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2024.4.23
ISO 9001(品質マネジメントシステム)とISO 14001(環境マネジメントシステム)は、「品質面」と「環境面」という違う観点に基づいたマネジメントシステムです。しかし2つの規格は最終的に「持続可能な経済活動を行うこと」という同じ目標になります。
本記事ではISO 9001とISO 14001の観点の違いや、具体的な要求事項における違い、最近注目されている統合規格について解説します。
ISOはスイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、グローバルに通用する規格の制定などの活動を行っています。ISOはスムーズにグローバルな取引を行うために製品やサービスについて様々な基準を制定しており、ISOが制定した規格をISO規格といいます。
このISO規格にはモノ規格とマネジメントシステム規格の2種類があります。
モノ規格は製品そのものを対象としており、身近な例としてはA4などの紙のサイズを定めたISO 216、カードのサイズのサイズを定めたISO 7810、ネジのサイズを定めたISO 68などが挙げられます。
一方マネジメントシステム規格は、組織の品質活動や環境活動に対する仕組み(マネジメントシステム)に対するISO規格です。ISO 9001やISO 14001はマネジメントシステム規格に含まれます。
会社などの組織では多数の人間が在籍し全員の顔が見えるわけではありませんので、皆が同じ目標に向かっていくために、規定や手順などのルールと部課長などの職制が必要になります。
また、職制を置く場合にはその責任と権限を明確にする必要があります。
これらの規定や手順、責任や権限の体系を「マネジメントシステム」といいます。
このマネジメントシステムに対する国際的な基準を示したものがマネジメントシステム規格です。
関連記事:QMS(品質マネジメントシステム)とは? 目的、規格、ISO 9001要求事項との違いやQMS構築時のポイントを解説
ISO 9001は品質マネジメントシステムに関するISO規格で最もメジャーなマネジメントシステム規格です。全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が取得しており、日本でもピーク時は4万以上の組織が認証を取得していました。
ISO 9001の目的は「一貫した製品・サービスの提供、顧客満足の向上」で、この目的に対し要求事項が定められています。
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
ISO 14001は環境マネジメントシステムに関するISO規格です。
ISO 14001の目的は、「環境パフォーマンスの向上と順守義務を満たすこと」です。サステナビリティ(持続可能性)の考えのもと、社会的・経済的ニーズとバランスをとりながら、環境を保護し、変化する環境状態への対応を求めています。具体的には、業務改善や経費削減によって結果的に環境への配慮もできるような活動を継続的に行うことを求めています。
上述の通りISO 9001は品質に関する規格でISO 14001は環境に関する規格です。しかしながらISO規格のそもそもの目的は、グローバルにスムーズな取引や顧客満足度の向上、ひいては持続可能な経済活動を行うことです。ISO 9001とISO 14001では品質面と環境面という別々の側面から持続的な経済活動を求めていると言えるでしょう。
一方、個々の要求事項を見ていくと、ISO 9001とISO 14001ではとらえ方が違う要求事項がいくつかあります。
ISO 9001でいう不適合とは、製品の規格外れやマネジメントシステムに対する不適合を指します。不適合に対しては是正が必要になりますので、不適合の管理や原因の分析、再発防止の手順書、有効性のレビューなどを文書化して残す必要があります。
一方ISO 14001の不適合とは、改善実施計画書や目標の設定方法に対しての不適合を指します。手順書よりも継続的改善の文書及び記録と法規制等の文書及び順守評価記録が重視されます。
ISO 9001でいうリスクとは、「インフルエンザで社員のほとんどが欠勤 」「震災等により設備が壊れた」などが起こり生産停止になることなど顧客への影響を想定します。
一方ISO 14001のリスクは「震災等によって設備が壊れて工場排水が濾過できず川に垂れ流しになる」というような「そのことによって環境に何らかの影響を与える可能性があるか」を考えます。
このように個々の要求事項に対して、品質面・環境面という観点の違いから、必要な活動が違う場合もありますので注意が必要です。
前述のようにISO 9001とISO 14001では「持続可能な経済活動を行うこと」という最終的な目的は同じですが観点が異なるため、別々に運用している組織が多いのが実状です。そんな中、2012年にマネジメントシステムを統合するための「ISO/IEC専門業務用指針、統合版ISO補足指針」が制定され、複数のマネジメントシステム規格の統合利用が可能になってきました。この統合版ISO補足指針にしたがって品質面と環境面の双方を満たす目標やビジョンを掲げ、マネジメントシステムをカスタマイズすることでISO 9001とISO 14001の統合利用が可能になります。
ここでは統合のメリットと統合の際の注意点を解説します。
ISO 9001とISO 14001を統合することで、審査回数が削減され審査対応の負担と審査費用を低減することができます。
【統合規格の審査例】
例えば4月にISO 9001、5月にISO 14001を別々に定期審査を受けていた組織の場合、統合利用で2つの審査を一度に受けられます。2回に分けて負担していた審査対応と審査費用が1回に収まるので大幅な負担軽減が見込めます。
「ISO/IEC専門業務用指針、統合版ISO補足指針」では「4.1 組織及びその状況の理解」や「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」など主要な要求事項が共通化されています。したがって内部監査やマネジメントレビューなどをISO 9001とISO 14001で別々に行わず一度で行えますので運用コストが削減できます。
マネジメントシステムの重複がなくなりますので、ISO 9001と14001で別々に存在した管理体制や目標管理を一元化することができます。多角的で迅速な経営判断が可能になりますので企業体質の強化につながります。
統合の際に注意したいのは、一元管理が望ましい要求項目と、別々の管理が望ましい要求項目とのメリハリをつけることです。ISO 9001とISO 14001で要求事項が異なる場合もありますので注意が必要です。
マネジメントシステム規格の統合を進めるには、認証審査登録機関やISOコンサル機関などに助言を求めることをお勧めします。
ISO 9001とISO 14001は全く別の要求と考えられることもありますが、「経営状態の改善」という根幹の目的は同じです。本記事が有効なマネジメントシステムの構築の一助になれば幸いです。
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