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2024.4.24
多くの企業で業務の属人化が発生しています。業務の属人化が進むといくつかリスクが生じますが、解消を目指してもさまざまな要因からうまくいかないこともあります。
また、いざ属人化を解消しようと思っても具体的にどのようなアクションを取るべきなのかわからない場合もあるでしょう。
この記事では、属人化の問題点や属人化が生じる理由、その解決方法などについて解説します。
業務の属人化とは、以下のような状態を指します。
後述するように属人化にもメリットはあります。しかし、企業にとってはデメリットの方が大きいのが実情です。実際、多くの企業で属人化の解消に向けた活動が行われています。
業務が属人化することで生じる代表的なデメリットとして、下記のようなものが挙げられます。
高い専門性を持った従業員が存在することは企業にとって良いことです。しかし、ある業務が特定の従業員にしか担当できない状態になってしまうことは望ましいことではありません。
過度な属人化が進み、ある業務が特定の従業員にしか回せなくなってしまうと、緊急時においてさえ他の従業員が代わりに業務を請け負うことができなくなってしまいます。
なお、専門性のある従業員が不在になる原因は、出張や体調不良等による休暇の他にも異動や転職、育児休暇など多岐にわたります。
ひとつの業務に対してはチェック役も含め、その業務に詳しい人材が複数いることが理想と言えます。
しかし、業務の属人化が進むとその業務に精通している人材が不足し、業務のブラックボックス化が進みます。
業務のブラックボックス化とは、業務の仔細を担当者しか把握できていない状態を指します。言い換えれば、担当者がミスをしても周囲がそれを指摘できない状態ということです。
業務のブラックボックス化の結果、不十分なクオリティのまま次の工程に流れ、最終的な製品の品質が不安定化するリスクが生じます。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
業務の属人化が進んだ状態で担当者が転職や異動、休職した場合、培われてきた技術や知識、経験が失われてしまいます。
長い時間をかけて培われた技術や経験は、企業の競争力の源泉となっている場合もあります。つまり、属人化によって技術や経験が失われることは、競争力低下に直結するリスクだということです。
技術や経験が失われてしまうことは、属人化の大きなデメリットのひとつです。
関連記事:技術伝承とは? 暗黙知と形式知、技能伝承との違い、行わない場合のリスクと成功させるコツ
業務の属人化が進むと、その業務が想定よりも増大した場合、担当者に負荷が集中してしまいます。
その結果、負荷が集中している担当者に強い身体的・精神的ストレスがかかってしまいます。ストレスが原因で心身のバランスを崩してしまう恐れもあるため、十分な注意が必要です。
業務の属人化は、業務プロセスを固定化させるため、新しいアイディアや方法が生まれにくい状況を生んでしまいます。
本来は複数の従業員が業務に携わることで「もっと効率の良い進め方」「新しい視点からの業務改善」といったアイディアや意見が生まれる可能性あるにもかかわらず、属人化した状況では一定以上の改善は見込めません。
ここまで業務が属人化することで生じるデメリットについて紹介してきましたが、実は業務の属人化にもメリットはあります。ここでは代表的な例を3つ紹介します。
業務が属人化している状態とは言い換えれば、特定の業務に対して豊富な経験を積み、高い専門性を持った担当者がいる状態と言うことができます。
属人化した業務に対する従業員は、その豊富な知識と経験から効率的な仕事の進め方やトラブルが生じた場合の対応法も熟知しています。その結果、複数の担当者が業務を担当する場合よりも大きな成果を生む場合があります。
ある業務を特定の従業員のみが担当している場合、従業員はその業務に対して高い専門性を得ることができます。
高い専門性を確立できれば、周辺業務の理解も早くなり、従業員は自信を持って仕事に取り組むことができます。その結果、業務に対するモチベーションも向上するなどのメリットが見込めます。
業務が属人化している状況とは、特定の業務に対する相談先が明確になっている状態とも言えます。
業務に対する高い専門性と豊富な経験を元に、質問や相談に対して迅速に判断・対応ができるため、従業員は周囲からの厚い信頼を得られるでしょう。
そもそも業務の属人化はなぜ起こってしまうのでしょうか? その代表的な理由を解説します。
ある業務を担当するために必要な知識や身に付けるべき専門性のハードルが高い場合、業務を回せるようになるまでに多くの時間が必要となります。
日常業務をこなすだけで精一杯な状況の場合、育成に割く時間の確保が難しいことから、結局今までと同じ人が業務を担当することとになり、属人化が進んでしまいます。
現在、少子高齢化が進んだり、働き方が柔軟になったりしたことで、どの業界においても人材不足が顕著な課題となっています。
人材が不足している状況では、目に見える利益に直結しにくい人材教育の優先順位は低下してしまいます。
その結果、業務を新たに習得する人材が不足する状況に陥り、属人化が進んでしまいます。
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
そもそも組織や個人が属人化の解消に消極的な場合があります。
従業員の中には「自分が時間をかけて培ったノウハウやナレッジを簡単に他の人に共有したくない」「共有することで自分の仕事が失われるのが嫌だ」といった感情を持つ従業員もいます。
また、多忙な業務状況の中でどれほど属人化解消に取り組んでも、その取り組み自体が評価されない場合、属人化の解消に取り組むモチベーションを高めることは困難です。
このような環境では積極的に属人化解消に取り組む人材が減ってしまい、属人化の解消に消極的な組織となってしまいます。
属人化している状況に危機感を持つ担当者が解消に取り組もうとしても、何から手をつけていいかわからない場合もあります。
属人化を解消するためには、解消のための手順や仕組みを構築しておくことが重要です。
そうした仕組みがない状態では、効率的に取り組みが進まず属人化解消がうまくいかない場合もあります。
属人化を解消するための効果的な取り組みの一つとして、業務標準化が挙げられます。業務標準化とは、業務の内容を棚卸し、整理して誰でも取り組めるような状態にすること。属人化の対義語として使われる場合もあります。
業務標準化の具体例としては、マニュアルや作業手順書の作成が代表的です。
業務標準化は簡単な作業ではありませんが、実現できれば大きなメリットが得られます。なお、業務標準化の詳細については、以下の記事をご確認ください。
関連記事:業務標準化とは?業務標準化のメリットと進める手順を解説
業務標準化を進めることは、属人化の解消に繋がります。業務標準化によってどのようなメリットが得られるかを紹介します。
業務を標準化するためには、標準化に取り組む業務の具体的な手順や各手順におけるコツ・ポイントなどを言語化し、マニュアルに落とし込む必要があります。
言語化されたコツやポイントは、ノウハウやナレッジとして組織に蓄積されます。また、それを共有することで新たな担当者への業務の引継ぎも容易になります。
なお、蓄積されたノウハウやナレッジを基にマニュアルや手順書をブラッシュアップすることもできます。
業務標準化によりマニュアルや作業手順書が準備された場合、マニュアルや作業手順書がない場合に比べて、新たな仕事を身に着けるための時間や労力を削減することができます。さらに浮いた時間やエネルギーを他の技術を身に付けるために使うことで従業員の多能工化を促せます。
従業員の多能工化が進めば複数の業務を一人の従業員でカバーできるようになり、業務分担の自由度が増し、柔軟で強い組織の構築へとつながります。
関連記事:多能工とは?製造業における多能工化のメリットや取組み事例をご紹介
標準化された業務とは、どのように進めれば効率よく成果を出すことができるか、そのコツやポイントが明確になっている状態の業務のことを指します。
業務が標準化されていない場合と比べると、コツやポイントを押さえて取り組むことが業務効率化につながるのは明らかです。
業務が属人化している場合では、業務プロセスや結果を複数チェックできないため、十分な品質の確保ができなません。
業務標準化が実現すれば、業務のブラックボックス化は解消され、チェックすべきポイントが明確になります。また、複数人でのチェックにより品質は確実に向上します。
企業で行う仕事の中には、会社に出社しないと対応できないものと在宅でも対応できるものの2種類があります。
属人化している業務が出社しなければ対応できない場合、担当者はテレワークできないことで不公平感を持つ場合があります。
業務標準化を進めることで属人化を解消できれば、出社が必要な業務を複数人で分担できるため、バランスよくテレワークを行うことが可能です。
属人化の解消(業務標準化)を実現するためには、以下のような方法が考えられます。
属人化された業務はその中身がブラックボックスになっていることもあり、担当者以外にはどのような流れで業務を遂行すればよいか不明瞭な場合があります。
属人化を解消したい業務に対して、どのような流れで業務を行っていくのかワークフロー(業務の流れ)を明確にすることで、ブラックボックス状態を解消できます。
ワークフローの可視化によって表現された各工程について、具体的にどのような業務を行うのか、作業内容を整理します。
ここで、各工程での取り組み内容を明確にすることで「どの工程の習得難易度が高いのか」「優先的に標準化に取り組むべき工程はどれか」など、業務の優先順位に関する判断を行うことが可能です。
優先順位をつけた各工程に対して、優先順位の高いものから標準化を実現するためのマニュアルや作業手順書の作成を行います。
マニュアルを作成する際には、実際に利用する立場になって必要な情報の取捨選択や解説の粒度を調整することが重要です。
また、作業手順書だけでなく作業のコツも併記できると、効果の大きいマニュアルを作成できます。
マニュアル作成に関しては、以下の記事で詳細に解説していますので、ご確認ください。
マニュアルや作業手順書を作成したのち、それを実際の業務の中で運用していくと新たなノウハウやナレッジを獲得できます。
獲得されたノウハウやナレッジは、業務効率化や品質の向上、従業員のスキルアップにつながるため、漏らさず蓄積し関係者に共有することが重要です。
なお、ノウハウやナレッジを蓄積する仕組みを構築するためには、あらかじめ保管する場所を決めておくと抜け漏れが生じにくいため、事前に準備してきましょう。
マニュアルや作業手順書は、一度完成したらそれで終わり、というものではありません。見直しや改善がされなければ役に立たなくなってしまうことがあります。
「標準化によって期待通りの効果が出ているかどうか」「マニュアルや作業手順書は最新の状況に更新されているかどうか」「改善できる部分はないか」などを確認するためにも、マニュアルや作業手順書は継続的に確認する必要があります。
作業手順書やマニュアルは継続的に改善を繰り返すことで環境変化に対応し、より大きな成果につなげることができます。
ツールを活用することでより効果的に属人化を解消することができます。
マニュアル自動作成ツールは、説明画像や必要な手順を入力することで、わかりやすいマニュアルの形でまとめてくれます。
テキストや画像を活用したものだけでなく、動画マニュアルを作成できるツールも開発されています。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
ナレッジマネジメントツールを活用すれば、ナレッジやノウハウを効率的に蓄積できます。さらに情報が更新されたタイミングで任意の範囲に情報を展開する機能が搭載されているものもあり、蓄積したナレッジを簡単に活用することができます。
従業員間でのナレッジ共有をスムーズにし、ナレッジが有効に活用できる環境を整えることでさらなるナレッジの蓄積につながります。
社内wikiによって、社内のさまざまな情報をアクセスしやすい場所に置き、誰でも編集できる状態にしておくことができます。情報共有や更新が簡単にできます。
属人化を解消したい業務の内容だけでなく、業務から得られたノウハウやコツも気づいた人が気づいたときに編集したり、確認したりすることができます。
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