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2024.6.21
ISO9001の認証取得や定期審査で文書管理に悩んでいる企業は多いのではないでしょうか?「ISO=文書の作成」となりがちで、本来の文書管理の目的を忘れてしまうような状況に陥ってはいませんか?この記事ではISO9001における文書管理のメリットや要求事項、実際の運用ステップを具体例を交えてご紹介します。要求事項のポイントをおさえればより効果的な文書管理を行えます。ぜひ参考にしてみてください。
製品やサービスを提供する企業活動には、契約書や発注書、製造時の指示書など様々な文書のやり取りがあります。文書管理とはこれらの企業活動に関わる文書の作成や保管、閲覧を適切に行えるよう管理をすることです。ISO9001の要求事項では品質方針から作業員の教育記録など多くの文書について、適切な管理を求めています。適切な管理を行うことで、企業活動の様々な場面で文書通り行動できるようになります。
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
文書管理の役割として社内外とのコミュニケーションの向上が挙げられます。適切な文書管理で、正式な文書が必要な場所で間違いなく使えるようになります。
文書管理のもう1つの役割として顧客からの信頼性の向上が挙げられます。どんなに素晴らしい製品を販売していたりISO9001にのっとった品質マネジメントシステムを構築していても、文書や記録がなければ活動の証明はできません。効果的な文書管理で企業活動のエビデンスを適切に残しましょう。
業務の参考となる文書を探したい、他部署の業務内容について知りたい、といった際に文書管理が適切に行われていると必要な情報を即座に入手できます。
また今後は人材の流動性がますます激しくなるため、情報共有の重要性がより高まっていると言えるでしょう。
適切な文書管理を行えば必要な情報を関係者全員が活用できるので、業務の質が高まります。また承認や保管ルールが明確なので、文書の管理方法について悩む手間が省け業務効率化につながります。
作成者や承認者が不明確な文書、改ざんの可能性のある文書管理では、健全な企業活動はできません。文書管理が適切に行われていれば、不正行為の疑いなど、トラブルが起きた時でも文書による事実情報で説明責任が果たせます。
ISO9001の要求事項の中でも文書管理について記載されている「7.5 文書化した情報」について解説します。
「7.5.1文書化した情報 一般」の要求事項では文書化が必要な情報として
①要求事項で求められている文書
②各企業で定めた文書
の2種類があると述べています。
ISO9001の要求事項で文書化を要求している文書を下記に列挙します。いずれも品質マネジメントシステムの構築には欠かせない文書です。
各企業で「品質マネジメントシステムが有効である」ことを証明するために必要な情報は、文書化が必要になります。
例えば業界によっては配布が一般的な「顧客からの評価表(スコアカード)」は要求事項には記載されていませんが、管理が必要な文書です。
このように企業の規模や製品・サービスの種類によって重要な情報は様々ですので、企業ごとに必要な文書とその管理方法を定めておきましょう。
「7.5.2 文書の作成および更新」では文書の適切な作成・更新が求められています。
具体的には下記の内容についてあらかじめルールを定めておく必要があります。
「7.5.3 文書化した情報の管理」では、文書の入手しやすさが求められています。
文書は必要なときに必要な場所ですぐに使える状態にする必要があります。そのために下記の内容をあらかじめ決めておく必要があります。
ISO9001は2015年に要求事項が大きく改訂されています。改訂内容の一つとして、品質文書を情報漏洩や改ざん、消失を防ぐために施策を講じることが明記され、文書管理はより重要性を増しています。
要求事項7.5.3.2において機密性の確保や不適切な使用、不正流出の防止、意図しない改変からの保護が求められています。紙媒体ではなく、クラウド管理を行う、ExcelファイルやWordファイルは読み取り専用やパスワード付与する、などの対策を実施しましょう。
文書体系図とは下の図のような上位文書と下位文書のカテゴリーを定めた図です。
経営層が定めた品質マニュアル(基本概念)に対し、その基本概念を実現するために必要な業務ルールを定めていきます。
文書体系図で文書全体の種類とそのレベル感の共通認識を定義することで、視点のズレを防げます。
文書体系の一例として、下記のような文書の種類があります。
しかしながら実際の現場では、既に行っている業務内容に沿って手順書などを後追いで作成するケースが多いと思います。そのような場合でも上位文書を読み返しながら、本当に必要な業務なのか?不足はないか?を考えながら文書作成を行うことで、業務改善につながります。
文書管理規程は自社の文書管理ルールを定めた文書です。ISO9001の要求事項にしたがって社内の文書管理ルールを定めます。
決めるべきルールの一例としては、形式・付与番号・作成部署・承認者・保管場所・保護方法・保管期間・更新頻度・廃棄方法が挙げられます。
下表に参考として文書管理方法の一例を示します。あくまで一例ですので、実際のルールは各企業で決めましょう。
特に文書の保管期間などは業界によって様々です。例えば、自動車業界などでは品質記録は30年保管が標準的ですが、企業によっては保管スペースの問題などがあるかもしれません。各企業の実情に沿ったルールを定めましょう。
ステップ2で定めた文書管理規程にしたがって実際に文書管理を行いましょう。
ISO9001の審査では規程に従った文書管理ができているかどうかを問われますので、各々の部署で自社の文書管理規程をよく理解し管理を行います。
また、適切な文書管理ができているかどうかは内部監査で本番の審査前に確認しておきましょう。内部監査員は規程通りに文書管理が実行できているかをチェックし、不足があった場合は確実な是正を指示します。本番の審査で指摘を受けないよう確実に是正を行いましょう。
ISO9001の審査では各部署を審査員が回ることになりますが、掲げた目標に対して業務が遂行されているかは必ずと言っていいほど確認される部分です。それらの説明に必要となるのが、今回解説した文書管理です。
ISO9001の要求事項に沿った文書管理は手間がかかりますが、それ以上にメリットが得られる重要な業務です。本記事がISO9001の文書管理の理解や実施に向けてお役に立てれば幸いです。
《参考文献》
ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015) 要求事項の解説 中條 武志・棟近 雅彦・山田 秀 著 日本規格協会
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