デザインレビュー(DR)とは?目的・メリット、フェーズごとの報告内容の例や注意点を解説

製品開発において、デザインレビュー(DR)は品質向上と効率的な開発を実現する重要な手法です。とくに近年のグローバル競争の激化や製品の高度化に伴い、その重要性は増しています。本記事では、DRの概要からフェーズごとの報告例など実践的なポイントを解説します。
目次
デザインレビュー(DR)とは?
デザインレビュー(DR)とは、量産前の製品開発段階での評価結果を審議し、次の段階に進んで問題ないのかを見極める審議会です。 製品種類にもよりますが、設計開発は下記のような段階分けができます。
- 企画
- 構想
- 設計
- 試作
- 量産試作
- 初期量産
それぞれの段階で、必要な情報を入手できているか、検証は十分であるか、品質的なリスクはないかなど、次の段階に進んでも問題ないかを多角的に検証します。 潜在的な問題を早期に発見し、製品の品質向上を図ることで、開発後期での手戻りを防ぎ、効率的な製品開発を実現します。 また、ISO 9001では、「8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」や「8.3.6 設計・開発の変更」で顧客要求事項のレビューや、設計途中での変更については、レビューが必要であると規定されています。
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デザインレビュー(DR)の目的・メリット
デザインレビュー(DR)には多くの目的・メリットがありますが、ここでは主要な5つをご紹介します。
1. 品質の向上
DRの一番の目的は品質の向上です。ここでいう品質の向上とは、単なる製品品質を指すのではなく、QCD(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期))の全てを満たすことです。
そのためには、安全性、コスト、環境適合性、市場性、製造時の効率性など、多角的な観点からの評価が重要です。DRでは、必要に応じて関連するさまざまな部署(設計・企画・品質保証・生産技術・設備・製造・営業・購買など)が参加し、各々の視点から評価を行います。
設計の初期段階から複数の視点で評価を行うことで、潜在的な問題点を早期に発見でき、修正を行い、より高い品質の設計が可能になります。
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2.開発時間の短縮
DRで設計段階での問題点を早期に発見することで、手戻りを最小限に抑えることができ、開発時間の短縮につながります。開発スケジュールの遅延を防ぎ、手戻りのための時間とコストを大幅に削減できるので、効率的な製品開発が可能です。
とくに、顧客との共同開発において開発スケジュールが遅れることは、顧客からの信頼を損なう可能性があります。DRで問題点を早期に発見し、先に手を打つことで、結果的に開発時間の短縮につながります。
3.開発力の強化
製品開発は、機能性だけではなく、安全面やコスト面、効率面なども考慮に入れなければなりません。経験の浅い分野の評価は他部署の協力が必要です。
DRは、会社全体の技術力や知見を結集させ、より多角的で高品質な製品開発を実現します。また、若手技術者の育成の場としても活用できます。異なる専門分野の技術者が協働することで、新たな気づきを得ることができ、プレゼンテーション能力の向上も期待できます。
4.製品・プロジェクトビジョンの一貫性の確保
DRは問題の回避だけではなく、製品やプロジェクトビジョンの一貫性を確保できます。DRで多くの関係者と情報を共有し、議論していくなかで、製品のコンセプトやプロジェクトそのもののビジョンに一貫性を持たせられます。
これにより、製品ファミリーとしての統一感が保て、自社のブランドコンセプトとズレが起こりにくくなります。
5.商品力・企業力の強化
DRを行うことにより、高品質な製品開発が実現でき、商品力の強化につながります。また、DRを通じた若手技術者の育成は企業力の強化にも貢献します。
企業内の知見を集め、集合知を活用することで、企業のブランド価値が高まり、持続的な成長と収益性の向上が期待できます。
デザインレビュー(DR)の種類
デザインレビューにはいくつかの種類がありますので、それぞれについて解説します。
1.顧客によるDR
顧客によるDRは、顧客(発注者)と設計部門で行います。顧客が図面や発注仕様書で要求した内容を、設計部門が正確に反映できているかを詳細に検証します。
設計部門は、顧客要求のなかで実現できない部分があれば顧客に申告します。代替案を提示するなど交渉を行い、製品設計を固めていきます。
2.開発段階移行のためのDR
主に、社内で行われる各開発段階の終了時に実施されるDRです。次の段階に進むための準備が整っているか、現状の課題や問題点を確認します。また、次の段階での検証が必要な項目の確認や、課題や問題点へのアプローチについても明確にします。スケジュールやコストの観点からも、移行の是非を慎重に判断します。
3.フォーマルデザインレビュー(FDR)
フォーマルデザインレビュー(FDR)は、公式な会議形式で実施される、規模の大きな設計審査です。関係者や専門家が一堂に会し、設計内容を綿密に検証します。審査の結果を正式な記録として残し、意思決定の透明性を確保します。
通常、事前に行うタイミングや取り扱う内容、参加者などが社内ルールとして定められており、ルールにのっとって行います。一般的に前述の顧客によるDRや、開発段階移行のためのDRは、FDRに含まれます。
4.インフォーマルデザインレビュー(IDR)
インフォーマルデザインレビュー(IDR)は柔軟な形式で実施される非公式なレビューです。FDRの前などに、部署内で意見交換などを行う気軽なディスカッションの場です。
必要に応じて随時開催できるので、スピーディな意思決定が可能です。また、少人数で行うので創造的なアイデアも生まれやすくなります。さらに、技術者間の知識共有や相互学習の機会としても有効です。
5.デザインレビュー(DR)とステージゲート法の違い
ステージゲート法は、ステージ(開発活動の各段階)ごとにゲート(評価基準)で開発テーマをふるい落とし、より採算性の高い開発テーマだけを市場投入する手法です。ステージは、以下の6つのステージがあり、ステージが変わるたびにゲートが存在します。
- アイデア創出ステージ
- 初期調査ステージ
- 事業戦略策定ステージ
- 開発ステージ
- テストステージ
- 市場投入ステージ
ゲートの条件をクリアすれば次のステージに上がり、最終的に残ったテーマを事業・製品化する管理方法です。
DRの評価ポイントがQCDに置かれているのに対し、ステージゲート法ではおもに市場ニーズがあるかといった採算性が評価されます。このため、ステージゲート法は開発に対する不確実性の低減や、早期段階でのリスクマネジメントが期待されます。
デザインレビュー(DR)を行うタイミングとレビュー内容
DRを行うタイミングと、それぞれのタイミングでレビューする一般的な内容を紹介します。DRの回数やどのタイミングでDRを実施するのかは、製品種類や企業の考え方によって異なりますが、開発着手・設計・試作・市場投入という大きな流れは変わらないので、全体感を把握しましょう。
開発企画フェーズ(DR1)
開発企画フェーズ(DR1)では、市場調査や顧客のニーズ分析に基づき開発の妥当性を評価します。競合製品との差別化や事業性について検証を行い、開発に着手するべきテーマなのかどうかを判断します。
レビュー内容の例
- 市場規模、成長性、顧客ニーズ
- 技術的な実現可能性
- 市場や顧客から要求される性能
- 開発目標、開発リスク
- 競合製品の分析結果
- 販売価格案、収益性の予測
- おおよその開発期間や開発コスト
構想設計フェーズ(DR2)
構想設計フェーズ(DR2)では、開発計画を明確化し開発の構想を評価します。DR1で決めた開発テーマについて、どのような技術、部品、プロセスで実現する計画なのかがレビューの主題です。
詳細な設計に進む前におおよその設計案を確立させ、今後の開発でどのような検討を行うべきなのかを明確にします。
レビュー内容の例
- 採用する技術
- 採用する技術にリスクがある場合は、リスクヘッジの方法
- 製品の基本構造
- 主要部品の案
- 製造方法の概要
- 開発スケジュール
- 開発目標
詳細設計フェーズ(DR3)
詳細設計フェーズ(DR3)では、生産設備を使用した試作へと進むことができるかどうかを評価します。試作を行うにあたり、使用する部品や、製造プロセス、設計図面や仕様書の完成度を確認します。製品によってはテーブル試作の評価結果などのレビューも含まれます。
レビュー内容の例
- 部品の選定や製造工程の適正性
- 材料選定の妥当性
- 加工方法(組立方法)の適切性
- 設計図面
- 仕様書
- 品質管理基準
- 検査方法
- FMEA
- 試作時の評価内容
試作評価フェーズ(DR4)
試作評価フェーズ(DR4)では、試作品の性能評価の結果や量産時の課題をレビューします。製品によっては顧客での加工評価が必要になるので、顧客への試作品送付前にレビューを行うことが一般的です。試作結果によっては再度試作を行うケースもあります。
レビュー内容の例
- 試作した製品の評価結果(性能、信頼性など)
- 試作の結果(不良率、製造部からのヒアリング結果など)
- 顧客評価がある場合はその内容
- 試作時に課題が発生した場合は、量産までの改善スケジュール
量産前フェーズ(DR5)
量産前フェーズ(DR5)では、開発が量産に進める状態に至っているかを評価します。このフェーズが量産前の最終確認になるので、生産に関わる準備ができているか慎重な審査が必要です。
レビュー内容の例
- 製造ラインの設備や工程の妥当性
- 組立後の妥当性確認
- 作業標準、FMEA、コントロールプランの整備状況
- 作業者の教育・訓練の進捗
- 品質管理体制(検査方法、基準、不具合時の処置方法など)
- 不良率の予測と対策
- コスト管理の方法
- 部品調達や在庫管理の体制
- 顧客やサプライヤーとの品質保証の取り決め
- 生産能力と納期対応力
初期流動フェーズ(DR6)
初期流動フェーズ(DR6)では、量産開始直後の製品品質を評価し、必要に応じて製造プロセスの改善を実施します。
レビュー内容の例
- 初期不良の発生状況
- 市場からのフィードバック結果
- 生産性や歩留まりの向上に向けた改善活動
- 製造ラインの安定性
- 納期遵守状況の確認
デザインレビュー(DR)の注意点
企業風土によっては、評価者が一方的にレビュー者を叱責するだけで、結論が出ないようなDRが行われている事例もあります。そのようなDRは、モチベーションの低下や開発の遅れを引き起こす可能性があります。効果的なDRを行うために以下の注意点を心がけましょう。
一貫性を持った指摘を行う
客観的な評価基準に基づき、一貫性のある指摘を行うことが重要です。感情的な議論を避け、事実に基づく建設的な指摘を心がけます。
叱責ではなく、改善提案を含めたどうするべきかという具体的な指摘を行うことで、効果的な問題解決につながります。レビュー参加者間での認識の統一も重要で、必要に応じて判断基準の確認や調整を行います。
技術的な観点だけでなく、品質、コスト、納期などの総合的な視点での評価も必要です。指摘事項の記録と追跡管理も、一貫性維持のために欠かせません。
質を高める工夫を行う
レビュー資料の充実や適切な参加者の選定により、レビューの質を向上させましょう。
レビュー資料は事前に配布し、予備検討の時間確保します。また、冒頭にレビューの目的や範囲を明確にし、参加者全員での共有を図ります。効果的なレビュー進行のために、議題の優先順位付けやタイムマネジメントも重要です。
また、専門分野の異なる参加者をバランスよく選定しましょう。あらかじめDRルールとしておおよその参加者を決めておくのが効果的です。レビュー結果の効果的なフィードバック方法や、改善活動への展開方法についても検討が必要です。
開発プロセスの改善を継続する
デザインレビューで得られたフィードバックは、その開発テーマだけで終わらせるのではなく、開発プロセス全体として改善に活かしましょう。継続的な改善活動により、開発組織の開発能力が向上し、より高品質な製品開発が実現できます。
高品質な製品開発のためには、レビューでの指摘事項や改善提案を体系的に整理し、組織的な知識として蓄積する必要があります。また、頻出する問題点や重要な教訓については、設計標準やチェックリストへの反映を検討します。
開発プロセスの各段階での課題や改善点を明確にし、計画的な改善活動を推進します。内部監査やマネジメントレビューでの定期的なプロセス評価や改善活動の効果確認も重要です。
人材育成の観点から、技術伝承や知識共有の仕組みづくりも重要です。持続的な競争力維持のために、中長期的な視点での改善計画策定と実行が求められます。
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よくある質問
- デザインレビューとは何ですか?
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デザインレビュー(DR)とは、量産前の製品開発段階での評価結果を審議し、次の段階に進んで問題ないのかを見極める審議会です。
- デザインレビューとはISO9001で何ですか?
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ISO 9001では、「8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」や「8.3.6 設計・開発の変更」で顧客要求事項のレビューや、設計途中での変更については、レビューが必要であると規定されています。
- デザインレビューの目的はどれか?
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デザインレビュー(DR)には、①品質の向上、②開発時間の短縮、③開発力の強化、④製品・プロジェクトビジョンの一貫性の確保、⑤商品力・企業力の強化の目的があります。