コンセプチュアルスキルとは? 高め方、15の構成要素、重要な理由を解説

コンセプチュアルスキルとは?
管理職に求められるスキルには、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」そして、「コンセプチュアルスキル」の3つがあります。テクニカルスキルとは、ある職務を遂行するにあたって必要な知識や技術を指します。ヒューマンスキルとは、良好な人間関係を構築し、スムーズなコミュニケーションを行うスキルを表しています。
テクニカルスキル・ヒューマンスキルについては、耳にしたことがある方も多いかと思いますが、コンセプチュアルスキルという言葉は、そのスキル内容をご存知ない方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、コンセプチュアルスキルについて具体的なスキル内容・スキルを構成する要素・スキルアップすることによるメリットおよびスキルアップ方法について詳しく解説します。
本記事を読めば、管理職にとってコンセプチュアルスキルが必要となる理由やスキルアップ方法が分かりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次

コンセプチュアルスキルとは?

まずは、コンセプチュアルスキルとは、どのようなスキルであるのかについて、紹介します。

経営者・管理者・監督者に求められるスキルの1つ

経営者層(トップマネジメント)・管理者層(ミドルマネジメント)・監督者層(ロワーマネジメント)に求められるスキルの1つであり、「知識や情報を活用し、複雑な課題を理論的・創造的に考えて、課題の本質を捉える能力」をコンセプチュアルスキルと呼びます。概念化能力とも呼ばれることがあります。
企業競争力の激化やグローバル化・少子高齢化に伴う人手不足などによって、企業が抱える課題は複雑化しています。これらの課題を解決するためには、その課題の本質を的確に把握し、対策を打つことが重要です。
そのため、あらゆる職業において特に管理職の方には、業務を遂行する際に必要不可欠なスキルといえるでしょう。

コンセプチュアルスキルのモデル①(カッツモデル)

コンセプチュアルスキルには2種類のモデルがあります。その一つがカッツモデルです。カッツモデルは1950年代にアメリカの経営学者ロバート・L・カッツ氏が提唱したモデルです。
管理職層にとって必要とされる能力を、階層(役職)別・スキル別に分類したモデルであり、この中でコンセプチュアルスキルの定義がなされ、役職が高いほど必要とされるスキルであると提唱しました。

コンセプチュアルスキルのモデル②(ドラッガーモデル)

オーストリア人の経営学者であり、アメリカで活躍したピーター・ドラッガー氏が、カッツモデルをベースに提唱したモデルがドラッガーモデルです。カッツモデルとドラッガーモデルの違いは、コンセプチュアルスキルが求められる階層(役職)の範囲にあります。
カッツモデルは、役職が高い階層ほどコンセプチュアルスキルが必要と定義されていましたが、ドラッガーモデルでは現場レベルの社員を含む、どの役職であってもコンセプチュアルスキルが必要であると提唱しています。
グローバル化やITの進歩によって「VUCA(ブーカ)時代」(詳細は下章で解説)の到来により、現代のビジネス環境においては、ドラッガーモデルの方がカッツモデルよりふさわしいと言われています。

コンセプチュアルスキルが重要な理由

VUCA(ブーカ)時代とは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:あいまい性」の頭文字をとった造語です。グローバル化やITの進歩によって、先行きが不透明かつ複雑であり、目まぐるしく変動していく時代を指しています。
VUCA(ブーカ)時代には、従来型のトップダウン方式による指揮命令系統では、企業を取り巻く環境変化のスピードに置いていかれてしまうことが多くなります。そのため、組織全体としての柔軟性と判断の迅速さが求められます。
つまり、現場レベルの社員から経営層まで、あらゆる階層の社員が自主性を持って判断・行動する必要が生じ、ますます全ての階層の社員にとってコンセプチュアルスキルが重要となっています。

コンセプチュアルスキルを構成する15の要素

コンセプチュアルスキルは、以下に示すように15の要素によって成り立っています。ここでは、15の要素について詳しく解説します。

ロジカルシンキング

ロジカルシンキングとは、論理的な思考能力のことです。つまり、物事を主観的ではなく、客観的かつ論理的に考えるとともに、その考えによって導かれた解決策を分かりやすく、他の人に伝えるスキルのことです。

ラテラルシンキング

固定概念や既存の枠組みに囚われずに、自由な発想により物事を考えるスキルを、ラテラルシンキングと呼びます。現代社会において企業を取り巻く課題には、従来のアプローチでは解決できないものもあります。そのため、ラテラルシンキングが重要視されています。
なお、ラテラルシンキングは「水平思考」という言葉で表されることもあります。

多面的視野

現代の企業を取り巻く課題は複雑化しており、ある一方向からの視点で物事を見ても解決しない場合があります。そのため、目の前の物事にのみ囚われずに、物事をさまざまな角度から見ていく、多面的視野というスキルが重要になります。

受容性

先ほども触れたように、現代の企業を取り巻く課題の解決には、固定概念や既存の枠組みに囚われていては、解決しない課題もあります。
そのため、今まで発想していなかった新しい考えを拒絶せずに受け入れていくスキル、つまり「受容性」を身に付けていく必要があります。

柔軟性

環境の変化によって、複雑化している課題を解決するためには、過去の経験則や現在の状況に縛られていては、有効な解決策を導き出すことが難しいと言えます。そのため、経験則や現在の状況に縛られずに、柔軟に対応できるスキルが求められています。

知的好奇心

従来のアプローチでの課題解決が難しくなっているため、課題解決のためには自由な発想が必要です。自由な発想を生み出すためには、新しいものを拒絶せずに楽しみながら取り入れるスキルが必要です。そのため、知的好奇心が旺盛であることが重要です。

探究心

知的好奇心と似たようなスキルではありますが、探究心もコンセプチュアルスキルの要素の一つです。具体的には、物事について深く突き詰めて深い知識を得たり、原因を解明しようとしたりする気持ちを持つことが求められます。

俯瞰力

ある課題についての解決策を検討するにあたり、物事や状況を局所的に見ていく方法では、解決策が導き出されないこともあります。そういった場合には、物事や状況・思考を全体的に眺めることができるスキル、つまり「俯瞰力」が必要となります。

その他

ここまで、コンセプチュアルスキルを構成する15の要素の中で、とくに重要である8要素を紹介してきました。コンセプチュアルスキルを構成する要素には、他に「問題解決思考」「仮説思考」「クリティカルシンキング」「戦略的思考」「ビジョン構想力」「先見性」「応用力」の7要素があります。それぞれのスキルの概要については、抑えておくことをおすすめします。

コンセプチュアルスキルが高い人の特徴

ここまでで、コンセプチュアルスキルの重要性はご理解されたかと思います。次に、コンセプチュアルスキルが高い人の3つの特徴を解説していきます。

話が分かりやすい・要約するのが上手い

ロジカルシンキングが得意であるため、聞き手の納得を得やすい筋道だった説明が可能です。そのため、話が分かりやすいという特徴があります。
また、物事の本質を見抜くスキルが秀でているため、複雑な話であっても要約するのが上手いというメリットもあります。

仕事の進め方が効率的

業務を遂行していく中で直面する、さまざまな課題についてその本質を素早く見抜くことを得意としているため、課題解決をするにあたってムダな時間が少なくてすみます。そのため、効率的に仕事を遂行していくことが可能です。

アイデアが豊富

コンセプチュアルスキルを保有している人は、ラテラルシンキング・多面的視野・柔軟性・知的好奇心といったスキルが高いです。そのため、ある課題に対する解決策検討のベースとなるアイデアを豊富に生み出すことができるといった特徴もあります。

コンセプチュアルスキルを向上させるメリット

次に、コンセプチュアルスキルを向上させることによる、4つのメリットを紹介します。

企業ビジョンや経営方針の浸透

コンセプチュアルスキルが高い人は、俯瞰力や多面的視野、ロジカルシンキングなどのスキルがあります。言い換えれば、企業の今後の方向性やあり方の全体像を把握できる人材と言えます。
このように、コンセプチュアルスキルが高い人が多くなると、企業内の組織全体に企業理念や経営方針が浸透しやすくなるといったメリットがあります。

生産性向上

管理職層にコンセプチュアルスキルが身に付いていると、現場レベルで業務の意思決定や課題解決が下しやすくなります。現場レベルで即座に意思決定や課題解決策の検討・実行ができるため、生産性の向上が期待できます。

アイデアやイノベーションが生まれやすくなる

コンセプチュアルスキルが身に付いた人は、クリティカルシンキング(物事を批判的に捉え、判断する思考方法)やラテラルシンキング・柔軟性といったスキルを保有しています。
そのため、従来の製品やサービスには囚われずに、新しいアイデアを生み出すことができます。コンセプチュアルスキルの保有者が多ければ多いほど、イノベーションの機会が増えます。

環境変化に適応しやすくなる

コンセプチュアルスキルを持ち合わせた人材は、外部環境の変化に対しても柔軟に向き合うことが得意です。
そのため、何か環境変化に見舞われても、その時点で自社が直面している現状を客観的に捉えて分析し、課題を適切に抽出できます。スピーディーな課題解決が可能なため、環境変化に適応しやすいと言えます。

コンセプチュアルスキルを高める方法

次に、コンセプチュアルスキルを高めるための4つの方法を紹介します。

物事を抽象化させて考える

何か課題が発生したときに、具体例のままで解決策を検討してしまうと、その他の事象との共通点を見つけ出すことが困難となります。また、今後の課題解決策を検討するにあたって、成功例や失敗例として活用することが難しくなります。
そのため、具体的な事象のままではなく、物事を抽象化して捉えるようにする練習が必要不可欠です。

MECEを意識する

「MECE」とは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(互いに排他的かつ網羅的)の頭文字を取った略語です。つまり、対応すべき課題に漏れや被りがない状態を指します。
課題解決するためには、ムダなくその課題の本質的な事柄をつかむことが重要であることから、MECEを意識することが大切です。

物事の本質と定義を明確化させる

解決すべき課題内容について、いくつかの項目から共通性を見出したときには、その共通性から課題の本質及び定義を明確化するようにしましょう。
たとえば、成功パターンと失敗パターンのそれぞれについて分析を行ったのであれば、両者の本質を自分なりの言葉で定義すると、良いトレーニングになります。

物事を具体化する

課題の本質と定義を言語化できたら、本質から見えた事柄を今回の課題に具体化して適用します。
具体化した結果は、今回の課題に対する解決策となりえますし、マニュアルに記録することで、より実践的な価値ある情報として整理しておくことができます。

コンセプチュアルスキルの育成方法

ここでは、コンセプチュアルスキルを育成させるための3つの方法を紹介します。

OFF-JTによる学習

OFF-JTとは、Off-the-Job Trainingの頭文字を取った略語であり、現場での業務から離れて行われる教育や訓練の方法を指します。具体的には、業務時間内に座学の時間を取ったり、研修施設へ足を運んだりして集中的・体系的に学習する方法です。

OJTによる実地訓練

OJTとは、On-the-Job Trainingの頭文字を取った略語であり、実務経験を通して教育や訓練を行う方法です。
具体的には、育成対象者と近しい関係にある上司や先輩がトレーナーとなり、実際の業務を進めながら必要な知識やスキルを、育成対象者に伝えていきます。

コンセプチュアル制度を重視した人事制度の整備

給与や昇格を決定する際に活用される、人事評価項目としてコンセプチュアルスキルに関連したポイントを設ける方法です。一定の等級制度や報酬制度を用いることで、社員に対してコンセプチュアルスキルを向上させることを、奨励する方法です。

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