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要員計画とは? 目的、メリット、2つの方法、4つのステップを解説

人手不足の影響から、人材採用も難しくなっています。そのため、経営戦略や事業戦略に紐づいて立案・実行する要員計画が注目を集めています。

この記事では、要員計画の概要や作成の流れ、作成時の注意点を紹介します。

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要員計画とは

要員計画とは、「企業が構築する経営戦略や事業計画に基づいて立案する人材の採用や異動、配置に関する計画」を意味します。

要員計画では、「どの部署に何人の人材が必要か?」などと人材の頭数を考えるだけでは不十分です。要員計画は、「採用する人材はどのような雇用形態が望ましいか」「採用だけではなく、配置・育成などで人材不足に対応できないか」といったことも含めて、多角的な視点から立案されます。

また、要員計画に沿った人材採用では、採用候補者のスキルや経験に加えて、将来的な育成ビジョンも考慮します。

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要員計画が必要な理由

近年では、経営戦略に紐づいた要員計画を作成することが増えています。

その理由として、労働人口の減少やAI・IoTの普及、経済のグローバル化など、社会・市場の大きな変化が挙げられます。とくに、生産人口の減少は影響が大きく、企業はこれまでのように容易に人材を採用することができなくなりました。

また、AIの普及によって、単純作業の人からAIへの置換が進む一方で、AIに関する高度なスキルを持った人材のニーズが高まっています。

企業は、慢性化する人手不足に対応しながら、高いスキルを保有する人材を確保しなくてはいけません。計画的に人材採用や活用を進める際の指針となる「要員計画」に注目が集まるのは、このような理由からです。

関連記事:なぜ製造業では人手不足が深刻なのか? データから考える人手不足の理由と対策

要員計画と人員計画の違い

要員計画に似た用語に、人員計画があります。

人員計画は、概念的には要員計画の内側に位置しており、要員計画に応じて立てられる人材に関する計画です。要員計画が、経営や事業計画に基づいて立案されるのに対して、人員計画は部門・部署単位の、要員計画より細かい粒度で立案されることに特徴があります。

ただし、要員計画と人員計画は、企業によっては同じ意味で使われることも多いことも事実です。そのため、所属する企業がどういった意味でこれらの用語を使用しているかは確認するようにしましょう。

要員計画と採用計画の違い

要員計画に似た用語に、「採用計画」があります。この2つの用語の違いは以下です。

要員計画は採用に限らず、異動や育成も含めて幅広い選択肢を考慮して人材に関する計画を立案します。一方、採用計画は、人材を採用する際に立案する計画のことです。募集要項の作成や採用コストの算出なども採用計画に含まれます。

要員計画の目的・メリット

要員計画を立案・実行する目的・メリットを紹介します。

採用計画の合理化

要員計画では、経営方針や事業戦略に基づいて、自社に必要な人員を明らかにします。さらに、配置・育成も考慮に入れて計画を進めることから、採用では外部から補填することでしか賄えない人材だけを採用でき、採用活動を合理的に進められます。

また、計画の立案時に採用の「課題」も明確になっているため、PDCAが回しやすいのも特徴です。PDCAを回すことで採用活動の精度を高められます。

人材の安定的な確保

要員計画では、中長期的な事業戦略の視点から、必要となる人材(像)を明らかにします。将来を見据えた人材戦略を実行できるため、必要人材を計画的に確保しやすくなります。

たとえば、事業運営において重要となるスキルを持った人材が社内に足りない場合には、採用によって補填します。しかし、採用がうまくいかないこともありえます。その場合には、従業員のなかから育成対象者を選出して、不足している重要スキルを獲得できるように時間をかけて育成します。

このように、要員計画は、中長期的な経営目標や事業戦略と密接に結びついているため、柔軟な対応が可能になります。

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適正配置による生産性の向上

要員計画を作成する過程で、「どの部署で、どんなスキルを持った人材が、何人必要か」といったことを可視化できます。

また、要員計画の作成と並行して、スキルマップによって社内のスキル状況や将来的に獲得すべきスキルを可視化しておけば、人材の配置を適正化しやすくなります。

適性に合った配置を行えば、従業員は能力を十分に発揮してくれるため、業務効率や生産性の向上へとつながります。

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02. スキルマップ入門

人材育成とスキルアップ

要員計画は、人材育成の効率的にもつながります。

要員計画の作成時に、企業にとって必要なスキルを明らかにすることで、そのスキルを有する人材の育成を計画的に進められます。

また、複数のスキルを保有する人材の育成も可能なため、人材の多能工化(マルチタスク化)を推進できます。

さらに、従業員もスキルの獲得を目指して成長できるため、業務に取り組むモチベーションも高まります。

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早期離職の防止

せっかく時間とコストをかけて採用しても、早期離職しては意味がありません。早期離職の多くは、入社前と入社後の待遇や条件、担当する業務のミスマッチによって起こります。

要員計画では、経営戦略と密接に紐づいた人材要件を緻密に策定してから採用を進めるため、採用後のミスマッチを極力抑えることができます。

また、採用された人材も自分の経験・スキル・能力を活かしてモチベーション高く業務に取り組めることから、早期離職のリスクを低減できます。

関連記事:人材要件とは? 作り方や定義と目的、採用ペルソナとの違い、フレームなどを解説

要員計画を策定する2つのアプローチ

要員計画を作成する際には、トップダウン方式とボトムアップ方式の2つのアプローチがあります。

トップダウン方式

トップダウン方式は、マクロ的算定方式とも呼ばれるアプローチ法です。トップダウン方式の方程式は、以下のいずれかで表現されます。

  • 必要な人員数=(売上高×付加価値率×労働分配率)÷1人当たりの人件費
  • 必要な人員数=(目標売上高×適性人件費率)÷1人当たりの人件費

トップダウン方式では、経営戦略に基づいて需要や市場動向を予測した上で計画をつくるため、実態との誤差が生じるリスクがあります。また、売上高を基準に計算することから、現場の声を反映できない場合もあります。

ボトムアップ方式

ボトムアップ方式はミクロ的手法とも呼ばれ、現場に近い管理者や担当者が部門レベルの小さな単位で必要な人数を算出します。各部門が算出した結果を集計して、会社全体として必要な人数を明らかにします。

ボトムアップ方式では、以下の方程式で必要な人員数を算出します。

  • 必要な人員数=総業務量÷(1人あたりの標準業務量×所定労働時間)

ボトムアップ方式は、現場の要望に従って人員を確保する考え方のため、現場からの不満が起こりにくいのが特徴です。しかし、現場の実態把握が不十分だったり、現場とのコミュニケーションが不十分な場合には採用過多を招き、人件費が経営状況を逼迫させたりするリスクをともないます。

現場の声を聞きつつも、予算とのバランスを取りながら優先順位を付けて対応することが重要です。

要員計画を策定する流れ

要員計画を策定する際には、以下の流れで取り組みます。トップダウン方式でもボトムアップ方式でも、大まかな流れは変わりません。

現状の要員の過不足を把握

最初に、職場の現状を把握します。現状把握では、現場が求めている要員に対する過不足を明らかにします。

トップダウン方式の場合には、現状把握の結果と会社全体で算出した結果とを比較します。一方、ボトムアップ方式の場合には、現場ごとの調査結果をまとめて、会社全体における結果とします。

多角的な視点から現状把握を行うには、組織構成や業務内容、従業員の経験業務や保有スキル、給与体系、労働条件などの多岐にわたる項目の管理が必要です。人材管理システムやスキル管理システムに搭載されたスキルマップの活用が効果を発揮します。

関連記事:【徹底解説】スキル管理システムとは? 導入メリットと効果、活用シーン、システムの種類について

スキルの見える化

経営層や現場からの要望を調査

現場ごとの過不足が明らかになったら、不足している要員に対して現場や経営層がどのような要望を持っているかをヒアリングします。

トップダウン方式の場合には、経営層に予算や経営戦略に関するヒアリングを行い、その結果から必要な要員数の算出をします。一方、ボトムアップ方式の場合には、各部署で必要な要員数やスキルについて調査し、その結果を全社的に統合します。

要望を叶えるための要員調整

現状把握と全社的な要員のニーズが明らかになったら、そのニーズを満たすためにどのような戦略を取ればよいかを考え、要員調整を行います。

要員を確保する手段には、外部からの人材採用だけではなく、社内での異動、既存人材の育成、業務の外部委託などがあります。明らかになった要望を満たすためにはどの選択肢が取ることが最適かを検討します。

要因調整は、短期的な目線だけではなく、経営方針や事業戦略に基づいた中長期的な視点を持って行います。

今後に向けた要員計画の策定と運用

要員調整の方針が決まったら、予算・採用人員・異動・育成などの各種項目を、具体的なアクションプランに落とし込みます。具体的なアクションプランが定まった後は、1つずつ着実に実行していきます

要員計画を策定する際のポイント

要員計画を策定する際には、以下のポイントを押さえます。

計画を定期的に見直す

要員計画は中長期的な計画です。定期的に状況を確認して、必要があれば適宜見直しを行います。

要員計画の見直しを行う際には、以下の2つの観点から分析します。

人件費効率の分析

1つ目は、人件費効率の分析です。売上高や粗利に対する人件費の割合を算出し、人件費が計画に対して想定を超過して上昇していないかを明らかにします。

  • 人件費効率分析=売上高や粗利など÷人件費

1人当たりの生産性の分析

2つ目は、1人当たりの生産性分析です。企業が成長して売り上げを拡大していく過程で、1人当たりの生産性が高まり過ぎていないかを検証します。

生産性が高まり過ぎている状態は、「人材不足の結果、残業が多く発生してしまっている」ということを意味している可能性があり、注意が必要です。

一方で、生産性が想定よりも低い場合には、人材配置が不適切であることが考えられます。人員配置の見直しのきっかけの1つとします。

  • 1人当たりの生産性分析=売上高や粗利など÷人数

既存社員へのケアや能力開発

要員計画では、従業員の配置・育成をとおした能力開発が必要不可欠です。しかし、配置・育成は、スキルを持った人材を外部から採用する場合と比べて、効果が出るまでに時間がかかるものです。

異動した従業員や育成フローにいる従業員がモチベーションを高く保って業務に取り組めるように、コミュニケーション機会を積極的に創出して、必要があれば業務サポートなどのケアを行います。

要員計画の確認ポイント

要員計画の作成・修正の際には、以下のポイントを押さえます。

予算を超過していないか

ボトムアップ方式で要員計画を作成する場合、現場の要望を重視し過ぎるあまり、予算超過してしまう場合があります。予算が超過しないように、局面によっては、現場からの不平・不満はある程度許容することも考えましょう。

現場からのニーズを満たしているか

現場のニーズを全て満たすことは困難です。リソースの範囲内で、現場のニーズに応えることが大切です。

現場からのニーズを可能な限り満たすために、複合的に手段を考えるようにしましょう。

計画を変更するタイミングは適切か

要員計画には、定期的に見直しが必要です。しかし、計画開始から修正までの期間が短すぎると、現場が混乱するリスクがあります。

とくに、育成や配置は、成果が出るまでに時間がかかります。そのことを念頭に置き、現場が余裕を持って対応できる無理のないスケジュールで計画を見直します。

退職・休職リスクは考慮されているか

退職や休職のリスクは常に考慮しておきましょう。従業員の離職によって仕事が回わらなくなることを避けるためにも、人員の不在に備えて、常日頃からフォロー体制を構築したり、多能工化を進めておいたりするなど、離職に対応できる仕組みをつくっておきましょう。

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