機械保全技能士とは? 特級・1級・2級・3級の試験内容、合格率、難易度、勉強方法を解説

機械保全技能士とは?
製造現場で必要不可欠な資格のひとつが「機械保全技能士」です。国家検定としても広く認知され、毎年多くの方が受検しています。本記事では、特級から3級までの試験内容や合格率、難易度に加え、取得のメリットや勉強方法を詳しく解説しています。さらに、資格を活用した人材育成や企業メリットも紹介します。
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目次

機械保全技能士とは?

機械保全技能士は国が定める設備診断・機械保全の技能士               

工場などの製造現場において、機械が正常に稼働し続けるために故障時に修理をしたり、故障を未然に防いだりする保全業務は欠かせません。機械保全技能士とは、機械のメンテナンスや修理などの保全業務を行う技能士のことです。

機械保全技能検定とは?   

機械保全技能検定は国家検定制度である131種類の技能検定のひとつ。厚生労働大臣指定試験機関である公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が行っています。累計受検者数は92万人で、ものづくり分野の国家検定で受検者数が1番多い国家検定です。

試験では機械保全に必要となる知識・技能が問われ、合格すると「機械保全技能士」と名乗れます。

機械保全技能士の仕事内容

機械保全技能士の仕事は、工場の機械が正常に稼働するために故障や劣化を未然に防ぐ機械保全です。具体的な仕事内容は下記の通りです。
  • メンテナンス計画の作成・実施
  • 劣化の予測や欠陥の発見
  • 異常発生時の修理対応
  • 機械や設備のデータ収集・解析・判定 など
以上は機械保全技能士の仕事の一例です。機械保全技能士は機械保全に関するさまざまな知識・技能を身に付けておく必要があります。

機械保全技能士の需要

近年、製造現場においてIoTを活用したスマートファクトリー化が進む一方、設備トラブルによる停止損失は依然として大きな経営課題です。経済産業省・厚生労働省・文部科学省が発表している「2023年版 ものづくり白書」では、製造業全体における人材不足が大きな課題として指摘されています。とくに、ベテラン人材の退職や若手人材の採用難によって、ノウハウが属人化しやすい状況が深刻化しています。

こうした課題は、設備保全においても決して例外ではありません。保全業務は機械ごとに求められる知識や経験が異なるため、担当者の暗黙知に依存しやすく、人材不足の影響を強く受けやすい領域なのです。そのため、現在、製造現場における機械保全技能士の存在はますます重要さを増しています。

出典:経済産業省「2023年版 ものづくり白書」

機械保全技能士取得のメリット

企業のメリット

企業側のメリットもあります。それは、従業員の機械保全に関する知識や技能の向上によって製造現場全体のレベルアップにつながり、突発的な故障への対応力が向上します。その結果、設備の稼働率やOEE(設備総合効率)の改善が一定程度見込まれます。

出典:田口和雄「技能者の人事管理における技能検定制度の活用」(「機械経済研究 No.36」2005年)

受検者のメリット

受検者のメリットは、合格すれば「技能士」と名乗れ、キャリアアップになることです。合格者は名刺などに「機械保全技能士」と記載ができます。

また、資格取得によって第三者から公平な評価を得られるため、機械保全に関する知識や技能の習得を客観的に証明できます。企業によっては資格手当ての支給や、昇給や昇進で有利になる可能性もあります。ただし、資格を取得しても更新や管理が煩雑になりがちなため、資格情報の管理を効率化するシステムを使うことをおすすめします。

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各級の受検資格・受検者層・合格率

各級の受検資格       

各級の対象者イメージと受検資格を下記の図にまとめました。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「受検資格判定 | 国家検定 機械保全技能検定」

機械保全技能検定には、特級、1級、2級、3級の4つの等級があります。

3級は誰でも受検可能ですが、2級は実務経験2年以上、1級は実務経験7年以上、特級は1級取得後5年以上経過で受検可能です。下記サイトから受検資格があるかを簡易チェックできます。

各級の受検者層

等級別の受検者の年齢層と申請単位を下図にまとめました。
受検者の申請単位をみると、3級は学校単位が半数以上、2級以上は企業からの受検者が7割以上を占めています。学校や企業からの後押しが非常に強い技能検定であるといえます。

また、受検者の年齢層をみると、3級は10代が過半数を占めています。2級以上は20代が最も多く4割、次いで30代の3割が続きます。

2級受検者の最頻値が20代。1級では30代、そして特級では40代。級が上がるにつれ受検者層の年代が上がっています。このことから、人材育成のマイルストーンとして活用されているのが分かります。

各級の受検者数・合格率

過去数年の各等級における受検者数・合格者数・合格率のグラフをみると、受検者数は毎年2級が最も多く、次いで1級が多くなっています。

また、合格率は3級が70%以上と高いものの、級が上がるにつれて合格率が下がる傾向にあります。

2022年の合格率は特級が21.4%、1級で27.5%、2級で32.5%、3級で76.5%となっています。
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各級の試験概要、合格基準

機械保全技能検定には学科試験と実技試験があります。学科試験は全作業共通のマークシート式ですが、実技試験は選択作業別(機械系保全・電気系保全・設備診断)に試験が実施されます。ただし実技試験でも特級は全作業共通試験です。

学科試験の試験概要、合格基準

機械保全技能士学科試験

実技試験の試験概要、試験方法、合格基準

特級

【出題形式】計画立案等作業試験

【出題数】10課題

【解答方式】マークシート式

【試験時間】150分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

1級:機械系保全

【出題形式】判断等試験

【出題数】8課題

【解答方式】マークシート式

【試験時間】80分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

1級:電気系保全

【出題形式】製作等作業試験

【出題数】2課題

【解答方式】作業採点(一部マークシート)

【試験時間】110分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

1級:設備診断

【出題形式】判断等試験

【出題数】10課題

【解答方式】マークシート式

【試験時間】100分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

2級:機械系保全

【出題形式】判断等試験

【出題数】8課題

【解答方法】マークシート式

【試験時間】80分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

2級:電気系保全

【出題形式】製作等作業試験

【出題数】2課題

【解答方法】作業採点(一部マークシート)

【試験時間】110分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

2級:設備診断

【出題形式】判断等試験

【出題数】8課題

【解答方式】マークシート式

【試験時間】80分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

3級:機械系保全

【出題形式】判断等試験

【出題数】7課題

【解答方法】マークシート式

【試験時間】70分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

2級:電気系保全

【出題形式】製作等作業試験

【出題数】2課題

【解答方法】作業採点(一部マークシート)

【試験時間】110分

【合格基準】減点法で41点以上の減点がないなら合格

試験範囲

機械保全技能試験は、等級が上がるにつれて知識・技能の専門性が高くなります。ただし、実務経験がなくても受検できる3級は、保全に関する基本的な知識・技能が問われる傾向にあります。詳しい試験範囲については公式サイトを参考にしてください。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定 試験科目及びその範囲並びにその細目」

試験の免除   

機械保全技能検定は、職業訓練によって学科試験が免除できる場合があります。職業訓練の種類や訓練期間、専攻科目などによって免除になる条件は異なりますので、公式サイトを確認してみましょう。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定における試験の免除一覧」

各級の受検料・日程・受検地

各級の受検料

2023年4月時点の各級の受検料は下表の通りです。
機械保全技能士受験料
また、受検者が25歳未満または学生の場合、受検料が減額されます。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定オフィシャルガイド」

試験日程

機械保全技能検定は、毎年3月に次年度の試験概要が公開されます。試験は3級のみ年2回、2級以上は年1回の実施です。3級が6〜7月と12〜2月、2級以上は12月〜2月の開催予定となっています。

受検地

学科試験は各都道府県で実施されますが、実技試験はどの保全作業で受検するかによって地区が異なります。実技試験が電気系保全作業の場合は受検地区によって試験会場と試験日が学科試験と異なる可能性がありますのでご注意ください。

機械保全技能検定の勉強方法

まずは公式サイトで過去問をチェック

機械保全技能検定の公式サイトでは、過去に実施した3年分の試験問題と解答が公開されています。まずは受験する等級の過去問をチェックし、どのような問題が出題されているか傾向を知りましょう。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定 過去の試験問題」

公式テキストや問題集で学習

機械保全技能検定の公式サイトでは、過去問や等級に対応したテキストが紹介されています。

参考:公益財団法人 日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定 参考書籍・ものづくりマイスター」

OJT+座学

現場経験を積みながら学習する「OJT+座学」の組み合わせも合格率向上に有効とされています。とくに実技試験は実際の設備に触れているかどうかがものを言います。職場に経験者がいない場合には、地域の職業訓練校やプラントメンテナンス協会が実施する講習を活用することもおすすめです。

まとめ

本記事では、製造現場の信頼を支える重要な国家資格である機械保全技能士について解説しました。しかし資格は取得して終わりではありません。企業は従業員の取得した資格を定期的に更新することに加えて、抜け漏れなく正確に管理してはじめて人材育成や教育に活かすことができます。

資格管理は、紙やExcelで管理することはできますが、属人化しやすく、更新漏れや抜け漏れのリスクが高まります。そこで役立つのが「Skillnote」です。従業員一人ひとりの資格情報を一元管理し、更新・検索・届出までを効率化。人材育成や教育計画の立案・実施に活かすことができます。ぜひ「Skillnote」の活用をご検討ください。

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よくある質問

機械保全技能士の難易度は?
2022年の合格率は特級が21.4%、1級で27.5%、2級で32.5%、3級で76.5%となっています。
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