ナレッジ
2024.4.24
少子高齢化や働き方の変化の進展で人材不足が顕著になり、限られた人材を資源として考える人的資源や人的資源管理に注目が集まっています。
企業が経営を継続していくうえで必要な経営資源のなかでも、人的資源は他の経営資源で代替できない重要な役割を担っています。しかし、人はそれぞれ能力や考え方が異なるため、共通の管理法は存在せず、人的資源をうまく活用することは簡単ではありません。
この記事では、人的資源や人的資源管理の概要と特徴、人的資源管理をうまく進めるための具体的な取り組みについて紹介します。
人的資源とは、企業経営において必要とされる4つの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中で、「ヒト」に該当する部分です。従業員そのものを示すと考えられがちですが、従業員が保有している能力やスキルも人的資源に含まれています。
また、自社の従業員だけではなく、外部委託先や外注先のフリーランスなども自社が活用できるヒトに関する資源であるため、広い意味での人的資源と捉えることが可能です。
人的資源と類似の用語に「人的資本」があります。それぞれの意味合いを確認しておきましょう。
人的資源(Human Resource)は、人材や人材が持つスキル・能力を経営資源として捉え、経営目標を達成するためにうまく活用するものという考え方です。
一方で人的資本(Huma Capital)は、人材のスキルや知識を資産として位置付ける考え方で、人材を投資の対象としてとらえています。投資により人材の価値を向上させることで、企業価値の向上を目指すという考え方です。
人的資源と人的資本を明確に使い分ける場合には、人的資源は消費する対象、人的資本は投資をして育成する対象と捉えるといいでしょう。
関連記事:人的資本経営とは? 注目を集める理由、実践の方法、メリット
企業の経営資源には、人的資源以外にモノ・カネ・情報の3つがあります。
「モノ」は物的資源とも呼ばれ、企業が保有する設備や在庫などの目に見える資源を広く含んでいます。また、目に見えないものであったとしても、ソフトウェアにおけるライセンスソフトウェアなどは、モノとして捉えることが可能です。
企業経営を進めていくためには、企業が持つモノを効果的に活用する必要があります。さらに、モノを改良したり入れ替えたりすることで、経済的な価値を生み出すことも可能です。
「カネ」は財務資源とも呼ばれ、企業が扱うお金全般を意味します。企業を継続的に運営し成果を出すためには、健全な財務状況でお金を運営することが重要です。
カネは、多くの用途で必要となります。例えば、新たな設備を導入すること、また雇用を維持し、新たな人材を採用することにもカネが必要です。
カネは、消費を必要最低限に抑えて蓄積することが望ましいわけではなく、成果を出すために適切な投資を行う必要があります。
「情報」は、組織資源とも呼ばれ、経営資源の中でも対象が曖昧なものです。例えば、組織が持つノウハウやコネクション。他には、ブランドイメージやコミュニティなど、目に見えないが経営に影響を与える資源が組織資源に該当します。
目に見えないため扱いが難しい資源ですが、うまく活用することで経営に大きな影響を与えます。
人的資源には、以下のような特徴があります。
人的資源は、育成を行うことで人材資源が持つ経済的な価値を大きく成長させることが可能です。
例えば、入社時点の新入社員の人的資源価値はそれほど大きくありません。しかし、必要な教育を受けてさまざまな業務経験を積むことで、できる仕事が増えていき、人的資源価値は大きくなります。
人的資源の価値を考える上では、現在だけでなく未来を見据えて戦略的にヒトを育成することが重要だと言えます。
ヒト(人的資源)は4つの経営資源の中で唯一、ヒトに加えモノ・カネ・情報といった他の経営資源を活用できるものです。
他の資源は存在するだけでは経営に大きな影響を与えることはできず、ヒトがうまく活用することで初めて、大きな価値を持たせることが可能です。
他の経営資源を活用できるヒトは、経営資源の中でも重要視されることが多い資源といえます。
経営資源の中で自らの意志に基づいて自律的に行動できるのは、ヒト(人的資源)のみです。
ヒトは他の資源のように外部から細かくコントロールされなくても活用できるため、管理者の負担は大きくありません。経営目標を達成するために、ある程度大きな裁量を持たせて仕事を任せることもできます。
一方で、自分の考えや自律性を持つことから、必ずしも管理者の指示通りに動くわけではありません。他の経営資源と比較して、自律性があることが管理を難しくさせています。そのため、管理の難しさを考慮してうまく管理する必要があります。
モノ・カネ・情報は、経営資源の中でもヒトが活用する資源のため、それぞれ効果的な管理手法が明確となっています。
一方でヒトですが、同じ人は一人としていません。そのため、共通の管理方法に当てはめて管理することは望ましくありません。ベースとなるノウハウを元に、一人ひとりの考え方や保有しているスキル、経験、状況に合わせてカスタマイズしながら対応する必要があります。
抑圧的な管理を避け、個々の特性を活かす管理を模索するといいでしょう。
ところで、人的資源はなぜ注目を集めているのでしょうか。その背景について紹介します。
当然のことですが、企業などの組織はヒトによって構成されています。人的資源であるヒトがいなければ経営資源をうまく活用できず、経営目標を達成することはできません。
組織の目標を達成するためには、重要な構成要素であるヒトのモチベーションや能力を向上させる必要があります。また、組織のために必要な能力を持つ人材はすぐに見つからないため、ヒトを確保するためには計画的な準備が必要です。
近年は、人材不足を課題としている企業が増えており、人材不足解消に向けた対策を取る必要があります。
慢性的な人材不足の状況で経営目標を達成するためには、今いる限られた人材を育成することが重要です。一方で、働く条件がよくなければ人材は簡単に流出してしまいます。州出のリスクがあることを十分に理解し、事前に対策を取っておく必要があります。
企業が生き残っていくためには、人的資源の確保・育成を適切に管理することが欠かせません。
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
人的資源管理(Human Resource Management)とは、経営資源の一つであるヒトを効果的に育成、活用するために管理するという考え方です。また、ヒトをうまく活用するために制度や運用に落とし込むことも人的資源管理に含まれています。
人的資源管理が注目される前は、人的労務管理(Personal Management)の考え方が主流でした。人的労務管理においては、人材は資源・資産ではなくコストとして捉えられているため、規律によって管理されます。
近年は、多様な働き方の実現やタレントマネジメントの盛り上がり、終身雇用制度の形骸化などによって、ヒトのスキル・経験等を重視した人的資源管理が注目を集めています。
関連記事:タレントマネジメントとは? 目的やメリット、方法について解説
厳しい環境の中で企業が経営目標を達成するためには、企業を構成するメンバーであり、モノ・カネ・情報といった経営資源を活用するヒトの存在が必要不可欠です。
企業が成長するためには、ヒトを確保・育成し、能力を高めることが重要です。また、自律した存在であるヒトは自身の考えに基づいて行動するため、指示を与える側とのずれが生じる可能性があります。
組織として成果創出を目指す場合には、業務を任せる範囲を決めて抑圧的にならず放任にもなりすぎないかたちで管理していく必要があります。
人的資源管理の主な項目としては、適材適所の人材配置、必要なタイミングで必要なスキルを保有する人材の育成、必要な人材の採用、評価・給与の見直しによるモチベーションの管理などが挙げられます。
人的資源管理を行う際には、ここで紹介する3つの代表的なモデルが参考になるでしょう。
ミシガンモデルは、1980年代にアメリカのミシガン大学で行われた研究をベースとしたモデル。4つの機能を人的資源管理に落とし込みます。
4つのモデルとは、「採用と選抜」「人材評価」「人材開発」「報酬」。それぞれの観点で評価をしながら管理を行います。
ミシガンモデルは、個人にフォーカスするだけではなく、組織の制度設計を踏まえてマネジメントすることが特徴です。
ハーバードモデルは、ミシガンモデルと同様に1980年代にハーバード大学で行われた研究をベースとしたモデル。ミシガンモデルとは異なる「社員の影響」「人的資源のフロー」「報酬システム」「職務システム」の4つのモデルに分類されます。
ハーバードモデルはミシガンモデルよりも考慮する範囲が広く、「自社だけではなくステークホルダーの利害関係まで含めたマネジメントが必要」という考え方です。
AMO理論では、人的資源管理を以下の3つの要素から構成されていると考えます。
AbilityやMotibationは文字通りの意味合い。仕事に必要な能力やモチベーションがあるかどうかを意味します。Oppotunityは、必要な支援を受けられるか、環境整備されているかを示します。
人的資源管理の中で、ヒトが持つこれらの要素を向上させていくことで、組織としても市場における競争優位を高められるという考え方です。
経営目標を達成するために人的資源管理を進めていくうえで、以下のような課題が生じます。
企業の業績は、単純な要素で表現することは難しく、複雑な要素が絡み合うものです。特に人的資源管理は明確な数値で表すことができないため、取り組んだ内容や得られた結果が、経営目標や業績にどの程度大きな影響を与えたのか、因果関係を明確に示すことが難しいと言えます。
そのため、人的資源管理の取組結果を適切に判断する基準や管理指標を持たなければ、いい取組みであっても結果が伴っていないと判断されてしまう可能性があります。
なお、管理指標は、自社の状況に合わせた指標であることが重要です。
人的資源管理に基づいて行われる施策に対しては、企業と従業員で受け取り方が異なることがあります。特に、企業が従業員のためになると考えている取り組みでも、従業員にとっては面倒に感じてしまうことがあることは、把握しておきましょう。
従業員のモチベーション低下を引き起こす恐れがあるため、現場従業員の声を日ごろから聞いておくと良いでしょう。
企業では、さまざまなスキル・能力を持った人材が必要とされます。しかし、誰をどう育成し、どういうポジションに配置するかを管理することは簡単ではありません。
特にヒトは、それぞれが自律しているため意思を持って行動しており、企業の考えに対して期待や希望が合わないとモチベーションが上がりにくくなってしまいます。
育成方針や異動の内容について、一方的に決めて押し付けるのではなく、コミュニケーションを取りながらすり合わせて決めていくことが重要です。
最後に、人的資源をうまく活用していくために効果的な制度や取り組み。また、取り組みを行う際に考えるべきことを紹介します。
人的資源管理において重要な役割を担う雇用制度は、時間をかけて少しずつ修正を加えながら構築する必要があります。しかし、あるタイミングでは最適だと思える雇用制度が、いつの時代も常に正しく効果的であるとは限りません。
時代や市場環境によって求められるものは移り変わっていくため、今ある雇用制度に固執しすぎることなく、常日頃から見直しを検討することが重要です。
人的資源を有効活用するためには、ヒトの成長を従業員任せにするのではなく、企業として望ましい方向付けを行うことが重要です。そのためには、企業が重視するスキルを身に着けられるような教育制度を充実させる必要があります。
主体的には成長を望んでいないような人材でも、教育制度が充実していれば半強制的に教育を受講することで成長していきます。企業は結果として、人的資源を最大限活用することになります。
優秀な人材は、適切な評価や評価に連動した報酬が得られなければモチベーションを失ってしまうでしょう。
そこで、納得感のある評価制度や報酬制度について試行錯誤を続け、従業員と会社の双方にとって満足いくものへと最適化していく必要があります。
関連記事:スキル評価とは? 目的とメリット、スキルマップとルーブリック評価の違い、作成手順など
一度配属を決めたとしても、実際に仕事に取り組んでみたら能力を十分に生かせていないケースはよくあります。
人的資源を効果的に活用するためには、配置を定期的に見直すことが重要です。そのため、基本的な配置の考え方や異動をスムーズに行う仕組みを構築しておくと良いでしょう。
「Skillnote」で製造業の多能工化を実現!
●多能工化のメリット
●多能工化の進め方
●多能工化を成功させる3つのポイント
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.24
ナレッジ
2024.4.23
ナレッジ
2024.10.29
ナレッジ
2024.4.22