ナレッジ
2024.6.18
経済のグローバル化や市場競争の激化に伴い、製品ライフサイクルの管理の改善・最適化を促す「PLM」に注目が集まっています。
この記事では、PLMの概要と導入のメリット、注目される理由、代表的な機能について解説します。
PLMとは「Product Lifecycle Management」の略称で、日本語では「製品ライフサイクル管理」と呼ばれます。製品ライフサイクルとは、製品の企画から開発、製造、販売、保守、廃棄といった一連のプロセスのことです。
製品ライフサイクルを管理することで、業務効率化や生産性向上などの効果が期待できます。
PLMに取り組む最大の目的は、グローバル市場において自社の競争力を強化することです。現在、企業には、急速に変化する市場に対して高付加価値の製品を他社よりも早く投入することが求められています。
他社に先駆けた高性能製品を投入するうえで、PLMで製品のライフサイクル全体を可視化・共有することは非常に効果的です。製品の企画や開発に関わる部門は、共有された製品ライフサイクルに従いながら連携して業務を進めることができます。
PLMが広く注目を集める前には、「PDM(Product Data Management)」が主流でした。PDMとは、「製品情報管理システム」のことです。
PDMは、主に設計部品表(BOM)やCADデータ、図面といった設計に関する情報を一元管理するシステムのことです。設計情報をすぐに取り出せるため、急な状況変化の際にも関係者間で速やかに情報を共有・対応することができます。
さらに、業務ワークフローの可視化や認証取得のサポートにも活用され、業務効率化にも効果的でした。
しかし、近年では、外部環境の急激な変化により、ニーズが急速かつ多様に変化しています。そのため、設計情報の共有だけでは企業は競争力を確保できなくなっています。
このような状況を背景に、製品ライフサイクル全体に関する情報を共有する仕組みが求められるようになりました。製品ライフサイクル全体の情報を効率的に共有できるPLMシステムの導入が進んでいるのはこのような理由からです。
なお、PLMとPDMのそれぞれが管理する項目は以下です。
PDMで管理するデータ、生産設備、人員、流通、ユーザーサポートに関するデータなど
設計部品表(BOM)、CADデータ、図面、材料リスト、製造プロセス、評価結果など
PLMがなぜ注目されているのか、具体的な理由を紹介します。
製品開発競争のグローバル化により、市場競争が激化しています。市場で勝ち残っていくためには、高品質の製品を市場に投入する必要があります。そのため、近年では、求められるQCD(品質・コスト・納期)の水準が高くなり続けています。
求められる高水準のQCDに対応していくために、製品ライフサイクル全体を管理することが望ましいと言えます。このことからPLMへの注目度は増していると言えます。
関連記事:QCDSとは? QCDSの意味と各項目の詳細、改善方法について解説
インターネットやSNSの流行によりコミュニケーション量は飛躍的に増加しました。これにより消費者は多種多様な情報にアクセスしやすくなり、従来は考えられなかった新たなニーズが続々と生まれ、消費者ニーズは多様化しています。
ニーズの多様化に加えて、ニーズが変化する速度も速くなっています。しかし、事前にニーズの変化を予測して製品を都度投入していくことは困難です。そのため、あらかじめ多様なニーズに対応できる柔軟な体制を築いておく必要があります。
多様化するニーズへの対応のために、企画や調達も含んだ製品ライフサイクル全体を管理するPLMへの需要が高まっていると言えます。
PLMでは、多岐にわたる関係者にさまざまな情報を迅速かつ正確に共有するシステムの構築が必要です。情報の共有範囲は自社だけではなく取引先の関係者にまで及ぶ場合もあり、セキュリティ管理が欠かせません。
そのため、PLMには厳格なセキュリティ環境を実現するIT技術の活用が必要不可欠ですが、セキュリティに関する技術開発が進んだことでPLMの注目度が増し、導入企業が増えています。
関連記事:スマートファクトリーとは? 意味や目的、メリットを解説
幅広い用途に活用できるPLMには、さまざまな機能が搭載されています。代表的な機能を紹介します。
PLMでは、製品開発プロジェクト全体の情報を集約し、俯瞰して管理できるプロジェクト管理機能を搭載しています。
「プロジェクトは現在どのフェーズにあるのか」「次のマイルストーンは何か」「それまでに何をしなければならないか」「各課題の進捗はどうなっているか」といったプロジェクトを管理するうえで必要なことをPLM上で確認できます。
プロジェクトに関する情報を可視化することで、今後の予測や現在生じている課題の改善が可能です。
PLMでは、製品の品質管理に必要な情報を集約できます。
製品開発に用いた「原材料」「製造機器」「製造タイミング」などの情報や、製品開発におけるリスクマネジメントやコンプライアンスへの準拠情報など管理項目は多岐にわたります。
関連記事:品質保証と品質管理の違いとは? 仕事内容、連携、スキルアップ方法について解説
ポートフォリオ管理とは、「製品を開発するプロジェクトを管理する機能」のことです。PLMにおける主要な機能のひとつです。
主に製品開発を企画する部門が活用しており、プロジェクトごとのリソースを最適化できます。
PLMに情報を集約しておくことで、プロジェクト現場から離れた位置にいる経営層などの責任者が迅速な意思決定を行うことが可能となります。
PLMでは、PDMで管理していた製品設計や開発に関する情報も管理できます。設計の前提となる情報や設計過程の資料などに加えて、部品表(BOM)などの情報の管理も可能です。
設計・開発に関する管理業務の負荷を低減することで、設計者がよりフォーカスすべき開発業務に割く時間の創出へとつながります。
PLMでは、CADデータの管理も可能です。CADソフトウェアや周辺アプリケーションと連携対応しているため、データ形式の変換や関連データとの紐づけもスムーズに行えます。
CADデータは、設計部門だけでなくさまざまな部門で共有できる状態にしておく必要があります。いつでも共有できる状態にしておくことで業務効率化だけでなく、新たなアイディアの創出にもつながります。
PLMの導入には、以下のメリットがあります。
PLMは、製品に関わる全ての部門が製品ライフサイクル全体の情報にアクセスできるようにします。PLMにより、関係者間・部門間で必要なスムーズに情報を共有でき、判断の質を高め、意思決定を最適化することができます。
例えば、突発的なトラブルが発生した場合などでは、必要な情報にスムーズにアクセスできることが判断の質を高め、トラブルが及ぼす影響を最小限にとどめることができます。
PLMによって製品ライフサイクルにおける各種フェーズの情報同士を結び付けることで、製品品質の向上や安定化を実現します。例えば、設計データとテスト結果を一元化することも可能です。
また、品質問題が発生した際には、PLMに集約された情報を基に状況判断を行うことで、速やかな問題解決や後工程へのケアを実現し、再発防止へもつなげます。
PLMで製品設計の前提条件や設計過程、原材料や生産・製造プロセスに関する情報を管理することで、作業時間の削減や在庫の最適化を行うことが可能となります。
これは、製品品質を向上・安定化させ、不良品率とクレームの低減にもつながります。不良品の発生には、クレームなどへ対応するためのコストが生じます。そのため、製品品質の向上によるコスト削減は、PLMの効果的な活用方法と言えます。
PLMで製品ライフサイクルに関する情報が適切に管理されていれば、顧客からの問い合わせにも速やかに回答できます。例えば、PLM導入前なら設計担当者に確認が必要だった情報を窓口担当者が迅速に回答できます。迅速な対応は、顧客からもいい評価を得られるでしょう。
また、高品質の製品を低価格で安定的に提供できれば、顧客からの信頼獲得へとつながります。
PLMで製品ライフサイクル全体を管理することで、開発以降のフェーズである製品の使われ方に関する情報も得られるため、開発へ適切なフィードバックが可能です。
例えば、「顧客の使われ方を参考にした製品コンセプトの修正」「重複する設計情報の共有・流用による開発工数の削減」など、効率的に活用することができます。
また、PLMを活用することで関係者間の情報共有速度を高め、製品開発期間の短縮も実現できます。
PLMを導入する場合には、以下のような点に気を付ける必要があります。
PLMを導入する際には解決したい課題を明確にしておきましょう。
「PLMを導入することで何を実現したいのか」「導入により何を解決したいのか」といったことを事前に明確にした上で、導入の判断・システムの選定・運用方法の構築を行うことがPLMを効果的に活用していくコツです。
PLMは、製品開発や生産に関わる部門だけでなく幅広い部門で情報を共有できる、多種多様な機能を搭載した大規模なシステムです。
そのため最初から「すべての機能を」「関係するすべての部門で使う」ことを目指すと、せっかく高いコストをかけたのにうまく活用しきれずに終わってしまう可能性があります。
そのため、最初はスモールスタートから始めることをおすすめします。例えば、「優先度の高い機能を部門導入 → 効果検証や業務プロセスを確立 → 適用範囲を居所に拡大」といったように、運用定着を視野に入れてスタート時点の活用方法を工夫するといいでしょう。
PLMは大規模なシステムです。そのため、導入後にどの部門で管理・運用を行っていくかはあらかじめ決めておきましょう。
また、実際に使用する機能の選定など、運用に関する取り決めも随時行えるように運用体制をきちんと構築しておくことが望ましいと言えます。
多くの企業では、PLMを導入する前に何らかのシステムを導入・運用していると思います。
そのため、現行システムとの連携や情報共有をスムーズに行えるかどうかは、PLM導入に際する重要な観点となります。また、一部機能が重複している場合、既存システムの廃止や機能による使い分けを明確に決めておく必要があります。
「技術伝承」をシステム化するなら「Skillnote」!
●スキルデータの活用で「技術伝承」の解決策がわかる
●自社に最適化したスキルマップがかんたんに作れる
●「品質向上」に成功した事例を大公開
ナレッジ
2024.10.30
ナレッジ
2024.6.18
ナレッジ
2024.10.29
ナレッジ
2024.4.18
ナレッジ
2024.6.18
ナレッジ
2024.4.19