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2024.4.24
少子高齢化に伴う人手不足や経済のグローバル化などの影響で、日本企業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
このような状況を背景にして、現在、「業務標準化」が注目を集めています。
この記事では、多くの企業が取組みを開始している業務標準化の概要や進め方について解説します。
業務標準化とは、さまざまな業務を進める際の手順を明確にし、マニュアルや作業手順書などを作成することで、作業の効率化や品質の安定化を図ることです。
また、ツールの活用や作業手順の簡略化によって、特定の人しかできない属人化した業務を従業員であれば誰でもできる業務に変えることも業務標準化のひとつと言えます。
現在、製造業において、ベテラン技術者の定年退職に伴う技術喪失、新たな人材が採用できないことによる人手不足といった課題が生じています。
技術喪失は、企業から競争力を奪い、新たな技術開発に投じる資金の余裕がなくす悪循環を生じさせます。また、人手不足によって一人当たりが担当すべき業務負荷が高まることで、生産性の低下や従業員のモチベーション低下、さらには離職率の向上といった悪影響が懸念されます。
属人化の解消と業務効率化を実現する業務標準化は、技術伝承や人手不足に伴うこれらの課題を解決することに貢献します。
関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策
関連記事:技術伝承とは? 暗黙知と形式知、技能伝承との違い、行わない場合のリスクと成功させるコツ
業務標準化は、業務のマニュアルや作業手順書を作成することで、従来属人的だった業務を標準化して、作業効の率化や品質の安定化を図ることです。
業務平準化は、従業員間の業務量のバラつきをできるだけ減らし、可能な限り均等な負荷で業務を行えるようにすることを意味します。
業務標準化は、標準化する業務対象の違いから、業務フローの標準化とタスクの標準化に分類できます。
業務フローの標準化とは、業務フローを最適化して全体の流れを把握しやすくすることです。これにより、メインの担当者がその業務から外れた場合でも他の従業員にスムーズに引き継ぐことができます。
タスクの標準化とは、業務フローを構成する個別の業務(タスク)を誰が担当しても作業内容や成果に差が生まれないよう、業務(タスク)がマニュアル化・作業手順書化されている状態のことを指します。これにより従業員の誰が作業を行っても品質を一定に保つことができます。
業務標準化を行うことで得られるメリットを4つ紹介します。
業務標準化に取り組むメリットのひとつに、属人化の解消・防止があります。
属人化とは、「業務が特定の従業員のものとなり、その従業員にしか業務内容やフローがわからなくなった状態」を意味します。
業務が属人化されている状態では、担当者が不在となるだけで、業務がうまく回らなくなります。そのことでさまざまなリスクが生じることが想定できます。例えば、担当者不在のときにトラブルが起こっても他の従業員には適切な対応ができません。最悪の場合、顧客や取引先からの信頼を失う恐れがあります。
業務標準化では、マニュアルやノウハウ、業務の進め方が他の従業員と共有されるため、業務の属人化を防止できます。退職や離職などで担当者が不在となった場合でも、業務を後任者にスムーズに引き継ぐことができるでしょう。
品質の向上・均一化も業務標準化のメリットのひとつです。
製造業の現場では、「同じ製品を製造する生産ラインが複数ある」「複数の顧客向けに同じ業務を行う必要がある」など、似たような作業を複数の従業員が同時に行うことが日常茶飯事です。
このような場合に見られるのが、作業を担当する従業員の間で細かな作業や判断基準にずれが生じて、それが成果物の品質にばらつきを生んでしまうことです。
業務標準化を進めれば、マニュアルや作業手順書を作成することによって、品質の統一化を行えます。また、優秀な従業員が行う作業のポイントやコツもマニュアルや作業手順書に記載することで、さらなる品質向上を実現できます。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
業務標準化は、業務の見える化を進め、担当者以外の従業員にも業務フローを共有することができます。また、不要な作業は削除することで業務フローの最適化を促します。
そのため、属人化していた業務は飛躍的に効率化でき、さらには後任者への業務引継ぎにかかる時間や工数を大幅に削減できます。
さらに、生産性向上や業務効率化によって生まれた時間を他の作業に充てることができます。その結果、人材の多能工化や人手不足の解消にもつながります。
業務標準化によって生じた時間を新たな技術の開発や習得に充てることができます。そのことで従業員の技術力を向上させ、企業力の底上げにつなげることができます。
いざ業務標準化に取り組もうと思っても何から始めればいいか分からない。そんなことも多いと思います。ここでは業務標準化の進め方を紹介します。
すべての業務を標準化することは現実的ではありません。そこで、業務標準化の対象とするべき業務を棚卸しします。標準化すべき業務を選ぶポイントは以下を参考にしてください。
・属人化している業務
・品質が統一されていない業務(作業者によって品質にばらつきが生じる業務)
上記の業務は標準化しなければ後々企業にとってリスクを生じさせる恐れのある業務です。まずはこれらの業務に絞って標準化を行いましょう。
そのうえで標準化の対象となる業務の内容(担当者、時期、場所)を明らかにして、内容と手順の見える化を行うと良いでしょう。
業務の棚卸を終えたら、優先順位の高いものから標準化に取り組んでいきます。その際に【業務フローの標準化】と【タスクの標準化】で少し方法が異なることには注意が必要です。
業務フローの標準化では、ひとつの業務を完結させるために必要なタスクを全て書き出します。書き出した業務に対して最も効率よい順番にタスクを並べて、順番にタスクを消化していきましょう。
タスクの標準化では、対象となる業務において効率の良く業務に取り組んでいる従業員、優れた技術を持っている従業員へのヒアリングを行い、作業の参考とします。また、必要に応じてデータを活用して定量的に技術を把握することも効果的です。
なお、【業務フローの標準化】と【タスクの標準化】のそれぞれの過程で得られた知見は、マニュアルや作業手順書に蓄積しておくことで業務標準化はより効果的に行えます。
マニュアルや作業手順書が完成したら、実際に業務の中で運用していきます。しかし、ただ配布するだけではいけません。作成したマニュアル・作業手順書を日常業務の中に定着できるように説明会などを開催して従業員の理解を深めることに努めましょう。
なお、マニュアルは定期的に改善していく必要があります。実際に運用していくと説明不十分な箇所が見つかったり、より効率的な作業手順が見つかったりすることがよくあります。これらを改善ポイントとして蓄積しておくと良いでしょう。
蓄積した改善ポイントは定期的にマニュアル・作業手順書に反映させましょう。マニュアルや作業手順書は定期的に改善を繰り返し、その都度更新していくことをおススメします。
関連記事:製造業にとって効果的なマニュアル作成とは? 作成の手順とポイントを解説
業務効率化を効果的に進めるために、以下の2つのコツを意識してください。
業務標準化を進める過程で、業務への取組み方や作業の手順を変更する必要が出てくることがあります。その場合、従来使用していたものから変更を行うことになります。また、抵抗感を示す従業員が出てくることも予想されます。
業務標準化をスムーズに進めるために、現場の従業員が納得して業務水準化にあたる必要があります。「なぜ業務標準化が必要なのか」「業務標準化を行うことで個々の従業員にどんなメリットが生まれるのか」といった目的やメリットを組織全体で共有して、現場従業員の納得度を深めておきましょう。
業務標準化では、仕事の流れの整理や、作業のコツ・注意点を明確にしてマニュアルや作業手順書にまとめていきます。
しかし、実際に業務標準化を運用し始めると、マニュアルや作業手順書を作成すること自体が目的となり、本来の目的であった「人手不足の解消」「属人化された業務の解消」が忘れられてしまうことがよくあります。
マニュアルや作業手順書の作成が目的化すると、細部に必要以上にこだわるなどした結果、投じた時間ほどの効果が得られない場合があります。マニュアルや作業手順書を作成する際には、それが本来の目的を実現するための「手段」であることを忘れないようにしましょう。
業務効率化を進める際には、以下の3つの点に十分に注意してください。
多くの業務において、標準化を行うことで業務効率化を実現できます。しかし、業務の特徴次第では十分な効果を得られない場合があります。費用対効果を見極めて標準化の対象とする業務を決めましょう。
その場合、業務を行う人数の寡多を判断材料とするといいでしょう。対象業務を行う人数が多ければ多いほど、標準化によって効率化できる時間は大きくなります。
コストも大切な判断ポイントです。業務を行う人数が多くても、ツール導入等に多大なコストがかかる場合には標準化を行わないという判断も必要です。業務標準化を検討する際には、必ず費用対効果を考慮して行いましょう。
作業効率化や品質の安定化のためには、丁寧なマニュアルや作業手順書を作成することが効果的です。
しかし、過度に細かいマニュアルや作業手順書を作成してしまうと、従業員から作業する楽しさを奪ってしまいかねません。従業員のモチベーションが低下する恐もがあります。また、マニュアルや作業手順書を細かくしすぎると運用後の改善が難しくなってしまいます。
業務標準化の推進のためには「あえてマニュアル化しすぎないこと」も大切です。
繰り返しの説明になりますが、業務標準化で作成したマニュアルや作業手順書は、定期的に見直す必要があります。
一定期間運用した結果、作成した当初とは環境が変わっていたり、より効率的な作業方法が見つかっていたりするのはよくあることです。改善ポイントを蓄積して、マニュアルや作業手順書の改訂に活かしていきましょう。
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