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2024.9.5
生産性向上に向けた取り組みを行いたいと思っていても、そのための人材や時間が不足していてなかなか対策が取れていないと思っている担当者の方も多いと思います。
この記事では、製造業において生産性向上が重視される理由や、生産性向上によるメリット、生産性向上を実現するためのポイントを解説します。
そもそも生産性とは、「投入した資源に対して、どの程度の成果を生み出せたか」を表す指標のことです。
製造業における生産性は投入する資源によって分類され、主に「労働生産性」「設備生産性」「資本生産性」の3種類があります。
単に生産性という場合には「労働生産性」を指すことが多く、従業員1人あたり、もしくは、単位時間あたりの生産量を意味します。
生産性を向上させるためには、「同じ成果を出すために投入する資源を減らす」「同じ投入資源の量で生み出す成果を増やす」こと、または、その両方が必要となります。
製造業で生産性の向上が求められるのは、主に以下の理由からです。
「令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策」によると、国内の就業者数は、2002年の6330万人から2023年の6747万人へと、約400万人増加しています。一方、製造業の就業者数は1202万人から1055万人へと、約150万人減少しています。
また、全産業に占める製造業の就業者の割合は、2002年の19.0%から2023年の15.6%に減少しており、製造業から非製造業に人材が流出している傾向が認められます。
出典:経済産業省「令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策」
日本は、世界の主要国のなかでも「労働生産性が低い国」であると言われています。グローバル化が進む今日、企業にとって国際的な競争力の維持・強化することは必要不可欠です。この観点からも、労働生産性の改善が求められています。
公益財団法人日本生産性本部が発行した「労働生産性の国際比較2020」によると、日本の時間あたりの労働生産性は47.9ドルで、OECD加盟37か国中21位。これは、先進7か国中、最下位の数値です。
また、日本の1人あたりの労働生産性は81,183ドルであり、OECD加盟国中26位。製造業の労働生産性に限定すると、日本は98,795ドルでOECD加盟国中16位です。
出典:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2020」
製造業が生産性を向上させることには、以下の目的・メリットがあります。
繰り返し行う作業プロセスを見直して標準化することで、業務の効率化やミス低減などが期待できます。
業務効率化やミス低減による手戻り作業の削減によって、同じ成果を出すために投入が必要となる労働力を抑制でき、利益率向上につながります。
生産性の向上によって利益率が上昇すれば、積極的な事業投資や社員・株主などへの還元をとおして事業環境も改善できます。
関連記事:業務標準化とは?業務標準化のメリットと進める手順を解説
人手不足は製造業にとっても深刻な課題であり、多くの企業が採用に力を入れています。しかし、人材獲得競争は激化しており、必要な人材の確保は簡単ではありません。そのため、生産性を向上させて、限られた人的リソースで売り上げ目標を達成できるように努力することも有効な手段です。
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
経済のグローバル化が進む今日において、日本の製造業企業が安定的に成長を続けるためには、グローバル市場での競争に打ち勝たなければいけません。しかし、前述したように、主要国と比較した際、日本企業の労働生産性は応対的に低いのが現状です。このことからも、生産性の向上が求められます。
作業の標準化は、生産性の向上を促すとともに、作業者や作業タイミングによって生じる品質ばらつきを低減し、品質の安定化に寄与します。
品質の向上・安定化は、顧客からの信頼を厚くし、商品のブランド力の強化にもつながります。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
製造業で生産性が低下する理由には、以下のものがあります。
作業によって生じるミスを抑制するためには、複数人によってチェックするなど、チェック体制の強化が求められます。当然、人材・時間の両面におけるコストはかさみます。
また、マネージャーによる業務管理が甘ければ、不必要な作業が増え、時間を無駄に使ってしまいます。
自動化できる作業は積極的に自働化するようにしましょう。業務の自働化は、時間の無駄や作業ミスが生じることを抑制します。その上で、マネージャーが適切な業務管理を行えば、生産性は確実に向上します。
関連記事:製造業における省人化とは? 注目される理由、省力化・小人化との違いを解説
部門を横断して行うプロジェクトは、さまざまな従業員が協力し合って進められます。そのため、コミュニケーションがスムーズにいくことがプロジェクトの成否を左右します。
しかし、部門間のコミュニケーションがうまくいかなければ、作業の中断や手戻りが増え、生産性も大きく低下してしまいます。
業務チャットツールなどを導入して、部門間でのコミュニケーションを取りやすくする仕組みを普段から構築しておきましょう。
業務の属人化とは、特定の業務に関するスキル・経験・知識が一部の従業員にのみ蓄積しており、組織内で共有されていない状態を意味します。とくに、特定の作業をベテラン従業員に任せている場合は、業務の属人化が深刻な状況であることが多いと言えます。
業務の属人化には、属人化したスキル・経験・知識を持つ従業員が休職や異動などで不在となった場合に、業務が進まなくなるリスクがあります。また、当該の従業員が引退した場合には、そのスキルが失われてしまう恐れもあるため、従業員が引退する前に技術・技能伝承を進めておく必要があります。
属人化を解消するには、業務標準化が有効です。特定の従業員にしか扱えない業務をなるべく減らしましょう。なお、スキルマップを活用して属人化したスキルを特定し、スキルの継承を促すことも効果的です。
関連記事:【エクセルテンプレートあり】スキルマップとは? 作り方、作成するメリット、手順・項目例、目的、活用方法、テンプレ
生産性の向上には、従業員のスキルアップや多能工化が必要不可欠です。しかし、そもそも人手が不足して従業員にかかる業務負荷が高い状況では、スキルアップや新しいスキルの獲得に費やす時間的余裕はありません。
従業員にかかる業務負荷が高い状況を放置すれば、従業員のモチベーションの低下や作業効率の悪化、さらには離職の増加を招き、さらなる悪循環を生んでしまいます。早急な対策が必要です。
関連記事:製造業の多能工化を成功に導く3つの抑えるべきポイントとは?
生産性向上の実現には、以下の方法が有効です。
まずは、業務プロセスを可視化してボトルネックになっている箇所を明らかにします。その上で、改善効果の大きさを判断基準にして、どの課題から取り組むかの優先順位を付けます。
取り組みによっては部門を横断して行うものもあるため、部門間で協力しながら進めましょう。
次に、取り組みごとに具体的な数値目標を設定して、進捗管理を行います。数値目標があることで、取り組みの効果検証が可能になります。
なお、設定する数値目標は、実現可能なものにします。目標値があまりに高くなりすぎると、従業員に余計なプレッシャーを与え、モチベーション低下へとつながります。
次に、業務改善のための具体策を検討します。
具体策には、生産工程における作業手順や人員配置の変更、標準作業手順書の改善、新たなITツールや設備の導入や既存設備の改善などが挙げられます。
さまざまな選択肢のなかから、コストパフォーマンスなども考慮に入れて、最も改善効果が期待できるものを選びます。
課題によっては、ITツールの導入・活用が効果的な場合もあります。近年では、製造業におけるDX化が進められており、幅広い業務に適用できる汎用的なツールだけではなく、「スキル管理システム」など、特定の領域に特化した専門性の高いツールも開発されています。ITツールの活用も検討するとよいでしょう。
製造業における生産性の向上には、業務を自動化できる設備の導入も効果的です。予算などの関係から新たな設備の導入が難しい場合には、既存設備の改善も有効です。
設備の導入や既存設備の改善には、多額の費用がかかります。費用対効果を十分に意識して、現場従業員の声も取り入れながら導入・改善を検討しましょう。
製造業で生産性向上を目指す際に、気を付けたいポイントは以下です。
生産性の向上には、5Sを徹底することが効果的です。
5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」のこと。それぞれの項目をアルファベット表記した際に頭文字がSになることから、こう表現します。
5Sが十分に徹底されていない職場は、業務に必要な備品などを探すのに時間がかかる無駄の多い環境と言えます。
一方、5Sが徹底された職場は、必要なものを必要なときに取り出せるなど無駄が省かれ、業務が効率化しやすい職場です。
関連記事:5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)とは? 概要、導入目的、メリット、導入のポイント、7Sとの違いを解説
人材採用によって業務負荷は分散できます。さらに、人材が育成・定着することで業務効率化や生産性の向上が実現できます。従業員がスキルアップやスキル獲得に充てる時間もつくりやすくなり、好循環が生まれます。
そのため、時間とコストをかけて採用・育成した人材が離職しないように、職場環境や待遇の改善に積極的に取り組むことが大切です。
従業員の多能工化も、生産性向上のためには効果的です。複数の従業員を多能工化できれば、人材不足や業務負荷の変動による生産性の低下を解消しやすくなります。
多能工化とは、1人の従業員が複数の業務をこなせる状態をつくることです。複数の従業員が多能工化した職場には、サポート体制が充実していたり、急なトラブルの際にも対応しやすかったりするという特徴があります。
また、従業員が複数のスキルを新しく身に付ける多能工化には、人材育成の面でもメリットがあります。
関連記事:多能工(マルチスキル)とは?製造業における多能工化のメリットや取組み事例をご紹介
多能工化を実現するためには、SOP(標準作業手順書)の作成・改善が効果的です。SOPとは、業務に対して標準的な作業手順を示した文書・マニュアルのことです。
作業順序を示すだけではなく、視覚的な説明を加えることで簡潔でわかりやすいSOPを作成できます。また、ベテランの意見を反映させた作業プロセスを記載すると、難しい業務のコツやカンを抑えることができます。
SOPは、一度作成したら完成ではありません。常にPDCAサイクルを回して、作業手順を継続的に改善することで効果を高められます。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
従業員同士の活発なコミュニケーションは、生産性向上にも効果的です。
コミュニケーション不足による由来する業務上の課題は、放置していても解決しません。定期的に情報共有を行う定例会を設定するなど、日常的に課題を共有し合える環境を構築することが課題解決へとつながります。また、従業員同士の活発なコミュニケーションは、互いの得意・不得意領域を認識しやすくするので、業務効率化にも寄与します。
従業員同士がコミュニケーションを取りやすい雰囲気をつくりましょう。
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