生産管理システムとは?8つの機能やメリット、システムの選び方、ERPとMESとの違い

少子高齢化の影響から生産年齢人口の減少が見込まれており、とくに製造業においては人手不足や業務の属人化などのさまざまな課題があります。
このようななか、「AI」や「ビックデータ」、「IoT(Internet of Things)」などの新しい技術が登場しており、なかでも「ヒト・モノ・コト」の流れを一括で管理できる「生産管理システム」に注目が集まっています。
しかし、生産管理システムと一重にいっても利用するシーンやタイミング、生産規模などによって必要な機能が異なります。どのような課題に対して、どのようなアプローチで、どのように解決を図るのかを事前に整理してから、システムの導入を検討すべきでしょう。
本記事では、生産管理システムについて、目的や機能、メリットや選び方などを交えて解説します。
目次
生産管理システムとは、「ヒト・モノ・コト」の流れを管理するシステム
「生産管理システム」とは、人員配置や生産計画、在庫状況や製造工程、また販売状況や原価状況などの製造業における「ヒト・モノ・コト」の流れを一括で管理できるシステムのことを指します。生産管理システムは従来、従業員によって行われていたアナログな対応を、デジタル技術の活用で一元管理を可能としています。
そのため、システムを導入すれば、管理業務によって拘束していた人員リソースを削減できたり、不透明であった製造コストを明確にできたりと、製造業の中心的な課題を解消可能です。また、自社の全体像が可視化できるため、適正な人員配置や実態に沿った生産計画の策定が可能となります。
経済産業省も製造業に対して、「デジタル技術による事業者全体の取組の可視化・連携が重要」として、デジタル技術の活用を推進しています(※)。
(※)参考:経済産業省「製造業のDXについて」
そもそも「生産管理」とは?
「生産管理」とは、人員配置や生産計画、在庫状況や販売状況などの製造にかかる工程全体の管理のことです。自社の方針をもとに、製品の生産におけるさまざまな業務や状況を管理しなければなりません。また、「製造の出口」といえる営業や販売の状況も、生産管理に含まれています。
この生産管理における目的は「QCDの最適化」です。
- Q(Quolity):品質の担保・向上
- C(Cost):生産コストを抑える
- D(Delivery):期間を短くする
モノがあふれる今日、市場のニーズに応える「QCDの最適化」は、製造業の利益を上げるためには欠かせないポイントです。
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生産管理システムの目的
生産管理の目的は、品質の高い製品を、コストを抑えながら、短期間で作ることを最適化することです。
しかし、この目的の実現には、さまざまな課題があります。とくに、製造業においては製品の計画策定から、人員配置、材料の調達、製造、在庫の管理、販売・営業などと一連の流れのなかでそれぞれのタイミングで管理する必要があり、一元的に全てを管理することは簡単にはできません。
生産管理システムでは、このような製造業におけるそれぞれの工程を一元的に管理でき、目的達成に必要なアプローチを取れるようになります。
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ERPとMESとの違いとは?
生産管理システムとよく勘違いされるもので「ERP」や「MES」という言葉が存在します。これらは異なる意味を持っているため、混合して考えないことが大切です。
なお、システムを導入するにあたっては、それぞれの特性や違いを理解し、自社にとって必要なシステムを検討するようにしましょう。
ここでは、ERPとMESの違いについて、解説します。
ERPとは、企業の根底に必要な資源の分配計画のこと
ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略称であり、企業の根底となる資源(ヒト・モノ・カネ・コト)を最適に分配するための計画のことです。「基幹システム」とも呼ばれており、会計や人事、営業や販売、物流などを統合して管理できるシステムです。
生産管理システムでは製造にフォーカスを絞っていることに対し、ERPでは企業の根底の資源に焦点を当てている点で違いや役割が異なります。
MESとは、製造の品質管理や保守点検などを実行するシステムのこと
MESとは「Manufacturing Execution System」の略称であり、製造における品質や在庫の管理、また保守点検などを実行するシステムのことです。「製造実行システム」とも呼ばれ、あくまでも製造の実行面に特化したシステムとなっています。
生産管理システムとは対象としている範囲が異なります。生産管理システムでは計画や準備、実行や管理の全体が対象です。
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生産管理システムの8つの機能
生産管理システムと一重に言っても、システムによってさまざまな機能を有しています。提供されるサービス・システムによって、どのような機能が備わっているか、どのような課題に対して有効なのかが異なるため、機能に関する理解をするとともに、自社の課題・ニーズの洗い出しを行いましょう。
ここでは、生産管理システムの機能について、以下の8つを紹介します。
- 生産計画
- 受注管理
- 所要量計算
- 発注管理
- 在庫管理
- 製造工程・進捗管理
- 外注管理
- 品質管理
① 生産計画
生産計画は製造する製品において、工程や基幹、在庫などを踏まえて、どのような進め方で製造するのかを決める計画のことです。基本的には製造におけるさまざまなデータをもとに、企業方針に沿った計画を立てます。
② 受注管理
受注管理は製造する製品が、どの程度の数量が必要で、どのくらいの材料が必要なのかを把握するための機能です。在庫管理や外注管理などの製品や在庫にまつわる機能と連携する必要があります。
③ 所要量計算
所要量計算は生産に必要な在庫や在庫の数量、色などを自動で算出する機能です。生産計画の機能で定めた計画を基に、自動算出が可能です。
④ 発注管理
発注管理は製品の製造に対して、必要な材料の発注を行い、その数量や品質などをチェックできる機能です。生産計画や受注管理の機能と連携し、必要な材料を算出、依頼してくれます。
⑤ 在庫管理
在庫管理は既存の在庫だけではなく、発注によって増加した在庫や製造・事故によって減少した在庫を一括で確認できる機能です。必要によって発注管理や外注管理などとの連携も可能で、さまざまな機能の中心になりやすい機能です。
⑥ 製造工程・進捗管理
製造管理・進捗管理は製品が製造されるまでの工程や従業員の進捗を確認できる機能です。システムによってはリアルタイムで確認でき、事故発生時にその問題点の検証をおこなう際に役立ちます。
⑦ 外注管理
外注管理は製造にあたって外注が必要な場合に、依頼や依頼内容、数量やコストなどの外注にまつわる管理が行える機能です。とくに、子会社や外注先をよく利用する企業にとって導入しておきたい機能といえます。
⑧ 品質管理
品質管理では、製造した製品の品質が販売や納品に適しているかどうかを確認できます。生産管理システムで大きな意味を持つ機能であり、「QCDの最適化」の実現に欠かせません。
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生産管理システムのメリット
生産管理システムでは、製品の品質を担保・向上することや、従業員の業務を効率化できることなどのメリットが得られます。ただし、企業が抱える課題やニーズによって、得るべきメリットが異なることから、メリットの全体像や自社の状況を把握してから検討することが大切です。
ここでは、生産管理システムのメリットについて、以下の5つを解説します。
- リードタイムの短縮
- 業務効率化の実現
- データの見える化・一元管理
- 製造工程の可視化
- コスト削減
① リードタイムの短縮
製造業にとって製品の生産に必要なリードタイム(所要時間)の短縮は、生産力を高めるために欠かせないポイントです。
生産管理システムを導入すれば、製造工程の始まりから終わりまでの各工程・業務の連携が可能です。連携ができることにより、各工程・業務がスムーズに進められ、リードタイムの短縮につながります。
また、製造・販売に必要な材料・在庫がリアルタイムで把握できるため、材料の調達や生産の調整にすぐ対応できます。
②業務効率化の実現
生産管理システムでは、製造にかかるそれぞれの業務や作業を可視化でき、適切な人員配置を可能にします。
そのため、各従業員の知識やスキルを最大限に活かせる体制づくりができ、生産力の向上・業務効率化を促進できます。また、社内における情報共有も迅速におこなえることから、無駄なコミュニケーションコストの削減も可能です。
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③データの見える化・一元管理
生産管理システムでは製造に関するヒト・モノ・コトを一元的に管理できます。
このようなことから人員配置や在庫、生産に必要な情報などを可視化し、社内の隅々までそれぞれの従業員・チームが進捗や状況を理解しながら取り組むことが可能です。とくに、材料の仕入れ状況や販売状況がリアルタイムでわかる点は、製造にあたって材料や人員リソースの無駄を省けます。
④製造工程の可視化
生産管理システムでは人員配置だけでなく、各従業員・チームの製造工程をリアルタイムで管理できます。
スムーズな生産計画に対する進捗やエラー・ミスの調査などが可能となるため、製造に関する施策の立案・実行が行いやすくなります。また、従来では不透明な業務や作業の範囲も明確に分けられ、それぞれの従業員やチームが自身の役割を理解して製造に取り組むことが可能です。
⑤コスト削減
生産管理システムによって在庫状況をリアルタイムで管理できることから、製造に必要な材料・在庫の過不足をなくせます。
とくに、過剰な在庫を仕入れた場合には管理コストも必要になるため、生産管理システムの導入によって無駄なコストを削減可能です。また、人員配置や業務・作業の進捗も管理できるため、業務の偏りがあれば適正な配置変更ができます。
生産管理システムを導入すれば、自社における人的リソースの最大化が可能であり、また過剰な労力をカットしやすくなります。
生産管理システムの選び方とは?
生産管理システムにはさまざまな機能があり、導入にあたっては自社の課題やニーズ、製造状況にあったものを選ぶ必要があります。
仮に、自社にあっていないシステムを導入した場合、期待していた効果が得られず、また不要なコストを使ってしまう恐れがあります。このような事態を避けるためにも、本記事で紹介したポイントを踏まえて、システムの導入を検討する必要があるでしょう。
ここでは、生産管理システムの選び方について、解説します。
①カバーできる業務範囲
生産管理システムは製造の流れの全体を管理できるものであることから、さまざまな機能があります。そのため、どのような業務をカバーしたいのかによって、選ぶべきシステムが異なり、導入前に確認しなければなりません。
また、複数の課題がある場合には、優先的に解消したい課題を絞っておき、それに対する機能が備わったシステムを選択しましょう。
②得意とする生産方式
製造業では多品種少量生産や個別受注生産などのさまざまな方式が存在し、システムもその方式にあわせて作られています。そのため、業務範囲以外にも、生産方式によって適しているかどうかの判断が必要です。
また、企業によっては複数の方式を組み合わせたものもあることから、システムがそれぞれに対応しているか、あるいは複数のシステムが必要なのかを確認しておきましょう。
生産管理システムを導入する際のポイント
もし生産管理システムの導入すべきタイミングや解決すべき課題を誤ると、期待していた効果が得られない可能性もあり、生産管理システムに必要なコストが無駄になってしまいます。
このようなことから、生産管理システムの導入にあたってはシステムそのものではなく、自社の状況や事業規模なども整理しておく必要があるでしょう。
最後に、生産管理システムを導入する際のポイントについて、解説します。
① 目的を明確にする
生産管理システムを導入しても、解決したい課題や得たいメリットの認識があいまいになっている場合に想定していたよりも効果が得られない恐れがあります。
そのため、自社が抱えるどのような課題に対して、どのようなシステムを導入し、どのように解消していくのかの目的の明確化はシステムの導入前に整理すべきポイントです。目的を明確化する場合、全社的に課題・ニーズの精査を行うだけではなく、システムを導入する目的を各従業員に認知させておきましょう。
② 全社的プロジェクトとして取り組む
生産管理システムは製造に関するシステムであるものの、全社的な取り組みがなければシステムの効果が半減してしまう恐れがあります。
生産管理システムの効果が販売や営業、製品企画などのさまざまな部門にも影響があることを踏まえて、全社的な連携が欠かせないと言えるでしょう。システムの導入にあたっては、製造部門だけでなく、各部門におけるヒアリングや調査、効果検証も必要です。
③ 最適なシステムを選ぶ
生産管理システムは機能だけではなく、業種や業態、事業規模によっても選ぶべきものが異なります。この点を理解していない場合、システム導入によって無用な混乱を生む可能性もあり、また、カスタマイズによってコストが膨らむリスクがあります。
生産管理システムの担当者からの説明を受けるだけではなく、導入事例の確認や同業他社への調査などを行って慎重に導入を検討しておきましょう。
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