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2024.10.23
ISO9001の力量管理では、スキルマップ(力量管理表・力量評価表)を使うのが定番となっています。社内の管理規定やルールに基づいて、実際にスキルマップを作成されているご担当者も多いと思います。
しかし、そもそもISO9001において、スキルマップとはどのような位置付けなのでしょうか。
ここでは、ISO9001の要求事項の一部をご紹介しながら、ISO9001の力量管理においてスキルマップが必要とされる理由や使用目的を紹介します。
ISOでいう「力量(りきりょう)」とは、個々の業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力のことを指しています。
例えば、機械設計という業務を行うためには、様々な知識や技能が必要です。製品に関する知識、機械の基礎理論、製図の知識、またCAD(コンピュータ支援設計)等のツールを使うスキルなどが必要とされます。
また、別の例を挙げてみましょう。サービス業のホテルスタッフにはどのような力量が必要でしょうか。接客マナーの知識、コミュニケーション力は必須ですね。インバウンド旅行者をターゲットにしているホテルでは、英語などの語学力も必要となりそうです。
このように業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力を力量と呼びます。その要件を満たしていれば「力量がある」と言うのです。
関連記事:【入門編】「力量管理」の基本と活用方法のポイントとは
ISO9001は、国際標準化機構が定めた品質マネジメントシステムの国際規格です。製品やサービスの品質を管理し、顧客満足度を高めるための仕組みを品質マネジメントシステムと呼びます。
ISO9001は、日本国内でも4万件を超える取得件数があり、製造業や建設業において多くの企業が認証を受けています。また、製造業や建設業以外に、ホテルやレストランといった業種でもISO9001は取得されています。
さて、このISO9001では、認証を得るための要求事項の一つとして、「製品品質に影響がある仕事に従事する人の力量を把握し、必要な教育・訓練を実施すること」を求めています。
この力量の把握に、スキルマップ(力量表)が幅広く利用されています。
関連記事:【エクセルテンプレートあり】スキルマップとは? 作り方、手順・項目例、目的、活用方法、テンプレ
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
ISO9001の要求事項7.2「力量」には、以下のような記載があります。
7.2 力量
組織は次の事項を行わなければならない。
- 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
- 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を揃えていることを確実にする。
- 該当する場合には、必ず、必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
- 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。
注記: 適用される処置には、例えば、現在雇用している人々に対する、教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施などがあり、また、力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結などもあり得る。
これらをわかりやすく言い換えると、「業務に必要な力量を洗い出し、担当者にその力量が不足している場合は教育・訓練によって力量を補いましょう」という趣旨になります。
ISO9001においては、力量把握をして、その上で教育・訓練のプロセスのPDCAサイクルをしっかり回すことを求めていると言えます。
ここで力量を管理するためには、スキルマップ(力量表)がとても有効です。
スキルマップを作る目的を明確にしましょう。従業員数やスキル項目にもよりますがスキルマップの作成は簡単ではありませんので、どのような場面で活かしたいのか目的を明確にすることが重要です。
従業員へのヒアリングや作業マニュアルをもとに業務分析や職務分析を行い、スキルマップに必要なスキルを洗い出します。
スキルマップの評価者や更新頻度などの評価方法を明確に策定しておきます。
スキルマップの評価基準を策定しましょう。評価基準は〇×でも構いませんが、1〜4などのレベル別に評価を行うと習熟度が分かりますし、部署全体の平均値の算出などより踏み込んだスキル評価が可能になります。
スキルマップのスキル項目の分類方法やスキル名、評価基準について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:スキル評価とは? 目的とメリット、スキルマップとルーブリック評価の違い、作成手順など
実際にスキルマップを作っていきましょう。スキルマップにはExcelなどのツールを使用することが一般的です。
スキルマップが作れたら早速導入を開始しましょう。導入後、不備があった場合は修正やルールの変更を随時行います。また定期的に更新し、人材育成に役立てていきましょう。
関連記事:【テンプレートあり】スキルマップの作り方【スキル体系・評価基準・項目例】
ISO9001を取得している企業では、ほとんどの企業でスキルマップ(力量表)を使って、力量管理を行っています。
スキルマップは代替の効かない不可欠なツールである一方で、形骸化していて作成はしているものの、実務で活用はできていないとう声を耳にすることもあります。
スキルマップを実務で本当に活用していくためには、スキルマップで可視化した力量を、実際の教育・訓練につなげることが重要です。そのためには、スキルマップの力量項目を、具体的な教育・訓練につなげる視点で洗い出すことが必要です。
具体的なスキルマップを作れば、スキルマップは有効なツールとなり、職場の力量の底上げに大きな役割を果たしてくれるはずです。
ISO規格では教育訓練の有効性評価を要求しています。教育においては「実施」はもちろんのことですが、その有効性を「評価」することも大変重要と言えます。
つまり、実施して終わりではなく、教育課程と結果・効果を吟味・判断し、よりよい教育訓練へと改善すること、要するにPDCAを回すことをISO規格は求めているのです。
そのため、教育訓練の有効性評価は、その教育を受けた人だけでなく教育訓練の手法も対象としています。
有効性の評価方法には、習熟度の確認試験、講師からの個別評価、受講者によるレポート、受講後に行う実務への評価など様々な方法が考えられます。教育を行う組織にとって最も行いやすい評価方法を採択するといいでしょう。
教育訓練の有効性評価において重要なのは、どう行うかではなく、評価を通してよりよい教育訓練へと改善するPDCAプロセスのほうなのです。
規格要求事項では、業務従事者の力量の証拠としての記録管理が要求されています。力量評価の管理として一般的に作成されている記録は、スキルマップあるいは力量表と呼ばれているものです。
スキルマップは業務従事者の不足している力量項目を一目で確認でき、教育訓練を計画するための重要なツールとなります。
ISO9001では、「製品品質に影響がある仕事に従事する人の力量を把握し、必要な教育・訓練を実施すること」を求めています。
スキルマップがあれば、業務に必要な力量を簡単に把握でき、さらには行うべき教育・訓練を明確にすることができます。ISO9001で求められる教育・訓練を行うためのベースとして、スキルマップは必要不可欠なツールと言えるでしょう。
スキルマップは定期的に作成することが目的ではなく、あくまで教育・訓練に繋げる為のベースとして捉えましょう。具体的なスキルマップを作成すれば、スキルマップが形骸化することを避け、職場の力量の底上げに必ず役立ちます。
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ISO9001とは何ですか?
ISO9001は、国際標準化機構が定めた品質マネジメントシステムの国際規格です。
スキルマップとは何ですか?
スキルマップとは、「業務で必要なスキルを洗い出し、従業員一人ひとりの持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われるツールです。力量管理表や力量評価表、スキルマトリクスなどとも呼ばれます。
力量とは何ですか?
ISOでいう「力量」とは、個々の業務に必要な技能、知識、資格、経験等の能力のことを指します。ISOでは、「製品品質に影響がある仕事に従事する人の力量を把握し、必要な教育・訓練を実施すること」を求めています。
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