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2024.10.30
製造業において、継続して受注を得るためには顧客からの信用が必要であり、顧客からの信用を得るためには、在庫管理を適切に行いながら約束した納期通りに製品の生産と納品を行うことが重要です。
納入に大きな影響を与える製品の在庫や生産の管理は無計画ではうまくいかない可能性が高く、社内外の状況変化が発生した場合にもうまく対応できません。そこで、さまざまな状況変化に対応しつつ顧客からの信頼を得るためには、生産計画の活用が効果的です。
この記事では、生産計画の概要や種類、それぞれの生産計画の立て方や生産計画の立案から管理まで広範囲で活用できる生産管理システムについて紹介します。
JIS(日本産業規格 旧日本工業規格)が公開している生産管理用語によると、生産計画は「生産量と生産時期に関する計画」と定義されています。
生産計画は大日程計画(中長期の生産計画)、中日程計画(部門別の生産計画)、小日程計画(日々の作業予定)に分類され、用途に応じてそれぞれの計画を使い分けることが望ましいです。
生産計画に含まれる情報は、多岐にわたります。例えば、生産する製品の種類や数量、生産タイミング、生産に必要な原材料や部品、設備、人員などがあります。また、生産から出荷までの日数など、スケジュールに関する情報なども含まれます。
関連記事:生産管理とは? 仕事内容や工程管理との違い、課題、生産管理システム、向いている人
生産計画が重視され理由は大きく二つに分類できます。
1つ目は、顧客からの信頼を確保するためです。受注した製品を、品質を確保しながら適切なタイミングで納入するためには、生産計画と連動した在庫管理や生産に必要な人員、設備、原材料の確保が必要です。これらが適切にできていない場合、契約した納期に納品できないというリスクが生じます。
2つ目は、経営への影響です。生産計画と在庫管理を適切に連動できていないことで、計画通りに進行していれば不要だったはずの製品の生産などのために無駄な費用が必要となり、経営に悪影響を与えます。
このように、生産計画は単に製品の生産タイミングを調整するだけでなく、人事計画や在庫管理といった経営にも大きな影響を与える要素に関わるため、企業で重視されていると言えます。
生産計画は、大きく以下の2tsuに分類できます。
押し出し方式は、押し込み生産を行うための生産計画のことで、PUSH型と呼ばれる場合もあります。押し込み生産とは、上流工程で策定した生産計画に基づいて各工程における作業計画を作成し、その計画に沿って製品の生産を行う生産方式です。
他の工程(特に後工程)の状況は考慮せずに設計した生産計画に基づいて作業を行い、後工程に前工程の作業済み品を押し込むように生産を行うことから、押し出し方式と呼ばれています。
後工程、顧客のニーズに捉われずに生産を行うことからスムーズな生産が可能ですが、生産した製品が顧客のニーズに合致していない場合には、余剰生産が生じやすいといったデメリットがあります。
引っ張り方式は引き取り生産を行うための生産計画のことで、PULL型と呼ばれる場合もあります。引き取り生産とは、生産の後工程で必要になったものを前工程から引き取り、前工程では決められた数量に対する不足分を順次生産していく製品の生産方式のことです。
顧客からの受注数量や納期に応じて生産計画を立てることで、余剰在庫が出にくい点が引っ張り方式の大きなメリットです。一方で、あらかじめ確保しておく在庫が少ないことや急な生産数の増加が難しいことから、需要の急激な増加には対応しにくい点が引っ張り方式のデメリットとなります。
生産計画を立てる際には、以下のように大日程計画から中日程計画、小日程計画と順番に計画を立てていくことが望ましいと言えます。
大日程計画は、6ヶ月から1年の期間の生産計画を表現したもので、企業や扱う製品に応じては数年単位での生産計画として大日程計画を作成することもあります。
大日程計画では、該当製品や類似製品の過去の受注実績、今後想定される社会環境の変化などを元に受注量を予測することが重要です。予測結果を元に、準備に時間が必要な設備投資計画や人員配置・育成計画を立てます。
上記以外にも、既存製品の改良や工場工程の変更、新製品の生産なども大日程生産計画の要素として織り込む場合があります。
中日程計画は、主に1ヶ月から6ヶ月程度の期間を表現した生産計画で、受注した内容に基づいて受注した製品の生産量や生産タイミングを計画します。
中日程計画は、大日程計画と比べて受注状況や生産状況の変化を細かく反映するため、一度作成した後も毎月、もしくは毎週などのペースで見直しを行うことが多いようです。
中日程計画に記載する具体的な項目としては、月別の生産計画、必要な原材料や部品調達の計画、人材配置などが挙げられます。
小日程計画は、主に1週間から1ヶ月の期間を表現した生産計画で、生産現場の従業員が小日程計画に応じて動けるような具体的な作業内容や作業完了時期を計画します。
現場の生産状況や客先からの受注状況に応じて、その都度生産計画を更新する必要があるため、小日程計画は3種類の計画の中でもっとも複雑で作成の難易度も高い計画と言えます。
原材料や部品、設備、人員などの限られた自社の資源を無駄なく配分するためには、小日程計画が特に重要とされます。
生産計画を立てる際には、以下のような点を考慮する必要があります。
これらの点に関しては、他社事例や自社が持つ過去データなどを元に生産計画を設計する段階であらかじめできるかぎり解消しておくことが重要と言えます。
生産計画を効率化するためには、以下の要素が重要とされています。
生産計画通りに生産を進めるためには、4Mの観点で適切に管理することが重要です。4Mのそれぞれの要素は、以下の通りです。
生産工程を構築、稼働させるために必要な人員や求められるスキルなど
生産工程の設備や治具、設備の数量や稼働時間など
生産工程における加工方法や作業手順など
生産工程で用いられる原材料や部品の種類、数量など
関連記事:製造業・品質管理の4Mとは? 5M+1Mや6Mとの違い、変更管理、効果の出し方について解説
バッファとは、ビジネスにおけるさまざまな「余裕」のことです。製品の生産時には、急な設備や人員のトラブルに加えて、市場動向の変化や予測できないような状況に対して余裕を持っておくことが重要です。
例えば、在庫や納期、設備や人的リソースにバッファを確保しておくことで、トラブルが発生した際にも顧客に影響を与えずに製品を納品できます。
一方で、バッファを過剰に確保してしまっている状況では、生産効率の低下や在庫管理費・人件費の増加などの悪影響が生じるため、バランスをどうとるかが重要なポイントです。
従業員のスキル・資格を把握することは生産計画の立案に大いに役立ちます。顧客から受注した製品を品質を維持させながら期日を守って納品するためには、スキル・資格情報に基づいた人材配置が大変重要になります。また、スキルが不足している従業員に業務を任せることで生じる品質トラブルを極力避けることもできます。生産計画の立案には適切な「スキル管理」も大切です。
生産計画を作成する際に活用できるツールには、以下のようなものがあります。
PERT図は、新QC7つ道具のアローダイアグラムとよばれることもあり、さまざまな要素が入り組んだ複雑なプロジェクトにおいて生産スケジュール管理に用いられるツールのことです。
複雑な工程を関係者で共有できるように可視化するためにPERT図を活用することで、全体の状況を把握しやすくなり、ボトルネックとなる箇所を明確にできます。
トラブルが発生した際に生じるプロジェクト全体や各工程に影響をあらかじめ確保しておいたバッファで吸収できるかどうかの判断も可能となります。
関連記事:QCサークル活動とは? メリットと進め方、時代遅れと呼ばれる理由を解説
スケジュール管理でよく用いられるツールが、ガントチャートです。縦軸に作業計画、横軸に時間を表示し、作業の計画と実績のスケジュールを管理します。
工程ごとの所要時間の計画と実績を可視化しやすく、工程の順番も視覚的に把握しやすくなります。また、エクセル等の表計算ソフトで簡単に作成できる点もガントチャートのメリットです。
従業員のスキルや資格を把握するためにはスキルマップを活用するのが便利です。スキルマップとは、従業員のスキルや資格、経験などを一覧化した表のことです。なお、スキルマップの作り方は以下を参考にしてください。
関連記事:スキルマップとは? 目的、メリット、作り方、トヨタの活用例、職種別の項目例を解説【エクセルテンプレートあり】
生産管理システムは、生産計画に必要な受注製品の納期や在庫、生産工程、原材料や部品の原価など、さまざまな情報を一元管理できるシステムです。
生産管理システムを活用すれば、生産に関わる複数の部門や各工程における調整が容易にできるようになり、適切な生産計画を立案できます。
なお、生産管理システムの内部にはさまざまなデータを集約・蓄積できるため、今後の生産計画立案にも有効に活用できます。
生産計画を立案する際に社員のスキルを把握・管理するには、スキル管理システムの活用も効果的です。スキル管理システムでは、上述のスキルマップの更新作業の効率化、スキル・資格情報の登録、必要なスキルや力量に合わせた育成計画の立案、スキル・資格情報に基づいた客観的な人材配置が可能になります。
生産管理システムの活用には、以下のメリットがあります。
生産管理システムでは、工程全体においてボトルネックとなる工程を可視化できるため、限られた工数で効果的な取り組みへとつながり、業務効率化を実現できます。
部門間での情報連携が速やかに行われることで、業務の重複解消や関係者間での情報共有を効率的に行うことも可能です。また、生産管理システムからはさまざまなノウハウを得ることができ、それを関係各所と共有することで属人化の解消に繋がります。
生産管理システムに蓄積された情報を分析し、その結果を生産計画に反映できれば、生産性や在庫管理の精度向上が期待できます。また、現在の生産状況を可視化することで納期に対して必要な生産調整をスムーズに行い、余剰在庫や在庫不足に陥るリスクの回避が可能です。
生産管理システムで工程ごとの負荷を可視化することで、工程全体での生産不可を平準化することが可能です。これらの取り組みは、従業員の不満解消にも繋がります。
表計算ツールなどを用いて従業員が手作業で生産計画を作成する場合、単純な操作ミスが発生しやすい状況になります。また、更新に時間がかかるため、業務負荷が高い状況では作成後の更新が滞ってしまうリスクもあります。
生産管理システムは、情報が把握しやすく更新の操作も簡略化されているため、生産計画に関連する業務の効率化が可能です。その結果、生産計画の調整や他の業務に充てる時間を確保できるようになり、人的ミスが起きにくい環境を構築できます。
また、複数人で生産計画を編集する際にも、編集内容がリアルタイムで反映されるため、情報共有におけるミスも低減できます。
生産管理システムでは、製品の生産に関するさまざまな情報を一元管理できます。
企業で導入するシステムの中には、販売管理システムや工程管理システムなど、特定の部門で活用することを想定した独立したシステムがあり、これらはシステム間の連携をうまく構築しないと全社での情報共有や効果的な活用が困難です。
生産管理システムに情報を一元管理することで、システム違いでの情報共有を考慮する必要もなく、貴重な情報を関係者に速やかに共有し、効果的に活用できます。
生産管理システムを選ぶ際には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
生産管理システムは、主に以下の3種類に分類できます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合わせた種類を選定するといいでしょう。
システムの導入に必要なサーバなどの環境を自社で構築する方式で、自由度は高いものの導入コストが高くなります。
ネットワーク経由でシステムを活用するサービスで、自社で準備するものが少ないため、初期導入コストを抑えられます。一方で、自由度は高くなく、ネットワーク回線のセキュリティ対策が必要です。
ソフトウェアを導入し、各デバイスにインストールすることで利用する方式で、導入期間が短くできますが各デバイスにインストールが必要であり、自由度は高くありません。
生産管理システムを導入した後に現場従業員が実務で活用するためには、直感的なユーザーインターフェースや高い操作性が必要です。操作性がよくないと、費用をかけて生産管理システムを導入しても社内で浸透するまでに時間がかかってしまいます。
また、トラブルが生じたり、不明点が生じたりする場合に速やかに問題点を解消できないと、新しいシステムを使ってもらえずに従来のやり方に戻ってしまう可能性があります。不明点を気軽に相談してすぐに解消できるサポート体制が確立されているかどうかも、生産管理システムを選定する際の重要な要素のひとつと言えます。
企業の生産形態は、扱っている製品や企業の方向性によって異なるものです。例えば、オーダーメイド品の完全受注生産と少品種大量生産、多品種少量生産では、生産管理システムが必要とする機能は異なる場合があります。
自社の生産形態に適合しているかどうか、必要な機能を搭載しているかどうかは生産管理システムを選定する上で考慮すべき重要な要素と言えるでしょう。
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