有資格者一覧表とは、「会社として管理が必要な資格(認定や免許等を含む)を洗い出し、従業員一人ひとりの持っている資格を一覧にした表」のことです。企業が「従業員の誰がどんな資格を持っているのか」を正確に把握することは、法令順守や安全管理、品質維持に必要不可欠です。そのために作成されるのが「有資格者一覧表」です。本記事では、有資格者一覧表の基本から、Excelを使った作成方法、法令で必要とされる資格一覧まで詳細に解説します。さらに、効率的な運用方法やシステム化のポイントもご紹介します。
目次
有資格者一覧表とは?
業務で必要な資格を把握する
有資格者一覧表とは、「会社として管理が必要な資格(認定や免許等を含む)を洗い出し、従業員一人ひとりの持っている資格を一覧にした表」のことです。
業務で必要な資格について、従業員の保有状況を把握し、不足がないかを管理するためのツールです。有資格者一覧表、有資格者表、資格マップ等と呼ぶこともあります。
決められたフォーマットはない
有資格者一覧表には決まったフォームはありません。一般的にはエクセルで管理することが多いと言えますが、社内で使っているシステムがあればそれで管理するのもよいでしょう。
なお、インターネットで「有資格者一覧表 フォーマット」と検索すると、無料テンプレートをダウンロードできるwebサイトを発見できます。無料テンプレートをダウンロードできるwebサイトは複数あるため、目的や好みに合わせて使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
もちろん、ダウンロードしたテンプレートを使いやすいようカスタマイズするのもおすすめです。
有資格者とは?
有資格者とは、ある一定の業務を行うことができる資格や認定、免許等の保有者のことです。企業においては、事業や業務を行う上で、様々な資格を持っている有資格者が必要です。業種によっては100種類以上の資格について、有資格者の管理を行っています。想像するだけでも大変そうですが、いったいどういった種類の資格を管理しているのでしょうか。
会社が管理する代表的な資格には、大別して以下のようなものがあります。
会社が管理する代表的な資格
国家資格
法律に基づいて国によって認定された資格。公認会計士や宅地建物取引士、電気主任技術者等。
公的資格
公益法人や民間団体が実施している検定試験等、法律には関係はないが、国家資格に準じて公的に認められた資格。商工会議所が実施している日商簿記試験や中央職業能力開発協会のビジネス・キャリア検定試験等。
民間資格
民間団体や企業が、独自の審査基準によって認定する資格。英語試験のTOEICやORACLE MASTERといったIT系のベンダー資格等。
技能講習
労働安全衛生法では、事業者は厚生労働省令で定める危険または有害な業務に労働者をつかせる際に、技能講習または特別教育を受けさせることを規定しています。技能講習を受けることで、特別教育より高度な作業を行うことが認められます。玉掛け技能講習やフォークリフト運転技能講習等。
特別教育
労働安全衛生法に基づき、厚生労働省令で定める危険または有害な業務に労働者をつかせるときに、事業者が行わなければならない教育。酸素欠乏危険作業の業務に係る特別教育やクレーンの運転の業務に係る特別教育等。
あわせて読みたい
【修了証テンプレート付き】特別教育とは?業務一覧・実施方法・免許や技能講習との違いを徹底解説
労働安全衛生法で定められた一定の業務に従事する労働者は、特別教育を受けなければなりません。
本記事では、特別教育が必要な業務の一覧をはじめ、教育の内容、講師の要件や免許・技能講習との違いなどを詳しく解説します。修了証のテンプレートも用意していますので、ぜひ最後までご覧ください。
社内資格(社内認定資格)
社内における特定の業務やスキルにおいて、一定の要件を満たしたものに対して会社が認定する資格。例えば、製造業では半田付け資格、溶接資格等。
それぞれ、少なくとも数十種類以上の資格が存在しており、企業においては、これらの中から自社の事業や業務に必要な資格を選択し、有資格者の管理を行っています。
あわせて読みたい
社内認定資格制度とは? 製造業で導入・運用する目的とメリットをご紹介
社内認定資格制度とは、個々の企業が自社で雇用している従業員を対象として、独自に構築している資格制度のことを指します。この記事では、社内認定資格制度の主な目的…
有資格者一覧表が必要な理由
有資格者を管理することは、企業が存続するために必要不可欠です。その理由には、①法令順守、②安全管理、③品質維持が挙げられます
①法令順守
事業の種類によっては、労働安全衛生法や建設業法などの法令で「有資格者でなければ従事できない業務」が規定されています。
たとえば、常時50人以上の労働者が働く事業場では、衛生管理者の選任が義務付けられています(労働安全衛生法第12条)。また、建設業法では、施工管理技士など一定の資格を持つ技術者を配置しなければ工事を請け負えません。企業が法令違反を避け、社会的信頼を守るためには、有資格者一覧表による資格管理が必要不可欠なのです。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法」
出典:国土交通省「建設業法」
②安全管理
クレーン作業や高所作業、危険物の取り扱いなど、労働災害のリスクを伴う業務では、十分な知識と技能を持つ有資格者の存在が必要不可欠です。
有資格者一覧表を活用することで、配置された従業員が適切な資格を保有しているかを即座に確認できるため、安全性を確保できます。とくに多数の拠点がある企業では、有資格者一覧表による必要資格の一元管理が安全管理上のリスク低減に大きく貢献します。
③品質維持・向上
資格の保有者は専門的な知識・技能を持つため、製品やサービスの品質維持・向上に直接影響をもたらします。
たとえば、製造業では、電気主任技術者やボイラー技士の有資格者が工程を監督することで、不良品や事故を防ぎ、高品質な製品の安定提供につながります。
また、有資格者一覧表によって資格の取得状況を「見える化」することで、社員の学習意欲を高め、スキルアップと品質向上の好循環を生み出せます。
※建設業の場合
建設業では、工事の入札や施工の条件として、資格所有者に関する業務履歴などの情報を求められる場合があります。要件をみたさなければ、働く従業員の安全や建造物の品質が満たされないことを意味します。
また、誤った情報は重大な事故・リスクにつながる可能性があります。そのため、有資格者の管理は、正確かつ慎重に行わなければなりません。
法令で求められている資格一覧
実際に法令で定められている資格を紹介します。代表的なものは以下の通りです。
- 労働安全衛生法:クレーン運転士免許、衛生管理者免許、潜水士免許など
- 建設業法:施工管理技士、建築士、建設機械施工技士など
これらの資格は、国の法律で必須とされるものであり、無資格のまま従事させると法令違反となります。そのため、有資格者一覧表を活用して資格保有状況を常に最新に保つことが重要です。
下記では法令で定められている資格を詳細にご紹介していますが、ここに挙げているもの以外にも業種・業界に応じて管理が必須となる資格はたくさんあります。膨大な資格を完璧な状態で管理するためにも、有資格者一覧表は欠かせないものと言えます。
労働安全衛生法で主に求められている資格
- クレーン・デリック運転士免許
- 移動式クレーン運転士免許
- 揚貨装置運転士免許
- 高圧室内作業主任者免許
- 発破技士免許
- ガス溶接作業主任者免許
- ボイラー整備士免許
- 衛生工学衛生管理者免許
- 第一種衛生管理者免許
- 第二種衛生管理者免許
- 林業架線作業主任者免許
- エックス線作業主任者免許
- ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許
- 潜水士免許
- 特定第一種圧力容器取扱作業主任者免許
- 特級ボイラー技士免許
- 一級ボイラー技士免許
- 二級ボイラー技士免許
- 特別ボイラー溶接士免許
- 普通ボイラー溶接士免許
建築業法で求められている資格
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(第一種~第六種)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(土木)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(仕上げ)
- 1級建築士
- 2級建築士
- 1級管工事施工管理技士
- 2級管工事施工管理技士
- 1級造園施工管理技士
- 2級造園施工管理技士
- 技術士試験 建設・総合技術監理(建設)
- 技術士試験 農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」)
- 技術士試験 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)
有資格者一覧表はエクセルで作成することが多い
有資格者一覧表には、様々な形式があります。一般的にはExcelなどの表計算ソフトを用いて作成されることが多く、その一例を以下にご紹介します。
有資格者一覧表は、横軸に資格名、縦軸に従業員名を記載した一覧表を作成し、資格取得をしている従業員名と該当する資格が交わるマスに、印をつけます。
使い勝手のよさから一般的にはExcelなどの表計算ソフトを利用することが多くあります。
一覧表の書き方・項目
一般的に用いられる有資格者一覧表では、下記の情報を一覧表に記載します。
- 会社名や事業所の名称
- 作成日 ※必ず最新の情報が記載されている日付かを確認する
- 有資格者の氏名
- 資格名称
有資格者一覧表を作る目的は3つ
建設業や工事業、製造業、不動産管理業などの企業をはじめ、多くの企業が有資格者一覧を作成し、従業員の保有資格を管理しています。有資格者一覧表を作成する目的は、主に以下の3点が挙げられます。
- 法令順守や安全管理
- 製品・サービスの品質維持
- 社員の能力向上
あわせて読みたい
資格管理とは? 資格を管理する目的とメリット、方法、収集項目、資格の種類、システム導入のメリットを…
企業で行う業務の中には、資格を持っていないと担当できない業務や資格を持っていることで有利に進められる業務があります。 あらゆる業務において資格を有効活用するに…
①法令順守や安全管理
ある事業や業務を行うためには、従業員が特定の資格を持っていなければならない、と法令で定められている場合があります。たとえば、常時50人以上の労働者が働く事業場では、衛生管理者の有資格者がいることが労働安全衛生法によって義務付けられています。企業は、法令違反をしないように、従業員の持っている資格を管理し、有資格者を適切に配置しなければなりません。
また、建設や工事を行う際には、官公庁へ有資格者一覧表を届出しなければならないケースもあります。そのために、有資格者一覧表を作成しています。
②製品・サービスの品質維持
業務に関連する有資格者を増やしていくことで、製品・サービスの品質を維持向上させることを目的として、有資格者一覧表を作成するケースもあります。
たとえば、製造業では、有資格者一覧表を用いて社員の保有資格を見える化し、国家資格や社内資格の取得を推進することで、社員のスキルレベルを上げ、製品・サービスの品質維持、向上を図っています。
③社員の能力向上
有資格者一覧表を社員に共有することによって、社員の資格取得への意欲を高め、能力向上を図ります。
事業所の受付などに有資格者一覧表が掲示されているのを見かけますが、これは取引先や来場者に対して会社の技量をアピールするとともに、社員の資格取得を促進する取組みの一つですね。
有資格者管理の方法・運用のポイント
資格の管理は、管理する資格や関係者の人数が増えるほど、煩雑になりがちです。ここでは、有資格者一覧表をうまく活用するポイントを3つご紹介します。
1. 更新期限と有効期限に注意する
多くの資格には、更新期限と有効期限があります。きちんと資格情報を管理していないと、資格や免許が失効したことに誰も気づかないまま、無資格者が同じ業務に従事し続けてしまうといったリスクが生じてしまいます。
有資格者一覧表には必ず更新期限と有効期限を記載し、当人だけに管理を任せず、組織全体で確実な管理ができる仕組みを整えておきましょう。
2. 確実に登録しメンテナンスを行う
有資格者一覧表は、作成した後の運用が大変重要です。
たとえば、従業員の入退社や部署移動があったとしましょう。このとき、新たに資格取得者が生じたら最新の情報を随時更新しなくてはいけません。また、法令が変わり、業務に必要な資格が変わるケースもあります。この点にも十分な注意が必要です。
有資格者一覧表への登録フローを社内で徹底するとともに、定期的な見直し・メンテナンスを怠らないようにしましょう。
3. 有資格者一覧表を活用する
運用を定着させるためには、有資格者一覧表を活用する場面を増やし、利用するメリットを広げることが重要です。
たとえば、抜け漏れ・ダブりのない管理が求められる選任者管理において、ひと目で資格所有者がわかる有資格者一覧表は有効です。会社独自の認定資格を設けている場合も、候補者の絞り込みを簡単に行うことができます。
有資格者一覧表の活用には、継続的な管理・運用が欠かせません。登録フローの徹底とあわせて、活用できる場面を拡げることで、運用の定着が近づくでしょう。
法令順守・安全管理・品質維持に不可欠な有資格者一覧表をシステムで適正に管理
有資格者一覧表を適切に作成・運用することは、法令順守、安全管理、品質維持の観点から企業にとって必要不可欠です。しかし、Excelでの管理は「更新漏れ」「有効期限切れの見落とし」「拠点間でのデータ不整合」といった課題がつきまといます。また、更新作業が煩雑であり手間がかかります。現在、多くの企業が「Excelでの□管理の限界」を感じ、スキルマネジメントシステムの導入に移行しはじめめています。
資格情報を正確かつ効率的に管理することは、従業員の安全と企業競争力の強化につながります。スキルマネジメントシステムの導入によって「資格管理」は以下の観点から圧倒的にラクになります。
- 資格情報と免状コピーを⼀元管理
- 届出や許認可申請の書類をかんたんに作成
- 取得した資格をマイページから申請できる
→資料をダウンロードして、スキルマネジメントシステムでなぜ「資格管理」がラクになるかを知る