目標管理(MBO)とは? 意味、メリット、目標設定の例を紹介
とは?.png)
少子高齢化の進展や若手従業員の離職率の高まりによって、企業の人事部門担当者にとって人材不足が課題となっています。この課題を解決するためには、従業員のモチベーションアップを図っていく必要があります。
また、従来の年功序列主義から成果主義に変更する企業も増えていることから、従業員の成果を正当に評価できるよう、人事評価制度の見直しが進んでいます。
そこで注目されているのが、目標管理(MBO)という人事評価制度です。本記事では、目標管理(MBO)について、メリット・デメリットおよび運用方法や制度導入時のポイントを詳しく解説します。
目次
目標管理(MBO)とは
目標管理(MBO)とは、基本的に1年に1回従業員一人ひとりが業務目標を設定し、目標の達成状況やプロセスを管理するマネジメントの概念です。業務目標は、企業の事業方針と従業員自身が目指していきたい方向性をすり合わせることによって、設定していきます。
あらかじめ設定された目標を達成することにより、昇給や昇格など従業員にメリットがあるため、業務効率の向上やモチベーション向上につながります。
目標管理(MBO)の概念は、アメリカの著名な経営学者であるピーター・ドラッカーが提唱しました。英語の正式名称は「Management by Objectives」であるため、その頭文字からMBOと呼ばれることもあります。
目標管理(MBO)とOKR・KPIとの違い
目標管理(MBO)と似た言葉として、OKR・KPIがあります。ここでは、目標管理(MBO)とOKR・KPIの違いを解説します。
OKRとの違い
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な結果」を意味します。具体的には、容易には達成できない目標(ストレッチゴール)を掲げ、全従業員が目標を共有して進めていくことです。
OKRは従業員のモチベーションアップのために、進捗率60〜70%で成功と言えるような高い目標を設定し、原則として人事評価と結びつけない点が、目標管理(MBO)とは違います。
KPIとの違い
KPIとは、正式名称である「Key Performance Indicator」の頭文字を取った用語です。日本語では、「重要業績評価指標」と呼ばれ、具体的な目標達成度を測定するための指標を表します。
目標管理(MBO)やOKRがマネジメント手法であるのに対し、KPIは目標を定量的に評価するために使われています。目標管理(MBO)とは、そもそも利用目的が違います。
目標管理(MBO)のメリット
ここでは、目標管理(MBO)のメリットについて、紹介します。それは、以下の4点です。
- 従業員のモチベーション向上
- 透明性の高い人事評価が可能
- 従業員が主体性を持って業務に取り組む
- フィードバックによる従業員の成長促進
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
従業員のモチベーション向上
目標管理(MBO)の目標を設定するときには、従業員のスキルや進みたい道に合わせて目標を設定していきます。そのため、従業員一人ひとりの達成感を得やすく、結果的に従業員のモチベーションが向上していきます。
また、従業員自らが設定した目標の達成により、人事評価や報酬に結び付くため、成果が認められたという実感が得られ、仕事に対する意欲がさらに向上するといった好循環も期待できます。
透明性の高い人事評価が可能
目標管理(MBO)では、目標設定時に達成すべき指標や状態、期限が明確に定められています。そのため、目標の達成度をもとに透明性が高く、公平な人事評価が可能です。
人事評価の透明性が高まることで、企業と従業員間の信頼感も醸成されるとともに、従業員の納得感にもつながるといったメリットがあります。
従業員が主体性を持って業務に取り組む
目標管理(MBO)では、企業の経営理念や事業部門目標をベースに、従業員一人ひとりが目標を設定します。その際、目標達成に向けて従業員自身が、自らに足りないものは何か把握する必要があります。
その上で、自身で何をすべきであるか、自身の役割を考えて行動に移す必要があります。その結果、従業員自身が主体性を持って業務に取り組むようになります。
フィードバックによる従業員の成長促進
目標管理(MBO)で設定された目標に対して、定期的に進捗確認やフィードバックが上司によって行われ、その際に目標達成に向けての具体的なアドバイスを受けることになります。
その結果、従業員は自らの強み・今後改善すべき点に気づきやすくなります。従業員一人ひとりの成長が促進され、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
目標管理(MBO)のデメリット
ここでは、目標管理(MBO)のデメリットについて、紹介します。それは、以下の4点です。
- 目標達成主義に陥りやすい
- 目標設定がしにくい職種がある
- 上司の負担による手段の目的化
- 過度な目標主義による従業員のモチベーション低下
それぞれのデメリットについて、詳しくみていきましょう。
目標達成主義に陥りやすい
目標管理(MBO)では、目標の達成率が人事評価に影響を与えます。そのため、達成率を高くすることを重視し、あえて低い目標を立て、安易に報酬を得ようとするケースがありえます。
また、自分の目標達成を優先するあまり、他の従業員との協調性が失われてしまう懸念があります。
目標設定がしにくい職種がある
事業部門や職種によっては、業務成果を数値化しにくく目標設定が難しいケースがあります。たとえば、人事や総務といった部門では、従業員による業務成果の数値化が困難です。
これらの事業部門では、「新入社員の育成に注力する」「スピーディに社内文書を作成する」といった目標設定が考えられますが、このような目標では達成条件の明確化が難しく、どうなったら目標達成とみなせるのかが分かりにくいと言えます。
上司の負担による手段の目的化
上司は自らの部下の目標達成率を定期的に測定し、フィードバックしなくてはなりません。そのため、自らに課せされたミッションの実施に加えて、部下の進捗チェックや面談などの手間が増えます。
そのため、業務負荷が高くなり負担に感じる人が出てくる懸念があります。結果的に、目標管理(MBO)の本来の目的と乖離し、ただ単にフィードバックすることが目的となってしまうリスクが生じえます。
過度な目標主義による従業員のモチベーション低下
目標達成を優先しすぎてしまうと、目標への影響度が低い業務を怠る従業員が出てくる可能性があります。また、自らの目標達成に固執してしまうことにより、他の従業員との協力体制が構築できなくなる懸念もあります。
その結果、従業員個人や事業部門・組織全体の士気を下げてしまうといった弊害を生み出すおそれがあります。
目標管理(MBO)の運用方法
ここでは、目標管理(MBO)の具体的な運用方法を解説します。それは、以下の4点です。
- 目標を設定する
- 目標達成のための手段を決定する
- 手段を実行する
- 評価のフィードバックを行う
それぞれの運用方法について、詳しく説明します。
目標を設定する
目標管理(MBO)でもっとも大切なことは、従業員一人ひとりが自ら目標設定を行うことにあります。設定される目標は、企業や事業部門のビジョンを十分に理解したうえで、設定していく必要があります。
企業や事業部門のビジョンと乖離した目標を設定してしまうと、業務効率化などの企業側が求めるメリットが享受できなくなるためです。
そのため、目標の設定にあたっては上司と従業員間でコミュニケーションを上手く取りながら、両者で合意することがポイントとなります。
目標達成のための手段を決定する
上司・従業員間の話し合いにより、目標の設定が明確になると次に目標達成のための計画を決定する必要があります。
目標のなかで設定された目標達成期日から逆算し、目標達成のためにやらなければならないタスク(手段)を洗い出して、計画を策定します。
策定された目標達成計画は、Excelやスプレッドシート、あるいは専用ツールで目標管理シートとして作成し、上司・従業員間で共有できるようにしておきましょう。
手段を実行する
従業員は、自らが策定・作成した目標達成計画にもとづいて、実際に業務を開始していきます。業務を行っていく上では、適宜目標管理シートの内容をチェックすることが求められます。日次・週次・月次などの期間に、定期的に目標管理シートで掲げた計画と乖離が発生していないか定期的に確認をしていきましょう。
目標達成計画に対して、遅延などが発生してしまったときには、リカバリー策を検討しましょう。その際、必要に応じて上司に相談してみると良いでしょう。
評価のフィードバックを行う
上司は、継続的に部下の目標達成率や目標達成にあたっての課題対応などを評価します。目標達成計画で策定した計画どおりに進捗が図れていない場合には、従業員に対して改善策や注意点などのフィードバックを行います。
目標達成に向けての評価・フィードバックは、できる限り短い周期で行ったほうが、目標達成が実現しやすいと言えます。
あわせて読みたい


スキル評価とは? 目的とメリット、スキルマップとルーブリック評価の違い、作成手順など
従業員が保有するスキルを可視化することには、企業にとってさまざまなメリットがあります。
スキルの可視化を効果的に行うには、従業員に対してスキル評価を行うとよいでしょう。しかし、実際にスキル評価に取り組もうにも、何から手をつけたらいいのか分からない場合もあります。
この記事では、スキル評価の概要やスキル評価を行う目的とメリット、スキル評価を行うためのツールなどを紹介します。
目標管理(MBO)のポイント
ここでは、目標管理(MBO)を進めていくにあたってのポイントを紹介します。それは、以下の4点です。
- 適切で具体的な目標を設定する
- ストレッチ目標を設定する
- 従業員の自主性を重んじる
- 定期的にフィードバックを行う
それぞれのポイントについて、さらに詳しくみていきましょう。
適切で具体的な目標を設定する
目標管理(MBO)の目標設定時には、「いつまでに」「どの程度」といった具体的な数値を盛り込むことが重要です。設定目標が具体的であればあるほど、目標達成に向けどのような行動をすべきかがクリアとなります。
また、具体的な目標であれば、目標をクリアしているか否かが明らかになるため、人事評価もしやすくなるでしょう。
ストレッチ目標を設定する
自分が上司の場合、部下のモチベーションややりがい、動機づけのためには難易度の設定が重要となります。
難易度は、従業員一人ひとりの業務能力や企業におけるポジションを踏まえて、少し頑張れば手が届きそうなレベルに設定すると良いでしょう。これらの目標は「ストレッチ目標」と呼ばれています。
ストレッチ目標を立てることによって、その目標を達成すると従業員のスキルアップが図れるとともに、従業員の自信にもつながるといった利点があります。
従業員の自主性を重んじる
目標管理(MBO)における目標設定時には、トップダウンで企業や事業部門の意見を押しつけるのではなく、従業員の自主性を尊重することが重要です。
トップダウンではなく、従業員自身で定めた目標に対しては、従業員のモチベーションが高まりやすく、また設定した目標を達成したときには従業員の自信にもつながるためです。
定期的にフィードバックを行う
目標管理(MBO)の達成状況の振り返りは、半期から1年に1度の実施など、比較的スパンが長めに設定されているケースが大半です。せっかく目標を設定したのに忘れてしまっていたり、早い段階で達成してしまい、成長機会を失ってしまったりする懸念があります。
そのため、目標管理(MBO)の実施と併せて、上司と従業員間で1on1を設定するなど、定期的に目標の振り返りや、目標達成度を確認する場を設けることが大切です。
企業と従業員を成長に導く「スキル管理」を徹底解説!
「Skillnote」でスキルベースの人材マネジメントを実現!
●スキル管理のメリット
●スキル管理がうまくいかない理由
●スキル管理を成功させる3つのポイント
→詳しくはこちらから
よくある質問
- 目標管理とはどういう意味ですか?
-
目標管理(MBO)とは、基本的に1年に1回従業員一人ひとりが業務目標を設定し、目標の達成状況やプロセスを管理するマネジメントの概念です。業務目標は、企業の事業方針と従業員自身が目指していきたい方向性をすり合わせることによって、設定していきます。
- MBOとKPIの違いは何ですか?
-
KPIとは、正式名称である「Key Performance Indicator」の頭文字を取った用語です。日本語では、「重要業績評価指標」と呼ばれ、具体的な目標達成度を測定するための指標を表します。
目標管理(MBO)やOKRがマネジメント手法であるのに対し、KPIは目標を定量的に評価するために使われています。目標管理(MBO)とは、そもそも利用目的が違います。