チョコ停とは?ドカ停との違い・原因分析・ロス可視化・改善手順を体系的に解説

チョコ停(チョコっと停止)は、数秒〜数十秒のごく短時間の設備停止を指し、製造現場で最も見逃されやすいロスの一つです。わずかな停止でも、積み重なると生産量の低下やドカ停の誘発につながり、納期遅延やコスト増加など重大な影響を招きます。本記事では、チョコ停の定義、起こりやすい原因、見逃される理由、製造現場に与える影響、そして改善につながる具体的な対策方法を体系的に解説します。
チョコ停とは?
チョコ停の意味とは?
チョコ停(チョコっと停止)とは、生産設備がごく短時間だけ停止する現象を指し、製造現場における代表的なロスの1つです。数秒〜数十秒といった小さな停止であっても、放置したり頻発すると生産量の低下やドカ停(ドカっと停止)を招きます。
チョコ停が積み重なることで、本来なら実現できるはずの生産スピードが低下し、リードタイムが増えるという悪影響をもたらします。その結果、納期遅れや在庫の増加を招き、顧客からの信頼の喪失や競争力の低下というリスクが生じます。
チョコ停の起こる原因としては、センサーの誤検知、ワークの位置ずれ、材料供給のムラ、人による操作タイミングのズレなど、多岐にわたります。短時間の停止で復旧も容易なため軽視されがちですが、累積すると大きな損失につながるため、日ごろからの可視化・記録・原因分析が重要です。
なお、JISではチョコ停は次のように定義されています。
「設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障」
出典:JIS Z 8141 : 2001 生産管理用語 設備管理 番号6108
チョコ停とドカ停の違い
チョコ停と対比される概念に「ドカ停(ドカっと停止)」があります。チョコ停が数秒〜数十秒の短時間停止であるのに対し、ドカ停は設備トラブルや故障などにより少なくとも 1時間以上の長時間にわたって生産ラインが停止する状態を指します。
ドカ停は復旧作業や部品交換などが必要となったり、最悪の場合にはシステム全体の修理や買い替えをしなくてはいけない場合もあり、生産ライン全体に深刻な影響を与えます。
また、納期の遅れや稼働時間のロスも招くため、企業は生産活動に深刻なダメージを与えるドカ停に対して何かしらの対策を講じています。
一方でチョコ停はドカ停に比べて軽微であり復旧が早いため見過ごされやすいものの、蓄積するとドカ停に匹敵する損失を生むこともあるため、常日頃から対策を講じておく必要があります。なお、JISにおいてドカ停は次のように定義されています。
「設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて,システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障」
出典:JIS Z 8141 : 2001 生産管理用語 設備管理 番号6108
生産現場における16大ロス
チョコ停はロスの一つですが、生産現場ではチョコ停も含めて「16大ロス」があります。以下では「人の効率化に関するロス」「設備の効率化に関するロス」「原単位の効率化に関するロス」の3つに大別してそれら16大ロスを簡単に説明します。
設備の効率化に関するロス
故障ロス
設備の突発・慢性的な故障により、稼働が停止して生産能力が損なわれるロス。
段取り・調整ロス
品種切り替えや条件調整に時間を要し、設備が稼働できないことで発生するロス。
刃具交換ロス
刃具や工具の交換作業により設備が停止し、生産時間が削られるロス。
立ち上がりロス
設備起動直後に条件が安定せず、不良や速度低下が発生するロス。
チョコ停・空転ロス
センサー誤検知や材料詰まりなどによる短時間停止や空運転で生じるロス。
速度低下ロス
設備が標準能力より低い速度で運転されることにより生産性が落ちるロス。
手直し・不良ロス
不良品の発生や再加工の必要により、本来の価値を生まない作業が増えるロス。
シャットダウン(SD)ロス
設備停止時の点検・清掃・後処理などで発生する計画的な停止ロス。
人の効率化に関するロス
管理ロス
計画や管理体制の不備により、材料待ちや段取り遅れなどムダが生じるロス。
動作ロス
作業者の無駄な動き(歩く・探すなど)により付加価値のない時間が増えるロス。
編成ロス
作業者や設備の配置・編成バランスが悪く、他の台を待っているロス。
自動化置き換えロス
機械化・自動化が不十分で、人手作業が残り生産効率を阻むロス。
測定調整ロス
必要以上の測定や調整作業に時間を取られ、生産時間を圧迫するロス。
原単位の効率化に関するロス
歩留まりロス
材料が有効に活用されず、歩留まり低下によってロスが生じる状態。
エネルギーロス
空調・電力・待機電力などエネルギーを無駄に消費するロス。
型・治工具ロス
金型や治工具の劣化・交換・調整などで発生するロス。

チョコ停が起こる原因
清掃・メンテナンス不足
チョコ停の大きな要因のひとつが、設備の清掃・メンテナンス不足です。機械内部に粉塵や油分、製品カスなどが蓄積すると、センサー誤検知や部品動作の引っ掛かりを引き起こし、瞬間的な停止につながります。
また、摩耗部品の交換遅れや給油不足も、部品の動きの微妙な遅れを生み、チョコ停の頻発を招きます。日常点検の抜け漏れや清掃基準のばらつきは現場で発生しやすいため、ルール化と標準作業化が重要です。
センサーのエラー
センサーの誤作動もチョコ停の発生原因になります。たとえば、汚れやホコリが付着し光電センサーが正常検知できなくなったり、振動で位置ズレが起きたり、ケーブルの接触不良が発生したりするなど、わずかな変化でも設備の安全停止は作動します。とくに製造ラインではセンサーが多点に配置されているため、1つの微細なエラーがライン全体の稼働を止めてしまうこともあります。定期的な校正・清掃と、ログの分析がセンサーのエラーによるチョコ停防止対策の鍵となります。
材料や作業品質のばらつき
材料の寸法差、硬さ、湿度の変化など、品質のばらつきは設備の搬送や加工工程に影響し、チョコ停の誘因になります。また作業者による供給方法の違い、置き方のばらつき、投入タイミングのズレなども、設備のリズムを乱し停止を引き起こします。材料と作業品質の安定化、そして不良品が生産ラインに流れない仕組みは、チョコ停削減に直結します。
チョコ停が見逃されやすい原因
突発的にラインで起こり記録されないため
チョコ停が見逃されやすい最大の理由は、その発生が数秒〜数十秒と非常に短時間であり、現場の作業者が気づかないままラインが再起動してしまう点にあります。ライン稼働中の作業者は多くの場合、複数の工程を兼務しながら作業しているため、短時間停止を逐一目視で追うことは困難です。また、従来の稼働管理では「長時間停止」だけが重点的に記録され、チョコ停のような瞬間停止は設備ログに残らないケースも多く見られます。その結果、チョコ停は「影に隠れたムダ」として累積し、1日単位では数分〜数十分、月間では数時間規模のロスにつながってしまいます。
また、チョコ停が頻発している製造現場では、チョコ停の積み重ねがドカ停へと発展してしまうリスクが潜んでいるとも言えます。先述のようにチョコ停の主な原因の1つに清掃・メンテナンス不足があります。この状況の放置は、機械に過剰な負荷がかけ、大規模な故障を誘引するリスクがあります。一度ドカ停が発生するとそのダメージは甚大なものがあります。一つのチョコ停は軽微なものであっても、常日頃から記録し、軽視せずに抜本的な対策を講じておく必要があります。
チョコ停が向上に与える影響
チョコ停ロスの計算方法(ワークサンプリング)の紹介QFDの5つの展開手法
チョコ停は1回あたり数秒〜数十秒と短いため、現場では軽視されがちですが、累積すると設備稼働率に大きな影響を与える厄介なロスです。その影響を正しく把握するためによく用いられるのが「ワークサンプリング」です。 ワークサンプリングとは、トラブルの発生原因や従業員の動作、機械の稼働状況などを確認し、何にどのくらいの時間がかかったかを調査する手法です。日本語では、「稼働分析法」とも呼ばれています。 チョコ停の影響度合いを市レベル場合には、設備の稼働状況を「稼働」と「非稼働」に大別して非稼働の状態をチョコ停に分類してサンプリングすることでチョコ停によって失われた時間を可視化します。 たとえば、チョコ停によって生じた稼働率の低下を数値化で表したければ、次の式で2種類の稼働率を計算します。この2つの差分がチョコ停による稼働率の低下に当たります。 ・チョコ停がない場合の稼働率 = 稼働時間 / 操業時間 ・チョコ停を加味した稼働率 = 稼働時間 / (操業時間+チョコ停時間)
チョコ停への対策手順
チョコ停によるロスの可視化
チョコ停対策の第一歩は、短時間停止を可視化することです。チョコ停は数秒〜数十秒と短いため、作業者の感覚では把握しづらく、放置されることで大きな累積ロスになります。そこで、IoTセンサーの活用や設備ログ、ワークサンプリングなどにより、停止発生タイミングとその長さを記録します。ロスが可視化されることで、実際の生産能力がどれほどチョコ停によって損なわれているかが明確になり、改善テーマの優先順位付けも容易になります。
原因の調査と最大原因の抽出
可視化データをもとに、チョコ停の発生頻度や傾向を分析し、原因を特定します。設備の挙動や作業状況を細かく観察し、どの工程・どの動作が停止を引き起こしているかを洗い出します。複数の原因が絡む場合も多いため、パレート分析などを活用し最大の原因を特定することが重要です。最も影響度の高い要因から手を打つことで、限られた改善リソースを効率的に投入でき、短期間で効果を得られます。
対策の実施と評価
原因が特定できたら実際に対策を打つ前に予定している対応策を実施した結果、どの程度の効果を数値で算出しておきます。これにより対応策の費用対効果を見積もることができます。計算式は以下です。
・損失金額 = チョコ停時間 × 時間当たりの生産個数 × 製品単価
もともと生産能力が高く、単価も高い製品を製造している場合は、当然ながら損失額も高くなります。たとえチョコ停であっても損失額が高いと判明した場合には早急に手を打つ必要があります。
また、対策を行った場合にはその対策が効果をあげているかどうかを検証しておく必要があります。対応策を講じても効果が出ていない場合には更なる原因追及を行い、抜本的な解決策を講じます。
チョコ停解決に向けたアプローチ方法
4M分析
4M分析は、チョコ停の原因を「人・機械・材料・方法」の4つに分類し、体系的に整理する手法です。
Man(人)
作業者の熟練度や作業手順のばらつき。誤操作や供給ミスが停止を招く。
Machine(機械)
設備の摩耗、センサー汚れ、調整不足など、機械的要因による短時間停止。
Material(材料)
材料の寸法差、表面状態、含水率の変動などが搬送や加工を乱す。
Method(方法)
作業手順、段取り方法、検査基準などの不備によって発生する停止。
4Mに分解することで、漏れなく原因を洗い出せ、改善ポイントの絞り込みが容易になります。

なぜなぜ分析
なぜなぜ分析は、表面的な現象にとらわれず、真因に到達するための思考手法です。
現象の明確化
まず「何が起きているか」を事実ベースで整理する。
なぜを繰り返す
原因に対して「なぜ?」を3〜5回繰り返し、深掘りしていく。
真因の特定
作業ミス・材料ばらつき・設備劣化など、根本となる原因を導き出す。
誰でも実施できるなぜなぜ分析は、チョコ停がなぜ起こったのかその原因を整理して本質的な改善につなげられる手法です。
まとめ
チョコ停は短時間で復旧できる軽微な停止であるにもかかわらず、頻発することで生産性を大きく低下させる厄介なロスです。設備の清掃不足やセンサーエラー、材料や作業品質のばらつきといった日常的な要因により発生し、瞬間的で記録されにくいため見逃されやすい点に特徴があります。しかし、チョコ停を放置するとリードタイムの増加、生産能力の低下、場合によってはドカ停の誘発といった深刻な影響をもたらします。
そのため、チョコ停の可視化・記録・原因分析を継続的に行い、4M分析やなぜなぜ分析を活用した改善活動が不可欠です。小さな停止を見える化し、現場に合った対策を積み上げることで、生産ライン全体の安定稼働と品質向上につなげることができます。













