ISO9001の要求事項に規程される文書管理とは? 役割、メリット、3つのステップとポイントを解説

ISO9001の認証取得や定期審査で文書管理に悩んでいる企業は多いのではないでしょうか?「ISO=文書の作成」となりがちで、本来の文書管理の目的を忘れてしまうような状況に陥ってはいませんか?この記事ではISO9001における文書管理のメリットや要求事項、実際の運用ステップを具体例を交えてご紹介します。要求事項のポイントをおさえればより効果的な文書管理を行えます。ぜひ参考にしてみてください。
ISO9001における文書管理とは?
ISO9001で求められる文書管理
製品やサービスを提供する企業活動には、契約書や発注書、製造時の指示書など様々な文書のやり取りがあります。文書管理とはこれらの企業活動に関わる文書の作成や保管、閲覧を適切に行えるよう管理をすることです。ISO9001の要求事項では品質方針から作業員の教育記録など多くの文書について、適切な管理を求めています。
ISO9001における文書管理の役割
ISO9001における文書管理には、大きく2つの役割があります。
1つ目は、業務の標準化と品質の一貫性の確保です。手順書や作業指示書などの文書が適切に管理されることで、担当者が変わっても同じ品質で業務を遂行できます。また、文書化された知識やノウハウを組織全体で共有・継承できるため、属人化の防止にもつながります。
2つ目は、企業活動の証明と信頼性の確保です。ISO9001では「言った・言わない」ではなく、文書による記録が活動の証拠となります。顧客からの問い合わせやトラブル発生時にも文書による事実情報で説明責任を果たせるほか、ISO審査においても適切な文書管理が認証取得・維持の根拠となります。
ISO9001では文書管理と同様に、「誰がどのスキル・資格を持つか」という力量の証拠を残すことも要求されています。
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ISO9001に対応した文書管理を行うメリット
メリット1 情報の共有
業務の参考となる文書を探したい、他部署の業務内容について知りたい、といった際に文書管理が適切に行われていると必要な情報を即座に入手できます。
また今後は人材の流動性がますます激しくなるため、情報共有の重要性がより高まっていると言えるでしょう。
メリット2 業務効率化
適切な文書管理を行えば必要な情報を関係者全員が活用できるので、業務の質が高まります。また承認や保管ルールが明確なので、文書の管理方法について悩む手間が省け業務効率化につながります。
メリット3 リスクマネジメント効果
作成者や承認者が不明確な文書、改ざんの可能性のある文書管理では、健全な企業活動はできません。文書管理が適切に行われていれば、不正行為の疑いなど、トラブルが起きた時でも文書による事実情報で説明責任が果たせます。
ISO9001の文書管理(QMSの文書管理)に関する要求事項
ISO9001の要求事項の中でも文書管理について記載されている「7.5 文書化した情報」について解説します。
7.5.1 文書化した情報 一般
「7.5.1文書化した情報 一般」の要求事項では文書化が必要な情報として、①要求事項で求められている文書、②各企業で定めた文書の2種類があると述べています。
要求事項で求められている文書
ISO9001の要求事項で文書化を要求している文書を下記に列挙します。いずれも品質マネジメントシステムの構築には欠かせない文書です。
- 5.2.2 品質方針
- 6.2 品質目標
- 8.1 品質マネジメントシステムの計画や実施の記録
- 7.1.5.2 校正や検証の基準
- 7.2 力量の証拠
- 8.3 設計開発のインプット、アウトプット、変更
- 10.2.2 不適合への処置と是正処置の結果
- 9.2.2 監査プログラムの実施、結果
- 9.3.3 マネジメントレビューの結果 など
なかでも「7.2 力量の証拠」は重要な要求事項の一つです。ISO9001では、業務に従事する人が必要な力量を持っていることを証明する記録の保持が求められています。
ISO9001:2015では以下のように定められています。
「組織は、適用される場合には、力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持しなければならない(7.2 d)」
ISO審査では文書管理の状態だけでなく、「誰がどの業務を行える力量を持っているか」の記録も審査員から確認されます。文書管理と力量管理の両方を適切に維持することが、ISO9001対応の実態です。
各企業で定めた文書
各企業で「品質マネジメントシステムが有効である」ことを証明するために必要な情報は、文書化が必要になります。
例えば業界によっては配布が一般的な「顧客からの評価表(スコアカード)」は要求事項には記載されていませんが、管理が必要な文書です。
このように企業の規模や製品・サービスの種類によって重要な情報は様々ですので、企業ごとに必要な文書とその管理方法を定めておきましょう。
7.5.2 作成および更新
「7.5.2 文書の作成および更新」では文書の適切な作成・更新が求められています。
具体的には下記の内容についてあらかじめルールを定めておく必要があります。
- 適切な識別(例:タイトル、日付、作成者、参照番号)
- 適切な形式(例:ソフトウェア、図表、紙or媒体)
- 文書の適切性と妥当性の判断(例:文書のレビューや承認)
7.5.3 文書化した情報の管理
「7.5.3 文書化した情報の管理」では、文書の入手しやすさが求められています。
文書は必要なときに必要な場所ですぐに使える状態にする必要があります。そのために下記の内容をあらかじめ決めておく必要があります。
- 配布方法(メールまたは紙で配布など)
- アクセスのしやすさ(適切なファイリングなど)
- 検索のしやすさ(管理番号の付与など)
- 読みやすい保管方法(クラウド管理など)
要するに文書管理によって何が求められているのか
- 必要な文書が必要な時・場所で入手できること
- 文書が常に利用しやすく読みやすい状態であるのを保つこと
- アクセスしやすい(使いやすい)方法で文書を保管すること
- 文書変更の際は変更履歴を残し、変更前の状態に戻せるように管理しておくこと
- 文書化した情報を保護すること
2015年に規格改定され、より文書管理が重要視されるようになった
ISO9001は2015年に要求事項が大きく改訂されています。改訂内容の一つとして、品質文書を情報漏洩や改ざん、消失を防ぐために施策を講じることが明記され、文書管理はより重要性を増しています。
要求事項7.5.3.2において機密性の確保や不適切な使用、不正流出の防止、意図しない改変からの保護が求められています。紙媒体ではなく、クラウド管理を行う、ExcelファイルやWordファイルは読み取り専用やパスワード付与する、などの対策を実施しましょう。
なお、ISO9001は2026年9月頃に次期改訂版(ISO9001:2026)の発行が予定されています。
認証取得済みの企業は改訂後の対応が必要になる見込みのため、最新情報をご確認ください
文書管理の保護・クラウド化をシステムで実現
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【文書体系図・文書管理規程】ISO9001要求事項を満たす文書管理の3ステップ・ポイント
ステップ1.文書体系図を作成する
文書体系図とは下の図のような上位文書と下位文書のカテゴリーを定めた図です。

経営層が定めた品質マニュアル(基本概念)に対し、その基本概念を実現するために必要な業務ルールを定めていきます。
文書体系図で文書全体の種類とそのレベル感の共通認識を定義することで、視点のズレを防げます
文書体系の一例として、下記のような文書の種類があります。
- 品質マニュアル:企業全体の品質への基本概念を記した文書
- 規程:基本概念を遂行するための業務の基本ルールを記した文書(複数の部署にまたがるケースが多い。)
- 手順書:各部署で実際に行われている業務内容を記した文書
- 計画書、台帳、様式、帳票など:業務に使用する文書(フォーマット)
- 品質記録:実際に業務を行った記録
しかしながら実際の現場では、既に行っている業務内容に沿って手順書などを後追いで作成するケースが多いと思います。そのような場合でも上位文書を読み返しながら、本当に必要な業務なのか?不足はないか?を考えながら文書作成を行うことで、業務改善につながります。
ステップ2.文書管理規程を作成する
文書管理規程は自社の文書管理ルールを定めた文書です。ISO9001の要求事項にしたがって社内の文書管理ルールを定めます。
決めるべきルールの一例としては、形式・付与番号・作成部署・承認者・保管場所・保護方法・保管期間・更新頻度・廃棄方法が挙げられます。
下表に参考として文書管理方法の一例を示します。あくまで一例ですので、実際のルールは各企業で決めましょう。
特に文書の保管期間などは業界によって様々です。例えば、自動車業界などでは品質記録は30年保管が標準的ですが、企業によっては保管スペースの問題などがあるかもしれません。各企業の実情に沿ったルールを定めましょう。

ステップ3.実際に文書を管理する
ステップ2で定めた文書管理規程にしたがって実際に文書管理を行いましょう。
ISO9001の審査では規程に従った文書管理ができているかどうかを問われますので、各々の部署で自社の文書管理規程をよく理解し管理を行います。
また、適切な文書管理ができているかどうかは内部監査で本番の審査前に確認しておきましょう。内部監査員は規程通りに文書管理が実行できているかをチェックし、不足があった場合は確実な是正を指示します。本番の審査で指摘を受けないよう確実に是正を行いましょう。
文書管理の仕組みが整ったら、次は運用の効率化です。
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まとめ
ISO9001の審査では各部署を審査員が回ることになりますが、掲げた目標に対して業務が遂行されているかは必ずと言っていいほど確認される部分です。それらの説明に必要となるのが、今回解説した文書管理です。
ISO9001の要求事項に沿った文書管理は手間がかかりますが、それ以上にメリットが得られる重要な業務です。本記事がISO9001の文書管理の理解や実施に向けてお役に立てれば幸いです。
《参考文献》
ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015) 要求事項の解説 中條 武志・棟近 雅彦・山田 秀 著 日本規格協会

執筆者
スキルマネジメントMagazine編集部
スキルマネジメントMagazineは、製造業における業務に関する基礎知識から人材育成・人材活用を促進するスキルマネジメントについて発信する専門メディアです。Skillnote が運営し、数多くの製造業における人材育成・力量管理の支援を通じて蓄積してきたノウハウをもとに発信しています。

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