スキルマネジメントで効率化!ISO9001が求めるQMS運用

スキルマネジメントで効率化!ISO9001が求めるQMS運用
製造業の現場で欠かせない品質マネジメントシステム(QMS)の運用において、ISO9001が求める「力量管理」は重要な要素の1つです。従来は紙や表計算ソフトで管理していたこのプロセスですが、作業負荷や監査対応の煩雑さといった課題が多くの企業を悩ませてきました。この課題を解決する手段として、スキルマネジメントシステムの活用が注目されています。本記事では、システム導入による具体的な改善事例を通じて、デジタル時代におけるQMS運用の最適解を探ります。
目次

QMS力量管理の代表的なISO9001の力量管理について

製造業の現場では、従来からスキルマップを用いて従業員のスキルを点数化する「星取り管理」を行ってきました。これは、ISO9001の要求事項である力量管理に基づいています。

ISO9001における品質マネジメントシステムの要求事項において力量は「意図した結果を達成するための知識と技能の適用能力」と定義されています。この力量を満たすための力量管理として、組織には以下のことが求められています。

・品質マネジメントシステムのパフォーマンスおよび有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(または人々)に必要な力量を明確にすること

・適切な教育や訓練を通じてそれを確保すること

・必要に応じて力量を身につけるための処置を取り、その有効性を評価すること

これらに加えて、力量の証拠として文書化した情報を保持することも求められます。

ISO9001の要求事項に準拠するため、多くの企業がスキルマップを作成し、従業員のスキル保有状況を管理しています。また、不足しているスキルに対しては、教育訓練を計画し実行するという運用が広く普及しています。これらの取り組みをしっかりと運用し、適切に記録に残すことで、力量に関する「要求事項」を満たすことができます。これによって認証を受けた企業や事業所が、要求される品質水準を担保するための仕組みを持っていることを証明します。

しかし、ISO9001の求める力量管理の運用に課題を抱えている事業者が少なくないのも事実です。その理由を以下で解説します。

監査に伴う作業負担が大きく、漏れや不備が発生

多くの現場では力量管理をExcelなどの表計算ソフトや紙ベースで実施していますが、その運用方法には多くの課題があります。表計算ソフトや紙ベースでの作業には非常に多くの工数がかかり、データの不整合による不備も生じやすいのです。

ある製造業企業では、ISO監査のための力量管理が形骸化し、すでに使用していない装置のスキル項目が残ったままになっているケースもあるそうです。また、同社の品質保証部門では、教育訓練記録の管理に大変な労力を要し、監査時に不備を指摘されるリスクに悩まされています。従業員のスキルの確認や、膨大な教育訓練記録など各種データの整合性の維持はもちろん大切ですが、Excelや紙ベースでの運用ではスキルと教育の紐付けや帳票の提出がどうしても難しくなるのです。

スキルマネジメントシステムによるQMS力量管理の運用や監査対応の業務負荷を軽減

スキルマネジメントシステムを用いたQMS力量管理や監査対応に関する実践方法を紹介します。スキルの項目別に、関連する全てのデータを紐づけて一元化し、矛盾のない最新のデータを閲覧できるようにします。要するに、スキルを持つ従業員、そのスキルレベル、習得日や有効期限、将来の目標レベル、育成計画とその実施記録などをスキル項目の下に名寄せし、相互に参照できるようにするのです。

具体例で考えてみましょう。たとえば、若手のAさんが「素材切断」のスキルレベル3を持っていて、ベテランのBさんが特定のカリキュラムで指導し、上司のCさんが5月に認定していたとします。スキルマネジメントシステムを使えば、この全てが一目で分かるように管理できるのです。また、確実にスキルデータを蓄積できることで、不適切なレベル操作も抑止しやすくなります。

データの散在や古いデータの残存も防げます。正確かつ最新のデータを基に帳票を生成すれば、QMS力量管理や監査対応の負担が減り、他の業務への人員配置が容易になります。監査時には即座に帳票を提出でき、事故・トラブル発生時にも、スキル認定者をトラッキングして事実確認し、迅速に対応策を練ることができます。

システムを活用したQMS力量管理のスキルマネジメントの実践事例

教育プロセスをシステムに置き換え、監査指摘をゼロに

QMS力量管理の効率化と徹底の事例として、ある素材メーカーの取り組みを紹介します。この企業は、ISO9001などに準拠した教育プロセス管理をスキルマネジメントシステムに実装することで、監査指摘をゼロに導きました。

以前、この企業は監査時に教育計画の未実行や教育結果の記録不備を指摘されていましたが、従来のExcelを使った手法では対応が難しく、改善策を模索していました。検討の結果、監査基準を満たす教育プロセスをスキルマネジメントシステム上で実現し、課ごとのスキルマップを作成しました。各課長が毎月スキルマップの記録を作成し、総務部が確認・承認する仕組みを整えました。不適切な運用があれば、総務部が改善を依頼し、サポートも行います。育成に関しては、作業リーダーが計画を作成し課長が承認、OJTリーダーが実施する流れに統一しました。結果報告は自動的に記録され、承認プロセスを経ます。

この施策の最大の効果は、システム上で作成した記録をそのまま監査に使えるようになったことです。スキルマネジメントシステムの実装後は、ISO9001などの教育管理分野での監査指摘がゼロになりました。これにより、監査指摘への対応に苦心する必要がなくなりました。

スキルデータの横展開により大幅な工数削減を実現

2つ目の事例として紹介するのは、一部の部署でスキルマネジメントシステムを実装し、運用モデルを検証した上で、事業所全体に拡大した機械系メーカーの取り組みです。 

1つ目の事例と同様、同社においてもISO準拠のための業務が煩雑になっており、毎年多大な工数が発生していました。具体的には、従業員ごとの保有スキルの棚卸しと教育訓練計画の策定、受講状況の確認、教育訓練記録の作成・承認、監査対応といった作業が挙げられます。四半期ごとに教育訓練計画と教育の受講状況、スキルの更新状況の整合性を確認していました。こうした工数を事業所全体で集計すると、実に300人日を超えていたとのことです。

工数削減を図るため、同社ではまず数カ所の部署で試験的にスキルマネジメントシステムを導入し、従業員の保有スキルと教育訓練計画・記録の紐づけを始めました。教育の受講状況が、部署ごとのスキルマップで確認でき、常に最新の保有スキルや記録を参照できるようにしました。そして、教育訓練計画上でどのような項目を管理するのか、誰が保有スキルを評価・承認するのかなど、スキルデータの運用方法を事細かに検討しながら、運用モデルの構築を進めたのです。その後、事業所に数十ある全ての部署を巻き込み、運用モデルを適用しました。

結果として、事業所全体でQMS力量管理に関わる工数を7割ほど削減できました。今後は、スキルデータ運用を効率的に進められるようになったことから、育成や配置といった他の業務にもスキルデータを積極的に活用できるよう、新たな取り組みを進めています。

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