ナレッジ
2024.7.26
製造業など、ものづくりに関わる企業を中心に「技術伝承」という用語が使われています。団塊の世代の定年退職が始まった2007年以降、頻繁に使用されるようになりました。
しかし、技術伝承の当事者となる方の中には、技術伝承という言葉の意味をしっかり把握できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、技術伝承の概要に加えて、製造業で技術伝承が重要視される理由、実際に技術伝承を進めていく際の課題と対策を紹介します。
技術伝承とは、従業員が持つ技術やノウハウ、知識などを広い意味で技術と捉え、他の従業員が身に付けられるように伝えていくことです。
「技術伝承」において伝えるべき「技術」には、「暗黙知」と「形式知」の二種類があります。
暗黙知とは、言語化することが難しい、特定の従業員が自身の中に留めている知識やノウハウ、経験のことです。
一方、形式知とは、個人が持っている暗黙知をマニュアルや手順書などによって他社と共有できるかたちにしたものです。
技術伝承において、既に形式知化されている技術は伝承しやすい一方で、まだ形式知化されていない技術は形式知化して伝承する必要があります。
なお、形式知と暗黙知については、詳しくは以下の記事をご確認ください。
関連記事:暗黙知と形式知の違いを解説。課題と実践方法をご紹介
技術伝承には、「技能伝承」という類似した用語があります。
そもそも「技術」や「技能」はさまざまな定義がある用語です。また、所属している業界や企業によっても異なる意味合いで使われる場合があります。
そのため、もし技術伝承と技能伝承の使い分けが必要になった場合には、関係者のあいだで技術と技能をどのような意味で使っているのかを議論し、認識をすり合わせておくと良いでしょう。
なお、本記事では、担当する業務を円滑にこなすための能力を「技能」と呼び、技能を使いこなすための能力を「技術」と呼んでいます。そのうえで「技術伝承」を、広い意味での技術と技能を含めて使用しています。
製造業をはじめとする企業において、技術伝承は企業経営の重要なテーマの一つです。
ここでは、なぜ多くの企業が技術伝承に取り組もうとしているのか、その代表的な3つの理由について解説します。
製造業において、製品の競争力を確保・維持するうえで重要な役割を担っているのが、企業に蓄積されてきた従業員の持つ技術です。
競合他社よりも何らかの領域で優れた技術力を持っているからこそ、クライアントに自社の製品を選んでもらうことができます。
しかし、技術は意図的に伝承せず成り行きに任せていると、失われてしまう可能性があるものです。競争力の源泉である技術力の優位性を失うことは、企業の存続に直結します。
技術伝承は、他社への競争優位性を確保し続けるために、必要不可欠な取組みであると言えます。
技術が企業の競争力の源泉であることは多くの従業員が認識していることです。
しかし、多くの職場では技術が属人化しています。つまり、技術が特定の従業員に集中しているのです。
技術が属人化したままでは、特定の技術を持った個人が休職や退職して長期間不在になった場合に、活用できなくなってしまいます。
また、複数の従業員が類似もしくは同一の技術を持つことは従業員同士の研鑽機会を生じさせます。しかし、技術が属人化した状態では、研鑽によって生じる技術発展の機会も失われてしまいます。
多くの場合、技術伝承は、長年の実務を通して培った技術を保有しているベテラン従業員が、定年退職などでいなくなってしまう状況を想定して実践されています。
しかし近年は、業務領域が複雑になり分業化が進んだことで、ベテラン従業員だけでなく若手・中堅の従業員でも属人化した技術を持っているケースが多く生じています。
また、これからは、キャリアの流動化や性別に関わりのない育児休暇の取得が一般的となり、一定期間従業員が不在となるケースも増えていくでしょう。
今後は、ベテラン従業員の定年対策に限定しない技術伝承を積極的に行っていく必要があります。
製造業で技術伝承を進める際の手段としては、一緒に業務を行いながら技術を伝えていくOJT(On the Job Training)やマニュアル・手順書などの作成が一般的です。
しかし、技術伝承が必要とされるすべての業務に対してOJTやマニュアルの作成を行うのは困難です。
ここでは、技術伝承を進める際に想定される代表的な課題を3つご紹介します。
技術伝承の必要性は理解していても、技術伝承のために十分な時間を確保できないケースが多く見られます
特に、属人化され技術伝承が必要な業務が重要であるほど、その技術を持った従業員に仕事が集中してしまい、技術伝承の優先順位が下がってしまいます。
その結果、一部の従業員にさらに仕事が集中し、技術伝承をする時間が取れなくなる。こんな悪循環に陥ってしまうことも珍しくありません。
残念ながら管理者の中には、技術伝承の重要性を十分に理解していない方もいます。
その場合には、管理者が指示する業務の優先順位の中で、技術伝承の優先順位は低くなってしまいます。
管理者が要因となるケースは、主に二種類あります。
一つ目は、従業員が持つ技術が、その従業員に属人化されたものだと気付いていないケース。
二つ目は、属人化された技術が失われてしまった場合にどのようなリスクが生じるか十分に理解できていないケースです。
このような状況では、いくら現場従業員が技術伝承を進めたくても業務に組み込むことが難しくなり、技術継承は思い通りに進みません。
属人化した技術を持つ従業員の中には、その技術を伝承すること自体に抵抗を示す方がいます。
自身が長い期間をかけて培ってきた技術を、そう簡単に他の人に教えたくないという感情は十分に理解できるものです。
また、技術伝承してしまうことで、今までは自分にしかできなかった仕事を他の人に奪われてしまうのではないか、という不安を持っている場合もあります。
技術伝承を進める際に生じるこれらの課題を解決するためには、どのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、四つの案を紹介します。
技術伝承にあてる時間を確保できない場合には、強制的に技術伝承を進める時間を確保することが効果的です。
スケジュールを定め、その時間は他の業務を入れないように徹底すれば、技術伝承を確実に進められます。
時間を確保するためには、業務を分担したり、外注したりする仕組みをあらかじめ作っておくと良いでしょう。
技術伝承に時間がかかることが課題であれば、その時間を大幅に短縮することも効果的な選択肢の一つです。
例えば、デジタル技術を活用することでベテラン従業員の勘やコツといった暗黙知を数値化すること。数値化することで暗黙知を形式知に変換できるため、技術伝承にかかる工数は大幅に削減できます。
また、マニュアルを作成する場合には、細かいニュアンスまで伝えやすい動画マニュアルを作成できるツールを活用することも効果的です。
技術伝承を進めるためには、技術伝承が行われなかった場合に生じるリスクを可視化して伝えることも効果的です。
例えば、競合他社よりも優れた技術が失われてしまえば、その技術が使われていた製品の品質が低下してしまいます。その結果、業績が悪化してしまう可能性もあります。従業員としては、自身の収入にも直結する大問題です。
また、広範囲な業務に影響を与えるような基幹となる技術が失われた場合、生産性及び品質の低下は避けられません。
技術伝承が行われない場合に生じるこれらのリスクを組織内であらかじめ共有してことで、技術伝承への意識は向上するでしょう。
技術伝承を行うことに抵抗がある従業員に対しては、技術伝承という仕事を明確に定義し、それを成し遂げた場合には高く評価する仕組みを構築するといいでしょう。
技術伝承に関する取組みを査定に明確に反映できれば、技術伝承を進めることへのモチベーション確保につながります。
なお、技術伝承がうまくいかないことで、企業は保有している技術を失います。技術の喪失によって引き起こされる代表的なリスクとして、以下の3つが挙げられます。企業はこれらのリスクに対して対策を練っておく必要があります。
顧客に選ばれる製品は高い品質を持っています。また、大量生産品の場合でも、品質のバラつきが少ないことが特徴です。製品の品質を保つためには、設計・加工・検査などにおいて高い技術力が必要となります。
しかし、技術伝承に失敗して基幹技術が失われれば、製品の品質は低下してしまいます。例えば、従来よりも寸法精度が低下したり、作業者によって品質にバラつきが生じるといった事態が生じえます。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
顧客に選ばれるためには、製品を安定的に供給できる体制が必要です。しかし、技術伝承がうまくいかない場合、製品を安定的に供給することは難しくなってしまいます。
これには2つの理由があります。1つ目は、製造に不可欠な技術が失われることで従来通りの精度や機能を再現できなくなるから、という理由です。
2つ目は、技術力の低下によって生産効率が悪化し、品質の担保と生産量を両立できなくなるから、という理由です。
いずれの場合も、顧客の求めるクオリティを保った製品を安定的に供給することはできません。
顧客の求める製品の品質を維持できなくなることで、製品の競争力は確実に低下します。また、製品が安定供給できなくなると、高い品質の製品を安定供給できる企業に勝つことは難しくなります。その結果、大切な顧客を失ってしまうという悪循環に陥ります。
このように技術を失うことは、企業経営にとって大きなリスクを伴います。そこでここでは、貴重な技術を失わないための施策を、6つの切り口から紹介します。
技術が失われる機会としてもっとも多いのは、技術を持った人の離職です。例としては、ベテラン技術者の定年退職や優秀な技術者の転職・独立に伴う退職が挙げられます。
このケースの対策としては、定年の延長や、必要な技術を持った技術者を中途採用することが有効です。
しかしこれだけでは「技術が失われること」への抜本的な解決になりません。定年を延長してもベテラン技術者はいずれ引退します。また、必要な技術を持った技術者をそう都合よく採用できるとは限りません。
伝承したい技術の中には、技術伝承に時間がかかることで必要なレベルに到達できず、失われてしまうものもあります。しかし、デジタル技術の活用は、技術伝承の効率化を促してくれます。
例えば、ベテラン技術者が長い時間をかけて身に付けた勘やコツは貴重な技術ですが、伝承が困難なものでもあります。そこでベテラン技術者の作業中の動きを、センサーを使って取得することで、データとして収集します。それをAIで解析することで、勘やコツの数値化・見える化が実現できます。見える化された情報を基に学習することで、技術伝承に費やされる時間を大幅に効率化できます。
なお、デジタル技術の活用についてはより詳しい内容を後述しています。
関連記事:スマートファクトリーとは? 意味や目的、メリットを解説
継承が必要な技術は、出来る限り迅速に標準化ないしマニュアル化して継承しやすい仕組みをつくっておく必要があります。
しかし、マニュアル化や標準化は優先順位が低くなりがちな業務です。どうしても目の前の仕事が優先されがちになってしまいます。そのため技術継承を進めるためには、標準化・マニュアル化のための時間を優先的に確保することが重要です。
閲覧性や更新性の観点から、マニュアルはデジタル化してクラウド上で編集する形式とすることが望ましいでしょう。また、資料を作成する際には、技術を持った人自身が作成するだけでなく、OJTを受けた人が作成するのも効果的です。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
技術が失われないようにするためには、教育制度の活用も効果的です。技術伝承に貢献する教育の内容は、大まかに2種類に分類できます。
1つは、失いたくない技術そのもの、もしくは、その前提となる教育研修の充実です。
時間的な制約から、伝承したい技術のすべてを教育研修の中で伝えきることが難しい場合があります。しかし、その場合には、まずは教育する技術の前提となる基礎的な情報を伝えましょう。土台となる基礎を先んじて教えることができていれば、あとは重要なポイントのみを教育すれば効率的に技術伝承できます。
もう1つは、技術を教育する側への教育研修です。教え方次第によって、技術の伝わり方は大きく変わります。あらかじめ教え方のポイントを教える側にレクチャーしておくことで、限られた時間の中で技術伝承をスムーズに行うことができるでしょう。
伝承が必要な技術の中には、OJT研修を通して日常業務の中で教えていくものもあります。
スムーズに技術伝承を進めるためには、教える側と教わる側が気軽にコミュニケ―ションを取り合える環境を構築する必要があります。特に、ベテラン技術者と若手技術者など、世代が離れている者のあいだで技術伝承を行う場合には、そもそもの交流がないケースも十分考えられます。
OJTによって技術伝承を行う際には、アドバイスや質問が気楽にできるように、普段から雑談会を開催するなど、世代間コミュニケーションを活性化させる機会をつくるといいでしょう。
関連記事:OJTとは? OFF-JTとの違いや運用のコツ、メリットについて解説
成果物となる製品等が生み出されないため、技術伝承は評価されにくい業務です。その結果、技術伝承に取り組むモチベーションの確保が困難となり、優先順位は低くなりがちです。
「教わる側」のモチベーションの維持・向上のために、保有する技術や資格に応じた評価制度を構築することも効果的です。評価を得るために積極的に技術やスキルを学ぶ従業員が増えるでしょう。その結果、複数の技術を持つ多能工の育成にも繋がります。
また、技術を「教える側」に対しても、評価する仕組みを構築することも有効な手段です。後継者育成を行うことに高い評価を与えることで、教える側の技術伝承へのモチベーションは高まります。
関連記事:スキル評価とは? 目的とメリット、スキルマップとルーブリック評価の違い、作成手順など
先述したようにデジタル技術は技術伝承にも応用できます。ここでは代表的な応用例を3つ紹介します。
企業は、伝承すべき技術かどうかを判断する必要があります。また、伝承すると決めた場合には、誰にどのタイミングで伝承するのかを決定することも重要です。
伝承すべき技術の選別と人材の選定を行うには、「どのような技術」を「誰」が「どの程度の力量」で持っているかを可視化し、管理しなくてはいけません。しかし、多くの企業では、保有している技術の可視化と管理がうまくできていないのが現状です。
技術の可視化に課題を抱えている企業には、スキル管理サービスの活用が効果的です。これまでは難しかったスキルと力量の管理を効率的に行えるため、伝承すべき技術や人材の絞り込みをできるようになります。
関連記事:【徹底解説】スキル管理システムとは? 導入メリットと効果、活用シーン、システムの種類について
伝承すべき技術の中でも、長い時間をかけて培われたベテラン技術者の「勘」や「コツ」は、特に伝承が難しい技術です。
しかし、近年では、センサの高性能化やIoT技術の発展によって、ベテラン技術者の勘やコツがデータとして取得可能になりました。また、AIを活用することで大量のデータの中から技術に繋がる情報を短時間で処理でき、技術の可視化を実現しやすくなっています。
勘やコツを技術として可視化できれば、その勘やコツを自動化された設備の入力プログラムに反映させることも可能です。そうすれば、難しい技術伝承を行う必要がそもそもなくなり、他の技術伝承・スキル向上に時間と人員を充てられます。
一方で、自動化すべきでない技術もあります。それは、個人が持つことでさらなる発展が見込める技術や、設備の不調時に人が関与する必要のある技術です。技術を自動化すべきかどうかの判断には、さまざまな観点からの検討が必要と言えます。
仕事の内容を伝えるためには、マニュアルや手順書の作成が一般的です。しかし製造業における技術伝承では、テキスト情報のマニュアルや手順書だけでは十分に技術を伝えられない場合があります。
近年は、従来よりも効果的なマニュアルや手順書を効率よく作成できるサービスが開発されています。動画素材の編集を効率的にこなせるサービスだけでなく、PC画面での操作を録画し、マニュアルに落とし込むサービスも開発されており、短時間で効果的なマニュアル・手順書の作成が可能です。
また、動画形式のマニュアルであれば、テキストだけでは伝えにくい細かいニュアンスの内容も伝えられ、技術伝承の効率化にも繋がります。
データ展開もできるのでOJT教育の予習や復習として活用しやすく、技術を伝承する側の負荷低減にも繋がります。OJT教育を実施しにくい国内遠隔地や海外拠点の技術者育成時にも効果的です。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
技術伝承にデジタル技術を活用することには、大きなメリットがあります。しかし、デジタル技術を活用する際には、以下の2つの点に注意する必要があります。
1つめは、デジタル技術の適用によって、本当に課題が解決できるかどうかを明確にしておくことです。例えば、デジタル化により管理が煩雑になり、メリットよりもデメリットの方が大きくなってしまえば本末転倒です。
もう1つが、デジタル技術の適用範囲を適正化することです。例えば、あらかじめ寸法が決まっていない一点ものの製造において、微妙な調整が求められる製品を加工する場合、全自動化は困難です。このような場合には、画一的な進め方ではなく、加工技術と状況判断の仕方を、OJTなどを通して伝承していく必要があります。
このように、技術伝承にデジタル技術の活用を検討する際には、デジタル活用によって生じるメリットとデメリットをあらかじめ確認しておくことが重要です。
デジタル技術を活用した技術伝承の事例を紹介します。ぜひ技術伝承に取り組む際の参考にしてください。
技術伝承に関わるメンバーの選定に統一した基準がなく、伝承すべきは他の技術、他の人だった、と判明したケースです。
失敗の原因は、技術伝承の対象が特定のメンバーに偏ってしまったこと、そして、対象メンバーが保有する技術と伝承を考えている技術との相性が悪かったことにあります。
このケースでは、計画的に技術伝承を進めていくためにスキル/力量管理システムの導入を決めました。
「誰が、どの技術を、どの程度のレベルで保有しているか」を可視化したことで、伝承すべきスキルと対象者を選定できるようになりました。
ベテラン技術者によって培われた切削加工技術が、ベテラン技術者の定年退職に伴い失われそうになったケースです。
そもそも経験に基づく技術の伝承はそう簡単にできるものではありません。このケースでも当該技術の若手技術者への伝承には何年もの時間が必要でした。
そこで伝承期間を短縮するためにデジタル技術を活用。ベテラン技術者の技術を可視化すべく切削時のさまざまなデータを取得して、それをクラウドに保存できるようにIoTセンサ搭載の切削工具を導入したのです。
さらに取得したデータをAI分析することで、技術の「ポイント」の可視化にも成功。伝承期間の短縮を実現しました。
複数の従業員が同じ作業を行い、製品品質の統一を目指したケースです。このケースでは、従業員の作業レベルを同等になるよう教育しなくてはいけませんでした。しかし、なかには教えられた内容を十分に理解できずに、スムーズに技術を身に付けられない従業員もいました。
作業レベルが統一されなかった結果、製品の品質が不安定に。また、教育する側の負担も大きくなり、解決策として動画マニュアルの導入を決定しました。
動画マニュアルでは、一度では理解できないことも繰り返し学習することができます。また、テキストだけでは表現できない細かい情報も伝えられるという利点があります。
動画マニュアルを導入した結果、品質のバラつきと教育する側の負担がともに低減し、技術伝承が効率的に進みました。
ここまで技術伝承を進める際の課題や方法、取り組まないリスクやデジタル技術の活用例など、技術伝承について包括的に解説してきました。
そこで最後に、技術伝承の成功パターンを3つ紹介します。ぜひ職場で技術伝承を進める際の参考にしてください。
グローバル化が進む中で、海外拠点の技術者に教育を行う機会が増えています。海外拠点の技術者に対する教育は、面直での指導が難しい場合が多く、言語の壁も生じます。これらの課題には、伝えたい技術の標準化やマニュアル化が有効です。
この場合、リモート環境において相手の技術レベルを十分に把握できないまま指導することも多く生まれます。そのため、伝承する相手のレベルに合わせて対応できるように細やかな資料を準備することが大切です。
また、翻訳の過程で必要な情報が失われてしまわないように注意する必要があります。大切な情報は言語の影響を受けないように、図表や動画、数式などを使って表現すると良いでしょう。
標準化した資料やマニュアルは、完成したら終わりではなく、現場とのやり取りを通して適宜ブラッシュアップしていきましょう。そうすれば、遠隔地における技術伝承もスムーズに進みます。
関連記事:業務標準化とは?業務標準化のメリットと進める手順を解説
技術伝承の進め方には、研修機会を設ける場合と日常業務の中で進める場合の大きく2種類があります。日常業務の中で進める場合には、教える側と教わる側を一組のペアにして、OJTで技術伝承を行うことが一般的です。
業務の内容や範囲によっては、必ずしも1対1の状況を構築できるとは限りません。その場合は、複数人へのOJTを行うことで効率的に技術伝承を行えます。
また、一度に複数人を見ることが難しい場合には、定期的にペアを入れ替えていくことも選択肢の1つです。いずれの場合でも、コミュニケーションを取りやすい環境を構築することが重要です。
育休や退職などで必要な技術を持った人材が不在となった状況でも、幅広い業務に対応できる技術を持った多能工がいれば欠員の影響を最小限に抑えることができます。その意味で、多能工の育成は優先順位の高い重要な施策と言えます。
しかし、技術の向き不向きは従業員によってさまざまです。効率的に多能工を育成するためには、技術者の適性を見極めることが大切と言えるでしょう。
実際に多能工育成を目的とした技術伝承を進める際には、特定の技術を集中的に伝承するのではなく、ある程度までの力量が身に付いたら次の技術習得に取り組むといいでしょう。
多能工として幅広い技術を身に付けることができれば、保有している技術同士の相乗効果が得られます。その結果、新しい技術の習得するための時間を短縮でき、技術伝承を効率的に進めることができるでしょう。
関連記事:多能工とは?製造業における多能工化のメリットや取組み事例をご紹介
技術伝承は、企業が製品の品質を安定させ、競争力を維持していくために必要不可欠なものです。しかし実際の現場では、日々の忙しさから技術伝承の優先順位が上がらず、着手もできていないまま、ということも珍しくありません。
技術伝承を進めていくためには、今回紹介した技術伝承にあてる時間の強制確保や、技術伝承を行わなかった場合のリスクを可視化することが効果的です。
技術伝承を企業の経営課題と捉え、それを効果的に進めていくための体制構築を進めること。そうすれば、技術伝承における課題を解決し、企業の資産である「技術」をスムーズに継承することができるでしょう。
「技術伝承」を成功させるならするなら「Skillnote」!
●スキルデータの活用で「技術伝承」の解決策がわかる
●自社に最適化したスキルマップがかんたんに作れる
●人材育成を成功させた「スキル管理」事例を公開
ナレッジ
2024.4.22
ナレッジ
2024.4.22
ナレッジ
2024.4.22
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.24