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5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)とは? 概要、導入目的、メリット、導入のポイント、7Sとの違いを解説

5Sとは?

製造業を中心とする多くの企業で、職場環境の改善を目的に「5S活動」が導入されています。しかし、従業員に本来の目的が認識されていないまま導入されることで、5S活動を行うこと自体が目的になってしまっている場合も見受けられます。

せっかく5S活動を行っても、本来の目的が把握されていない状況では十分な成果が得られません。この記事では、5S活動の概要や取り組む目的、構成する要素、メリット・デメリットを解説します。

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5Sとは

5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」の5つをアルファベット表記した際に、頭文字が「S」になることから付けられた用語です。

5Sを構成する各項目は、いずれも特別なことではありません。各活動はどの企業でも一般的に行われていることです。5S活動は、組織として目的を持ち意識的に行う活動のことなのです。

5S活動は単なる職場改善活動ではありません。5S活動の目的は、経営に関連する課題改善に寄与するものを想定しています。

なお、多くの企業が取り入れている5S活動ですが、とりわけトヨタ式の5S活動が知られており、業務効率を大幅に改善することで知られています。

整理

「整理」は、必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てることを意味します。

整理を行う対象は、実際に目に見える物品だけに限りません。データや情報、タスク、職場のスペースなど多岐にわたります。整理を行うことで、不要なものを捨て必要なものだけを残すことができます。

整頓

「整頓」は、必要なものの置き場所を決めて、それぞれの置き場所を誰が見ても分かるように表示することを意味します。探しているものが近くにあると分かっていてもどこにあるのか分からない状態では、探すのに時間がかかってしまい、非効率です。

すでに「整理」によって、必要なものだけを残している状態なので、「整頓」によって必要なものの置き場所を決めて簡単に見つけられるようにしておくことで、必要なときに必要なものを速やかに見つけられるようになります。

清掃

「清掃」は、身の回りのものや職場をきれいに掃除することを意味します。5Sで定義される清掃は、一般的に使用される清掃の意味合いと大きく変わらないため理解しやすいでしょう。

清掃を行う際には、目立つ場所だけを清掃するのでは不十分です。目に付きにくい細部まで清掃が必要かどうかを点検し、清掃を行うようにしましょう。

清潔

「清潔」は、職場環境や身の回りを衛生的な状態に維持することを意味します。

5S活動における整理・整頓・清掃の各項目が適切になされていれば、すでに衛生的な状態が実現できていると見做せます。そのため、清潔では、衛生的な状態を維持することに重きを置きましょう。

常に清潔な状態を維持することは簡単ではありません。定期的にチェックを行うことで、清潔な状態は維持できます。

躾(しつけ)

「躾(しつけ)」では、躾以外の4Sを習慣付けて維持し、さらにより良い方法を探求します。言い換えると、躾とは、職場で働くメンバーの全員が躾以外の4Sを意識できるようにするための仕組みづくりのことです。

4Sの内容以外にも、挨拶や言葉遣い、職場で必要な作業手順の徹底なども対象となります。このように、躾ではさまざまな教育を継続的に行います。

2S、3S、4S

5Sは、「整理」「整頓」「清掃」の「3S」と「清潔」「躾」の「2S」に分割して考える場合があります。

前半の3Sは、職場をきれいな状態にする活動のことを意味します。一方、残りの2Sは、そのきれいな状態を維持し、さらに改善する活動のことを意味します。

まずは、前半の3Sが適切にできているかどうかを確認します。その上で、残りの2Sに取り組んでいくことが望ましいと言えます。

また、企業によっては5S活動の一部を切り出して、シーンに応じて2S(たとえば「整理」「整頓」)、3S、4Sとして扱う場合があります。それぞれの定義は職場ごと、シーンごとに異なるため、内訳を確認し正しく認識した上で取り組むことが重要です。

5Sを行う目的

職場で5S活動を行う主な目的は以下です。

職場環境の改善

職場がきれいな状態を維持できていれば、気持ち良く仕事に取り組むことができます。5S活動を通して職場環境の改善に取り組む企業は多くあります。

また、職場をきれいにする整理・整頓・清掃などの活動によって、従業員は業務から一度離れ、気持ちを切り替えることができます。そのため、精神的にリフレッシュした状態で、担当する本業務に取り組むことができるようになり、従業員のモチベーション向上にもつながります。

職場環境を清潔な状態にして気持ち良く仕事に取り組める環境をつくることができれば、離職率の低下にもつながるでしょう。

安全性の確保

職場環境が整えられていない状態では、従業員の安全が十分に確保できずに業務中に怪我をしてしまう恐れがあります。

5S活動を通して職場環境がきれいに整備されていれば、職場が散らかっていることにより従業員に危険が生じるリスクを低減できます。また、「躾」によって作業手順が守られていれば、安全に仕事を進めることができます。

とくに、製造業や建設業などでは不慮の事故を防ぐことを目的として積極的に5S活動が取り入れられています。

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業務効率化

5S活動の整理・整頓では、不要なものを排除して、必要なものが見つけやすい場所に整えられている状態を構築します。

作業時に必要となる備品などを探す手間が省け、不要なものと取り違えるリスクもないためスムーズに仕事を進めることが可能です。

また、単に備品や情報だけではなく、形式的に行われてきただけで本当は不要だった仕事なども整理・整頓の対象になります。これは、業務自体をなくしてしまうことなので、大幅な業務効率化や生産性の向上を見込めます。

05. 製造現場人材のDX化

5Sのメリット

5S活動に取り組むことで、以下のメリットが期待できます。

生産性の向上

5S活動の整理・整頓のステップでは、職場に存在する不要なものを排除し、必要なものだけを外部から見て分かる状態に分類します。

その結果、無駄な業務に取り組む時間はなくなり、必要な業務においても情報を探す際にかかっていた無駄な時間などが削減されます。このため、5Sは生産性向上につながると言えます。

また、従業員は生産性の高い業務に集中して取り組むことができるようになります。その結果、従業員のスキル向上にもつながります。

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従業員の意識改善

職場が散らかった状態では、従業員は職場環境を改善しようという意思を削がれ、職場はどんどん汚れていくという悪循環に陥ります。

環境犯罪学の理論である割れ窓理論によれば、清掃状態を維持しておくことで、職場環境は荒廃しにくくなります。職場をきれいにしておくことは、従業員の意識を改善することへとつながります。

商品品質の向上

5Sによって業務効率化が実現できれば、これまで無駄なことに浪費されていた時間を重要な業務に充てることが可能です。

また、生産性の向上によって残業時間が減少し、従業員のワークライフバランスが確保できれば、モチベーションも向上し、離職率は低下します。

この結果、開発・生産・提供する製品やサービスといった商品品質の向上が期待できます。

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06. 計画的な技能・技術伝承

チームワークの向上

5Sは、個人で行うのではなくチーム全体で目的を共有しながら協力して行う活動です。チーム全体でコミュニケーションを取りながら5S活動に取り組むことで、チームワークの向上が期待できます。

5S活動によって構築されたチームワークは、それぞれの業務におけるアウトプットの質向上へとつながります。

きれいな職場の実現

5S活動を行うことで、きれいな職場環境を実現・維持することができます。職場がきれいであれば、衛生面に関わる不要なストレスを感じることなく気持ちよく業務に取り組めます。

5Sのデメリット

5S活動を行う際には、以下のデメリットが生じることを想定しておく必要があります。

コストがかかる

5S活動には、整理や清掃を行う際の備品購入や社員の人件費などのコストがかかります。

一方で、5S活動の成果が出るまでには、一時的に生産性が低下する可能性があります。そのため、5S活動には、通常業務だけを行う場合よりも余計なコストがかかることを、関係者はあらかじめ認識しておきましょう。

効果が可視化できるまでに時間が必要

5S活動に取り組み、それが習慣化されたとしても、成果につながるまでには一定の時間がかかります。

5S活動を進める際には、成果を焦らずにじっくりと取り組んでいくことが重要です。

5Sを行う際のポイント

5S活動を行う際には、以下のポイントを押さえておきましょう。

5Sを行うこと自体が目的にならないようにする

5S活動の目的は、職場環境の改善や業務効率化を実現することです。

しかし、5Sの構成要素である整頓や清掃などの行動に取り組んでいると、それぞれの行動を行うこと自体が目的となって、本来の目的を見失ってしまう場合があります。

5S活動に関わるメンバー全員が、5S活動を行う目的を忘れないようにするためには、職場で目的を共有しておくといった工夫が必要です。

一緒に取り組んでいるメンバーで本来の目的を見失っているメンバーがいたら、あらためて目的を共有できるように関係者間で認識合わせを行いましょう。

チェックシートを活用する

5S活動は、従業員任せにして進めてしまうと十分な効果が期待できません。それぞれの従業員の取り組み方にばらつきが生じてしまうことが主な原因です。

そこで、関係者が5S活動の各項目に対して客観的な判断ができるように、チェックすべき項目を明確にしましょう。

なお、チェック項目は数値で判断できるような客観的な基準に設定して、チェックシートに落とし込むとよいでしょう。

チェック項目のなかには数値化できないものもありますが、そういった場合でも複数人で議論して決めるなど、できる限り客観的な基準を設けることが大切です。

一つひとつを徹底して行う

5S活動は、<整理→整頓→清掃>のように、各ステップがきちんと行われていることを前提に、次のステップが構築されています。それぞれのステップが適切に行われていない状態で次のステップに進んでも、十分な成果は得られません。

そのため、5S活動は、最初から活動全てやり切ろうとするのではなく、一つひとつのステップを徹底して行うことが重要です。

それぞれのステップに取り組む過程で状況に変化が生じ、取り組むべき内容が変わる場合もあります。状況に合わせて活動内容を柔軟に調整して、取り組みましょう。

食品衛生における7Sとは

食品業界では、ここまで紹介してきた5Sに加えて「洗浄」と「殺菌」の2つを加えて7Sが実践されている場合があります。

洗浄は、施設や設備などにゴミや埃がないように清掃を行うことで、食品への異物混入などを避けることを目的としています。

殺菌は、消毒などによって望ましくない微生物や細菌を除去することを目的としており、品質の向上や安定化へとつながります。

食品業界の7Sについては、洗浄や殺菌の代わりに「しつこく」「しっかり」が組み込まれている場合もあります。何事にも「しつこく」「しっかり」と取り組むことは、食品業界だけでなく他の業界でも大切です。食品以外の業界でも7Sの導入を検討してみてもよいでしょう。

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