コア人材とは? 定義、採用方法、グローバルコア人材育成も解説

ビジネスの環境は常に変化し、スピード感が求められています。勝ち残っていくためには、常に企業を前進させていける技量や熱量を持つ「人」の力が求められます。だからこそ、事業の中核を担うコア人材の存在は不可欠です。ここでは、コア人材の定義や育成方法、優秀なコア人材の定着のさせ方などについて解説します。
目次
コア人材とは?
コア人材とは、組織の中核として事業の発展に貢献する人材のことです。定型的な業務だけではなく、事業戦略の立案やビジョンづくりなど、事業の根底に関わる業務も期待される人材です。コア人材に求められる要件は、その企業によって異なります。
事業を行う上で必要な存在なので、離職されてしまうと組織にとって大きな痛手となります。コア人材の多くは、他社でも活躍できる資質を備えています。企業は、コア人材の定着率を上げる取り組みが必要です。
コア人材が重視される理由
市場の変化が激しい現代は、VUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))の時代と言われています。未来予測がしにくい時代だからこそ、時流の変化に俊敏な対応が必要です。しかし、どう変化していくかは、企業によって戦略が異なります。事業戦略は、企業の独自性やビジョンを熟知した人材が率先して行います。そのため、自社の内情をよく知るコア人材は、企業が市場を生き抜くためにも重要な存在なのです。
企業のフェーズごとに必要なコア人材の定義
企業が求めるコア人材の要件は、企業の特性やフェーズによって異なります。企業のフェーズごとに必要なコア人材を解説します。
創業期
創業期は、事業を軌道に乗せることに注力しているため、社内制度の整備は二の次になりがちです。だからこそ、全職員が経営者マインドを持って働くことが求められます。誰かの指示を待つのではなく主体的に行動していくことが、この時期のコア人材の役割です。
成長期
組織の方向性が確立され、企業の成長が始まる「成長期」は、これまでの組織体制からさらなる拡大を目指す時期です。各部署の専門的人材を確保するために奔走する企業も多いでしょう。
周囲と連携して事業を進める協調性と、新旧の人材をまとめるマネジメント能力が求められます。この時期のコア人材の役割は「組織力を高めるためにいかに貢献できるか」が重視されるのです。
発展期
発展期は、創業期と比べ事業が大きく成長し、見えている景色も変わっているかもしれません。さらなる飛躍を目指すならば、これまでとは異なる戦略が必要と感じる時期です。そのため、現状を正しく理解・分析し、事業戦略を立てていくスキルが重要視されます。マーケティング力やリーダーシップ、遂行力など、広範囲のスキルが求められます。
変革期
変革期は、新規事業にチャレンジする時期です。新しいビジネスに挑戦するため、創業期のような熱量を持ち、これまでにないサービスをかたちにしていく必要があります。この時期のコア人材は、時流をつかむ能力や、創造性、アイデア力、さらに周囲を説得できるプレゼン能力なども求められます。
なぜ、コア人材の育成が必要?
コア人材は、企業のあらゆるフェーズで必要な存在です。その分、責任のある仕事が多いため、誰もができる業務ではありません。そのため、多くの企業では、コア人材を自社で育成しています。コア人材を育成することのメリットを紹介します。
生産性向上
コア人材は協調性と自主性を兼ね備え、なおかつ社内業務に精通した人材です。トラブルが生じても、迅速な対応が可能です。コア人材の育成は、事業の円滑化につながります。リーダーシップのある人材が育てば、新しいプロジェクトを任せるなど新規事業も進めやすくなり、生産性の向上にもつながります。
幹部候補の確保
コア人材は、高いスキルを持つ人材です。自社で育成することで、将来の幹部候補の発掘にもつながります。他社からヘッドハンティングなどをして優秀な人材を確保しても、会社の風土やビジョンを理解するのには時間がかかります。育成することで、自社にとって最適なコア人材を育てられるのです。
組織の安定化
コア人材には、組織を牽引するリーダーシップや新しいものを生みだす創造性の高さが求められます。いずれ事業が思うように伸びずに、行き詰まりを感じてしまう時期が来るかもしれません。その際に、優秀なコア人材がいる組織ならば、新しいアイデアが生まれ、1つの方向性に固執せずに新しいことにチャレンジしやすくなります。そのようなリーダーシップを持つ人材がいれば、組織の安定化につながります。
コア人材の発掘方法
企業にとってコア人材は、経営を左右する大切な存在です。判断力や調整力など、さまざまなスキルを満遍なく持ち合わせていることが大切です。そのような人に育つ可能性を秘めた原石の見極め方を解説します。
新卒採用でもリーダー候補枠を設けて採用する
中途採用は、即戦力のある人材を採用しやすいでしょう。そのため、ついスキル重視になりがちです。スキルにばかり気を取られていると、自社に必要な人材を見落としてしまいかねません。ミスマッチの発生を防ぐためにも、あらかじめ採用基準を決めたうえで見極めましょう。また、新卒採用の場合は、リーダー候補などを別枠でもうけることで、ポテンシャルの高い人材の採用につながります。
採用時にチェックしておきたいスキル
コア人材になる素質があるかは、採用時の見定めが重要です。採用時には、以下の点に着目しましょう。
コミュニケーション能力の高さ
コア人材は、社内外の関係者と良好な関係性を築ける人材でなければいけません。コミュニケーション能力の高い人材ならば、入社後も安心して仕事を任せられるでしょう。
ここで言うコミュニケーション能力とは「話上手」ではありません。寡黙でも、言葉のキャッチボールがスムーズな方もいます。流ちょうに話していたからといって「この人は、コミュニケーション能力が高い」と判断しないことが大切です。質問内容にしっかりと答えられているか、キャッチボールはできているかなどを観察しましょう。
自分の気持ちを、しっかりと伝えられる
会社では、他人同士が互いのスキルを認め、ときには補い合いながら仕事を進めていきます。意思表示がしっかりできなければ、コミュニケーションに齟齬が生まれます。しかし、「伝えるスキル」に関しては、相手ばかりを責めてはいけません。もしかしたら聞く側のスキルが足りないケースもあるためです。
話しやすい雰囲気がなければ、相手は緊張したままでスムーズなコミュニケーションは生まれないでしょう。聞く側も「教えてほしい」というスタンスで、興味を持って言葉を引き出していくことが重要です。
柔軟な考え方ができる
ビジネスは、こちらが描いたシナリオ通りにはいかないことが多々あります。先の読めない事態に陥っても、柔軟に対応できる人材は非常に期待が持てます。柔軟性がある人材かどうかは、過去のトラブルや困難だったできごとを伺うことで推察できます。
相手を尊重する気持ちを持っている
「何がなんでも、自分の意見を通したい」というタイプは、将来のリーダーには相応しいとはいえません。コア人材に育てたいならば、相手を尊重し他人の意見に耳を傾けられる人材が望ましいでしょう。グループディスカッションなどの様子を、しっかりと観察しておくと判断しやすいかもしれません。
あきらめずに取り組める、忍耐力がある
はじめて取り組む仕事には、何も分からない状態から着手することも多いものです。ときには、みんなができるのに自分だけできない事態に陥る可能性もあります。そんなときでも、あきらめずに前に進もうとする姿勢は、将来のリーダー像に当てはまるケースが多いでしょう。
一方で気をつけたいのは、忍耐力と同時に柔軟性を持っているか否かです。目的を達成させるために、ただ闇雲に努力を続けていけばいいものでもありません。あきらめずに取り組んできたエピソードを引き出し「解決方法をどのように導きだしていたか」などに着目してヒアリングをしていくといいでしょう。
コア人材の育成方法
採用したコア人材候補の職員を、どのように育成していけばいいのでしょうか。それには、目の前の業務をただ行ってもらうのではなく、先を見据えた教育プログラム作りが大切です。
まずは、自社のコア人材の定義を決めます。会社によって大切にしていきたいポイントは異なります。しっかりと必要なスキルを把握し、その人に合ったスキルを習得する機会を増やしてあげます。自社ならではの視点で教育プランを考えることが大切です。
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コア人材の定義を決める
野村総合研究所は、コア人材を下記のように定義しています。
企業において役職などに関わらず、企業競争上、他社との差別化を図る上でも不可欠となるコアとなる業務を担う。他の社員・職員では代替の効かない人材で、原則、代表者以外の者。
株式会社野村総合研究所「コア人材の確保・定着のための戦略―コア人材の視点から―」
このような自社の定義を決め、共有することがブレない人材育成につながります。そこから、どのような人材を目指すべきか掘り下げていくと、あるべき姿が見えてくるはずです。0から考えるのが難しい場合は、知識、能力、ポテンシャル、性格の4つの要素をもとに考えてみるといいでしょう。
スキルを可視化し、管理する
自社がコア人材に求めるスキルを可視化すると、より明確にどのような人材が必要か見えてきます。なお、スキルの管理には業務で必要なスキルを抽出し、各従業員のスキルを一覧した表「スキルマップ(スキルマトリックス)」や、それらを管理する「スキル管理システム」の導入が有効です。
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スキルマップは、従業員のスキルを管理するためのツールです。スキルマップの活用によって効率的な人事配置や人材育成が可能になります。
ここでは、スキルマップについて目的や作り方、手順・項目例、目的、活用方法、導入企業、テンプレートなどをご紹介します。
スキルマップは、部門やグループ単位で細かく設定していくとよりわかりやすくなります。それらの情報がまとまったスキル管理システムを活用すると、どのスキルが何名いて、どのスキルが不足しているのか確認できるため、人材育成情報の管理がしやすくなります。
若手コア人材の育成
若手コア人材を育成するには、ビジョンなどを明確に伝える研修を実施するといいでしょう。また多角的に会社のことを把握できるように、複数部署でのOJT研修や配置変更なども効果的です。他部署を経験することで視野が広がり、経営マインドを育みやすくなります。
中堅コア人材の育成
中堅コア人材は、リーダーシップ研修などによる育成が効果的です。リーダーの役割とは何か、どのような視点で取り組むべきかなど、リーダーのあるべき姿を想像し実現していくことで自身が置かれたポジションの重要性を認識します。仕事への意識が高まり、コア人材の育成にも役立ちます。
グローバル競争を勝ち抜く、コア人材育成の5ステップ
グローバル時代において、海外で活躍できるコア人材の育成も視野に入れる必要があります。いつでも海外事業を任せられる人材は、非常に貴重な資産となります。
海外で働くためには、経営者視点を持ち、異なる価値観を持つ人々を束ねていく必要があるため、強いリーダーシップが要求されます。グローバルマーケットを視野に入れている企業は、以下の5つのステップを意識して育成していくといいでしょう。
グローバル人材候補者をリストアップ
人事もしくはプロジェクトメンバーを集め、グローバル人材育成チームを結成します。チームは、グローバル人材候補者のリストアップから始めます。人事評価データからの抽出ほか、自他推薦も加えるといいでしょう。
各人材の課題を抽出
グローバル人材候補者が、何を学ぶべきか知るため現状のスキルを抽出し、課題点をリスト化します。各候補者の課題をどう解決していくべきかを探る材料となります。
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人材要件とは? 作り方や定義と目的、採用ペルソナとの違い、フレームなどを解説
企業活動にとって人材採用は欠かせません。しかし、どのような人材が自社で活躍できるのかを採用時点で明確に判断するのは難しく、採用担当者間での採用基準を統一することも簡単ではありません。そこで、関係者間で共有する人材要件の定義が必要となります。
この記事では、人材要件の概要や人材要件が必要となる理由、人材要件を作る際のアプローチや人材要件を作る際のポイント。また、人材要件を作る際のフレームワークなどについても紹介します。
人材育成計画を作る
候補者の課題点などを踏まえて、人材育成計画書を作成します。社内の他部署との調整や研修計画なども必要です。経営戦略によって、海外に行くまでが短期間の可能性もあります。効率的にスキルを高めてもらうためにも、経営計画との連携を強めつつ進めていきましょう。
研修を行い、PDCAを回す
人材育成計画の決定後は、候補者の研修などが始まります。PDCAを回しながら行いますが、思ったように人材が育たない場合もあります。資金を投入したにもかかわらず、退職してしまうケースもあるでしょう。どのようなトラブルにも対処できるように、計画の軌道修正を臨機応変にしていく必要があります。
配置後の適切なコミュニケーションを継続
人材育成後、経営計画と渡航時期の調整をし、海外配属となります。配属後も、軌道にのるまでは手厚いサポートをしていくと働きに出ている人材も、心強いはずです。
コア人材が離職する理由
せっかく育てたコア人材が、離職してしまうケースもあります。なぜコア人材は、離職してしまうのでしょうか。代表的な理由を紹介します。
成果に見合わない給料
コア人材が多くの成果をあげていても、給料に反映されていないと感じた場合、離職を考えるケースが見られます。
コア人材は、仕事ができるため効率良く業務を行います。結果的に集中的に仕事を頼まれてしまいがちです。最初は頼られていると張り切って仕事をこなしていても、忙しさに押しつぶされモチベーションが低下してしまう場合もあります。コア人材が退職する前に、1人に仕事が集中しない仕組み作りや、場合によっては人材採用なども検討する必要があります。
希望しない仕事
自分の希望に沿った仕事や挑戦する機会などが与えられていないと、モチベーションが低下し離職につながります。現状に関して不満に感じていると見受けられたら、状況をヒアリングし互いに納得がいく方法を見つけていきましょう。
経営層とのビジョンの不一致
事業のフェーズにより、コア人材の役割は変わります。仕事内容や働き手も変化する中で、徐々に経営層とのビジョンの不一致が生まれてしまうケースもあります。中には独立を選ぶ人もいるでしょう。日頃から事あるごとに経営者がビジョンなどを共有していくことが大切です。
コア人材を離職させないポイント(防止策)
企業にとって重要なコア人材ですが、離職してしまう場合もあります。コア人材を離職させないポイントを解説します。
働きに見合った評価体制の構築
コア人材がモチベーションを維持し仕事をしてもらうためには、適切な人事評価体制の整備が必要です。
人事評価の種類には、大きくわけて業務で求められる能力(職能)を評価する「能力評価」、仕事に対する姿勢や思いなどを評価する「情意評価」、成果を評価する「成果評価」、行動特性を調査分析し評価する「コンピテンシー評価」、掲げているバリュー(行動規範)の実践や浸透を評価する「バリュー評価」、複数の評価者が評価する「360度評価」など、6つの評価方法があります。それぞれ職種などによって適切な方法は異なるので、コア人材に合ったやり方を選択しましょう。
重要なポジションへの配置
コア人材は豊かな知識や分析力を持っています。そのような人材が、単純な仕事ばかり任されていてはモチベーションが維持できず離職につながりかねません。コア人材には、重要なポジションを担当してもらいましょう。やりがいのある仕事を任されることで生き生きと、より長く働いてくれるはずです。
コミュニケーション機会の設置
他社との合同研修など、別企業や人との交流を持つ機会を設けることも、モチベーション向上に役立ちます。研修の場で、さまざまな企業の従業員と話をすることで、新しい視点が生まれ、新ビジネスにもつながる可能性があります。
コア人材集中型解消のため、業務標準化を推進
コア人材は能力が高いため、多くの人に頼られる存在となりがちです。負担が増えることで、心身の疲労やストレスにつながり、負の感情が増えて離職につながってしまいます。また、優秀だからこそ「自分の代わりはいないので、もっと頑張らないと」と自分を追い詰めてしまう場合もあります。
解決策は、ノウハウやナレッジを蓄積させマニュアル化し共有していくことです。誰でもできる作業は、コア人材から手放し他の人でもできるようにしていきましょう。コア人材は、より複雑な作業に集中でき、生産性向上にもつながります。マニュアル化や共有がより浸透すれば、新人教育もよりスムーズになるはずです。
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