品質トラブルの要因である「従業員教育の不足」。これを解決する鍵は、スキルデータの戦略的活用にあります。上長の記憶頼りの人材配置や休眠スキルの見落としから脱却し、認定基準に基づいた確実な品質保証を実現しませんか? 本記事では、スキル認定から日常運用、100種類超のスキル・資格管理事例まで、品質強化に直結するスキルデータの活用法を解説します。
目次
製造業で品質維持・強化が必要な理由
なぜ製造業で品質の維持・強化が必要なのでしょうか? これを説明するために、まずは製造業の製品事故データを見てみましょう。
経済産業省による2021年の報告によると、国内の重大製品事故は1,042件に上りました。また、データを経年的に見ると2012年から16年頃まで減少傾向でしたが、それ以降は増加しています。全ての事故が品質関連というわけではないものの、2007年から2021年までの分析において、製品起因の事故が29%を占めていることには十分注目してもよいでしょう。
これらのデータから分かるのは、年間約300件の重大事故が製品の品質不足により発生している、ということです。重大事故に至らない軽微な事故や、事故発生前のリコール、出荷前に発見される製品不具合なども含めると、品質トラブルの総数はさらに多くなることが予想されます。
品質トラブルの原因について、経済産業省の「2019年版ものづくり白書」が興味深いデータを示しています。この調査で最も多かった回答は「従業員教育の不足」(62.2%)。これは、2番目に高い「従来慣行への依存、馴れ合い」(47%)と比べても突出して高い数字です。ここで言う「従業員教育の不足」とは、「必要なスキルを持たない従業員が作業を行っている状況」を意味しています。品質トラブルを防ぐには、従業員のスキルを適切に認定することが非常に重要であることが分かります。
同様の声は実際の企業からも聞かれるものです。ある製造部では品質に不具合が見つかれば手戻りが大きくなるため、スキルデータに基づいた管理を行い、必要なスキルを持つ従業員のみが作業を行えるようにしています。また、別の会社の保全部では、社内資格制度を設け、品質教育の受講や業務知識、公的資格の有無を総合的に判断して業務を割り当てています。
製造業では、上長の記憶に頼って従業員が過去に経験したことのある業務に人材を配置することが慣習的に行われてきました。しかし、実際に配置してみると、経年により腕が鈍っていたり、そもそものスキル・経験不足が露呈したりすることも決して少なくはありませんでした。そして、こうした配置ミスは当然、品質低下を招きトラブルへとつながります。これらのミスとトラブルを避けるためには、作業スキルの認定基準を設定し、作業時の資格保有判定方法を明確にしておく必要があります。時間経過によるスキルの失効にも十分な注意を払うべきです。
品質維持・強化におけるスキルデータの活用場面
スキルデータは、各作業工程に必要なスキルとその習得条件を明確にするのに活用できます。
たとえば、「『精密加工』のスキル認定」の場合を例に考えてみましょう。この場合には、「2年ごとの技術研修受講と実技試験合格を条件とする」ことを認定条件として設定して、この条件をクリアできればスキルとして認定します。このようにスキルの認定条件を詳細に設定することで、教育記録から誰が更新の必要な教育を修了していて「精密加工」を担当する資格を持っているかを判断できるようになります。また、認定期限が近づいている従業員に対しては、システム上で注意喚起を行い、更新手続きを促すことができます。
日々の運用においては、作業開始時や担当者交代時にスキルデータをチェックして、必要なスキルを持つ従業員がきちんと配置されているかを確認します。もし適切なスキルを持たない従業員が配置されていた場合には、速やかに是正措置を取り、代替の有資格者を配置します。
スキルデータを活用した品質維持・強化の実践事例
抜け漏れのない作業スキル・資格の管理を実現
従業員数500人規模の電子機器メーカーの製造部の事例を紹介します。
この企業では、そのほとんどに有効期限と更新教育が設定されている100種類超の工程スキルと数十種類の社内認定資格を管理していたため、年度初めの計画立案や年度末の確認に膨大な時間がかかっていました。そのため、教育確認の抜け漏れから更新教育を受けていない従業員が製造や検査に携わってしまうミスが生じる懸念がありました。つまり、品質低下のリスクが潜在していたのです。
この問題を解決するため、公的資格と社内認定資格、そしてそれらに関連する教育の修了情報をスキル管理システムで一元管理することにしました。これにより資格の有効期限を表示し、期限切れが近づくと自動的に通知を送る仕組みを構築できました。
この企業では、スキルマネジメントシステムの活用により管理業務の負担が約半分に軽減されたと言います。また、品質事故や不良品による手戻りも減少したそう。しかし何より特筆すべきは、各部門で年間数十件発生していた更新教育の漏れや遅延がゼロになったことです。スキルマネジメントシステムを使った教育・資格管理によって、品質トラブルを防止した好例と言えるでしょう。
スキルデータの活用による作業スキルの確保・向上
製造業において、保有しているにもかかわらず実際には活用されていない作業スキル、いわゆる「休眠スキル」の問題は意外に深刻です。「休眠スキル」の典型例として「はんだ付け」があります。
「休眠スキル」問題に対処するため、ある企業では興味深い取り組みを行っています。この企業では、2年ごとに更新教育を実施し、実技演習をとおして技能の維持を確認しているのです。「はんだ付け」のような繊細な技能は、定期的な実践がなければ衰えてしまうスキルであり、このような技能維持の取り組みは大変効果的です。もちろん定期的なスキルチェックは、「はんだ付け」以外のスキルにも応用すべきでしょう。確実に技術・技能伝承へとつながっていきます。
一方で、技術革新に伴う新たな課題も浮上しています。新しい技術や機器の導入により、新たな作業スキルが要求されるケースが増えているのです。医療機器分野では、検査機器の更新に伴い作業手順が変更され、資格の再取得が必要になることがあります。このような状況では、現在認定されているスキルが今後も有効であるか常に検証する必要があります。その際に必要となるのが蓄積された「スキルデータ」です。スキルデータを活用して継続的にスキルの有効性を評価していくことが、これからの製造業には求められているのです。
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