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タートル図とは? ISO9001におけるプロセスアプローチとの関係、目的、記入する6要素

タートル図とは?

製造業では、1つの製品を製造するためにさまざまな業務プロセスを経る必要があります。複数のプロセスが複雑に入り組んだ製造工程において、高品質な商品製造と生産効率の向上を両立させるためには、各プロセス自体の中身とプロセス同士の関係を可視化して管理する必要があります。

製造業を中心にタートル図が用いられるのは、各々のプロセスのインプット・アウトプットや、そのプロセスを実行する際に必要となる資源などを明確にするためです。

この記事では、タートル図の概要や必要要素、プロセスアプローチ、作成時のポイントを紹介します。

ISO力量管理

タートル図とは?

タートル図とは、プロセスアプローチに用いられる業務プロセスの可視化手法のことです。

タートル図は、製品やサービスの生産活動における全工程(全プロセス)を可視化するために、製造業を中心に導入されています。各プロセスに必要な要素を記入したタートル図は、上から見た際の亀の甲羅のような形でまとめられることから、タートル図という名称が付けられています。

タートル図は、主に製造業の生産活動へ適用されていますが、複雑なプロセスを明確に定義したい場合であれば生産活動以外においても効果的であるといえます。

プロセスアプローチとは?

そもそもプロセスアプローチとは、ISO(国際標準化機構)が規定しているISO9001の中心となる概念で、各業務プロセスが適切に機能しているかどうかを分析、管理する手法のことです。

全体のプロセスの中で、「各プロセスをどのような順番で配置すればいいのか」「現在のプロセスの流れにおいてボトルネックとなっているのはどのプロセスなのか」「どのプロセスを改善すればいいのか」などを最適化する際に活用できます。

細かく分解したプロセスそれぞれを管理することで、結合した全体プロセスも効率的に改善することが可能となります。

関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説

ISO9001におけるプロセスアプローチ

ISO9001は、品質マネジメントに関する国際認証です。現在はISO9001の認証を取得していないと取引先の候補にすらされない場合もあります。サービスや製品の品質の高さを証明するために、取引先の条件としてISO9001の認証取得を必須にしている企業が多いことが要因です。

なお、タートル図を活用するプロセスアプローチは品質マネジメントの7原則の1つであり、ISO9001における中心的な要素です。プロセスアプローチを適切に行っていることの証明ができなければISO9001の認証を取得することは難しいといえるでしょう。認証取得のためにはプロセスアプローチが必須の取り組みである、ということです。

ISO9001に記載されている品質マネジメントの7原則について、簡単に紹介します。

顧客重視

顧客重視とは、顧客(利害関係者)をマネジメントシステムの一部として取り組み、顧客の要求と期待に応えることを意味します。顧客の言いなりになるだけでなく、顧客の期待を超えるために提案を行います。

リーダーシップ

品質マネジメントシステムの構築や改善を行い、継続する責任は組織のリーダーである経営者が負います。品質マネジメントを適切に行うためにリーダーが道すじを示すなどのリーダーシップを発揮する必要があります。

人々の積極的な参加

品質マネジメントは、リーダーだけでは成立しません。組織の構成員がそれぞれ、何ができるかを考え実行していくことが重要です。リーダーは構成員が動きやすいように役割や責任を明確にします。

プロセスアプローチ

ISO9001では、仕事単位をプロセスと定義します。仕事全体の流れをプロセスに分解し、品質を高めるためにそれぞれのプロセスが品質向上に繋がるように考えることが重要です。

改善

顧客の期待に応え続けるためには、品質向上を実現するために品質マネジメントシステムの改善を継続する必要があります。課題解決だけでなく、さらによくする方法を検討することが重要です。

客観的事実に基づく意思決定

組織が判断をする際には、データや情報の分析結果などの客観的な事実に基づいて意思決定することが重要です。また、データを蓄積していくことで目標の実現に近づきます。

関係性管理

組織と利害関係者は対等であり、関係者すべてが高い目標を実現するために取り組む必要があります。上下なくそれぞれの利益を追及することで、顧客満足の維持が可能です。

プロセスアプローチはISO9001以外の認証でも必要

プロセスアプローチはISO9001の中心的な要素とされていますが、他の認証でも必要とされる場合があります。例えば、ISO14001やIATF16949、ISMS/ISO27001でも必要とされ、ISO9001の認証取得時にプロセスアプローチへの取り組みを有効に活用できます。

関連記事:ISO9001とISO14001の要求事項の比較や違い、統合マニュアルについて解説

関連記事:【解説】IATF16949とは?ISO9001との違いと要求事項に沿ったスキルマップの活用

タートル図を作成する目的

プロセスアプローチに用いられるタートル図は、以下のような目的で作成されます。

プロセスアプローチの整備

ISO9001に必要不可欠なプロセスアプローチを適切に行うためには、各プロセスの管理に必要な要素を明確にする必要があります。タートル図で定義されている6要素はどのプロセスでも必要とされる情報のため、タートル図を作成することで各要素を整理できます。

また、製品の製造や開発の流れ全体を表現する際には、プロセスごとのタートル図を組み合わせるといいでしょう。タートル図をうまく活用することで、各プロセスの内部だけでなく全体の流れも整備しやすくなります。

生産(業務)プロセスの可視化

タートル図をプロセスごとに作成しプロセスの可視化を行えば、関係者との情報共有が容易になります。

また、何か問題が生じた場合でも、タートル図を確認することで問題が生じているプロセスの特定が可能です。さらに、問題が生じているプロセスのタートル図を用いれば、課題解決に向けて抜け漏れのない検討が可能となります。

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タートル図に記入する6要素

タートル図に記載する6つの要素について、それぞれの具体例も含めて紹介します。

インプットとアウトプット以外の4つの要素は、4Mとしても知られている要素です。プロセスごとに具体的な記載内容は異なる可能性が高いため、大枠の考え方を把握しておきましょう。

製造業・品質管理の4Mとは? 5M+1Mや6Mとの違い、変更管理、効果の出し方について解説

インプット

インプットの欄には、前のプロセスからの入力を記載します。入力の種類はさまざまで、例えば該当プロセスで必要となる原材料や部品などに加え、作業手順や生産予定数などの情報も、インプットとして必要なものです。

前後のプロセスとの関係から考えると、インプットは該当プロセスよりも前のプロセスにおけるアウトプットであるといえます。また、同時に、該当プロセスより後のプロセスからの要求事項であるとも言えます。

アウトプット

アウトプットの欄には、該当プロセスにおける成果を記載します。

後のプロセスのインプットとなるため、アウトプットは該当プロセスへの要求事項を満たしていることが重要です。

例えば、該当プロセスでの作業手順書に基づいた組み立て済みの部品や、その製品の組み立てにおける要求事項を証明する品質データなどが、アウトプットに該当します。

人(Man)

業務プロセスを進めるために人は必要不可欠な要素であり、各プロセスにどのような人材が関わるかを示しています。複数の人材が関わる場合には、関係者すべてを記載する必要があります。

自動化されているプロセスの場合においても、実務担当者だけでなく責任者について明確に記載する必要があるため、記載不要になることはありません。具体的には、各人材がどのような役割を担うかを記載します。

装置(Machine)

タートル図における装置は、生産設備だけでなく各プロセスで用いる治具や工具など必要なものをすべて記載する必要があります。

該当プロセスで必要となる装置を明確に記載することで、人によって使用する装置がばらつくこともなく品質の安定化につながります。

具体的な記載内容には、使用する装置の特性や機種、工具、電気や水道などのインフラ設備について記載する場合もあるため、幅広く記載しておくことが重要です。

方法(Method)

各プロセスにおいて、「どのような技術を用い、どのような手段で作業を行うのか」は、具体的な基準を示す必要があります。具体的には、作業手順書や検査基準書、作業条件表などを対象のプロセスごとに作成します。

ただし、実際の運用において手順書や作業条件表などは、プロセスに作成するのではなく、他のプロセスと共通の資料にまとめる場合もあります。

測定(Measure)

測定では、該当プロセスにおける成果やアウトプットを評価する際の基準を示します。プロセスに適切なアウトプットを出す必要があるため、その評価基準となる測定要素は重要です。

また、「適切にプロセスが実施されているか」「規定された作業内容通りに作業が行われているか」といったことも確認する必要があります。具体的な記載項目としては、生産目標に対する生産実績数や設備の稼働率などが挙げられます。

タートル図を作成する際のポイント

タートル図を作成する際には、以下のポイントを押さえておくことが望ましいです。

フォーマットやテンプレートに沿って作成する

タートル図は、プロセスごとに作成するだけでなくそれらを複数組み合わせて全体を管理する際にも使用します。そのため、タートル図をプロセスごとに作成する前には必ず共通のフォーマットやテンプレートを準備しておきましょう。

バラバラのフォーマットで作成してしまうと、インプットとアウトプットの関係を紐づけることが難しくなり、タートル図を活かしきれなくなります。

評価基準・評価指標を準備する

プロセスアプローチでは各プロセスにおける成果・アウトプットが適切に出されることが重要です。

そこで、タートル図の作成においては、プロセス単体ではなくプロセスを繋ぎ合わせた全体で評価基準・評価指標を明確にしておく必要があります。組織全体の目的、それを達成するための指標や基準という流れで作成を進め、作成した基準や指標は定期的に確認することが重要です。

前工程・後工程と調整を行う

タートル図を各プロセスの担当者がそれぞれ勝手に作成すると、前後のプロセスを考慮せずに作成してしまう場合があります。あるプロセスのアウトプットは次のプロセスのインプットとなるため、前後のプロセスで整合性が取れているか確認することは必要不可欠です。

特に、前後のプロセスの担当が別組織になる場合には、それぞれの都合で作成するのではなく時間をかけてきちんと調整を行ってから作成することが大変重要です。

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