多品種少量生産とは?求められる背景、メリット、課題解決の方法や解決の実例を解説

多品種少量生産とは?
多品種少量生産は現代のビジネス環境に対応する重要な生産方式として注目を集めています。従来の大量生産では対応できない多様な顧客ニーズや、急速に変化する市場環境に柔軟に対応できる生産システムとして、その重要性は年々高まっています。

また、デジタル技術の進歩やグローバル競争の激化により、企業は効率的な多品種少量生産体制の構築を迫られています。本記事では、多品種少量生産の概要からメリット、多品種少量生産の課題や解決方法、課題を解決した実例などを解説します。
目次

多品種少量生産とは

多品種少量生産とは、同一の生産ラインで複数の種類の製品を少量ずつ製造する生産方式です。

製品の種類が多いことから作業が煩雑化し、品種切り替えなどの準備作業も頻繁に発生するため、一般的に生産コストは上昇する傾向にあります。しかし、顧客の個別ニーズに柔軟に対応できる点や、市場の変化に素早く適応できる利点があり、現代のビジネス環境において重要な生産方式となっています。

とくに、消費者ニーズが多様化する現代において、多品種少量生産は非常に重要です。また、デジタル技術やロボット技術の進歩により、効率性も大きく向上しています。

多品種少量生産が求められる背景

顧客ニーズの多様化

現代の消費者は、自分の価値観やライフスタイルに合った製品を求める傾向にあります。画一的な製品では満足できない消費者が増加し、個々の好みや使用環境に適した製品が求められているのです。

また、SNSの普及により消費者の情報発信力が高まり、個性的な製品への需要が急増しています。さらに、グローバル化も進んでおり、地域ごとの嗜好や規制に対応した製品の提供も求められています。

企業はこうした多様化した顧客の個別ニーズに対応するため、多品種少量生産を採用する必要性が高まっているのです。

Industry4.0

Industry4.0とは、ドイツで進められている製造業振興策のことで、第4次産業革命とも呼ばれています。製造業のデジタル化を加速させ、工場の自動化を目指す政策です。

クラウド技術による生産情報のリアルタイム共有や遠隔での生産管理、デジタルツインやビッグデータ分析を活用した生産管理や品質管理の効率化などが行われています。このような施策を進めることで、これまで難しかった多品種少量生産が可能となっています。

マスカスタマイゼーション

マスカスタマイゼーションとは、大量生産のメリットを活かしながら、個々の顧客ニーズに対応した製品を提供する取り組みです。先進技術の発展により、カスタマイズ製品の効率的な生産が可能になってきており、多品種大量生産を目指した理想的な生産形態と言えます。

また、モジュール設計の採用により、標準部品を組み合わせて多様な製品を生み出す手法も普及しています。

多品種少量生産に適合した生産方式

セル生産方式

セル生産方式は、トヨタ自動車株式会社が開発した「トヨタ生産方式」を基に考えられた方式です。製造工程を独立した単位に細分化し、単位ごとに作業者が配置されます。

自動車の組立工場でよく見られる車体本体がライン上を流れていき、作業者が取り付ける部品ごとに配置されている方式のことです。製品種類や生産量に応じて、セルの配置や大きさを柔軟に変更し、多くの品種の生産に対応できます。

受注生産

受注生産は、顧客からの注文を受けてから製造を開始する方式です。すでに注文を受けている製品を生産していますので、在庫リスクを最小限に抑えられるというメリットがあります。

toB向けの製品を生産する企業で採用されることが多く、顧客の生産ラインとも納期調整が必要になるため、生産進捗の管理が重要になります。また、顧客からの注文に応じた生産計画を組みますので、効率的な生産計画が組みにくく、リードタイムが長い傾向があります。

見込み生産

受注生産の逆で顧客からの注文を待たず、需要を予測して生産計画を組む方式です。市場動向や過去の実績をもとに需要を予測し、適切な在庫水準を維持できるように生産を行います。

顧客からの注文の前に生産を行いますので在庫リスクが高くなる一方、効率的な生産計画を組めますので、リードタイムは短くなる傾向があります。近年は、リアルタイムの販売データやAIを活用した需要予測システムの導入により、予測精度の向上が図られています。

多品種少量生産が求められる産業分野

多品種少量生産は多くの産業分野で求められています。本章ではその一部をご紹介します。

精密機械工業

精密機械工業では、技術革新の速さに対応するため、製品サイクルも短くなっており、多品種少量生産の重要性が高まっています。医療機器や計測器、光学機器などの分野では、それぞれの用途に応じた特殊な仕様や厳密な品質管理が必要とされ、個別のニーズに柔軟に対応できる生産体制が求められています。

産業機械工業

産業機械工業では、顧客ごとに異なる用途や設計要件を満たす製品が求められるため、多品種少量生産が求められています。とくに、産業用ロボットや工作機械など、高度な専門性を要する製品では、個別の要件に応じた柔軟な製造対応が不可欠となっています。

食品製造業

食品製造業では、季節限定商品や地域特産品、健康志向など、消費者の多様化するニーズを考慮した商品展開が必要です。また賞味期限などの管理も重要です。

アパレル産業

アパレル産業では、ファッショントレンドの急速な変化や消費者の多様化するニーズに対応するため、多品種少量生産が求められています。シーズンごとの新作展開や限定コレクション、サイズバリエーションの多様化など、市場の要求に迅速に対応する必要があります。

印刷業

印刷業では、小ロットの注文や多品種の商品カタログ、名刺、ポスターなどを扱う場面が多く、多品種少量生産が欠かせません。デジタル印刷技術の進歩により、短納期で多種多様な印刷物の生産が可能になりました。

家具製造業

家具製造業では、顧客の住空間や好みに応じたオーダーメイド家具や、トレンドに沿った限定モデルの生産が求められるなど多品種生産が求められます。しかし、大型製品の保管には多額の倉庫費用が発生し、在庫管理上のリスクが増大しますので、需要予測には注意が必要です。

自動車産業

自動車産業では、グレードやオプション、カラーバリエーションなど、顧客の多様なニーズに応える必要があります。また、電気自動車や自動運転技術の発展に伴い、1台の車に必要な部品の数や種類は増加を続けているため、少量多品種生産が進んでいると言えるでしょう。

医療機器産業

医療機器産業も多品種少量生産の市場です。インプラントや補助器具、リハビリ用具など、患者への個別医療など医療技術の進歩に応じて、多品種少量生産の生産方式が重要な役割を果たしています。

電子部品業界

電子部品業界は製品ライフサイクルが短く、多様な仕様や機能を持つ部品が必要とされています。小ロットで迅速に製造することで、最新技術や市場動向に対応しやすくなるため、多品種少量生産が重要です。とくに、IoTデバイスやウェアラブル機器向けの特殊部品など、新しい用途に対応する製品開発において、この生産方式の重要性が増しています。

多品種少量生産のメリット

多様なニーズに対応可能

多品種少量生産の最大の利点は、個々の多様な顧客ニーズに柔軟に対応できることです。市場の変化や顧客からの特別な要望にも迅速に対応し、顧客満足度の向上につながります。
多品種少量生産による独自性の高い商品は、高い付加価値を持つため、価格設定を上げることができ、収益性の改善が期待できます。

在庫を抱えるリスクの軽減

多品種少量生産による適量生産は、過剰在庫リスクの低減につながります。過剰在庫は倉庫コストだけでなく、倉庫の管理や製品の入れ替え、物流作業などの人的資源を圧迫し、大きなリスク要因となります。

多品種少量生産の課題

生産効率が低くなりやすい

多品種少量生産の場合、同じ生産ラインで多くの品種を生産する場合があります。その場合、生産ラインは製品切り替えを行うことになり、切り替えの間は生産ができないため、生産効率が低下しがちです。

また、多品種になると切り替えの方法も増えますので、熟練した作業者が必要となることも多く、人材確保の面でも課題となっています。切り替え時間を短くするような生産ラインの柔軟性を高めるための設備投資と、効率的な品種切り替え方法の確立が重要です。

生産計画が難しい

多品種少量生産の生産ラインでは、品種の切り替え回数が多いため、効率的な生産スケジュールの作成が非常に難しくなります。また、多品種のため、品種ごとの材料管理や正確な需要予測、生産順序や納期管理も品種が少ない場合より複雑になります。
これらの課題に対しては、高度な需要予測システムの導入や、AIを活用した柔軟な生産計画の立案が必要です。

従業員の多能工化が必要になる

品種が多く切り替え作業が多い場合には、作業員にはさまざまな製品の製造に対応できる高いスキルが求められます。しかし、人手不足の影響でなかなか従業員が集まらない職場では、従業員1人が多くの作業に対応可能となる多能工化が重要な課題となります。多能工化には計画的な教育訓練システムの構築や、作業支援技術の導入が求められます。

技術・技能伝承への取り組みの難しさ

多品種少量生産では、多様な製品に関する技術や知識の共有が必要になります。とくに暗黙知となっている熟練工のノウハウを、どのように形式知化し、若手作業者に伝承していくかが重要です。

また、製品ごとに異なる製造ノウハウを、効率的に文書化・共有化することも必要です。デジタル技術を活用したナレッジマネジメントシステムの構築なども検討しましょう。

コストがかかる

多品種少量生産では、上記のような生産効率の低さや生産計画の難しさなどから、大量生産の方式よりコストがかかります。

また、材料の調達においても、少量多品種の発注となるため、スケールメリットが得られにくく、単位あたりのコストが上昇する傾向にあります。他にも専用の治具や工具のための準備コスト、多品種に対応するための設備投資、作業者の教育訓練コストも必要となります。

これらの課題に対しては、自動化技術の導入やサプライチェーンの最適化などの対策が必要です。

多品種少量生産の課題の解決方法

切り替え作業の標準化

多品種少量生産の一番の課題は切り替え作業の多さによる生産効率の低下です。この課題を解決するには、切り替え作業の標準化を行い、準備時間を減らすことが有効です。

熟練の作業員の作業分析などを行い、切り替え作業の標準化と効率化を行い、その内容をマニュアル化しましょう。デジタルツールを活用した作業手順の可視化や、作業者への適切な指示出しも重要となります。

また、治具や工具を共通化したり、切り替え作業のうち生産ラインが動いている状態でもできる前準備を進めることも有効です。

受注~出荷までの工程を効率化する

生産ラインやレイアウトの見直しで切り替え作業の回数が減らせないか検討を行うことが有効です。また、効率化を検討する際に生産ラインに注目しがちですが、受注から出荷まで生産工程全体を見直すことで、効率化が進む場合があります。

たとえば、受注情報の生産計画への迅速な反映や、材料調達の最適化、生産進捗の可視化などが挙げられます。また、受注情報と連動した自動発注システムの導入や、サプライヤーとの情報共有の強化も効果的です。IoTやクラウド技術を活用した統合的な生産管理システムの構築が求められています。

適切な在庫管理と汎用品の見込み確保

適切な在庫管理を行うには、需要予測の精度を向上させ、必要最小限の在庫で運営できるよう生産計画を作成することが重要です。一方、多品種少量生産の中に共通使用できるような汎用的な材料が含まれる場合には、見込み確保を行うなど効率的な在庫管理も求められます。
これらの多種多様な管理を人が行うのは非常に難しくコストもかかるため、AIを活用した需要予測システムやサプライチェーン全体での在庫の可視化など、デジタル技術を活用した対応が必要です。

品種ごとに受注生産・見込み生産を選択する

品種ごとに、生産頻度と生産量の受注分析を行い、以下の2パターンに分類し、受注生産か見込み生産かを選択して、品種切り替えの回数を抑える方法もあります。
  • 高頻度小ロットの場合:見込み生産を行い、切替回数を減らし、在庫を多めに持つ
  • 低頻度大ロットの場合:受注生産を行い、過剰在庫リスクを避ける
高頻度に生産していた製品の切替回数が減ることで、生産効率の改善が見込めます。

生産管理システムの導入・見直し

上記のような切替回数の低減や、適切な在庫管理を行うために、生産管理システムを導入する方法も有効です。

生産管理システムは、受注情報・納期・在庫・工程・コスト・生産計画といった情報を管理するシステムです。なかにはAIが効率の良い計算計画を自動作成するシステムもあるので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

また、IoTセンサーによる設備稼働状況の監視や、AI活用による予知保全なども効果的です。クラウドベースの生産管理システムにより、複数拠点での情報共有や、リモートでの生産管理も実現できます。さらに、データ分析に基づく継続的な改善活動の推進も重要です。

スキルマップを活用したスキルの可視化

多品種の生産では、品種ごとの知識や作業スキル、切り替え作業の手順など、従業員は多くの知識とスキルが必要です。従業員のスキルを体系的に管理し、効果的な技術伝承を実現するためには、スキルマップを活用してスキルの可視化が必要です。
とくに、デジタルスキルマップでは、各作業者の能力を可視化し、適切な教育訓練計画の立案が可能となります。熟練工のノウハウをデジタル化し、若手作業者への効率的な技能伝承を実現します。

売価の見直し

多品種少量生産が進み、コストの上昇が避けられない場合は、適切な価格設定の見直しの検討も重要です。多品種少量生産ならではの付加価値を適切に価格に反映させなければなりません。

顧客との価格交渉においては、カスタマイズ対応や短納期対応などの付加価値を明確に説明し、理解を得ることが重要です。また、原価計算をできる限り正確に行い、適正な利益を確保し、継続的な価格戦略の見直しを行いましょう。

多品種少量生産の課題を解決した事例

オムロン株式会社

センサー製造などで知られるオムロンでは、コンポーネント組立現場に協調ロボットを導入し、効率的な多品種少量生産を実現しています。人とロボットの協働により、作業の自動化と柔軟性の確保を両立させています。

参考記事:多品種少量生産を実現するために押さえるべきポイント | ソリューション | オムロン制御機器

川崎重工業

日本有数の航空機メーカーである川崎重工業株式会社の航空宇宙システムカンパニーでは、航空機製造における超多品種少量生産に取り組んでいます。

1つの飛行機を作るのに、約10万種類もの部品がある複雑な生産現場では、数多くの人が関わっているため、技術伝承が非常に困難でした。そこでスキル、教育を一元化できる「Skillnote」を導入し、部署を横断したスキルや資格、教育データの一元管理を実現しました。

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多品種少量生産とはどういう意味ですか?

多品種少量生産とは、同一の生産ラインで複数の種類の製品を少量ずつ製造する生産方式です。

製品の種類が多いことから作業が煩雑化し、品種切り替えなどの準備作業も頻繁に発生するため、一般的に生産コストは上昇する傾向にあります。しかし、顧客の個別ニーズに柔軟に対応できる点や、市場の変化に素早く適応できる利点があり、現代のビジネス環境において重要な生産方式となっています。

とくに、消費者ニーズが多様化する現代において、多品種少量生産は非常に重要です。また、デジタル技術やロボット技術の進歩により、効率性も大きく向上しています。

多品種小ロットのデメリットは?

多品種少量生産の場合、同じ生産ラインで多くの品種を生産する場合があります。その場合、生産ラインは製品切り替えを行うことになり、切り替えの間は生産ができないため、生産効率が低下しがちです。

また、多品種になると切り替えの方法も増えますので、熟練した作業者が必要となることも多く、人材確保の面でも課題となっています。切り替え時間を短くするような生産ラインの柔軟性を高めるための設備投資と、効率的な品種切り替え方法の確立が重要です。

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