システム装置ユニット 電気設計部 星野 健一 さん 
野中:弊社ではOJT主体の教育であるため、「誰に教わるか」によって育ち方がバラバラになり、基礎知識の定着にもムラが生じていました。そういった影響もあり、効率的にぶれの少ない若手育成を早期に実行していきたいと考えていました。 

加えて、インフラ事業を多く手掛けていることもあり、新しい技術の習得だけではなく、同時に従来の技術も継続して維持していく必要があります。そのため、各技術に求められるスキルを的確に把握したうえで、それらを習得した人材を組織全体で計画的に育てていくことが極めて重要な課題となっていました。 

フォルダの奥に眠るデータ、更新されないExcelが招いた管理の形骸化

「Skillnote」導入以前のスキル管理の状況について教えてください

野中:これまでお話したように、社員のスキルや経験など活かすという意味では、従来取り組んでいたスキル管理では現場のニーズには必ずしも応えられているとは言えない状況でした。ISO認証対応以外ではなかなか活用しきれていないというのが実情でした。 

具体的には、電気設計部・構造設計部・品質保証部といった各部署が、それぞれ独自のExcelファイルでスキルを管理していたため、部署異動の際に記録が引き継がれないという問題がありました。また、スキルや資格情報、業務経歴がExcelであったり、ワードであったりといった複数の帳票で管理されていて、それぞれ別々のフォルダに管理されていました。

その結果、社員がどのような業務や現場を経験し、どの程度のスキルを持っているかが把握しにくい状況でした。また、評価基準も部署ごとに統一されておらず、ある部署での5段階評価の「5」に相当するスキルが、別の部署では「3」と評価されるといった齟齬も生じていました。 

スキル管理について具体的にどんな課題があったのでしょうか

野中:ユニット全体で300名を超える規模を管理対象としており、マクロを組んだExcelで管理していました。ただ、人数の多い職場は動作が重くなり、管理職の待ち時間も多くなるなど操作性にも課題がありました。結果としてスキル管理が形骸化する要因の一つとなっていました。 

さらに、先ほども申し上げたように、各ファイルがフォルダの深いところに置かれていることもあり、スキルや資格情報、業務経歴に関する各情報を確認する手間も大きかったです。
このような状況を変えていきたいと考えていたため、スキル管理のシステム化の検討を進めました。

使いやすさと中長期の組織力強化、システム選定と導入までの道のり 

「Skillnote」導入に至った経緯と、決め手について教えてください。

野中:当時は、もう1社と比較していました。ただ、実際に使ってみたところ、使い勝手が良かったという印象が残っています。というのも、当時、社内で使っていたスキルマップの見た目やフォーマットなどに一番近く、これなら現場でも使ってもらいやすいと思いました。やはり、第一印象で「使いにくそう」と感じてしまうと、現場でも使ってもらえないですからね。 

「使い勝手」が良いとご評価いただきましたが、それ以外の点はいかがでしたか? 

 野中:単純な使いやすさだけではなく、スキルや資格、教育に関する情報に加えて、業務経験を管理できる機能があった点もポイントでした。 
システム装置ユニットでは、業務上のスキル認定に一定の作業経験を取り入れていますので、これらが連動した状態で管理ができると評価にも活用しやすくなると感じました。

導入決定から、本格運用までのプロセスについて教えてください。

野中:まず、各部門・部署のスキルをどのようにまとめるかという点に着手しました。具体的には、今回導入したシステム装置ユニットには電気設計部、構造設計部、品質保証部など部門の下には10程度の課があり、実は似たような表現をしているスキルが存在していました。これらを各部門とスキルマップなどの帳票を集めながら協議し整理していきました。 

また、スキルを評価する際に部門ごとにその評価基準が異なっていることもわかりました。例えば、電気設計部ではスキルを評価するレベルが1〜3しかなかったですが、他の部門では5段階で評価していました。人財配置や育成において評価の基準統一は欠かせないため、これらについても、すべて5段階評価に統一し、できるだけ部門間の評価基準を揃えました。
これらを進めるためには、各部門の協力が欠かせません。スキルデータの活用に向けて、"展開・浸透活動”として、各部門長とは、導入の目的やデータ活用の意義などについて何度も対話を重ねながら、導入時だけではなく、運用開始後の浸透にも取り組んでいます。 

「さくさく動く」から始まった「Skillnote」を活用した配置・育成サイクル 

「Skillnote」導入後の運用状況や効果について教えてください。

野中:「Skillnote」で開始したスキルマップや教育の更新は、"さくさく動く”と好評ですね。現場の部門長や課長などからもそのような声を聞いています。スキルや資格、業務経歴の情報が一元化され、各情報へのアクセスも容易になりました。 

また、今回のシステム導入を機に業務経歴のフォーマットも統一しました。これまでは、紙やExcelなどで帳票がばらばらで、記入項目も統一されていませんでした。「Skillnote」での業務経歴の管理は、選択方式にするなど入力情報のばらつきを防ぎ、できるだけ社員の入力負荷を少なくするようにしました。誰がどの現場を経験し、どの程度のスキルがあるかが容易に把握できるようになりました。

また、取得した資格の有効期限や立てた教育計画の実施状況についても、メールで通知が来ますので、管理の漏れや遅れを防げるようになりました。
「Skillnote」上のスキルマップ機能のサンプル画面。
育成計画の進行中や資格取得予定、計画の遅延など色の違いで把握することが可能。
(画面上に表示されている人名は、サンプルとして作成した架空のものです。) 
 
「Skillnote」上の業務経歴の登録画面。選択方式など設定できるため、ばらつきを防ぎ、入力負荷を軽減可能。
(画面上に表示されている人名や案件名などは、サンプルとして作成した架空のものです。) 

他にもどのようなことがありましたでしょうか

野中:例えば、技師への推薦や主任選抜の際に、「Skillnote」に登録されているスキルや資格などの習得状況のスキルデータの合計点(例:20点以上など)を客観的な基準や根拠として活用しています。これにより、頑張っている人が正当に評価される「納得感」の醸成につながっていると思います。 

星野:他の観点でいうと、とくに技術伝承を進める際に行う教育については、教えっぱなしを防ぐために「Skillnote」上に理解度を測るための回答項目を作成し、若手にはそこでアウトプットをしてもらう仕組みを考えることができました。理解度の確認や状況に合わせたフォローができるようになっています。

社員がモチベーション高く取り組める環境を整えたい 

今後の期待や展望についてお聞かせください。

野中:これまでOJT頼みだった育成を変えて、基礎教育とスキルデータをきちんと連動させていきたいと考えています。そうすることで、新入社員も派遣社員も、誰もが安心して成長できる環境にしていきたいんです。また、社員には長期的に活躍してもらいたいと考えています。そのためには、必要なスキルを見える化し、計画的な習得のサポートをしていくことが大事だと考えています。その結果、本人も自分のキャリアを意識しながら仕事に取り組めるようになり、仕事に対する意欲も高まっていくのではないかと期待しています。 

星野:教えて終わり、ではなく、本当に伝わっているかどうかが大事だと実感しています。スキルデータを個人面談と結びつけることで、この人には何が足りていて、今期何を優先すべきかが具体的に話せるようになる。不足しているスキルが数字で見えれば、育成の優先順位も迷わなくなります。ベテランの知見を若手に自然な形で引き継いでいく、その土台としてSkillnoteをしっかり使いこなしていきたいですね。