ナレッジ
2024.12.4
近年ますます注目されている製造業DX。DXによって、日本国内の製造業が直面している課題の解決が期待されています。さまざまな業種でDXは進んでいますが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が作成した「DX白書2023」によると、製造業でDXを全社的に推進している企業は、わずか27.6%でした。なぜこのようなギャップがあるのでしょうか?
本記事では、製造業DXで期待される効果、進まない理由、導入ステップや取り組み事例をご紹介します。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用した業務効率化や、製品・サービスのビジネスモデルの新たな価値を作り出す取り組みです。企業の持続的成長と社会課題の解決に不可欠な戦略として注目されています。
製造業は他の業界より従業員の高齢化や人手不足が深刻なため、DXによる課題解決がとくに期待されています。
製造業DXの例としては、
などが挙げられます。
近年は、将来の予測が非常に困難なため「不確実性の時代(VUCAの時代)」と呼ばれています。
VUCAとは、
の頭文字をとった略語です。
新型コロナウイルスの流行や、地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、あるいはグローバル化による人材流動化や地政学的リスク、科学技術の急激な進歩など、近年ではありとあらゆる分野・領域で問題が複雑さを増しています。
このような時代に対応するために、企業は経営基盤の強化が急務であり、DXによる革新が求められています。
DXの導入により、生産性の向上、コスト削減、意思決定の迅速化が図れます。また、データ分析を活用した需要予測や在庫最適化、AIによる品質管理の高度化などが実現できれば、経営効率を飛躍的に高められます。さらに、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルが創出できれば、市場競争力の強化につながります。
DXは単なる業務改善ではなく、経営戦略そのものを変革できる可能性を秘めています。
CO2排出量の削減を代表とするSDGsへの対応は製造業にとって重要な問題です。近年、欧米各国は、巨額の脱炭素関連投資や、新たな環境関連市場の形成に着手するなど、脱炭素に向けた取り組みを加速させています。このような動きはグリーントランスフォーメーション(GX)と呼ばれ、日本でも2033年までに150兆円の官民投資が決定されるなど大きな動きとなっています。
そんななか、DXの推進は、エネルギー消費量の最適化や廃棄物の削減などに貢献するものとして期待されます。DXによるSDGsへの貢献としては、以下のようなものが挙げられます。
日本国内では、過去20年間で製造業の労働者人口は1,202万人から1,044万人と約160万人も減少しました。深刻な人材不足に直面する製造業では、DXによる省人化が強く求められています。DXをとおしてこれまで従業員が行っていた手作業を機械で代替し、生産性を向上させることができます。
また、日本の製造業では、属人化した技術も多く、熟練技術者の退職も大きな課題となっています。DX化により若手人材に余裕が生まれれば、空いた時間を有効活用して技能伝承も進められます。
また、VRやARも活用することにより、効率的な技術継承が可能になります。
関連記事【事例アリ/成功パターン解説】技術伝承とは?暗黙知と形式知、技能伝承との違い、行わないリスクと成功させるコツ、デジタル技術活用
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
ここでは、DXのメリットを2つご紹介します。
これまで熟練技術者の経験や勘に頼っていた部分を、センサーやIoT機器でまかなうことで、技術・技能のデータ化・見える化が可能となり、技術・技能の属人化を排除できます。属人性の排除は、製造プロセスの標準化を促すため、品質ばらつきの抑制やムダの削減や効率化に貢献します。
また、データに基づく客観的な意思決定は、組織全体の生産性向上と競争力強化につながります。
製造業DXが進めば、製品の性能や品質が向上し、顧客満足度も上がります。たとえば、以下のような例が挙げられます。
このように顧客満足度の向上につながる製造業DXは、今後もますます増えていくでしょう。
関連記事:スマートファクトリーとは? 意味や目的、メリットを解説
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が作成した「DX白書2023」によると、製造業でDXを全社的に推進している企業はわずか27.6%でした。一方、「まったく取り組んでいない」と回答した日本企業は28.4%で、米国の11.8%とは大きな差がありました。ここでは、日本で製造業DXが進まない理由を4つ紹介します。
多くの企業ではDXの必要性は認識しているものの、具体的な目標や戦略を明確にするのは難しいと言われています。経営層のデジタル技術への理解不足や、DXを単なるIT投資ととらえる誤解も障害となっています。
また、部門間の連携不足により、全社的な取り組みに発展しないケースも多くあります。これらはDX推進戦略やビジョンが明確になっていないため起こっていると考えられます。
DXを進めるには経営層主導で明確な戦略やビジョンを策定して、全社的に取り組める体制の構築が不可欠です。
さらに、近年では、企業の垣根を越えてサプライチェーン全体でDXを進めることも求められています。たとえば、顧客のニーズにスピーディに応えるために企業間でデータやノウハウを共有したり、CO2排出量などのデータを連携したりする仕組みの構築が挙げられます。
このようなサプライチェーン全体でDXを推進する場合には、強いリーダシップや明確なビジョンが必要です。
DXには高額な初期投資が必要なケースが多く、とくに中小企業にとっては大きな負担となります。これがDXの進まない一因と言われています。
また、DXは単なる設備投資とは異なり、影響を及ぼす範囲が広いため、投資対効果は不明確な場合も多くあります。そのため、投資を行うかどうか経営判断は難しくなりがちです。
DXを推進するためには、優先順位に沿った段階的な投資計画の策定や、補助金等の外部資金の活用など、柔軟な資金戦略が求められます。
DX推進には多くのDX人材が必要ですが、製造業ではデジタル技術に精通した人材が不足しています。とくに製造業のDX人材には、製造現場への精通とITスキルの両方を持つことが求められます。しかし、DX人材の採用競争は激しく、獲得コストも高騰しています。
関連記事:【解説】ITSS(ITスキル標準)とは? 7段階のレベルと11の職種、スキルマップの活用
また、既存社員のデジタルスキル向上も課題となっています。現在、多くの企業で既存社員へのリスキングなどが進められています。
製造業におけるDX推進には、計画的な人材育成プログラムの実施、人材採用(新卒・中途)や外部人材の登用など複合的な取り組みが求められ、長期的視点に立った人材戦略が必要になります。
関連記事:人員計画とは? 目的、メリット、要員計画との違い、作成のステップと注意点を解説
製造現場では、熟練技術者の経験や勘に頼る作業が多く残っています。こうした属人化された業務は標準化や技能・技術伝承の推進、デジタル化への移行が難しく、DX推進の障害となっています。また、現場では、長年続いてきた業務プロセスの変更への抵抗感も強く見られます。
これらを解決するには、理由1〜3で述べてきたような、DX推進後の明確なビジョンや、投資判断、DX人材による根気強い作業が求められます。
関連記事:【事例アリ/成功パターン解説】技術伝承とは?暗黙知と形式知、技能伝承との違い、行わないリスクと成功させるコツ、デジタル技術活用
製造業においてDXを導入するステップを大きく5つに分けてご紹介します。
まずは、DX導入の目的と戦略を明確にします。経営層を中心に、DXによって実現したい具体的な成果や、目指すべき企業の姿を明確にしましょう。あわせて、DXが企業の中長期的な成長戦略とどのように結びつくのかも確認しておきましょう。
DXを進めるには、全社的な協力が必要不可欠です。戦略と目標を全社で共有して推進力を高めましょう。
DX導入の目的と戦略が明確になったら、次は具体的なプランを策定します。
このプランには、短期・中期・長期の目標設定、必要な技術やシステムの選定、投資計画、組織体制の構築などが含まれます。内容によっては既存システムとの統合や、従業員の育成計画などを盛り込む必要があります。柔軟性を持たせつつ、明確なロードマップを描きます。
DXの導入において、適切な人材の確保は不可欠です。そのため、必要な人材要件を明確化して、人材確保に向けた取り組みを行います。
DX人材に必要なスキルは以下5つの人材類型で分けられ、どのようなDXを行うかによって、必要な人材要件は異なります。
関連記事:人材要件とは? 作り方や定義と目的、採用ペルソナとの違い、フレームなどを解説
DX導入の一般的なプロセスは、「現状分析」「課題抽出」「ソリューション設計」「実装」「評価・改善」の各ステップを踏むことです。それぞれのステップでの具体的なタスク、担当者、期限を明確にして、プロジェクト管理ツールなどを活用して進捗を可視化します。アジャイル開発の手法を取り入れ、短期間で成果を出し、フィードバックを得ながら改善していく方法も効果的です。
DX導入の最後のステップは、結果の評価です。事前に設定したKPI(重要業績評価指標)に基づいて、DXの成果を客観的に測定します。
成果は基本的に、生産性向上率、不良品率の減少、新製品開発のスピードアップなど、具体的な数値で評価します。一方で、定量的な指標における評価だけでなく、従業員の働き方の変化や顧客満足度の向上など、定性的な面への効果も忘れずに評価することも重要です。
評価結果は経営層や関係部署で共有し、成功事例は全社に展開します。課題が見つかった場合は、原因を分析し、改善策を検討します。継続的な評価と改善のサイクルを進めていきましょう。
ここからは経済産業省が作成した製造業DX取り組み事例集を参考に、代表的なDXの事例をご紹介します。
さらに、経済産業省は、2020年から新たな成長・競争力強化につながるDXに取り組む企業を「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定しています。ダイキン工業株式会社は2023年にDX銘柄としても選定されています。このDX銘柄として選定されたAGC株式会社の例もご紹介します。
スキル×人材マネジメントなら「Skillnote」が正解!
●製造業で人材DXを成功させるコツがわかる
●スキルマップの作成・運用・データ共有がぺーパーレス化
●スキル管理システムの活用で計画的な人材育成に成功
製造業におけるDXとは?
製造業は他の業界より従業員の高齢化や人手不足が深刻なため、DXによる課題解決がとくに期待されています。
製造業DXの例としては、
・シミュレーションによる製造プロセスの最適化や新製品開発
・データ分析を活用した品質管理の高度化
・サプライチェーンの最適化
などが挙げられます。
製造業DXの成功事例は?
下記の企業の取り組みが成功事例に挙げられます。
・三菱電機株式会社「e-F@ctory」
・ダイキン工業株式会社「工場IoTプラットフォーム」
・AGC株式会社「プロセスデジタルツインによる生産性向上」
製造業のDX化が進まない理由は何ですか?
多くの企業ではDXの必要性は認識しているものの、具体的な目標や戦略を明確にするのは難しいと言われています。経営層のデジタル技術への理解不足や、DXを単なるIT投資ととらえる誤解も障害となっています。
また、部門間の連携不足により、全社的な取り組みに発展しないケースも多くあります。これらはDX推進戦略やビジョンが明確になっていないため起こっていると考えられます。
ナレッジ
2024.7.26
ナレッジ
2024.12.23
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.19
ナレッジ
2024.4.19
ナレッジ
2024.4.24