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2024.4.19
SQCとは、品質管理を効率的かつ正確に行うために重要な手法のことです。
この記事では、SQCについてメリットや具体的な手法などを分かり解説していきます。品質改善の効果的な手法について知りたい方はぜひ参考にしてください。
SQCとは「Statistical Quality Control(統計的品質管理)」の略で、収集したデータを統計的手法を用いて解析し、品質管理や工程改善を行うための手法の総称です。
製造現場では製品の品質を一定に保つため、出荷前に不良品がないか検査を行うことが一般的です。
しかし、現場では毎日大量の製品を製造しているため、1つ1つの製品を測定することは現実的ではありません。また、検査の内容によっては破壊検査となるため全数検査が行えない場合もあります。
そのため、一般的に各工程や検査ロットからサンプルデータを抽出して解析し出荷判断を行います。このように少数のサンプルデータから効率的に、かつ信頼度の高い情報を推定するために用いられるのが統計的品質管理の手法です。
さらに、設計段階や品質改善を行う際に材料や設備などが品質に与える影響を調べる場合にも、SQC手法が用いられます。他にもSQCは生産中に発生するデータの変動が「偶然なのか」か「異常なのか」の判断にも使用されます。
SQCの始まりは、1931年にアメリカの物理学者ウォルター・A・シューハートが統計学を元に提唱した管理図といわれています。
日本においては、1950年にアメリカのデミング博士が来日してSQCの講演を行ったことがきっかけです。のちに「日本の品質管理の父」と呼ばれるデミング博士が講演で述べた統計的手法や品質管理(QC・TQC)の考えは、製造業から実践され始め、その後建築業やサービス業にまで広がりました。
時代の流れとともにTQC(全社的品質管理)からTQM(総合的品質マネジメント)へと移り変わっていきましたが、統計的な管理は現代においても活用され、発展しています。
TQC、TQMは下記の記事を参考にしてください。
関連記事:TQC(全社的品質管理)とは?意味や歴史、TQMとの違い、具体的な手法を解説
関連記事:TQM(全社的品質マネジメント)とは?意味やTQCとの違い、具体的な活動を解説
ここではSQCの代表的な手法の一部を簡単にご紹介します。
検定と推定とは、サンプル(標本)の調査から母集団の特性を検定・推定する手法です。
母集団とは、標本を抽出するもとの集団のこと。例えば1日に生産したロット全体を母集団、そこから取り出した検査を行うサンプルを標本といいます。
一般的には母集団は数が膨大で全ての特性を調査するのが困難なため、抽出した標本で特性を調査して母集団の特性を判断します。
例えば、ある製品のねらいの重量が100gで、検査で採取したサンプル重量の平均が101gだったときに、「母集団がねらい通りの重量になっている」と言えるのか? を判断する手法が「検定」ということです。
検定では「母集団の平均が100gである」という仮説に対し「母集団の平均が100gではない」という対立した仮説をおきます。母集団全体の重量は分からないため、サンプル重量の結果からこの対立仮説が正しいかどうかを判断します。
一方、サンプルの特性から母集団の特性を知ることを推定といいます。先程のねらい重量が100gの例では、「サンプルの平均重量が何gであれば、母集団はねらい通りの重量になっている」といえるかを求めるのが「推定」であると言えます。
これらの判断をするには基準が必要となります。95%や99%といった確率がよく使われ、信頼率や信頼区間といいます。
相関分析と回帰分析は、複数の変数の間にどのような関係があるかを調べる統計手法です。
相関分析とは、2つの異なる変数がどのくらい関係しているかを調べる手法のこと。着目している指標のデータを「目的変数Y」として縦軸に、着目している指数の良し悪しを判断する要因となるデータを「説明変数X」として横軸に表すことで、2つの変数の関係性を調べます。
2つの変数間の相関を表す直線を回帰直線と呼び、この回帰直線が右下がり(係数が負)なら「負の相関関係がある」、平行に近い(係数が0前後)なら「相関関係がない」、右上がり(係数が正)なら「正の相関関係がある」と判断します。
また、回帰分析とは、片方の変数から別の1つ以上の変数を説明したり、予測したりする場合の変数同士の関係を調べる手法のこと。
このとき、別の1つ以上の変数が1つだけなら単回帰分析、2つ以上なら重回帰分析とよばれます。
実験計画法とは、特性に影響を及ぼす可能性がある要因(因子)を取り上げ、その因子の水準をルールに沿って変化させて実験を行うことで、効率よく漏れのないようデータを取得する統計手法のことです。
実験計画法では、実験回数を減らすために最小限の実験の組み合わせを示す直交表が用いられます。直交表が1つの因子を取り上げる方法を1元配置法、2つの因子を取り上げる方法を2元配置法、3つ以上の因子を取り上げる方法を多元配置法と呼びます。
実験計画法は、もともとは農学試験での応用を目的として開発されましたが、その後は工業や医療分野をはじめとするさまざまな分野で活用されています。
多変量解析法とは、3つ以上の変数に関するデータをもとに、変数間の関係性を統計的に分析する手法の総称です。分析にはさまざまな手法があり、その一例を下記に記します。
多変量解析法は、人間では扱いきれないようなビッグデータも解析できます。そのため、製造現場における品質管理はもちろん、マーケティングや生物情報のデータ解析などにも活用されています。
タグチメソッドとは、実験計画法で世界的に有名な田口玄一博士が考案した工学手法です。
タグチメソッドの代表的な手法に、ロバスト(頑健性)設計があります。これは、量産後に不具合が発生しないように製品開発の時点からパラメータを考慮するものです。
量産時では、材料や設備の状態や製造現場の環境などにばらつきが生じて品質に影響を与える可能性が生じます。しかし、ロバスト設計ではばらつきに影響されにくい設計を行うことで、どのような製造過程や条件下でも不具合が発生しにくい製品づくりが期待できます。
関連記事:タグチメソッド(品質工学)とは? 目的、注目される理由、品質管理や実験計画法との違い
現場改善活動の基礎的な手法としてQC7つ道具や新QC7つ道具も有名です。
QC7つ道具とは、数値データを用いて品質改善する7つの手法のことです。管理図やパレート図、ヒストグラムなどがあります。これらの手法を用いてデータを整理・分類・分析することで、問題点を可視化し、品質改善を行います。
一方、新QC7つ道具とは言語データを用いて品質改善するツールのことです。親和図法や系統図法、連関図法などがあります。数値で表せない言語データを分かりやすく可視化することで品質改善につなげます。
なお、QC7つ道具と新QC7つ道具については下記の記事を参考にしてください。
関連記事:QCサークル活動とは? メリットと進め方、時代遅れと呼ばれる理由を解説
SQCの手法は上記で説明したものが一般的ですが、品質改善のための統計的手法には上記以外にもさまざまなものがあります。
例えば、SPC(統計的工程管理)はStatistical Process Controlの略で、品質の不具合を製造工程内で検出・対処し、不具合を未然に防ぐために製造工程を統計的に分析する手法です。
製品ができあがった後に品質検査をするのではなく、x-R管理図などを用いて製造工程の段階で不具合を検出・対処します。そのため、品質検査にかかる時間とコストを削減できます。
なお、x-R管理図とは、長さや重さなどの特性値に対し、測定した群ごとに平均値と範囲Rを求めて時系列でプロットしていったものです。
UCL(上方管理限界線)とLCL(下方管理限界線)の間でプロットがどのように推移しているかを監視し、工程が安定しているかどうかを判断します。
また、Cpk(工程能力)を算出して工程改善を行うのも、品質改善において有効な手法と言えます。
なお、Cpkとは、工程の管理状態を表す指標のこと。工程において良品をどの程度安定して作れるかを統計的に分析するのに役立ちます。Cpkの値が高いほど工程は管理された状態にあるといえます。
統計ソフト解析などを活用するのも品質改善には効果的です。雑な統計分析を行わなければならない場合でも、統計ソフトを使用することで早く、正確な結果を得られます。
SQCの手法については、公的機関やコンサルタント会社がさまざまなセミナーを開催しています。
例えば日本科学技術連盟や日本規格協会(JSA)では、統計的品質管理手法や品質経営に関するさまざまなセミナーが行われています。企業に講師を招くこともできますので検討してみてはいかがでしょうか。
書籍を活用するのも有効な方法のひとつです。統計学の入門書から、より専門的な内容のものまでさまざまな書籍があるため、自分に合った書籍を自由に選べます。また、書籍はセミナーに比べて比較的安価で学習ができるので、予算を抑えて学習を進められます。
SQCに関する広範な知識を身に付けたいのであれば、QC検定を受検するという方法もあります。
QC検定とは、品質管理検定とも呼ばれる、品質管理についての知識をどの程度もっているか客観的に評価する検定のこと。試験は、毎年3月と9月の年2回実施されており、学生から社会人まで幅広い年齢層の方が受検しています。
QC検定の試験範囲には前述のSQCの手法が含まれているため、QC検定の受検や試験勉強を通して、SQCについての知識を身に付けることができます。
また、「1級/準1級」「2級」「3級」「4級」の4つの級が設けられているので、自分のレベルにあった等級を受けたり、レベルアップのために上の級への受検に挑戦ができます。
この記事では、SQC(統計的品質管理)について、活用するメリットや具体的な手法を詳細にわたって解説しました。
少ないサンプルから信頼性の高いデータが得られるSQCは、効率的な品質管理や品質改善において欠かせないものです。品質マネジメントを向上させるためにも、SQCの手法を取り入れることも検討してみましょう。
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