【イベントレポート】品質改善の本質に迫る!現場と管理職一体で進めるアプローチとは

2025年5月13日に開催したセミナー「品質改善の本質に迫る!現場と管理職一体で進めるアプローチとは」。

QCD革新研究所で所長を務める中村茂弘氏をお招きし、品質改善の本質を解説していただきました。

「良いものを作る」ことが製造業の基本でありながら、品質向上に苦戦する企業も多いのが現状です。真の品質改善には、現場での三現主義と経営戦略に連動したスキルマップ活用が不可欠です。本セミナーレポートでは、慢性不良をたった2時間で解決した装置改善例や、福岡企業で溶接スキル習得期間を大幅短縮した取り組みを通じて品質向上について解説したセミナーの一部をご紹介します。

講師:QCD革新研究所 所長 中村茂弘

早稲田大学理工学研究所金属工学科大学院卒。日立金属(株)で新製品開発を担当、改善技法を駆使したプロジェクト指導経験あり。米国AAPSt-Mary社に3年間赴任。平成3年から日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を務め、QCD革新研究所所長、ISO審査員補、個人情報保護コンサル資格を保持。著書に『「工場改善の体系的思考」に学ぶ』がある。

目次

品質向上戦略の展開と成果

製造業の経営課題としての品質向上

このセミナーでは品質向上とスキルの飛躍化展開をテーマにお話しします。製造業にとって何より大切なのは「良いものを作る」ことなので、まずは「品質向上戦略展開と成果」に関して。次に、品質向上のためにはスキルマップを活用した「人材育成」が重要になることから、「人+物づくり飛躍化のためのスキルマップ活用法」について。そして最後に、戦略的にスキルマップを活用する「事例」をご紹介します。

最初の「品質向上戦略展開と成果」に関してですが、これは経営課題としても認識されています。2021年に日本能率協会が実施した調査「経営課題実態調査」では、「生産部門の課題」として「品質管理体制の課題」が第1位(36.9%)に挙げられています。第4位が「生産技術開発力の向上」(30.4%)です。つまり「良いもの作ること」が最大の目的であり、その上で続々と開発される新製品のライフサイクルに対応する「生産技術を高めること」が重要視されていることがわかります。「物づくりに強い人づくり」が製造業共通の経営課題として認識されている、ということです。

セミナー「品質改善の本質に迫る!現場と管理職一体で進めるアプローチとは」登壇資料より

ところで、ISO9000がQMS(品質マネジメントシステム)に示した品質一流化のステップがあります。それは、(1)「品質向上」を図ること、(2)不良品を出さないよう「品質管理」すること、(3)品質レベルを保証すること(「品質保証」)、(4)世界一流のダントツ品質を目指すこと(「品質計画」)です。これら一連のステップにおいてISOが提唱しているのが「有効性と効率」です。つまり、短期間でのスキルアップが求められており、スキルマップを用いた人材育成も「ダントツ品質」を目指すことと不可分である、ということですね。

セミナー「品質改善の本質に迫る!現場と管理職一体で進めるアプローチとは」登壇資料より

不良の撲滅のための3つの対策:是正対策・発生時典対策・予防対策

ここで、普段研修で説明している不良品撲滅のための3つの対策をご紹介します。

不良対策の1つ目は、出た不良のデータを捉えて不良をなくす「是正対策」です。これは、不良が出たらデータを取り、それを見て討論を進めるという会議検討方式に対抗する考え方です。たとえば1週間不良が出続けている場合、会議検討方式では不良の原因を探らずにデータを取って議論することに終始します。しかし、これでは改善を1週間ストップさせるだけです。ISO 9001 規定4.2.0にある「統計の取り扱いを明確にせよ」とはこの対策を図れ、という意味です。

2つ目は、問題が発生または発生しかけたときに、現場で現物・現象を捉えて発生時点で再発ゼロの手を打つ「発生時点問題対策」です。JIT(ジャストインタイム)生産における「ストップ紐」がこの対策の一例として有名です。これは、組み立てラインで不良が発生したらラインを停止し、不良の原因を探る方式です。

そして最後の3つ目は、事前検討で不良を発生させない仕組みをつくり運用を図る「予防対策」です。さらにこれらの対策に加えて私は、不良品が出たら即座に、現場に行って、現象を見て、現場で対策を取る「三現主義」の考え方も重視しています。

人+物づくり飛躍化のためのスキルマップ活用 

SWOT分析で自社の強みと弱み、機会と脅威を知る

品質向上は企業の経営状態を改善に導きます。これには人材育成が必要不可欠ですが、このときに大切なのがスキルマップを活用して目標管理を行うことです。

目標管理を行うためにはまずSWOT分析によって自社の強みと弱み、市場における機会(チャンス)、そして競合などの脅威を把握して対策を取らなくてはなりません。つまり、客観的に自社の「個性」を把握して、その「個性」に合わせて戦略的な生産技術体制を構築する必要があるのです。企業として重要なスキルが何で、どの従業員のどんなスキルを伸ばし、どう評価するのかは、企業の経営戦略と不可分に結びつく、というわけです。

一例を挙げましょう。私は赴任先のアメリカでアルミホイール工場を担当していたことがあります。そのとき、会社の経営戦略や目標、実現したい姿をはっきりさせた上でスキルマップを活用しました。会社の目標に対して、品質はどのレベルでなければいけないか、納期はどのレベルでなければいけないかという風にスキルのレベル基準を明確にして評価を行うのです。このプロセスを繰り返すことで、3年あった赴任期間のうちの1年半で黒字化し、最終的には不良ゼロの工場になりました。

重要なのは戦略的にスキルマップを活用すること

本気で品質向上を目指すには、経営トップが本気で品質向上を目指す活動に関与する必要があります。その上で、活動によって生じる影響を吟味し、企業として向上させるべき技術を特定して、誰がスキルアップすべきかを明確にしなくてはいけません。

つまり、経営トップが示した目標も含まれる中期経営計画を達成するために底上げすべきスキルを特定して育成する必要がある、ということです。このことからもいたずらに資格取得を奨励することには意味がありません。必要なのはスキルマップを活用して戦略的に目標管理のPDCAを回していくことです。

技術伝承における4象限

スキルマップを活用する際に大切にしたいのが、伝承を図る技術のテーマが持つ特質です。ここでは「暗黙知」「形式知」「修練」「IT・自動化」という4象限によって説明したいと思います。

4象限に即して考えると、技術伝承には4つの対策があることが分かります。「対策1」が「IT・自動化」できるもの、「対策2」が勘と経験を必要としないセンサーなどの技術で分かるもの、「対策3」がマニュアル対策の可能なもの、「対策4」が自助訓練の対象となるものです。たとえば、かつて「暗黙知」だった技術が徹底した解析によって「IT・自動化」できることがあります。この場合、スキルマップを活用する必要はありません。IT化・デジタル化が可能なものは最初から新技術を利用したほうが効率的です。

4象限のなかでスキルマップによって技術・技能の中身を解析する必要があるのが「対策4」です。熟練を要する技術・技能を習得するためには、厳しい根気と意欲、修練が求められます。常に教えられた内容についてのメモを取り、実践と失敗を繰り返して、習得に向けて努力を重ねる必要があります。

セミナー「品質改善の本質に迫る!現場と管理職一体で進めるアプローチとは」登壇資料より

技術伝承と品質改善の事例

熟練技術を「習う側」がマニュアル化して技術伝承を進める

1例目は福岡の企業の事例です。この企業が目的としたのは、協力会社も含めて従業員が全員同じレベルの溶接工程のスキルを持つことでした。スキルがベテラン従業員に偏り、仕事の幅が狭くなってしまうことを危惧していたからです。

そこでこの企業ではスキルマップを作成し、習う側がマニュアルを作って技術伝承を促進しました。その結果、通常習得まで2~3年かかっていた溶接工程のスキルを半年で習得できるようになりました。スキルマップを活用することで短期間に成果を出した好例と言えます。

不良の原因把握に「三現主義」を用いた事例

次にご紹介するのが、装置の不具合に対して「事実に基づくアプローチ」を行って解決した事例です。「事実に基づくアプローチ」は、物理現象解析、ヒューマンエラー対策、そしてデザインレビューの3段階で行うものですが、企業によって問題は異なるので各社必要なものを選定してください。

紹介事例では、通常、ストッパーが下がり、部品を供給し、その後部品の一部を加工するはずの装置が1時間に何十回も治具工程で止まり不良が多発していました。当初、企業は新人教育の不足に不良の発生理由を求めていましたが、我々はビデオで装置が固定する状況を録画しました。すると、ガイドの上を滑ってくる部品の倒れが大きいことが分かりました。

そこでビデオプリンターを使って倒れが大きくなる位置を確かめると、ガイドの先端に傷があることがわかりました。この傷が部品を倒して滑りが悪くなり爪に当たって、不良を出していたのです。早速傷のないシューターに変えたところ倒れなくなりました。慢性不良とされ解決に苦労していた内容がたった2時間で解決したのです。

この事例で顕著なのは、この企業では誰も三現主義で装置不良を点検していなかったことです。小集団活動でよくある何人もの人間が集まってブレインストーミングする「死亡診断書会議」に終始していた、ということですね。品質向上のためには、現場を見ることがいかに大切かを教えてくれる好例だと思います。

スキルマップの活用には標準化とIoTによる環境整備が必要

品質向上にはスキルマップを活用した目標管理も有効な手段です。しかし、そのためには環境整備が必要となります。その際に重視したいのが標準化とIoTの活用です。

ここで言う標準化とは、基準として設定した「標準」に対して実績を記録することです。これにより不良は出なくなり、品質は保証されます。万が一、標準を破って品質不良が起これば大きなコンプライアンス問題に直結します。

また、IoTの活用も重要です。昨今はAIやIoTの進化が目覚ましく、新技術を活用することで技術や業務の見える化・効率化は明らかに進みます。

スキルマップを活用した目標管理は、これらの環境整備の後に行うことで効果を発揮します。しかし、その際には「品質向上」という目的を見失ってはいけません。品質向上という大きな目的に向かって、スキルや技術を目標管理のフレームを利用して習得していく。そういう小さな成功体験を少しずつ積み重ねながら一流になっていくことが大切なのです。

品質向上には「Skillnote」が有効!

以下、「Skillnote」のご紹介です。

・現場のスキル保有状況が見えず、適した人材が作業しているかわからない……。 

・Excelや紙での運用が煩雑で、その工数負担が大きい……。 

・技術伝承がうまくいかずに、技術喪失の危機……。 

こんなお悩みを抱えていませんか? 

そのお悩みを解決するのがスキルマネジメントシステム「Skillnote」 

「Skillnote」なら、こんなメリットがあります。

・システムにログインすれば、各部署のスキル保有状況と不足人材も可視化できる! 

・スキルマップや教育計画、教育記録を互いに紐付けて一元管理できる! 

・失われるスキルを可視化して、5年後、10年後を見据えた人材育成計画が立てられる! 

品質向上のためには、現場と管理職が「スキル」という共通言語を用いてコミュニケーションを取り、組織一体で人材を見守る仕組みをつくることが重要です。 

経験や勘ではなく、スキルデータに基づく人材育成や最適配置、技術伝承を実現する「スキル管理」はそのための第一歩です。 

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