製造業における人事管理クラウドとは? 主な機能、導入メリット、製造業に必要な理由

製造業を含むあらゆる企業において、人事管理業務は煩雑な業務です。そのため、「人事管理クラウド」を導入して、人事管理業務の効率化を図っている企業も増えています。
本記事では、人事管理業務の概要・人事管理クラウドの機能および導入するメリット・製造業に人事管理クラウドが必要な理由・スキル管理について、詳しく解説します。
目次
人事管理クラウドとは
人事管理業務をサポートする「人事管理システム」は、仕組みの違いによって、「クラウド型」「オンプレミス型」の2つに大別されます。
クラウド型とは、インターネット上に配置されているサーバー(クラウド)を利用する方式であり、人事業務で必要な従業員データをクラウド上で一元管理できるシステムです。「人事管理クラウド」とも呼ばれており、近年の主流となっているシステム形式です。
一方のオンプレミス型とは、自社に配置されているサーバーを利用し、パソコンにソフトウェアをインストールして利用する形式となっています。
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この記事では、タレントマネジメントの定義や概要、取り組むメリットや具体的な進め方について解説します。
人事管理の4つの業務
ひとくちに人事管理業務といっても、その業務範囲は広いです。人事管理業務に含まれる業務は、大きく分けて以下の4つがあります。
- 採用
- 異動・配置
- 評価
- 育成・教育
それぞれの業務内容について、詳しくみていきましょう。
採用
採用業務とは、文字どおり従業員の採用(新規入社・中途入社)を行う業務です。具体的には、採用戦略から採用計画の立案および採用活動の企画・実行までを業務範囲としています。
採用戦略・採用計画および採用活動のために、行っている代表的な業務内容としては、以下の4つがあります。
- 求人広告の作成
- 会社説明会・セミナーの開催
- 応募者の選考(書類・面接)
- 内定者との連絡や各種調整
異動・配置
従業員の人事異動・配置を行う業務です。具体的には、従業員各人のスキルや職務経験・異動希望などを把握するとともに、各部署で必要とされている人材ニーズを取りまとめます。
従業員のスキルなどの情報と、各部署から上がってきた必要人材ニーズをすり合わせし、従業員を適材適所に異動・配置させます。
従業員をそのキャリアや能力、スキルを加味して適切な部署に異動・配置させることで、従業員自身のモチベーションアップや、生産性向上および組織全体の活性化につなげる役割があります。
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評価
評価業務とは、従業員の人事評価を行う業務です。人事評価結果によって、昇進・昇格および報酬が決められています。
評価制度でよく用いられている指標は、以下の5点です。
- スキル
- 実績
- 勤務状況
- 職務遂行能力
- 会社に対する貢献度
評価制度は、従業員への影響が大きい制度であるため、透明性が確保されていることが重要です。万が一、評価基準が不透明な場合には従業員の意識が「正当な評価がなされていない」「頑張っても評価されない」と会社に対してネガティブな感情を持ってしまいます。
その結果、従業員のモチベーションが下がり、離職や生産性の低下を招ねくリスクがあります。
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この記事では、スキル評価の概要やスキル評価を行う目的とメリット、スキル評価を行うためのツールなどを紹介します。
育成・教育
従業員の育成・教育をサポートする業務です。従業員各人の能力・性格・職務適性などをしっかりと把握し、それらの情報をベースに各人の育成計画を策定していきます。
そして、策定された育成計画に沿って計画的に教育を施し、各人のスキルアップを図ることによって、生産性のさらなる向上を目指します。
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次に、人事管理業務を紙またはExcelベースでやってはいけない理由の解説です。理由としては、以下の4つのリスクがあるためです。
- 漏れのリスク
- 紛失のリスク
- 誤りのリスク
- 遅れのリスク
それぞれのリスクの内容について、解説します。
漏れのリスク
人事情報には、機密性の高い個人情報が含まれています。たとえば、氏名・性別・生年月日・住所などの情報です。
これらの個人情報を、紙やExcelで管理をしていると、人事情報の書類を保管しているキャビネットの施錠忘れなどによって、誤って外部に情報が漏れてしまうリスクがあります。
紛失のリスク
人事情報に関連した書類を保管しているファイルを、誤って紛失してしまうといったリスクもあります。
たとえば、ファイルの利用状況(借用日時・利用者・利用者の連絡先・返却日時など)を厳格と管理しておかないと、知らないうちにファイルが行方不明となり、紛失してしまいかねません。
誤りのリスク
人事情報を紙やExcelで管理するということは、記載内容の追加・変更・削除が発生した場合には、ハンドベースでの対応を余儀なくされてしまいます。
そのため、人間のミスによって誤った情報を登録・更新してしまったり、削除してしまったりするリスクがあります。
遅れのリスク
誤りのリスクでも解説したように、紙やExcelで人事情報を管理する場合には、ハンドベースでの登録・更新・削除とならざるをえません。
そのため、人事情報の担当者が情報の登録・更新・削除を失念してしまい、あらかじめ定められた期間内に情報のアップデートが行われないことも考えられます。その結果、データが最新の状態に更新されず、適切な人事管理ができなくなる恐れがあります。
人事管理クラウドの機能
ここでは、人事管理クラウドでサポートしている機能を紹介します。大きく分けて、以下の5つの機能があります。
- 勤怠管理
- 労務管理
- 給与計算
- 採用管理
- 人事評価
それぞれの機能内容について、解説します。
勤怠管理
従業員1人ひとりの勤務状況を管理する機能です。具体的には、出勤時間・退勤時間・休憩時間・時間外労働時間および有給休暇の取得状況などの、従業員の労働における数字的な記録を管理する機能です。
たとえば、出勤時間・退勤時間・休憩時間などについて、従業員はオフィス・現場・在宅を問わずにリアルタイムに正確な時間を入力できます。
労務管理
労務管理とは、労働契約や条件の管理・福利厚生・安全衛生に関わる情報を管理する機能です。
労務管理機能の具体例としては、従業員の住所変更や扶養変更などの手続きで、従業員が直接スマートフォンやパソコンから申請が可能であり、申請内容を人事部門がリアルタイムで確認できるといった機能があります。
給与計算
勤怠管理機能で、従業員1人ひとりの勤怠情報を収集したデータを元に、「給与の計算」「給与や賞与の明細作成」を行う機能です。
給与計算以外にも、「所得税」「社会保険」「年金関連」「年末調整」などの機能を持つ人事管理クラウドもあります。
採用管理
採用管理機能は、採用に関する情報を一元的に管理できる機能です。採用に関する情報の具体例としては、「掲載する求人内容」「応募者の情報」「筆記試験の内容」「面接などの内容」「採否結果」などの情報があります。
そのため、求人に応募してきた人材の情報や、応募者の選考状況のステータスおよび選考結果の状況がひと目でわかり、採用業務の効率化が図れるといった利点があります。
人事評価
従業員の人事評価に関する業務をサポートする機能です。たとえば、人事評価シートの作成・配布・進捗管理・回収・集計といった機能を持っています。
人事評価機能を利用することで、人事評価のベースデータとなる人事評価シートの運用が迅速に行えるようになります
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人事管理クラウドを導入するメリット
次に、人事管理業務に人事管理クラウドを導入するメリットを紹介します。メリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 業務効率化
- セキュリティ強化
- 人の手によるミスの削減
- 持続的な人材育成
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
業務効率化
人事管理クラウド内のデータベースに、企業内の人材に関する情報(異動・配置、人事評価、育成計画など)を全て一元管理できるため、効率的な人事情報の管理が可能です。
とくに、採用や人事異動の時期には、人事部門への業務が集中し、過負荷な状態となっていますが、人事管理クラウドを導入することで、これらの負荷の軽減が期待できます。
セキュリティ強化
人事管理クラウドでは、利用するにあたってユーザID・パスワードが必要であり、人事情報データの参照更新可否をユーザごと・部署ごとに設定可能です。その結果、見てはいけない人に人事情報を見られてしまったり、更新されてしまったりするといったリスクは軽減できます。
人の手によるミスの削減
ハンドベースで、人事情報の登録・更新・削除を行っていると、どんなに注意を払って作業をしていても、ミスがゼロになることはありません。
たとえば、「従業員の勤怠打刻ミス」「有給休暇などの休暇の集計ミス」「残業時間や給与の集計ミス」が発生してしまうリスクがあります。これらのミスが発生すると、残業代未払いなどにもつながりかねず、労働基準法に抵触してしまう恐れがあります。
人事管理クラウドでは、これらの時間が自動集計されるため、勤務時間・残業時間・休暇日数に関するミスが大幅に減少します。
持続的な人材育成
人事管理クラウドでは、「従業員の人事評価結果」「上司から部下へのフィードバック」「従業員の掲げた目標設定と目標達成状況」「育成計画とその進捗」といった、人材育成に必要不可欠な情報が一元管理できます。その結果、持続的な人材育成がしやすくなります。
製造業に人事管理クラウドが必要な理由
ここでは、製造業に人事管理クラウドが必要な理由を解説します。理由として、以下の2点が挙げられます。
- 事業運営に必要なスキル・技術・技能の喪失の危機の回避
- 適切なスキルの評価
それぞれの理由について、詳しく紹介しましょう。
事業運営に必要なスキル・技術・技能の喪失の危機の回避
製造現場では、製造工程での作業が属人化していることが多く、さらに各製造工程における作業員の高齢化により、今後退職者が増えるというリスクがあります。
そのため、企業としては計画的な後任の育成が喫緊の課題です。後任の育成にあたっては、従業員の年齢・経験年数・職務経歴・保有スキルなどの情報から、育成対象者を選択する必要があります。
製造業向けの人事管理クラウドの1つであるスキル管理システムでは、従業員一人ひとりの年齢・経験年数・職務経歴・保有スキルなどの情報が一元管理されています。そのため、効率的に後任者のアサインができるため、後任の育成がスピーディーに進むでしょう。
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【徹底解説】スキル管理システムとは? 導入メリットと効果、活用シーン、システムの種類について
いま、スキル管理が注目を集めています。しかし、現場ではスキルデータ(スキルや資格、経験、教育などの情報)をExcelなどで管理している場合も多く、データの一元管理や活用にまで手が回っていないことが多いかもしれません。
この記事では、スキル管理業務の効率化を図りたい方やスキル管理によって蓄積したデータを有効活用したい方に向けて、「スキル管理システム」を徹底解説していきます。タレントマネジメントシステムとの違いや、効果とメリット、選定ポイントも踏まえて解説しますので、ぜひご一読ください。
適切なスキルの評価
製造業で造られる製品は、さまざまなスキルを持った従業員が、チームとなって製造される場合が多いです。製造した製品は特定の個人の成果物ではありません。そのため、個人に対する評価基準が不明確になることも多く、適切に個人のスキルを評価することが難しいという課題があります。
適切なスキル評価ができないと、従業員の仕事に対するモチベーションが低下し、結果的に従業員の離職につながることもあります。製造業向けの人事管理クラウドであるスキル管理システムの活用は、従業員一人ひとりのスキルを正当に評価することで、従業員のモチベーションの低下の回避につながります。
スキル管理とは
スキル管理とは、従業員1人ひとりが保有するスキルを可視化するとともに一元化を図り、社内で共有できる情報として集約・活用できるようにすることを指します。
スキル管理の目的
スキル管理を行う目的としては、以下の5点が挙げられます。
- スキルの把握
- スキルの維持管理
- スキルに応じた人材配置
- スキルの観点に立った育成
- 次世代へのスキル継承
それぞれの目的について、解説します。
スキルの把握
スキルの把握とは、従業員一人ひとりの過去の担当業務・経験年数および現在保有しているスキル・資格などの情報を可視化し、人事や担当部門内で共有できるようにすることを指します。
従業員1人ひとりのスキルが簡単に分かるようになるため、異動・配置や人材育成の計画および実行をする際に、効率的に行うことが可能となります。
スキルの維持管理
スキルの管理は、1回だけ行えばよいわけではなく、継続的に管理していかないと意味がありません。そのため、スキルの把握によって得られた従業員一人ひとりのスキルを常に最新の状態に維持しておく必要があります。
スキルに応じた人材配置
製造現場における各製造工程では、必要とされるスキル・資格・経験はまちまちです。そのため、人材配置においては、各製造工程で必要とされているスキル・資格を保有する従業員を、その製造工程に配置することが一般的です。
そうすることで、従業員本人も得意な業務に就くことができるため、モチベーションが上がります。また、各製造工程の責任者としては、人材育成を効率化でき、さらに生産性も向上させられる、というメリットを得られます。つまり、スキルデータをベースに適材適所に従業員を配置することは、現場の上長と従業員の双方にメリットが大きいと言えるのです。
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スキルの観点に立った育成
従業員1人ひとりに求められているスキル・資格・職務経験を得られるようにするために、あらかじめ育成計画を策定します。策定した育成計画に従って、従業員に学びの機会を与え、必要とされているスキルの習得を図らせます。
次世代へのスキル継承
今後、少子高齢化がますます進み、また熟練した従業員が大量に退職していくため、次世代へのスキル継承は喫緊の課題です。
とくに、属人的な作業については、後任の担当者にスムーズかつ短期間で引き継げるように、作業マニュアルや作業手順書といったドキュメントの整備が、急がれています。
スキル管理の方法
スキル管理の具体的な方法について、紹介します。管理方法としては、以下の2点があります。
- スキルマップの活用
- スキル管理システムの活用(スキルマップのシステム化)
それぞれの管理方法を、詳しくみていきましょう。
スキルマップの活用
スキルマップとは、従業員1人ひとりの現在の業務におけるスキルレベルを一覧表化したものです。必要とされる能力・技能は、それぞれの業務内容と職責レベルによって設定します。
スキルマップを活用することで、経営者層や製造現場の管理職は、個人・グループ・部門単位で、現在のスキルがどのレベルにあるかがひと目でわかるようになります。
従業員の「スキル(能力・技能・力量)」を評価することで、従業員ごとに個別具体的な育成計画が策定しやすくなります。
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